歩行運動を電気エネルギーに変換する 磁歪振動発電デバイスに関する研究

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歩行運動を電気エネルギーに変換する 磁歪振動発電デバイスに関する研究 A-4 歩行運動を電気エネルギーに変換する 磁歪振動発電デバイスに関する研究 Study on Vibrational Energy Harvesting Device Converting Locomotion to Electrical Energy 金沢大学大学院 自然科学研究科 電子情報工学専攻 澤村 一樹

発表の流れ はじめに 磁歪振動発電素子 歩行運動から電気エネルギーを得る検討 まとめ ○研究背景 ○研究目的 ○構成 ○発電原理    ○研究背景    ○研究目的 磁歪振動発電素子    ○構成    ○発電原理    ○自由振動による実験 歩行運動から電気エネルギーを得る検討    ○錘衝突実験    ○振り子による振動励起    ○磁石の吸着力を利用した振動励起 まとめ

はじめに ~研究背景~ 我々の周りには小型の電子機器が溢れ それら全てに電池が使われている クリーンエネルギーに注目 電池は廃棄処分 ボタン電池は年間10億個 クリーンエネルギーに注目 ◎太陽発電を搭載した携帯電話 KDDI その中でも身近な振動での発電が注目 生活の中でも歩行・家事中に振動が発生 東京駅では発電床を実験的に使用 発電床(音力発電)

はじめに ~歩行運動と製品化された発電装置~ 本研究では歩行運動に注目する 周波数2Hz,加速度 発電靴(NTT R&Dフォーラム2010) F:外力,m:質量,a:加速度 万歩計などはこの外力を利用 USB充電器(nPower PEG)

はじめに ~鉄ガリウム合金~ 鉄ガリウム合金(Galfenol) (Fe81.6Ga18.4) アメリカ海軍研究所で開発された磁歪材料 ○磁歪   200 ~ 300 ppm ○ヤング率   70 GPa ○比透磁率   100 延性材料⇒機械加工性が良い

はじめに ~逆磁歪効果~ 磁歪材料に応力を 加えると磁束に変化が生じる B:磁束密度 m:透磁率 H:磁界 d:磁歪定数 T:応力 6

はじめに ~研究目的~ ○歩行運動からの発電を実現 ○小型電子機器を歩行運動による発電で駆動 ⇒以前までに4.1mWの発電確認 歩行運動から発生する振動で 発電素子に振動を与える方法を検討

磁歪振動発電素子 ~構成~ 発電素子の基本構成 (上)側面 (下)上面

磁歪振動発電素子 ~発電原理~ E:誘導電圧 N:コイル巻数 f:磁束 応力・磁束 周期的に変化 発電原理

磁歪振動発電素子 ~振動の加え方~ 発電するためには上下の振動が必要不可欠 ○一定の力を加えて自由振動 ⇒錘を吊るして素子を変位させた状態で  ⇒錘を吊るして素子を変位させた状態で   錘を切り離す ○強制的に振動を加える  ⇒加振器などで一定の振動励起

自由振動実験 ~実験装置~ 構成 Weight 100g 自由振動実験装置

自由振動実験 ~開放状態の電圧,変位波形~ 開放時

自由振動実験 ~整合条件~ 入力エネルギー 変換効率 F0:応力 X0:先端変位 出力エネルギー エネルギー変換効率 120Wが適切な抵抗値

自由振動実験 ~整合条件を満たす時の電圧,変位~ 電圧,変位波形 変位波形の減衰が大きくなった  ⇒電気エネルギーに変換された

歩行運動から電気エネルギーを得る検討 ~歩行運動から振動を起こす方法~ 素子に外力を与えた衝撃で振動させる 歩行運動時に発生する振動を利用 ◎錘を動かして素子に衝突させる  ⇒錘を歩行周波数2Hzで振動させて衝突 ◎磁石の吸着力を利用  ⇒歩行時の振動により磁石を移動させて   磁性体の発電素子を磁力で変形させる

まず,外力を与えることで振動が生じるのかを確かめる 錘衝突実験 ~実験装置~ まず,外力を与えることで振動が生じるのかを確かめる まず,先ほどの2パターンの検討を行う前に,外力を加えることで発電素子が振動するのかを確認するために,単に錘を衝突させる実験を行いました。実験装置はこのようになっています。発電素子を縦に固定し,その先端に側面から錘を衝突させました。錘は台に糸で固定しており,糸を垂らして素子の先端と接触するように設置してあります。また錘を落とす高さが常に45°となるように実験を行いました。錘の重さを変化させて実験しました。 錘衝突実験装置

錘衝突実験 ~電圧波形~ 信号がなし ⇒錘と素子が一体になる 0.22V 衝突時・・・高周波数(約1kHz)  ⇒錘と素子が一体になる 0.22V 錘が13g,29g,50gの時の出力電圧波形を示します。出力電圧は最大で約0.22Vとなりました。衝突時の周波数は約1kHz,自由振動の時は約300Hzとなり,1度の衝突で高周波数部と低周波数部が出力されました。エネルギーの点で比較すると低周波数部の方が高かったため,衝突時よりも自由振動時の方が重要であります。錘を重くしていくと衝突から自由振動の信号が無い部分が長くなりますが,これは錘が衝突した際に素子と一体になる時に,重くなるにつれて運動エネルギーも大きくなるため素子から離れるまでの時間が長くなるからです。また素子と錘が一体となることで,この式で表せるように質量mが大きくなるため共振周波数に変化が生じます。 電圧波形 衝突時・・・高周波数(約1kHz) 自由振動時・・・低周波数(約300Hz) エネルギーは低周波数部が高い

錘衝突実験 ~出力エネルギー,変換効率~ 最大出力エネルギー・・・1.2mJ 最大変換効率・・・0.15% 入力エネルギー 出力エネルギー g:重力加速度 h:高さ 入力エネルギー 次に出力エネルギーと変換効率を示します。こちらが出力エネルギーです。錘を重くしていくと,16g付近で最大出力エネルギー約1.2μJとなり,変換効率は最大で0.15%となりました。自由振動実験時に測定した出力エネルギーよりも小さな値となったが,素子と錘が一体となることで錘の運動エネルギーの全てが素子に伝わっていないことが原因と考えます。これより外力を与えることで発電素子を振動させて発電できることが確認できました。 出力エネルギー 変換効率 最大出力エネルギー・・・1.2mJ 最大変換効率・・・0.15%

振り子型の衝突実験 ~実験装置~ 加振器を歩行周波数2Hzで 振動させる 振り子の固有振動数を2Hz 固定具の拡大 振り子型の実験装置 次に2Hzで錘を動かすことで,より歩行運動に近い状況とします。この実験では加振器を用います。ファンクションジェネレータからの信号をバイポーラ電源で増幅した電流を加振器に流し,加振器を振らせます。発電素子を冶具によって縦型に固定し,その冶具を加振器に固定します。固定冶具の側面の板から糸を吊るしてその先に錘を取り付け,振り子とします。歩行周波数が2Hz程度であるため,加振器には2Hzの信号を加えて振動させます。ここで振り子の固有振動数を2Hzに合わせるために振り子の長さを62mmとした。加振器を振らせることで振り子も振れて素子に衝突します。 固定具の拡大 振り子型の実験装置

振り子型の衝突実験 ~錘を変化させたときの電圧波形~ 電圧波形を示します。今回も錘を衝突させているため高周波部と低周波部が出力されました。衝突時の瞬間電圧は23gで約0.23Vと1番大きな値になりました。錘を重くしていくと電圧は高くなっていきましたが,23gを超えた当たりで減少します。 電圧波形 錘を重くしていくと電圧が高くなる

振り子型の衝突実験 ~出力エネルギー,変換効率~ こちらは電圧から出力エネルギーを求めたものです。錘を重くしていくにつれて出力エネルギーも大きくなり,最大値を過ぎると減少していくという結果となりました。錘が約12gの時に最大値となり,その際の出力エネルギーは約0.18μJであり,また変換効率は最大で0.9%となりました。エネルギーと変換効率の小さくなった原因として,先ほどと同様な事が考えられる。単に錘を衝突させた時と比べて出力エネルギーは減少したが,次のような原因が考えられる。 出力エネルギー 変換効率 最大出力エネルギー・・・0.18mJ 最大変換効率・・・0.9%

振り子型の衝突実験 ~考察~ 錘と素子が同じ方向に動いているため 衝突する時に素子は衝撃を軽減している ○比較のために素子固定 加振器が振動する時には,素子と錘は常に同じ方向に動いています。そのため錘が衝突する際には,素子は錘の向かってくる方とは逆向きに動いているため衝撃を軽減してしまいます。よって今後は素子を固定した状態で衝突させる必要があります。また,振り子が安定して振れて衝突ができるような装置も必要となります。 錘と素子が同じ方向に動いているため 衝突する時に素子は衝撃を軽減している ○比較のために素子固定 ○振り子を安定させて振動

磁石の吸着力を利用した振動励起 ~振動の起こし方~ 最後に磁石の吸着力を利用して発電素子に振動を与える方法を検討します。はじめにどのように振動を起こすかを説明します。発電素子を構成しているヨークは磁性体であるため磁石に吸着されます。そのため素子を固定した状態で磁石を近づけていくと,磁石の吸着力により素子が引き付けられて磁石と素子が吸着されます。そのまま磁石を動かしていくと磁石から素子が外れてます。磁石に吸着された時と磁石から外れた時の2ヶ所において振動が発生します。 磁石を歩行運動に合わせて移動させることで,これが繰り返し起こり発電ができるのではないかと考えます。 振動の起こし方

磁石の吸着力を利用した振動励起 ~実験装置~ 1軸自動ステージアクチュエータ 実験部の拡大写真 実験装置を説明します。発電素子を縦に固定し,磁石を上下に移動させることで吸着時と外れた時の値を測定します。こちらが実験装置の写真です。また,この写真のように素子の先端部分には非磁性体であるスペーサーを接着し,その上から磁性体を取り付けました。1軸自動ステージアクチュエータを用いて磁石を移動させ,その移動速度は3mm/sとなっています。1個の磁石を移動させた時の電圧を測定し,素子先端の変位をCCDレーザ変位計で測定しました。磁石と素子先端の距離を変化させて測定しました。 スペーサー 素子先端 実験装置

磁石,素子先端の距離を変化 ~電圧,変位波形(吸着時)~ まずは,磁石に吸着された時の電圧・変位波形です。電圧波形を見ると,素子先端と磁石の距離が大きくなるにつれて電圧も高くなっています。距離が0.7mmでは最大電圧が約0.2V,0.2mmでは約0.01Vとなり20倍程度の大きさとなりました。実際の素子先端の変位はこのように変化していますが,磁石に吸着される時に重要な要素は吸着される速度や加速度だと考えられるので吸着される瞬間の変位波形を示します。磁石と素子との距離が長くなっていくと磁石に吸着される時の変位の傾きが急になっていることから,吸着されるスピードが速くなることがわかります。そのため,最大電圧が大きくなっているとわかります。 電圧波形(磁石:3×7×2mm3) 変位波形(磁石:3×7×2mm3) 吸着された瞬間 素子先端と磁石の距離を長くすると 出力電圧も高くなる

磁石,素子先端の距離を変化 ~電圧,変位波形(外れる時)~ 次は磁石を離して,磁石から素子が外れた時の電圧波形を示します。距離が0.2mmの時は出力電力がかなり小さいのに対し,0.7mmの時は約0.12Vの出力電圧があることがわかります。距離が長いほど電圧が大きく,減衰時間が大きくなっています。素子先端の変位はこのように変化していますが,磁石から外れる時に重要な要素は外れた後の自由振動部分だと考えられるので,自由振動部分の変位が収まるまでの変位波形を示します。ここから磁石に吸着されている状態から磁石が外れて素子が自由振動していることがわかります。初期変位に大きな差があるものの,0.5mmと0.7mmでは振動が収まる時間にあまり差が出ていないが,これは磁石から外れた後も,磁石が素子を吸着しようとしているため振動が抑制されることに原因があると考える。また,距離に関係なく自由振動の変位の幅が吸着されていた変位よりも小さくなっている。例えば,0.7mmの時では初期変位が0.7mmに対して,振動の幅は0.5mmとなっている。これに関しても原因は磁石によって振動が抑制されたのではないかと考える。 電圧波形(磁石:3×7×2mm3) 変位波形(磁石:3×7×2mm3) 磁石から外れた後も磁石の吸着力により 発電素子が引き寄せられる 磁力を強化⇒変位が大きくなる 吸着時以外での素子への影響を減らす 自由振動

磁石,素子先端の距離を変化 ~出力エネルギー~ 距離を変化させた時の出力エネルギーを示す。磁石の表面積の大きさを別に示す。吸着時では距離を長くしていくと2次関数的に増加しました。最大で約0.11μJとなり,ある限界まで大きくなると磁石に吸着されなくなるためエネルギーはゼロとなります。どの表面積の磁石を用いるとしてもその磁石における限界ギリギリの距離に設置することでより効率の良い発電ができるのではないかと考えられます。 外れる時では,吸着時と同様に距離が大きくなると出力エネルギーも増加します。また,最大のエネルギーは約1.1μJとなり吸着時と比較すると出力エネルギーは約10倍の大きさとなりました。吸着時と外れる時のエネルギーを合計すると最大で1.2μJとなります。また,距離が同じ時はエネルギーも同じであるはずが,異なっている原因について考えると。 値が異なる 外れる時 吸着時 どちらも2次関数的に増加 両方合わせて最大1.1mJ

磁石,素子先端の距離を変化 ~考察~ 近づけると徐々に引き寄せられて吸着するため 磁石の表面積が大きくなるほど吸着力も大きくなる 素子は完全に吸着される前からこのように磁石に吸着されて変位しています。このため距離が同じなら表面積の大きい磁石の方が吸着力が大きいため,完全に吸着されるまでに引き寄せられるのが大きくなります。よってエネルギーに差が生じています。 近づけると徐々に引き寄せられて吸着するため 磁石の表面積が大きくなるほど吸着力も大きくなる 磁石の表面積を小さく,磁力を大きくすることで より大きな発電量が得られる

磁石,素子先端の距離を変化 ~変換効率(外れる時)~ 今回は・・・    ステージの性能で速度決定 歩行周波数で磁石を振らせる 外れた時の変換効率の変化を示します。入力エネルギーは素子の変位量から応力を求めて算出ました。出力エネルギーがゼロの時は変換効率が無限大になるため,出力エネルギーが得られた部分だけをグラフにしました。出力エネルギーの波形とほぼ同じような2次関数のようになり,最大で0.95%の変換効率となりました。最大の変換効率の値で比較すると振り子型とほぼ同じであることがわかりました。 変換効率 最大値は振り子型とほぼ同じ

まとめ 歩行運動から電気エネルギーを得るための検討を行った ○錘衝突実験 ⇒外力を与えることで発電素子に振動励起を確認 ○振り子を利用  ⇒外力を与えることで発電素子に振動励起を確認 ○振り子を利用  ⇒歩行周波数2Hzで錘を振らせて衝突させた   出力エネルギー:0.18mJ,変換効率:0.9% ○磁石の吸着力を利用  ⇒吸着時・外れた時の2ヶ所で発電することを確認   出力エネルギー:1.1mJ,変換効率:0.95% 振り子,磁石の吸引力を利用することで歩行運動から 発電素子に振動を与えて電気エネルギーを得る可能性が得られた しかし,出力エネルギーと変換効率の小ささからさらなる改良が 必要である 最後にまとめます。

ご清聴ありがとうございました

構造について □バイモルフ型に比べ,ユニモルフ型の方が発電効率が大きい □使用するGalfenolが1本であることからコスト削減

平行梁構造 ○単に磁歪材料の磁化方向に応力を加えた場合と比較して 平行梁構造により大きな軸力を小さな曲げ力で発生  平行梁構造により大きな軸力を小さな曲げ力で発生 ○大きな衝撃を与えたり,摩耗していく部分がない

応力と素子先端変位の関係 応力と素子先端変位の関係

エネルギー Jと電力W W= J/s J(ジュール)=m2・kg・s-2 W(ワット)=m2・kg・s-3 ipod(充電)・・・5W 万歩計・・・10.5mW W= J/s 消費電力1Wの物を10分使用  ⇒600 J 必要

共振周波数を低下させる検討 方法 質量m,ばね定数k,減衰定数c ●素子自体を重くする ●剛性を下げて柔らかくする  ●素子自体を重くする  ●剛性を下げて柔らかくする 発電素子を機械系で表すと・・・ 質量m,ばね定数k,減衰定数c

共振周波数を低下させる検討 発電素子を2個連結したと仮定 質量が2m,ばね定数k2 共振周波数を下げることで出力電力も低下 共振周波数f0 ともに1/2 共振周波数f0 共振周波数を下げることで出力電力も低下

錘衝突の際のエネルギー減少 入力エネルギー 錘を離す前 衝突直前 錘が素子から離れる 衝突 入力エネルギーが減少 m:錘の質量 g:重力加速度 h:錘の高さ v:衝突直前の速度 M:発電素子の質量 v1:衝突後の速度

振動モードについて 基本振動 2倍振動 3倍振動

錘衝突実験 ~変位波形~

振り子型の電圧波形

磁石に吸着された瞬間 素子の中央部のみ 振動が起こっている

磁石の移動速度を変化 ~電圧,変位波形(吸着時)~ 電圧波形(3×7×2mm3) 変位波形(3×7×2mm3)

磁石の移動速度を変化 ~電圧,変位波形(外れる時)~ 電圧波形(3×7×2mm3) 変位波形(3×7×2mm3)

磁石の移動速度を変化 ~出力エネルギー~ 吸着時 外れる時 吸着時・・・0.11mJ 外れた時・・・1.0mJ

磁石の移動速度を変化 ~変換効率(外れた時)~ 外れる直前の素子の 変位から入力機械 エネルギーを算出 変換効率 速度に関わらず一定値