電力自由化における事業モデルの研究 ~電力システム改革に関わるフェールセーフについて~

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電力自由化における事業モデルの研究 ~電力システム改革に関わるフェールセーフについて~   VM202 社会組織理論演習2 村上綱実先生  電力自由化 電力自由化における事業モデルの研究 ~電力システム改革に関わるフェールセーフについて~ 野崎 哲裕 2015年12月18日

1.日本の電力市場の現状と小売自由化 2.欧米の自由化の状況 3.自由化の課題 ・中長期(10年程度)の電源確保が困難   本日の報告の内容  電力自由化 1.日本の電力市場の現状と小売自由化 2.欧米の自由化の状況 3.自由化の課題   ・中長期(10年程度)の電源確保が困難   ・電力の最終供給保障が曖昧 4.自由化後の事業モデルの提案   ・容量市場の活用で最終保障サービス提供

電力自由化 需要家(一般消費者含む) 1.日本の電力市場の現状と小売自由化 発電 日本の現電気事業 ・地域独占 ・ 発電所の建設・運転   発電事業者   ・ 発電所の建設・運転   ・ 小売事業者への売電 発電 日本の現電気事業 ・地域独占 ・発送電一貫体制 ・規制料金   送配電事業者   ・ 送配電網の建設・保守   ・ 電力系統の運用 送配電 小売全面自由化 (平成16年4月~) ・電力参入の自由化 ・発電、送配電、小売  の分離 ・自由料金   小売事業者   ・ 需要家分の電力調達   ・ 需要家に電力供給  小売 需要家(一般消費者含む)   図1.電力自由化後の体制

電力自由化 2.欧米自由化の状況 表1. 欧米自由化の状況比較 制度設計 卸電力市場 卸電力+容量市場 規制当局の入札 地域 テキサス州 米国・北東部、イギリス、フランス カリフォルニア州 容量確保義務 最大手の小売事業者に最終保障サービスを課している。 小売事業者は、自らの需要に応じた供給力の確保義務。過不足分は容量市場で取引。 規制当局が容量確保義務を管理。 ミッシングマネー問題解決方策 卸電力市場入札価格に上限を設けず、価格高騰を許容。 容量市場でミッシングマネー回収。 計画的に長期契約を提供する。 課題と運用 卸電力価格が極端に変動があり、発電事業者は、非常に大きな価格変動リスクに晒される。 大停電のような突発事態に備えられていない。 規制当局の主導計画で過剰投資を招き、電源の収益を悪化させる懸念がある。

電力自由化 2.欧米自由化の状況 可変費用 (燃料本体費、 燃料諸経費等) 固定費用 (減価償却費、 運転維持費等) 稼働中 停止期間 電源費用 稼動して得られる売電収入 容量市場により得られる発電能力(容量)収入 稼働中 停止期間 発電による売電収入 ミッシング マネー (固定費用)     図2.容量市場の基本的な考え方

課題:電力の供給義務が曖昧 電力自由化 3.自由化の課題 表2.供給義務のない電力市場システムで各事業者の行動 事業者 責務   表2.供給義務のない電力市場システムで各事業者の行動 事業者 責務 各事業者の責務や行動 小売事業者 各需要家に対する供給義務 ・自社顧客の需要に応じた供給力を確保義務 発電事業者 販売先に対する電力供給義務 ・料金規制はなく、参入・撤退は自由。 ・経済性で電源建設を判断。 ・販売先未定であれば、電源の維持・建設  に責任を負わない。 送配電事業運者 周波数調整義務 ・実需給断面にて周波数調整義務負うため、  必要な予備力を確保する必要がある。 ・自身では電源を保有しないので、発電事業者  から予備力を調達する必要がある。 課題:電力の供給義務が曖昧

電力自由化 4.自由化後の事業モデルの提案 発電事業者_A 発電事業者_B 併設 卸電力市場&相対取引 発電事業者_Z 調整能力提供 発電事業者_A_S 予備容量提供者 調整能力提供 容量市場 送配電事業者 ・区域内の周波数 調整義務 小売事業者 デマンドレスポンス   小売事業者 需要家 需要家 需要家 図2.容量市場の活用による最終保障サービスモデル

参考文献&図書 電力自由化 (1)資源エネルギー庁、2013、「小売自由化に係る詳細制度設計について」、 経済産業省電力システム改革小委員会第2回 (2)後藤美香、2014、「欧州における容量メカニズムの動向と課題」、電力中央研究所報告、Y13013 (3)横山明彦、2001、「欧米における電力自由化状況」、電学誌121巻12号 (4)八田達夫、2007、『規制改革の経済分析/電力自由化のケース』、日本経済新聞出版社