400MHz帯WPR/RASSによる 冬季沖縄の大気境界層の観測

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400MHz帯WPR/RASSによる 冬季沖縄の大気境界層の観測 佐藤晋介、永井清二、村山泰啓、井口俊夫、熊谷博(NICT)、古本淳一、津田敏隆(京大生存研)、 気象学会2009年度春季大会@つくば国際会議場 2009年5月29日

はじめに ・ NICT大宜味では400MHz帯WPR/RASS(Radio Acoustic Sounding System)による風・仮温度プロファイルの通年観測を実施中。 ・ 本研究では、周りを海に囲まれた沖縄本島における冬季の 大気境界層の特徴をWPR/RASS観測データを用いて調べる。 → 境界層逆転層の特徴と成因、日変化の有無など → 高気圧下の晴天時、および雲に覆われた季節吹き出し時 対流境界層の発達(2008年6月20日) 夏季沖縄の境界層の特徴 ・ 日中の地表面加熱により 境界層トップは若干発達 するが、日変化は小さく、 ほとんど海洋性。 ・ 境界層内部では上昇・下降 流が交互に現れ、境界層 上部には積雲対流が発生。 ・ 境界層トップと積雲トップに 弱い仮温度逆転層が存在。 (2008年度秋季大会 C101) HEIGHT (km) TIME (JST) (沖永良部島の上空のみに発生した積雲@2008/8/23)

RASSの原理と観測方法 400MHz帯WPR/RASSの観測シーケンス 真上 東 南 西 北 19台のスピーカ (主風向風上側を使用) [1] spano13 1.33us, 75-range bin (7.5km) ⇒ 高分解能の風速 [2] spano20 2.0us, 120-range bin (18km) ⇒ 高感度の風速 [3] rasso20 2.0us, 70-range bin (10.5km) ⇒ 気温(仮温度) rasss13 1.33us single-pulse, 70-range bin (2009/1/14~) ・ 各ビームの観測(平均)時間は約16秒 ・ 5ビーム(天頂・北・南・東・西)で約81秒 ・ [1][2][3]合わせて 平均243.7秒 = 4分04秒 RASS (Radio Acoustic Sounding System) 真上 東 南 西 北 音波と電波を併用して 大気温度を測定 RASSエコーを受信するためのブラッグ条件   :音波波数   :電波波数 19台のスピーカ (主風向風上側を使用) cs 音速(m/s) Kd 定数 Tv 仮温度(K) NICT大宜味大気観測施設

冬季用のRASS観測パラメータ ・ 高度1km未満のRASS観測が困難。 ・ 気温が下がり、RASSエコーが 乱流エコーと重なり解析困難。 ↓ シングルパルス & 観測パラメータ最適化 (2009年1月14日~) ★最低高度0.5 kmまで観測できるようになった ★-12℃~+30℃まで折返しなしで観測可能 ★速度分解能が 0.106 m/s(0.18℃)に向上 SPANO20 10:40JST, 14JAN2009 SINGLE13 10:48JST, 14JAN2009 HEIGHT (km) Doppler Vel (m/s) Doppler Vel (m/s) -11 -6 -1 4 9 14 19 24 29 ℃

解析事例 2009年1月24日 季節風吹き出し (曇り、降水なし) 2009年2月10日 移動性高気圧 (晴れ)

時間・高度断面(1月24日) 季節風吹き出し m/s dB m/s HEIGHT (km) C TIME (JST) 

時間・高度断面(2月10日) 移動性高気圧 m/s dB m/s HEIGHT (km) C TIME (JST) 

プロファイルの比較(2月10日) 仮温度(℃) 乱流強度(dB) 鉛直速度(m/s) RASS snapshot 10JST 12JST 11:04 12JST 12:58 14JST 14:48 16JST 16:26 18JST 全ての プロファイル は、7観測 (28分)平均

2つの事例の比較 2009年1月24日 (季節風吹き出し) 仮温位(θv) 2009年2月10日 (移動性高気圧) 仮温位(θv ) HEIGHT (km) 仮温位(θv) TIME (JST)  2009年2月10日 (移動性高気圧) HEIGHT (km) 仮温位(θv ) TIME (JST) 

まとめ 400MHz帯WPR/RASS観測データを用いて、沖縄本島における冬季の大気境界層の特徴について、季節風吹き出し時(1月 24日)と移動性高気圧(2月10日)の2事例について調べた。 ● 日射による地表面加熱による大気境界層高度の日変化は見られず、 海洋性の特徴を示していると考えられる。 ● 気温の低い季節風吹き出し時(曇天)の方が、高気圧張出し時(晴天)よりも大気境界層は発達しており(境界層トップが高い)、境界層内では上昇・下降流や仮温度の変動が見られた。 ● 仮温度プロファイルの極小値(逆転層下面)と乱流強度の極大値 (境界層トップ)の高度は常に一致していた。 ● 仮温度プロファイルの極大値(逆転層上面)は常にほぼ一定温度 であり、逆転層高度が下がり仮温度の極小値が上がると、逆転層 の強さ(温度差)が弱くなる様子が観測された。

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地上気象の時間変化(2月10日)

地上気象の時間変化(1月24日)

プロファイルの比較(1月24日) 仮温度(℃) 2009年1月24日 季節風吹き出し 乱流強度(dB) 鉛直速度(m/s) 10JST 全ての プロファイル は、7観測 (28分)平均

仮温度プロファイルの時間変化

温度プロファイルの検証 2006/11/08 高度0.5-3.0kmで逆転層構造を含めてラジオゾンデ観測値とよく一致 実線:RASS  (一時間平均値) 破線:ラジオゾンデ RASSとゾンデの差 r.m.s誤差は0.5K以下 高度0.5-3.0kmで逆転層構造を含めてラジオゾンデ観測値とよく一致

はじめに ・ 海洋に周りを囲まれた沖縄本島における晴天時の大気境界層を調べる。 ・ NICT大宜味の400MHz帯WPR/RASS(Radio Acoustic Sounding System)に よる仮温度プロファイルの連続観測 データを用いた夏季と冬季の事例解析 → 大陸上(米国、中国など)のPBLと海洋性PBLの違いは? → 太陽放射による地表面加熱で発生する熱対流が卓越する対流境界層に端を発する積雲対流の発生について? Flatland Boundary Layer Ex in Illinois. Angevine, et al: 1998, BAMS 419-431 沖永良部島@2008/8/23,13:15

雲画像、地上気象(6月20日) MODIS(Terra) RcRefl 1136JST 20 JUNE 2008 沖縄本島 RASS解析時間 気圧 日射 湿度 気温 沖縄本島 最大瞬間風速 平均風速 風向 水平風速プロファイル(WPR) HEIGHT (km) 風速=1~2 m/s RASS解析時間

対流境界層の発達(6月20日) (a) 乱流エコー強度(水蒸気の鉛直勾配に強く依存) ⇒ 対流境界層のトップ dB m/s HEIGHT (km) ℃ TIME (JST) (a) 乱流エコー強度(水蒸気の鉛直勾配に強く依存) ⇒ 対流境界層のトップ (b) ドップラー速度 ⇒ 鉛直流(上昇流・下降流) (c) 速度幅 ⇒ 観測体積内(~150m@2.5km高度)の速度のばらつき ⇒ 乱流 (d) 仮温度(最大5ビームの平均) 真上 ビーム (と言われている)

仮温度プロファイル(6月20日) 仮温度の鉛直勾配 (温度減率) ℃ HEIGHT (km) ℃/ km 仮温度の鉛直勾配 (温度減率) HEIGHT (km) HEIGHT (km) Virtual Temp (C) Virtual Temp (C) ・ 高度3 km付近の逆転層は14時には高度4 kmまで上昇 ← 積雲の発生・消滅? ・ 高度1.5 km前後の逆転層高度は、(対流境界層は発達するが)あまり変化しない

RASS リアルタイムデータ処理 今後の方針 (3月3日の議論) ● RASS仮温度データを気象庁に提供するには、1時間遅れ以内まで短縮する必要がある(川畑)。 時間遅れのほとんどが転送に関わる部分であることから、京大プログラムをNICT内部のPCに移植する (古本・佐藤)。 ● 20分平均データと4分平均データの2つのバージョンのIDLプログラムを走らせる (古本)。 ● RASSデータは沖縄のデータ公開システム(亜熱帯NDS)を使って公開する 方針 (佐藤)。 ● RASSデータ公開に先立って、2007年5-10月の連続観測データと那覇ゾンデ観測データの比較検証を行う。気象学会明けの数値予報課ー気象研のセミナーで、川畑さんがRASSのインパクトについて発表できるようにそれまでに比較検証を行う (古本)。 ● 近距離でのラジオゾンデとの比較のため大宜味での気球観測を検討する。 時期は梅雨明け後の夏期(7月)が候補。古本さん科研費の当落が4月に 判明。NICT側の出張費は通常予算で対応? 京大学生の参加は困難なので、琉球大の遊馬さんに聞いてみる。(古本・佐藤)