音楽CD販売店の購入履歴と 顧客情報の分析及び 新しいCRMの提案 NE14-0023 平野 栄士
目的 近年音楽CDの売上が減少傾向にあることから改善が必要。 顧客の売上データから 新たな知見や法則を探る。 その結果を元に新しいCRMを提案する。
データ概要 使用データ 某音楽CD販売店 都内10店舗の売上データ データ期間 2003年9月1日~2005年8月31日(2年間) 利用顧客数 321,569人 (男 175,755人 女 145,687人)
音楽CD販売の現状 全体 1期 2期 3期 4期 推測 顧客数 99704 123541 133818 132846 金額/人 6454.22 5614.14 5629.5 5108.07 枚数/人 2.846 2.563 2.463 2.432 顧客増加率 1.239 1.083 0.993 新規顧客数 77751 75539 71733 68990 離脱者数 42800 64243 84817 105970 新規/離脱 1.817 1.176 0.846 0.651 4期継続顧客数:15893人 全顧客の約5%
特異な音楽CDマーケット 売上ジャンルに大きな偏りがあり、J-POP、 ロック&ポップスだけで全体の75%を占める。
売上例
上位3デシルだけで全体の 売上の73%を占めている。 デシル分析 全顧客を購入金額の高い順に10等分してその構成比を算出する分析方法 以下のグラフは2年間のもの 上位3デシルだけで全体の 売上の73%を占めている。 ほぼ1枚しか買っていない
デシル分析 2枚以上購入 1枚しか買っていない顧客が13万6千人!! 全体の42.3%の顧客が1枚しか買っていない。 デシル分析 2枚以上購入 1枚しか買っていない顧客が13万6千人!! 全体の42.3%の顧客が1枚しか買っていない。 1枚のみ購入した顧客の売上は約3億円で11%
デシルごとの購買状況について 2年間で2枚以上購入している顧客を中心とする。 デシル1~3をデシル上位 デシル4~6をデシル中位 デシル7~10をデシル下位とする。 各デシルごとにジャンル別に因子分析を行う。 主因子法・バリマックス回転 因子数5・固有値1以上の因子を採用。
デシル上位 デシル上位者の購買 ジャンルについての 因子分析結果 クラシック 洋画サントラ イージーリスニング バラエティ 第一因子のマッタリ・癒し 第二因子の人気どころ などの購買率が高い。 ()内は 固有値 大ジャンル 因子得点 第一因子 (10.3378) クラシック 0.98864 洋画サントラ 0.98467 イージーリスニング 0.98375 バラエティ 0.92695 第二因子 (5.2987) J-POP 0.95453 ヒップホップ/ラップ 0.93802 第三因子 (1.3485) ハードロック/メタル 0.77879 ブルース 0.67122
デシル中位 デシル中位者の購買 ジャンルについての 因子分析結果 多ジャンル購買者が 少なくなるため、 固有値も低め。 売上の最も多い J-POPの購買率が 低くなっている。
デシル下位 デシル下位者の購買 ジャンルについての 因子分析結果 ヒップホップ/ラップ はデシルに関らず 広く購買されている
大ジャンルの細分化 大ジャンルは更に中ジャンルへ細分化される。 このことから、大ジャンルという括りは大雑把 各大ジャンルに中ジャンルの偏りが どの程度かを知る必要がある。 即ち各大ジャンルにおける 中ジャンルの占有度を調べる必要がある。
ハーフィンダール指数(HHI) 大ジャンルごとに中ジャンルの占有度を計る指標としてHHIを用いる。 HHIとは各ジャンルのシェアの2乗和で表される。各中ジャンルの売上個数をXiで表すと で表すことができる。
大ジャンルごとのHHI 大ジャンル HHI 1 J-POP 0.697814 14 邦画サントラ 0.417637 2 ブルース 0.577793 15 洋画サントラ 0.855219 3 ロック&ポップス 0.536460 16 ブラック/ソウル 0.770452 4 クラブ/ダンス 0.493987 17 ワールド 0.213861 5 ハードロック/メタル 0.936441 18 ヒップホップ/ラップ 0.736543 7 演歌/民謡 0.908861 19 イージーリスニング 0.984930 8 童謡 0.994452 20 クラシック 0.226362 9 邦楽ジャズ 0.940758 21 レゲエ 0.499580 10 洋楽ジャズ 0.259145 22 バラエティ 0.992018 11 フュージョン 0.625392 23 邦楽オムニバス 12 キッズ 0.928397 24 洋楽オムニバス 13 アニメ/ゲーム 0.380529 25 その他 0.95934
コレスポンデンス分析 各デシルとジャンルの類似度の 店舗間の差はあるのだろうか? 店舗ごとに各デシルの購買ジャンルを 2次限空間に可視化する。
デシルの変化 これまでの結果からデシル層によって 購買ジャンルに差があることが分かった。 どのようなジャンルを購入する顧客のデシルが 上昇または下降するのだろうか? 2年分のデータを半分に分け、 1年間ごとのデシルの変化を同様に可視化した。
デシル変化の詳細 2年間のデータを4分割する。 1顧客につき3度デシルの上昇(無変化含む) 下降の変化が見られる。 3回デシルが上昇 2回デシルが上昇(1回下降) 1回デシルが上昇(2回下降) 0回デシルが上昇(3回下降) という4通りが考えられる。
デシル3回上昇・下降 3回上昇・下降する顧客は共にデシル上位層 明らかに購入ジャンルに差が生じている
デシル2回,1回上昇 デシルが下がると共に イージーリスニングも下がる。 イージーリスニングはデシル上位層・上昇に重要な役割を果たす?!
結果のまとめ1 デシル層によって購入ジャンルの傾向は異なる。 デシルアップ効果の可能性の高いジャンルは クラシック、洋画サントラ、 イージーリスニング、バラエティ の4つである。 これらのジャンルに加えて人気の高いJ-POPなどのジャンルを購入させる必要がある。 逆にデシルダウンには洋楽ジャズやレゲエ ブラック/ソウルなどの可能性も考えられる。
考えられるCRM デシルアップの可能性の高いジャンルごとに ポイントの重み付けを変える。 (曜日でのポイントよりも効果が期待できる) 商品配列の見直し 50音順では目当ての音楽しか買えない 顧客の選好ジャンルやデシルに応じたDM (継続・デシル上位の優良顧客対象)
今後の課題 HHIを考慮した大ジャンルの因子分析 具体的なジャンルの商品配列や ポイントの重みの決定(アーティスト等も考慮) 仮説の検証 (1~3期分を独立変数、4期目を従属変数) デシルアップの可能性のあるジャンル購入後の購入パターンの変化など
終わり ご清聴ありがとうございました。 NE14-0023D 平野 栄士