●生態系における窒素循環と土壌環境 ・生態系における炭素・窒素の蓄積と循環 (閉鎖的循環と開放系をもつ循環) ・土壌への窒素供給源

Slides:



Advertisements
Similar presentations
気候 - 海・陸炭素循環結合モデルを用い た 地球温暖化実験の結果 吉川 知里. 気候 - 海・陸炭素循環 結合モデル.
Advertisements

運動の重点推進事項(期間:10年間) (1)普及啓発 (2)資源循環システムづくり (3)土壌診断の実施 (4)環境にやさしい農業技術の実証・普及 (5)「有機の郷づくり地域」の拡大 1.
地球環境史(地球科学系) 現代地球科学(物理系学科)
土壌系の窒素循環からみた有機性廃棄物リサイクルの問題点と課題
メソポタミアのウル、バビロン、ラガシュ等で下水道築造 BC3000 モヘンジョ・ダロ、カーリーバンガン等の都市に下水溝、水洗便所築造
連作障害について 発表者:原理紗(のが).
6//24 地球環境と生物のイベント:先カンブリア時代 7/15 地球環境と生物のイベント:古生代
のうりんむら畑 2013年 春野菜計画! 発表者:のが.
環境科学A(髙島) 環境科学Aでは論述式のテストを学期末(試験期間内)に行います。
水処理工学(1) 水中の物質変化、水の汚れと富栄養化
嫌気性生物ろ床における排水からの窒素除去機構
土壌の酸性化: 「強度因子である土壌pHの低下、あるいは容量因子である酸中和量(Acid Neutralization Capacity)あるいは緩衝能の減少」として定義される.
水の話 水分子の特徴 小さい分子なのに常温で液体 水(液体)から氷(固体)になると 体積が大きくなる。 電気陰性度が大きい原子は 分極
気候-陸域炭素循環結合モデルの開発 加藤 知道 地球環境フロンティア研究センター 22nd Sep 2005.
脂肪の消化吸収 【3】グループ   ~
 自然環境農法の定義とは.
資源の空間的不均一性がプランクトン群集の共存に与える影響: 格子モデルシミュレーションによる予測
地球温暖化.
施用当作の窒素肥効を 考慮した家畜ふん堆肥の利用
人工ゼオライトによる 作物の生育効果に関する研究
栄養と栄養素 三大栄養素 炭水化物(糖質・繊維) 脂質 たんぱく質 プラス五大栄養素 ビタミン 無機質.
10 水環境(5)富栄養化 水の華(Water bloom) 赤潮 アメリカ カリフォルニア州 アオコ 神奈川 津久井湖.
Reseaerching Salix Subfragilis in Miharu dam 目的:イタチハギが窒素循環に及ぼす影響の把握
土壌管理学講義 「酸性降下物が土壌系におよぼす影響」.
緩衝作用.
家畜ふん堆肥中の窒素の効き方を考慮した化学肥料との協調利用 普及への取り組み
8章 食と健康 今日のポイント 1.食べるとは 何のために食べるのか? 食べたものはどうなるのか? 2.消化と吸収 3.代謝の基本経路
3)たんぱく質中に存在するアミノ酸のほとんどが(L-α-アミノ酸)である。
放射能低減実験の報告 高 橋 剛 (岩手) 低減メカニズムに迫る 実験の動機 ● 放射能低減を体験し、実証データを公開
第15章 表面にエネルギーを与える 生命と惑星の共進化による惑星燃料電池の形成
たんぱく質 (2)-イ-aーF.
社会システム論 第5回 生態系(エコシステム).
化学肥料(肥効調節型肥料)の窒素の効き方のパターン
下流汚染蓄積型湖沼の 窒素汚染問題 茨城大学農学部 黒田久雄.
酸化と還元.
9 水環境(4)水質汚濁指標 環境基本法(水質汚濁防止法) ・人の健康の保護に関する環境基準 (健康26項目) 
9 水環境(4)水質汚濁指標 ・人の健康の保護に関する環境基準 (健康26項目) 環境基本法 地下水を含む全公共用水域について適用
第8回(山本晴彦) 光学的計測法による植物の生育診断
光環境と植物 第10回 光量と植物の生長について
家畜ふん堆肥中の窒素の効き方を考慮した化学肥料との協調利用 普及への取り組み
バイオガスプラント 新時代を切り開く・・・.
○清家伸康・大谷 卓 (農業環境技術研究所)
灌漑強度の違いに着目した 被覆灌漑の有効性の検討
土壌水分が大豆の生育に及ぼす影響 生産環境整備学講座 灌漑排水学研究室 林 春奈.
家畜ふん堆肥の肥料成分量 窒素 リン酸 カリ 家畜ふん堆肥の肥料成分量 畜産環境整備機構「堆肥の品質実態調査報告書」(2005)より作成
生物情報計測学 第7回 植物の生育・水分状態の計測.
酸欠状態におかれた森林土壌の強熱減量および撥水性 ○ 小渕敦子・溝口勝・西村拓・井本博美・宮崎毅 東京大学大学院農学生命科学研究科
高度生物処理法(BBS)実証実験結果報告書
衛星生態学創生拠点 生態プロセス研究グループ 村岡裕由 (岐阜大学・流域圏科学研究センター).
現在の環境問題の特色 ● 環境問題の第一の波: 1960年代の公害 (水俣病、イタイイタイ病、四日市・川崎喘息など)
カルビンーベンソン回路 CO23分子が回路を一回りすると 1分子のC3ができ、9分子のATPと 6分子の(NADH+H+)消費される.
植物と大気汚染 ー研究の概略ー 1)大気汚染のバイオモニタ  リングへの利用 2)大気汚染物質の分解除去.
牛ふん堆肥、豚ぷん堆肥の無機・有機成分と窒素肥効 鶏ふん堆肥(副資材なし)の無機・有機成分、分析方法と窒素肥効
三春ダムにおけるヤナギ類の生態調査プロジェクト Reseaerching Salix Subfragilis in Miharu dam
第8回 エコシステムにおける物質循環 水の循環 炭素循環・窒素循環 物質循環と水汚染.
森林破壊と地球温暖化.
環境・エネルギー工学 アウトライン 序 章 環境・エネルギー問題と工学の役割 第1章 バイオ技術を使った環境技術
生態地球圏システム劇変のメカニズム 将来予測と劇変の回避
牛ふん堆肥、豚ぷん堆肥の無機・有機成分と窒素肥効 鶏ふん堆肥(副資材なし)の無機・有機成分、分析方法と窒素肥効
硝酸態 窒素 AD可溶有機物量が 250mg/g・乾物未満の豚ぷん堆肥での測定例
海洋研究開発機構 地球環境フロンティア研究センター 河宮未知生 吉川知里 加藤知道
福栄肥料は、 全国の農家様から送られてくる圃場の「土」を 化学分析しております。
物質とエネルギーの変換 代謝 生物体を中心とした物質の変化      物質の合成、物質の分解 同化  複雑な物質を合成する反応 異化  物質を分解する反応 
風速 風向 気温・湿度 クローズドパス システムBOX 32m 積雪深 純放射量 m 地温 土壌水分量 地中 熱流量 cm 5cm ×4地点 水蒸気密度 吸気口 オープンパス 二酸化炭素濃度 三次元風速.
特論B 細胞の生物学 第6回 エネルギーはどこから 和田 勝 東京医科歯科大学教養部.
CO2 enrichment increases carbon
堆肥からの窒素供給量(kg/t・乾物) 緑: 牛ふん堆肥 青: 豚ぷん堆肥 紫: 鶏ふん堆肥
カッセーチップ堆肥化工法 施工事例 一般社団法人循環型社会研究協会.
The Plant Cell, vol. 14, , February 2002
沿道植物中のEROD活性による 大気汚染のバイオモニタリング ー研究の概略ー.
Presentation transcript:

●生態系における窒素循環と土壌環境 ・生態系における炭素・窒素の蓄積と循環 (閉鎖的循環と開放系をもつ循環) ・土壌への窒素供給源 (生物窒素固定の役割) ・炭素率(C/N比) (窒素飢餓と施肥の関係) ・有機態窒素の無機化・無機態窒素の有機化 (窒素動態に関与する窒素の形態変化) ・人為的撹乱、窒素収支と地域環境問題

Reservoir/ Pool Type Metric Tons 地球上の窒素の存在 Reservoir/ Pool Type Metric Tons % of Total Biosphere(生物圏) 2.8 x 1011 0.0002 Hydrosphere(水圏) 2.3 x 1013 0.014 Atmosphere(気圏) 3.86 x 1015 2.3 Geosphere(地圏) 1.636 x 1017 97.7 Crust(地殻) 0.13 - 1.4 x 1016 0.78-8.4 Soils and Sediments (土壌と堆積物) 0.35 - 4.0 x 1015 0.21-2.4 Mantle and Core (マントルと核) 1.6 x 1017 95.6

植物体Living Biomass Dead Biomass Litterfall Root respiration 土壌 Soil 自然生態系における炭素の循環 光合成Photosynthesis 呼吸Respiration 植物体Living Biomass 土壌呼吸 林床有機物 Dead Biomass 枯死脱落 Litterfall 分解・土壌動物の呼吸 Decomposition 根の呼吸 Root respiration 土壌 Soil

植物体Living Biomass Inorganic Nitrogen 土壌 Soil 自然生態系における窒素の循環 降雨 脱窒 DeNitrification 窒素固定 Nitrogen Fixation 植物体Living Biomass 枯死脱落 Leaflitter 有機態窒素 Organic Nitrogen 無機化 Mineralization 有機化 Immobilization 無機態窒素 Inorganic Nitrogen 吸収 Uptake 土壌 Soil 溶脱 Leaching

植物体Living Biomass 有機物層 500~800 土壌 2000~3000 Inorganic Nitrogen 降雨(8~10) 脱窒(?) 窒素固定(3~4) 植物体Living Biomass 枯死脱落 100~150 有機態窒素 Organic Nitrogen 有機物層 500~800 無機化 Mineralization 有機化 Immobilization 土壌 2000~3000 無機態窒素 Inorganic Nitrogen 吸収 Uptake 溶脱(10~15) 比較的若い二次林(半田山)での測定値 (単位はkgN/ha/Yr)

● 炭素循環と窒素循環の違い   炭素=開放的な循環   窒素=比較的閉鎖的な循環 ●窒素循環の閉鎖性・・・・インプットが限定的 (生態系の維持・発達には無駄のない効率的循環システムが必須) ● ひとたび失われると回復が困難 ・生態系の回復にはインプット経路の確保が重要 ・荒廃化を防ぐには、アウトプット経路の人為的コントロールが必須。

土壌生態系への窒素給源(インプット源) 非共生的 窒素固定菌 有機栄養 微生物 好気性微生物 アゾトバクターなど 嫌気性微生物 クロストリジウムなど 無機栄養 らん藻の一部 (酸素発生) 光合成細菌の一部 メタン菌の一部 硫酸還元菌の一部 共生的 根粒菌、放線菌の一部(フランキア)、カビの一部 らん藻の一部(アナバエナ)

窒素固定能を持つ微生物の属は100以上ある。 そのなかで共生的窒素固定能力のある菌がみられるものは、 窒素固定能を持つ微生物の属は100以上ある。 そのなかで共生的窒素固定能力のある菌がみられるものは、 ●真正細菌(バクテリア)では根粒菌(リゾビウムRhizobium ) ●放線菌(アクチノミセテス)ではフランキア(Frankia)。 ●らん藻(シアノバクテリア)で緑色植物と共生するのは、らん藻(ノストック、Nostoc) に限られている。 Aeschynomemeの茎粒(左) ダイズの根と根粒(右): ラン藻

窒素固定活性の測定 1) 同位体分別法。(δ15N) 2) アセチレン還元法 1) 同位体分別法。(δ15N)  窒素が微生物や一部の植物によって、窒素化合物に変化するとき(窒素固定)や、アミノ酸、蛋白質などを合成、あるいはそれを分解するときに、同位体の比率が変わります。これを同位体分別という。 2) アセチレン還元法  ニトロゲナーゼがアセンチレンをエチレンに還元する特性を利用して、気相10%をアセチレンに置換した後、一定時間後のエチレン生成量から窒素固定量を推定する方法 3) 重窒素トレーサー法 自然の生態系に15Nを含む肥料を与え、d15Nの自然存在比から窒素固定を推定する方法 4) 栽培試験

同一圃場に窒素固定作物と非窒素固定作物を栽培し、植物体中の重窒素自然存在比(δ15N値)を測定することにより、次式より窒素固定寄与率を算出。

●カンショは従来より窒素施肥量の少ない作物として知られていた。 ●近年、重窒素自然存在比の測定によりカンショにおける空中窒素固定が示唆。 ●表面殺菌したカンショの茎から、無窒素培地を用いて、11株の内生細菌を分離、この中で2株は窒素固定活性(アセチレン還元活性)を有していた。 ●カンショ茎中の窒素固定細菌分布は、先端近くで生息頻度が低く、地際部方向に向かって不連続に分布することが判明。 半流動改変レニー培地にパントエア アグロメランスのみ(単独培養)、2)パントエア アグロメランス+エンテロバクター アズブリエ(共存培養)をそれぞれ一定菌量接種して36時間培養後、ARA活性を調べた 内生窒素固定細菌パントエア アグロメランスと非窒素固定性内生細菌エンテロバクター アズブリエの共存培養による窒素固定活性の向上効果

土壌生態系からの窒素損失(アウトプット経路)と人為的撹乱 揮発損失・・・加熱、燃焼による損失、脱窒 流亡による損失・・・・・・・斜面方向の水の移動(地表流) 溶脱による損失・・・・・・・水の鉛直方向の移動 農作物の収穫による損失 その他

土壌の加熱温度・時間が窒素の揮発に及ぼす影響 (玉野地方の花崗岩風化土での実験結果)

土壌窒素 全窒素 加水分解性窒素 非加水分解性窒素 有機態窒素 無機態窒素 アミド態窒素 アミノ糖態窒素 アミノ酸態窒素 未同定窒素 生物体のたんぱく質として存在 アミノ糖やアミノ酸の加水分解によって生成 微生物細胞壁の主成分中に存在 アンモニア態窒素 硝酸態窒素

Q:粗放な農業=焼畑が古くから盛んに行われてきたか?

窒素飢餓状態(Nitrogen starvation) 植物 無機化 Vi 有機態窒素 無機態窒素 吸収 有機化 Vm 広葉樹二次林表土における無機化・有機化速度(μgN・g-1・day-1) 無機化 (Vm) 有機化 (Vi) 見かけの無機化(Vm-Vi) L-層(上部) 8.21 10.18    -1.93 L-層(下部) 34.56 50.60    -16.04 F-層 178.68 147.00    31.68 HA層 67.07 43.80    23.28 鉱質土壌 26.48 20.12     6.37

・土壌中での有機物分解にともなう窒素の無機化 有機物の施用効果 ・土壌中での有機物分解にともなう窒素の無機化   炭素率(C/N)で決まる。 ・施用有機物の   炭素率(C/N)が低い=分解が早い=肥料効果が高い。(即効性)   炭素率(C/N)が高い=分解が遅い=緩やかな効果。(遅効性) ・古くから慣行的に行われてきた「土づくり」       ・・・落葉や稲わら施用による穏かな効果 ・最近の農業における有機質肥料     ・・・・炭素率(C/N)の低い畜産廃棄物などに         水分調整資材として籾ガラなどを添加 即効性 環境汚染

炭素率の低い乾燥豚糞を年間施用した圃場で環境に及ぼす影響を調べた事例 ・地下水面のすぐ上(深さ180cm)の硝酸態窒素濃度   有機堆肥20Mg区=67.3mg/kg   乾燥豚糞50Mg区=167.1mg/kg   乾燥豚糞100Mg区=220.7mg/kg 炭素率の低い即効性ある有機質肥料を連用         =地下水汚染(投棄的な施用)

最終試験 各1問 20点×5=100点満点 土壌の基本的な性質 土壌と保水力、透水係数と「緑のダム」効果 酸性降下物が土壌に及ぼす影響 灌漑と塩類集積およびアルカリ化土壌 炭素率(C/N)と施肥効率の関係