シンチレーション・カウンター 実験Ⅲ素粒子テーマ2回目 シンチレーションカウンターの理解 荷電粒子と物質の相互作用 プラスチックシンチレータ

Slides:



Advertisements
Similar presentations
2015 年度課題研究 P6 林 秀輝 大西 里実. 到来したガンマ線が大気と相互作用したときに生成される 空気シャワーからのチェレンコフ光を観測することで、ガ ンマ線の到来方向をみる 現在は光検出器として光電子増倍管が使われている → 次世代の TeV ガンマ線望遠鏡として MPPC が検討されてい.
Advertisements

宇宙線ミューオンの測定 久野研究室 4回生 卒業研究 荒木 慎也 宮本 紀之 室井 章. 目次 実験内容 測定方法・結果 ・検出装置とセットアップ 解析 ・バックグラウンド除去 ・検出効率 ・立体角 ・文献 値との比較 まとめ.
CsIシンチレータと マルチアノードPMTを用いた 硬X線撮像装置の性能測定
生体分子解析学 2017/3/2 2017/3/2 機器分析 分光学 X線結晶構造解析 質量分析 熱分析 その他機器分析.
相対論的重イオン衝突実験 PHENIXにおける Aerogel Cherenkov Counterの シミュレーションによる評価
平成15年度課題研究P6 希ガスシンチレータ班 発表者:穴田貴康 西村広展 湯浅翠         2004年3月11日.
μ→e+γとμ→e+γ+νe+νμ を探索する
電磁カロリーメーターを使って中性パイ中間子を見よう!
実習B. ガンマ線を測定してみよう 原子核・ハドロン研究室 永江 知文 新山 雅之 足立 智.
佐藤構二、武内勇司 TA 2名 素粒子実験研究室 連絡先
W e l c o m ! いい天気♪ W e l c o m ! 腹減った・・・ 暑い~ 夏だね Hey~!! 暇だ。 急げ~!!
素粒子実験に用いるガス検出器の原理と動作
単色X線発生装置の製作 ~X線検出器の試験を目標にして~
Determination of the number of light neutrino species
山崎祐司(神戸大) 粒子の物質中でのふるまい.
放射線(エックス線、γ線)とは? 高エネルギー加速器研究機構 平山 英夫.
CsIシンチレータとMAPMT ヘッドアンプユニットを用いた 動作実験
実験III 素粒子テーマ 素粒子物理学とは 物質の究極の構造(素粒子), 素粒子間に働く力(相互作用) 時空の構造,対称性
天体核反応測定のための イオンチェンバー開発
2次元蛍光放射線測定器の開発 宇宙粒子研究室 氏名 美野 翔太.
有機EL材料を用いた 新しいシンチレーターの開発
埼玉大学大学院理工学研究科 物理機能系専攻 物理学コース 06MP111 吉竹 利織
原子核物理学 第4講 原子核の液滴模型.
PHENIX実験における 陽子・陽子衝突トリガーカウンターのための Photon Conversion Rejector の設計
~ワイヤーチェンバーを手作りして素粒子・原子核実験を体験~
黒体輻射とプランクの輻射式 1. プランクの輻射式  2. エネルギー量子 プランクの定数(作用量子)h 3. 光量子 4. 固体の比熱.
For the PHENIX collaboration
鉄核媒質中の閾値近傍における 中性π中間子生成実験
2008年度 課題研究P1 京都大学理学部 物理科学系 4回生 岡村 和弥 高橋 将太
トリガー用プラスチックシンチレータ、観測用シンチレータ、光学系、IITとCCDカメラからなる装置である。(図1) プラスチックシンチレータ
新型光検出器MPPCと その読み出しエレクトロニクスの開発
 宇宙線断層撮像装置2  理工学部 物理学科   宇宙粒子研究室               大道玄礼.
高分解能位置感応型 ファイバーシンチレーション検出器の開発
目的 イオントラップの特徴 イオントラップの改善と改良 イオンビームの蓄積とトラップ性能の評価
Azimuthal distribution (方位角分布)
前回の講義で水素原子からのスペクトルは飛び飛びの「線スペクトル」
原子核物理学 第2講 原子核の電荷密度分布.
八角シンチレータ偏光計の性能 性能実験 ~八角シンチレータとは~ 結果 第3回宇宙科学シンポ
高エネルギー陽子ビームのための高時間分解能 チェレンコフビームカウンターの開発
大光量Long Pulseに対するMPPCの性能評価
K核に関連した動機による K中間子ヘリウム原子X線分光実験の現状 理化学研究所 板橋 健太 (KEK-PS E570 実験グループ)
宇宙線ミューオンによる チェレンコフ輻射の検出
2.4 Continuum transitions Inelastic processes
B物理ゼミ Particle Detectors:Claus Grupen, Boris Shwartz (Particle id
APDを用いた放射線計測 P6  γ班 池田英樹 中村祥吾.
偏光X線の発生過程と その検出法 2004年7月28日 コロキウム 小野健一.
NaIシンチレーターを使った 放射線検出システムの開発
最近の宇宙マイクロ波背景輻射の観測 銀河の回転曲線 回転曲線の測定値 NASAが打ち上げたWMAP衛星が観測
Lamb Shiftの観測 石山、土橋、林野、吉田.
教育用放射線検出器の開発 立教大学物理学科4年 指導教員 07CB024F 川茂唯順 竹谷篤 07CB049K 高橋達矢 村田次郎
プラスチックシンチレータを用いた 原子炉ニュートリノ検出器の開発 2010/12/04 長岡技術科学大学 第39回日本物理学会新潟支部例会
報告080710 東大 ICEPP 森研 M2 金子大輔.
大学院ガイダンス(柏キャンパス) 2011年6月11日 岸本 康宏
Geant4による細分化電磁 カロリメータのシミュレーション
CDF実験TOF測定器に用いられる 光電子増倍管の長期耐久性の研究
pixel 読み出し型 μ-PIC による X線偏光検出器の開発
原子核物理学 第6講 原子核の殻構造.
宮本 八太郎(日大、理化学研究所) 三原 建弘、桜井 郁也、小浜 光洋(理化学研究所)
紫外線LEDの特性測定 理工学部 物理学科 宇宙粒子研究室   澤田 晃徳.
電子ビームラインの構築と APDを用いた電子計測試験
高地におけるγ線エアシャワー地上観測のシミュレーション
FADCによるCsl信号の解析と μ粒子の寿命測定
荷電粒子の物質中での エネルギー損失と飛程 内容: 柴田研究室 05_05556 岡村 勇介 Bethe-Blochの式と飛程
5×5×5㎝3純ヨウ化セシウムシンチレーションカウンターの基礎特性に関する研究
 宇宙線断層撮像装置2  理工学部 物理学科   宇宙粒子研究室               大道玄礼.
ALICE実験のためのPWOカロリメータの 宇宙線を用いたエネルギー較正
CsI結晶を用いた検出器の基礎特性に関する研究
高計数率ビームテストにおける ビーム構造の解析
荷電粒子の物質中でのエネルギー損失と飛程
シンチレーションファイバーを 用いた宇宙線の観測
Presentation transcript:

シンチレーション・カウンター 実験Ⅲ素粒子テーマ2回目 シンチレーションカウンターの理解 荷電粒子と物質の相互作用 プラスチックシンチレータ 担当教員: 佐藤 TA: 先崎、森内 連絡先: 自然学系棟D208 (x4270) シンチレーション・カウンター 実験Ⅲ素粒子テーマ2回目 シンチレーションカウンターの理解 荷電粒子と物質の相互作用 プラスチックシンチレータ 光電子増倍管(PMT) HVカーブの測定 検出効率の統計誤差 ライトリークテスト

ディスクリミネータの出力パルス幅 前回、ディスクリミネータのアウトプット・パルス幅を15 nsに調整した。 パルス幅を再確認し、必要なら直すこと。 テキストには15nsと書いてあるが、これは下図bのことではないので注意。 パルスが短すぎると信号が正しく処理されないこともある(毎年多いセットアップ・ミス)。  15 ns a. b. 15 ns

“突き抜け”μ粒子に対しては,Startはかからない. 寿命測定のセットアップ 高エネルギー陽子 宇宙 大気 p π- π+ “突き抜け”μ粒子に対しては,Startはかからない. μ- μ Start ストッパー Stop 突き抜け 光電子増倍管: シンチレータの発光を検出し、 電気信号を出力する シンチレータ: 荷電粒子が通過すると、 紫外光を発光する

μ粒子と物質の相互作用 μ粒子が十分なエネルギーをもって入射するとき: 電子は雲状に広がって分布しており、μ粒子は電子と反応する。 電子はμ粒子に比べて質量が小さい Me=0.511 MeV/c2、Mμ=106 MeV/c2 電子を弾き飛ば(原子をイオン化)したあともミュー粒子はエネルギーを失うだけでほとんど方向を変えずに突き進む。 弾性散乱

荷電粒子と物質の相互作用 x=ρd [g/cm2] 電磁相互作用(主にイオン化) 物質の厚さの単位はg/cm2 最小電離作用粒子(Minimum Ionizing Particle, MIP) 1cm 1cm ρ:密度 [g/cm3] x=ρd [g/cm2] d [cm] 荷電粒子が物質を通過する際のエネルギー損失-dE/dx(=物質に落とすエネルギー)は,μ粒子の場合~300MeV/cで最小.それ以上の運動量を持つ粒子では,ゆっくり上昇(あまり変わらない).

プラスチックシンチレータ MIPによって物質へ落とされたエネルギーを可視光へと変換する 基材:ポリスチレン(C8H8)n,ポリビニルトルエンなど 密度:約1g/cm3 蛍光剤:p-ターフェニル(C18H14)など(~10g/ℓ) π軌道電子の準位 第一励起状態から基底状態へ落ちるときに発光 波長変換剤:紫外光→可視光(青色) 数eV⇒紫外光 時間:数n秒

光電子増倍管(PhotoMultiplier Tube; PMT) 可視光域の光子を検出し電気信号として出力 -1300V~-2000V 光電面で光電効果(光子→電子) 量子効率:~25% ダイノードで二次電子数を増幅 一段あたり2~3倍,12段では,105~106倍 増幅率は印加電圧に依存 アノードで電荷を収集

今回の課題:HVカーブの測定 μ粒子を測定する際のバックグラウンド 光電子増倍管の熱ノイズ(熱電子) 光電子増倍管の光電面から、熱によって励起された電子(熱電子)が出てきて電気信号を出す。 環境放射線 大気中、地殻中(や建物の壁など)に含まれる放射性同位体が発する環境放射線でも、シンチレータは発光する。 これらのバックグラウンドをうまく落としながらデータをとるための工夫をする必要がある。

HVカーブ(検出効率のHV依存性)の測定 ディスクリミネータ PMT出力 GND 波高 Vth PMT出力 NIMパルス 荷電粒子(μ粒子)のMIP通過に対する信号の波高分布 PMT内部の熱電子等によるノイズの波高分布 波高は低いほど頻度が急激に増加 頻度 波高はほぼ一定 頻度 波高 波高

HVカーブの測定(2) 頻度 頻度 波高 波高 PMTの増幅率を調整する 増幅率(すなわちHV)を変更しつつ,MIP信号の検出効率を測定する discriminatorのVthは 信号をできるだけ拾う ノイズをできるだけ落とす 位置にあるのが望ましい Vth HV:低 増幅率:小 頻度 Vth MIP 頻度 noise 波高 HV:高 増幅率:大 波高

検出効率測定のためのセットアップ N1 … カウンターTがMIP信号,またはノイズを検出した数 N2 … discriminator scaler reference1 Vth=-50mV 測定対象 Vth=-50mV reference2 Vth=-50mV HV:調整 -2.0kV ~ -1.2kV HV:固定 初期値:-1.8kV N1 … カウンターTがMIP信号,またはノイズを検出した数 N2 … カウンターR1,R2が同時にMIP信号を検出した数.すなわちR1,R2の間に位置するTを荷電粒子が通過した数にほぼ等しい. N3 … カウンターR1,R2が同時にMIP信号を検出した時にカウンターTも同時に信号を検出した数.すなわち,Tを荷電粒子が通過したときにTがそれを検出した数にほぼ等しい.

プラトー(plateau)に達したところから50Vのマージンをとる. 計数率および検出効率のHV依存性 N1/Δt … MIP信号+ノイズの計数率(Rate[Hz]) 波高 頻度 MIP+noise 急激に増加 計数率[Hz] -1.2kV -2.0kV -HV N3/N2… 検出効率 50Vマージン 1 頻度 MIP プラトー 検出効率 波高 -1.2kV -HV -2.0kV プラトー(plateau)に達したところから50Vのマージンをとる.

測定データの統計誤差 事象数N … Poisson分布 N回試行してM回成功 … 二項分布 偶発事象 発生確率一定 成功確率pのとき 期待値(平均値)がμの時 μは,一般には不明.観測量であるNを母数μの推定値として使う(Nが大きいときは,ほぼ正しい) 計数率N1/Δtの統計誤差 N回試行してM回成功 … 二項分布 成功確率pのとき pは,一般には不明.観測量であるM/Nを母数pの推定値として使う(M,Nが大きいときは,ほぼ正しい) 検出効率εの統計誤差

PMT出力端子

高圧電源(REPIC RPH-030) 1~4chを選択 フロントパネル リアパネル 高圧ケーブルのタグを確認しHVのチャンネルとPMTとの対応を確認しておく. 1~4chを選択 モニターする量(電圧・電流・電流上限値)を切り替える スイッチは引きながら倒す メインスイッチ

測定結果の保存 各グループで、光電子増倍管3本に関して以下をプリントしておくこと: 検出効率のHV依存性 計数率のHV依存性

バックアップ

物質中を通過するμ粒子