徳山ダム建設が タコノアシ個体群に及ぼす影響

Slides:



Advertisements
Similar presentations
日本近海におけるホシササノハベラの 遺伝的分化の解析 保全生態学研究室 川瀬 渡 2006 年 2 月 21 日 -日本沿岸域の環境保全のために-
Advertisements

大阪城 OB P 寝屋川流域 総合治水対策 流域面積 約270k ㎡ 東西約14k m 南北 約19k m 寝屋川流域の特徴 淀川 大和川.
都市域で起こる水害の防止対 策 C07047 村上彰一 C07048 森田紘 矢 C07049 矢口善嵩 C07050 矢田陽 佑 C07051 山河亮太 C07052 山下優 人.
中池見液化天然ガス基地の 生態リスク・便益分析 岡敏弘(福井県大)・松田裕之(東大) ・角野康郎(神戸大) 岡敏弘(福井県大)・松田裕之(東大) ・角野康郎(神戸大) 中池見湿地(福井県敦賀市)学術調査報告書(
水と命のゆりかごづくり ~十勝川中流部における湿地造成実験 ~ 水と命のゆりかごづくり ~十勝川中流部における湿地造成実験 ~ 発表番号: B- 19 北海道帯広農業高等学校 農業土木工学科3年 林 凌太.
7班 松本蛍都 村辻千絵美 山下裕大 山田怜史 山中望
地球環境史(地球科学系) 現代地球科学(物理系学科)
ハルリンドウにおける 繁殖ファクターの個体間変異の解析  野口 智 未.
夏緑樹林とカタクリの生活環 2013年2月17日〜2014年1月5日
背景と目的 結論と展望 材料と方法 結果と考察
ビオトープ造成事業後の 環境評価に関する研究 〜地表性昆虫の多様性を用いて〜
資料8-1 第11次大阪府鳥獣保護管理事業計画の概要
外来種問題の真実 新潟53PickUP実行委員会.
PF-ARフロントエンド部における冷却水流量計に関する評価
外来植物の侵入・拡大モデル 都市社会工学科 保全生態学研究室  秋江 佳弘.
SD法による 公園型ビオトープの景観評価 岩崎祥吾
外来生物が在来生物へ及ぼす影響 中内健伍.
絶滅危惧植物シラタマホシクサの 保全に関する研究 岩井貴彦 システムマネジメント工学科 UCコース
平成19年度 岐阜大学応用生物科学部 生産環境科学課程 環境生態科学コース 水利環境学研究室 下出 大介
イシガイ類幼生の魚類への寄生状況 魚類を介した移動に関する研究
山口市における ヒートアイランド現象の解析
第3回「槇尾川ダム建設事業」等に関する有識者会議

北上川の自然とそのとらえ方  北上川の自然環境を全体的に把握するために、北上川の各場所の植生と、物理的条件のデー タを整理して、北上川の環境を区分しました。  川の形(狭くて深い、広くて浅いなど)によって、冠水頻度(洪水などによって水に浸る頻度)の違う場所ができ、その違いによって、土壌の水分条件も変わり、生育する植物が決まります(図1)。さらに、それらの植物をすみかとして好む生き物も少しずつ変わります。
生産環境整備学講座 灌漑排水学研究室 石井沙智子
個体識別したオオサンショウウオの 行動の追跡による生態解明
電力班 小松・早川 藤丸・松浦 電力自由化に伴う 電力価格の変化.
西大阪地域 高潮対策 (株)ニュージェック 齋藤 憲.
渇水と渇水調整会議 *渇水調整会議は世界でも例を見ないわが国独特のシステム *渇水被害の軽減に果たす役割 *利根川渇水調整会議
2010年8月11日 進行協議(勉強会) 原告説明者: 上野鉄男 中 登史紀
「辰巳ダムの過大な基本高水」 2012年7月8日 説明者: 久保田康宏.
山崎川の魚類の 生息環境からみる河づくり 都市社会工学科  加藤顕成.
ヤマトシジミによる 木曽三川汽水域における生息地評価
社会システム論 第5回 生態系(エコシステム).
Ver 地球温暖化と気候変動.
ビオトープ水田内の環境変化が 淡水魚に与える影響
水質調査の現地観測手法について 茨城大学農学部 黒田 久雄.
河川工学 -流出解析その1- 合理式と単位図法
(株)ウエスコ 環境計画事業部 自然環境課 森定 伸
絶滅危惧種サギソウの遺伝的分化 保全生態学研究室   鈴木雅之.
DANDELIONS Ren Soma Shinchiro Habaguchi Yusuke yamada
第8回(山本晴彦) 光学的計測法による植物の生育診断
光環境と植物 第10回 光量と植物の生長について
色彩土のうによる発芽促進の相違, 及び植生土のう,普通土のうを用いた 緑化の長期経過報告 UC  15119630  宮嶋拓哉.
大山崎町洪水ハザードマップ(桂川浸水想定区域図)
Effective methods for multiplying hypericum oliganthum
静岡大学システム工学科 環境分野 前田研究室 伊藤 啓
生物情報計測学 第7回 植物の生育・水分状態の計測.
シラタマホシクサの地域文化の検証とフェノロジーの年変動
名古屋市内の生物多様性を保全する方法について考えてみよう。
新聞発表 /7/16 大和田・菅原・鈴木・山中.
増加する都市型集中豪雨 いま都市河川多摩川の 危険個所とは
河川工学 水文循環2 昼間コース 選択一群 2単位 朝位
日本のゴルフ場の環境破壊 中神 徹.
No.4 三春ダムにおけるヤナギ類の生態調査プロジェクト
三春ダムにおけるヤナギ類の生態調査プロジェクト Reseaerching Salix Subfragilis in Miharu dam
周辺圃場の土地利用変化が 水田の水需要に与える影響
流速ベクトル.
河川工学 -流出解析その2- 貯留関数法,タンクモデル,キネマティックウエイブ法
生態地球圏システム劇変のメカニズム 将来予測と劇変の回避
2 生態系の危機への対応 エコロジカル・フットプリント ミレニアム生態系評価 生物多様性条約 国内対策.
水田地帯における 小型魚類の分布状況と 環境要因について
環境配慮型水田におけるイシガイ類の生息域及び 水管理による成長量の違い
2019/5/27 大学での課題研究とは 教育実習生 平成23年度卒 和久井彬実.
湖岸湿地における生物多様性と人間活動 東京大学保全生態学研究室 西廣淳 2011年10月12日
LANDSATデータを用いた 佐鳴湖流域の土地被覆分類と 温度分布の分析
Water Quality Problems in Reservoirs and Rivers
「青少年の家」雨量計記録 及び検証結果について
<PC48> エゾマツ・トドマツ稚樹群の動態に 環境条件が与える影響
落葉広葉樹林流域における 水文特性の比較 人工針葉樹林流域と 水利環境学研究室 久田 重太.
Presentation transcript:

徳山ダム建設が タコノアシ個体群に及ぼす影響 16214003 伊藤 絵里

目次 1.背景 2.目的 3.方法 4.結果 5.考察

背景 現在では地球サミットの開催などによって,生物多様性 の保護の重要性が国際的に認識されるようになった. ・絶滅危惧Ⅰ類の植物は積極的に保護されるようになった ・絶滅危惧Ⅱ類の植物は保護の必要性を唱えられながら も,保護活動はうまくいっていない. 河川環境には多くの絶滅危惧Ⅱ類の植物が生育している が,その環境は絶滅危惧植物にとっては非常に厳しい.

背景 平成12年 揖斐川河道掘削工事が開始 揖斐川の洪水対策のため河川流量を増加 させるために行われている 平成12年 揖斐川河道掘削工事が開始 揖斐川の洪水対策のため河川流量を増加 させるために行われている 埋土種子由来と思われる絶滅危惧Ⅱ類タコノアシの 群落が偶然に復元

タコノアシ  Penthorum chinense Pursh ・ユキノシタ科タコノアシ属 ・花期:8~10月 ・高さ:30~80cm ・絶滅危惧Ⅱ類 ・100年後の絶滅確率:約2%    約300年後には絶滅すると予測されている

背景 河道掘削工事は平成24年まで毎年計画されている →新たな生育地が確保され,個体群が増加しつつある.  →新たな生育地が確保され,個体群が増加しつつある. 悪化しつつある絶滅危惧Ⅱ類の植物にとって,新たな 保護復元の可能性を示したと考えられる. 平成18年 徳山ダム完成 湛水量 6億6000万㎥ 日本最大の規模  →環境への影響は計り知れない

目的 徳山ダム建設による河川環境の変動がタコノアシ 個体群に影響を与えているかどうか検討する. 徳山ダム建設で最も考えられる環境変動  →湛水によって起こる河川水位の低下 ・タコノアシが生育するのに適している湿地面積の  大幅な減少を引き起こす可能性.

目的 流量調節機能が増加  →河川の浸食作用が少なくなる ・植生の遷移が進み,新たな生育地が形成されなく  なる可能性.

方法 a b c d e f ・タコノアシの各個体群の個体  数をカウントし, 前年度まで  のデータと併せ推移をみる.

方法 ・揖斐川上流域から中流域 の万石地点までの6箇所 での30mm以上の連続降 雨量と,その時の万石地 点の水位から相関の経年 a b c d e f a.塚 b.徳山 c.杉原 d.藤橋 e.揖斐 f.万石 ・揖斐川上流域から中流域  の万石地点までの6箇所  での30mm以上の連続降  雨量と,その時の万石地  点の水位から相関の経年  変化を解析する.

方法 徳山ダムの日積算放流量と揖斐川上流域,中流域の日平均水位データからダムの放流が河川の水位に与える影響を考察. a.塚 b.徳山 c d e f a.塚 b.徳山 c.杉原 d.藤橋 e.揖斐 f.万石 徳山ダムの日積算放流量と揖斐川上流域,中流域の日平均水位データからダムの放流が河川の水位に与える影響を考察.

結果 表4-1.各調査年度における各個体群の個体数 調査地

結果 塚における連続降雨量と水位の関係 平成16年 平成20年 前 徳山ダム完成 後

結果

まとめ ・徳山ダムによる水位の低下が,タコノアシに与える影響 は小さくなく,工事条件にもよるが,個体数の増減に影響 する.  は小さくなく,工事条件にもよるが,個体数の増減に影響  する. ・河道掘削工事については,水面ぎりぎりの位置まで掘削  し,少量の降雨でも冠水してしまうような環境を創出する  ことが重要. ・今までと同様新たな箇所を掘削するとともに,数年たち, 遷移が進んだ箇所は,新たに掘削しなおしていくべきである 今後も引き続き調査していくことが重要