現代の経済学B 植田和弘「環境経済学への招待」第1回 第1章 自然と人間の共生へ 第2章 環境経済学入門 京大 経済学研究科 依田高典
第1章 自然と人間の共生へ
20世紀の急速な工業化・都市化 公害: 水俣病 チッソの工場排水による有機水銀中毒 環境破壊: 地球温暖化 二酸化炭素による温室効果ガス
市場価格は私的費用のみを反映させるので、 1 環境経済学の源流 ピグー「外部不経済論」: 鉄道機関車の火の粉による森林の焼失 鉄道サービスの社会的費用 = 鉄道企業の私的費用 + 森林焼失の損害 市場価格は私的費用のみを反映させるので、 鉄道サービスは社会的に過剰 外部不経済の内部化: ピグー補助金 費用概念に還元できない社会的損失は?
「コースの定理」: 損害を補償するルールの確定 損害を補償する側に権利があるのか、 補償される側に権利があるのか 権利さえ確定していれば、 当事者間の自発的な交渉によって、 効率的な解決策にたどり着く 情報の完全性・交渉の取引費用が ゼロである必要性は?
ミシャン「環境権ルール」: アメニティ権・法ルールの制定化 アメニティ権の受益者は 専ら富裕者層に偏りがちになる傾向
・ 自然破壊:再生可能な範囲を越した住宅開発など ・ 環境汚染:環境の機能を超えた廃棄物の排出 2 環境の経済的性質 江戸モデル:循環型社会 環境破壊: ・ 自然破壊:再生可能な範囲を越した住宅開発など ・ 環境汚染:環境の機能を超えた廃棄物の排出 ・ アメニティ破壊:まち並みの歴史的景観の破壊 ・ ライフ・サポート・システムの破壊 江戸 廃物の活用 農作物の販売 地方
環境の経済的性格: ・インフラストラクチャー: 人間生活と産業活動の共通基盤 ・地域固有財: アメニティの地域固有の歴史性と文化性 不可逆性: 破壊・喪失すれば復元できない
3 環境破壊の原因 ・ 価格の付かない環境の価値: かっては自由財 ・ 世代間公平の問題: 使い捨て社会 将来世代の犠牲による現在世代の便益
=B「開発による便益」ーC「開発の費用」 =(B0ーC0) +(B1ーC1) /(1+r)+・・・+(BTーCT) /(1+r)T >0 4 環境の価値は測れるか 費用便益分析: NB「開発の純便益」 =B「開発による便益」ーC「開発の費用」 =(B0ーC0) +(B1ーC1) /(1+r)+・・・+(BTーCT) /(1+r)T >0 問題: ・割引率の決定(市場利子率?) ・費用や便益の帰属先の公平性
宇沢弘文「自動車の社会的費用」: 市民の基本的権利を侵害しないような 道路設備の改造に必要な投資額 自動車1台当たり1200万円 環境の価値の測定: ・支払意志額(WTP) ・私的財方式・住民投票方式 ・トラベルコスト法 ・環境サービスまでのアクセス費用 =交通費用+機会費用 以上 ここまで