LCAについて 熊野雄太
読んだ論文 「LCA手法によるICパッケージのライフサイクル影響 評価と健康被害評価」 小林充、石坂和明、伊坪徳宏 日本信頼性学会誌、信頼性26巻(3) 235-249、2004-05-01
目次 1、LCAとは 2、LCAの評価対象と評価手法 3、LCA評価 4、まとめ
1、LCAとは 環境への影響を定量的に評価 Life Cycle Assessmentの略 製品のライフサイクル全体にわたる環境影響の評価 製品のライフサイクル全体にわたる環境影響の評価 資源調達 製造 組立 廃棄・リサイクル 使用 輸送 環境への影響を定量的に評価
2、LCAの評価対象と評価方法 評価対象 ICパッケージ(パソコンや携帯端末の基盤に使用)2種類 BGA(多層プリント配線板) ビルドアップ(微細線層をビルドアップ)
評価手法 ライフサイクルインベントリ分析 分類化 特性化 正規化 重み付け 統合化
3、LCA評価 今回のLCAの範囲は資源調達~製品製造まで 3-1 調査範囲の設定 使用段階の消費エネルギー約1.3% 3-1 調査範囲の設定 使用段階の消費エネルギー約1.3% 廃棄・リサイクル段階での廃棄量約0.3% 使用、廃棄・リサイクル段階の環境負荷は LCAに影響しないほど小さい 今回のLCAの範囲は資源調達~製品製造まで
パッケージの重さ、大きさ、端子数などの機能項目か ら、周波数(処理速度)を選択し、2GHの機能を達成 するのに必要なパッケージの数を決定 BGA 2個 ビルドアップ 1個
各素材からの消費・排出量を計算 𝐼 𝑖 = 𝑗 ( 𝑎 ij × 𝑤 𝑗 ) 3-2 ライフサイクルインベントリ分析(LCI) 製品データシートの数値を用いて環境負荷を計算 𝐼 𝑖 :インベントリ項目別消費量、排出量 𝑎 ij :原単位 𝑤 𝑗 :パッケージの素材別重量、加工量、ユーティリティ使用料 𝐼 𝑖 = 𝑗 ( 𝑎 ij × 𝑤 𝑗 ) 各素材からの消費・排出量を計算
分類化 環境負荷(インベントリ項目) ステージ(工程) 消費負荷・・・原油、石炭、LNGなど 排出負荷・・・CO2、SO2など 素材製造・・・資源採掘から製造 組立 ・・・電力などを使用して製品を製造 公海上 ・・・資源輸送
LCIの結果 BGA、ビルドアップともに消費資源の量は、 エネルギー資源>枯渇資源>再生可能資源 大気への排出は、 エネルギー資源>枯渇資源>再生可能資源 大気への排出は、 CO2>NOx>SO2>N2O>SOx CO2の排出量は、BGAが462g、ビルドアップが343g ステージ別では、資源消費は「素材製造」、排出負荷は「組 立」で多くなっていた。
各消費・排出量からの環境への影響を計算 𝑃 𝑛 = 𝑛 ( 𝛼 i𝑛 × 𝐼 𝑖 ) 3-3 ライフサイクルインパクト評価(LCIA) 𝑃 𝑛 :インパクトカテゴリ別環境負荷 𝛼 in :特性化係数 𝐼 𝑖 :インベントリ項目別消費量、排出量 𝑃 𝑛 = 𝑛 ( 𝛼 i𝑛 × 𝐼 𝑖 ) 特性係数の説明 各消費・排出量からの環境への影響を計算
8領域(インパクトカテゴリ)それぞれに係数がある 特性化係数について 消費、排出量が環境にどのくらい影響を与えるかの指標 8領域(インパクトカテゴリ)それぞれに係数がある 1 資源の消費 2 地球温暖化 3 オゾン層破壊 4 酸性化 5 湖沼の富栄養化 6 光化学オキシダント 7 エネルギー消費 8 固形物排出 例、資源の消費の場合 係数は世界の資源埋蔵量の逆数。 ↓ 全資源の内、どのくらいの割合を消費したか。
カテゴリ別環境負荷 インパクトカテゴリ BGA ビルドアップ 資源の消費 4.02.E-03 1.37.E-03 地球温暖化 オゾン層破壊 0.00.E+00 酸性化 8.00.E-04 5.91.E-04 湖沼の富栄養化 7.94.E-05 5.98.E-05 光化学オキシダント 3.63.E-05 2.73.E-05 エネルギーの消費 8.26.E+00 6.11.E+00 固形排出物 3.49.E-03 1.14.E-03
LCIAの結果 エネルギー消費は、BGAが約8.3MJ、ビルドアップが約 6.1MJ LCIの結果と合わせ、CO2・エネルギー消費に関してはビル ドアップはBGAの約74%。 ビルドアップ構造による高密度化により、パッケージの性 能が向上したことが原因
3-4 統合化 異なる環境負荷を一つに統合して、評価しやすくする。いくつ かの異なる手法がある という過程で計算される。 3-4 統合化 異なる環境負荷を一つに統合して、評価しやすくする。いくつ かの異なる手法がある 正規化 重み付け 単一指標化 という過程で計算される。 SGE法による計算過程を示します。
正規化 あるインパクトカテゴリの環境影響度が他の項目と相対的に 比較可能に。結果は無次元になる。 JEMAI-LCAというソフトで設定された規格値がある 資源の消費 地球温暖化 酸性化 エネルギー消費 固形排出物 について、各規格値で割ることで正規化。
重み付け 今回は製造サイトの事業内容、環境対策の重点項目、環境 マネジメントプログラムに従い、CO2排出、エネルギー消費 に重点を置いた。 重みづけ係数 資源の消費 3 地球温暖化 5 酸性化 1 エネルギーの消費 固形排出物
単一指標化 正規化した値に重みをかけて統合化指数を計算 合計 - 3.43E-12 2.47E-12 インパクトカテゴリ BGA ビルドアップ 正規化結果 重みづけ係数 統合化指数 資源の消費 4.19E-14 3 1.26E-13 1.43E-14 4.29E-14 地球温暖化 3.48E-13 5 1.74E-12 2.58E-13 1.29E-12 酸性化 3.62E-13 1 2.67E-13 エネルギーの消費 3.86E-13 1.16E-12 2.85E-13 8.55E-13 固形排出物 4.20E-14 1.37E-14 合計 - 3.43E-12 2.47E-12
他の統合化手法による結果 生産量増加に伴う機能単位当たりの消費・排出負荷の増加 どの手法でもビルドアップの方が環境負荷が小さい 2000年と2001年を比べると、BGAは減少、ビルドアップは 増加。 統合化手法 2000年 2001年 BGA ビルドアップ Eco-indicator(オランダ) 4.80.E-04 3.01.E-04 4.51.E-04 3.34.E-04 EPS(スウェーデン) 1.93.E+02 1.21.E+02 1.81.E+02 1.34.E+02 エコポイント(スイス) 1.78.E-01 7.00.E-02 1.72.E-01 7.65.E-02 DtT(旧資環研) 8.05.E-13 5.05.E-13 7.60.E-13 5.65.E-13 SGE法 3.58.E-12 2.17.E-12 3.43.E-12 2.47.E-12 生産量増加に伴う機能単位当たりの消費・排出負荷の増加
保護対象が明確に定義されるので評価しやすい。 こちらが主流になりつつある。 被害評価による統合化 インパクトカテゴリを比較(重み付け)するのではなく、数項目 の保護対象に集約して評価する 保護対象の例 人間の健康 生物多様性 資源 保護対象が明確に定義されるので評価しやすい。 こちらが主流になりつつある。
それぞれ保護対象が異なるため、この研究では両方に 共通する「人間への健康影響」についてについて2000 年と2001年を比較した。 手法 Eco-indicator’99 産総研/LCAプロジェクト それぞれ保護対象が異なるため、この研究では両方に 共通する「人間への健康影響」についてについて2000 年と2001年を比較した。 障害調整生存年数 DALY(Disability Adjusted Life YEAR) ここからは手法の違いについて記述されている
比較結果 被害総量はBGA、ビルドアップともにEco-indicator’99 が約1.9倍 が約1.9倍 CO2排出による被害量について、両方の年でBGA、ビルド アップともにEco-indicator’99が約2.9倍 ↓ 保護対象の項目が異なる。 NOxとSO2の被害量に占める割合は、Eco-indicator’99は 約37%、産総研/LCAプロジェクトは約63%。 ↓ 対象地域によって各物質の影響が異なる 温暖化による健康影響に、産総研には寒冷ストレスが入っているため 産総研/LCAプロジェクトは人口密度の高い日本対象なので、大気汚染に被害が大きくなる
4、まとめ LCAによりビルドアップは機能単位においてBGAより 環境負荷が小さい製品であることがわかった