5.5 The Linear Arboricity of Graphs (グラフの線形樹化数) D3 杉原堅也
内容 線形樹化数(linear arboricity) 連結成分が全てパスの森を線形森(linear forest)という. グラフGの線形樹化数 la(G) とは,Gの全ての辺をカバーするような線形森の最小数.
予想 5.5.1 予想 5.5.1(線形樹化数予想) [Akiyama, Exco, Harary. ’80] 全ての d-正則グラフの線形樹化数は d-正則グラフの辺の数は nd/2, 線形森は最大 n-1 本の辺をもつから, 最大次数Δのグラフ G はΔ-正則グラフの部分グラフなので,この予想は la(G) ≦ と同値.
定理 5.5.7 定理 5.5.7 定数 c > 0 が存在し,全ての d-正則無向グラフ G が を満たす. (Δが偶数) 確率的な手法を使わない結果は, (Δが偶数) (Δが奇数) 最も良い結果は,1988年の Alon の結果 この節で示すのは下の結果. 定理 5.5.7 定数 c > 0 が存在し,全ての d-正則無向グラフ G が を満たす.
予想 5.5.2 予想 5.5.2 (有向グラフ) [Nakayama, Peroche. ’87] 全ての d-正則有向グラフ D の線形樹化数は d-正則有向グラフ : 各節点の indegree と outdegree が両方とも d. :有向グラフ G の線形樹化数 (⇔ G の枝を全てカバーする線形有向森の最小数) 森の連結成分が有向パス.
無向と有向の関係 2d-正則無向グラフの辺をオイラー閉路に沿って向き付ければ,d-正則有向グラフになる. d-正則有向グラフに対する予想 (または,dla の上界) ⇒ 2d-正則無向グラフに対する予想(または,la の上界) 4-正則 2-正則 全ての(2d-1)-正則無向グラフは,ある2d-正則無向グラフの部分グラフなので, 対応する d-正則有向グラフが存在する.
定理 5.5.6 定理 5.5.6 定理 5.5.7(再褐) 定数 c > 0 が存在し,全ての d-正則有向グラフ G が を満たす. 定理 5.5.7(再褐) 定数 c > 0 が存在し,全ての d-正則無向グラフ G が を満たす.
命題 5.5.3 命題 5.5.3 H = (V, E) を最大次数 d の無向グラフ, を分割(Vi は互いに共通部分を持たない), 各Vi は|Vi|≧2ed を満たすとすると, 各Vi の節点を含む独立集合 W⊆Vが存在する. 証明 全ての Vi で となることを示せば十分. Vi から節点を一つずつランダムに選んで W とし,W が独立集合となる確率が正となることを示す.
命題 5.5.3の証明 辺 f に対し,Af を W が f の端点を両方含む事象とする.明らかに,Pr(Af) ≦ 1/g2 Af は,両端点が Vi∪Vj に含まれない辺 f’ に対する事象 Af’ と独立. 独立とならない事象は 2gd-1 個以下. → Corollary 5.1.2 (Local Lemma; Symmetric Case) Vi Vj f H
命題 5.5.3の証明 Corollary 5.1.2 A1, A2, ..., An を事象とする. 各 Ai が他の高々 d 個以外の事象と独立で, Pr(Ai) ≦ p (1 ≦ i ≦ n)の時, ep(d+1) ≦ 1 ならば 上の p, d に前スライドで得られたものを代入すると, 従って,全てのAf が起こらない確率(W が独立)は正.
定理 5.5.4 定理 5.5.4 G = (U, F ) が d-正則有向グラフで,有向内周 g が g ≧ 8ed を満たすとすると, (有向)内周: 最小な(有向)閉路の長さ |F| = d|U| ,有向線形木は高々|U|-1 本の辺をもつので, を示す.
定理 5.5.4の証明 辺集合 F は d 個の disjoint な 1-正則の全域部分グラフに分割することができる. 1-正則な全域部分グラフ: 連結成分が有向閉路. 2-正則
定理 5.5.4の証明 辺集合 F は d 個の disjoint な 1-正則の全域部分グラフに分割することができる. 1-正則な全域部分グラフ: 連結成分が有向閉路. 2-正則 それぞれの閉路から一つずつうまく辺を選び,線形森を作れば d+1 個の線形木で 分割できることを示せる. 実際には,マッチングとなるように辺を選べる.
定理 5.5.4の証明 G=(U, F)の線グラフ (節点集合がFで,Gで同じ節点を共有していた f, f’ ∈ F の間に辺があるグラフ)をつくる. Gのマッチング ⇔ 線グラフの独立集合 2-正則 線グラフ
定理 5.5.4の証明 命題 5.5.3(再褐) H = (V, W ) を最大次数 D のグラフ, を分割(互いに共通部分を持たない), を分割(互いに共通部分を持たない), 各Vi は|Vi|≧2eD を満たすとすると, 各Vi の節点を含む独立集合 W⊆Vが存在する. 線グラフに命題5.5.3を適用する. Vi を最初の分割の閉路に対応した節点集合とすると, |Vi| は上の条件を満たす. 線グラフの次数 D は 4d-2, |Vi|は G の内周 g ≧ 8ed ≧ 2e(4d-2). それぞれの閉路 ( に対応した線グラフの節点集合 )から 一つずつ独立集合になるように節点を選べる,元のグラフではマッチング.
定理 5.5.4の証明 2-正則 線グラフ
定理 5.5.4の証明 d+1個の線形森に分割可能 つまり, 2-正則 線グラフ
補題 5.5.5 v 補題 5.5.5 G = (V, W ) を d-正則有向グラフとし,d は十分大きいとし. p を を満たす整数とすると, 下の条件を満たす節点の p-着色(0, 1, ..., p-1)が存在する. が を満たす. 1 v 1 3 (5.8) 2 1
補題 5.5.5の証明 v 節点に対し,ランダムに 0,..., p-1 を着色. v, i に対して, を が不等式(5.8)を満たさないという事象とする. も同様. すると, 1 v 1 3 2 1 ∵ は2項分布 (期待値 d/p, 分散 ) . あとは,独立でない事象の数を見積もって Local Lemma. 全ての v, i で が起こらない(式5.8を満たす)確率が正であることを示す.
補題 5.5.5の証明 v と独立でない は,v と隣接点を共有するような v’ に対するもの. d-正則なので,このような v’ は高々 (2d)2 個. 色は p 個あるので, と独立でない事象は高々 (2d)2 p個. 従って次を満たす. (d は十分大きく,仮定より ) Corollary 5.1.2 から, 全ての v, i で が起こらない(式5.8を満たす)確率は正となる. v 2d個 ・・・ 2d個
定理 5.5.6の証明 定理 5.5.6 (再褐) 定数 c > 0 が存在し,全ての d-正則有向グラフ G が を満たす.
定理 5.5.6の証明 グラフ G を補題5.5.5を利用して p 個の部分グラフ G0,...,Gp-1に分割.(G1,...,Gp-1は内周が大きく定理5.5.4が使える) (p は を満たす素数) G の線形樹化数は, G0,...,Gp-1の線形樹化数の上界の和でおさえられる.
定理 5.5.6の証明 G0,...,Gp-1 の作り方 G の節点を f : V → {0,...p-1} で彩色. 補題 5.5.5 から,不等式 (5.8) を満たす着色が存在. Gi =(V, Ei) の辺集合 Ei を以下のようにする. 2 9 2 2 13 5 閉路の長さは p の倍数 同じ色の 節点を結ぶ … … ∵ 長さを L とすると, 2 1 2 2 p-3 p-7 を満たす,かつ, i < p で,p は素数だから. E0 E4
定理 5.5.6の証明 Δi は Gi の最大次数 G0 は, trivial な上界 定理 5.5.4 の証明の最初の議論で Δ0 個の 1-正則全域部分グラフに分割して,各々をさらに2つに分割. Gi (1≦ i ≦p-1) は,内周≧ p ≧10√d >8eΔi なので, 定理 5.5.4 から
定理 5.5.6の証明 Δi は Gi の最大次数 G0 は, trivial な上界 定理 5.5.4 の証明の最初の議論で Δ0 個の 1-正則全域部分グラフに分割して,各々をさらに2つに分割. Gi (1≦ i ≦p-1) は,内周≧ p ≧10√d >8eΔi なので, 定理 5.5.4 から 1 最大次数は補題 5.5.5 の N±(v, i) の不等式(5.8)による. N±(v, i) は節点 v に隣接する色 i が塗られた節点の数. つまり, N±(v, i) で v の indegree /outdegree を押さえられる. 1 v 3 1 3 (5.8)
定理 5.5.6の証明 ∴
定理 5.5.6 定理 5.5.6 (再褐) 定数 c > 0 が存在し,全ての d-正則有向グラフ G が を満たす.
定理 5.5.7 定理 5.5.7 (再褐) 定数 c > 0 が存在し,全ての d-正則無向グラフ G が を満たす. を満たす. 前述したように, d-正則無向グラフ G に対応する d/2-正則有向グラフを考えれば定理5.5.6 から自明. d が奇数のときは,(d+1)/2-正則有向グラフを考えれば同様に定理 5.5.7 がいえる.