偏極β線を用いたMott散乱によるParity対称性の破れの検証

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偏極β線を用いたMott散乱によるParity対称性の破れの検証 2005年度 課題研究P2 Mottグループ 五味 慎一 中野 晋太朗 藤田 充俊 2006年 6月 24日

概要 Parity変換対称性の破れは、1950年代後半リーとヤンとが弱い相互作用において提唱し、ウーによって実験的に確認された事実である。 我々はMott散乱を通してParity変換対称性の破れを確認する実験を行った。 実験の結果、ほぼ理論による予測と同程度の値、0.74%のAsymmetryの観測に成功した。

第1章 Theory

β崩壊 弱い相互作用によって引き起こされるβ崩壊はパリティ対称性を破る。 パリティ対称な始状態の系は非対称な終状態へと移ることをみる。 β崩壊  弱い相互作用によって引き起こされるβ崩壊はパリティ対称性を破る。 パリティ対称な始状態の系は非対称な終状態へと移ることをみる。 結論だけいえばβ崩壊してできた電子が偏極していることを確認する。

この相互作用を記述するラグランジアンの相互作用部分は であり、運動量移行がWボソンの質量に比べ小さい場合にSマトリックスは 次の有効ラグランジアンを用いて書かれる。

これらはパリティ変換に対して不変ではない。 場の理論のローレンツ不変性と強い相互作用 のパリティ不変性の結果、S行列要素は陽子、 中性子のスピノールの波動関数を用いて書か れる。

によって偏極率があらわされる。 実験ではこの偏極の程度を検証する。 偏極していないスピン平均された中性子から偏 極した電子が崩壊してあらわれる。    をヘリ シティs= 、エネルギー の電子の崩壊率(さっき の式)とすると によって偏極率があらわされる。 実験ではこの偏極の程度を検証する。

モット散乱 相対論的モット散乱はディラック方程式 を用いて直接量子力学のクーロン散乱の ときと同様に方程式の厳密な散乱断面積 を導くことができる。

モット散乱 ここで は散乱振幅であり、χ、ωは電子 磁気モーメント(スピンの逆向き)の極角と方 位角である。 モット散乱は電子の偏極の度合いによって散乱 断面積がかわる。 ここで は散乱振幅であり、χ、ωは電子 磁気モーメント(スピンの逆向き)の極角と方 位角である。

る効果が断面積にあらわれず単純なモット散 乱になる。 実験ではβ崩壊によってできた 縦偏極な電子を電場を使って横偏極にして ここで相対論的電子の散乱波解は4成分だが 量子力学的なクーロン散乱の漸近形をとった。 前ページ第三項は偏極していない電子や縦 偏極の電子では0でありこのときは偏極によ る効果が断面積にあらわれず単純なモット散 乱になる。 実験ではβ崩壊によってできた 縦偏極な電子を電場を使って横偏極にして 偏極の様子をモット散乱により調べた。

実験の概略 偏極に依存しアシンメトリーを表す第三項は の操作でとりだせる。第三項のサインカーブをみるためにΦで八方位測定した 第三項のsinχを大きくするために縦偏極が横偏極にかえられている。

第2章 実験装置 Experimental Aparatus

実験装置 CAMAC 鉛 PMT&シンチ Target&Targetホルダー &金・鉛の薄膜 回転フランジ マグネット 高電圧 電極層 真空 な PMT&シンチ Target&Targetホルダー &金・鉛の薄膜 真空計 回転フランジ マグネット 高電圧 電極層 真空 高電圧出力 真空ポンプ

今回の実験 Spinの方向は変化させず、運動量の向きを90度変化させる ↑:spinの向き ●極板間で電子を90度曲げる ●装置の中心軸とビームの中心軸をあわせる ●S/N比をなるべく向上させる ●散乱された電子の個数を充分に溜める

真空 絶縁破壊電圧は10-1~10-2Paの間にかけていい 今回の実験で使用した範囲 ~1.0Pa 使用したポンプ 型式名:GVD-050A 必要な真空度を十分に達成している 真空計:クリスタルゲージ、M-320 XG 測定可能領域:大気圧~1.0*10-1Pa 水晶振動子の共振インピーダンスが気体との摩擦により変化することを利用 ■放電ハンドブックより

高電圧 ありがとうタンデム -25kV Poissonでの二次元電場シュミレーション 今年の実験では25kVかけます     25000Voltすごい!! -25kV 電極層から出る電子の流れ この部分の電子を使う

}ソース起源 ノイズと高電圧 ①電子エネルギーを高くしないと、ノイズと区別できない!!(25kVで十分ノイズと区別できる) Count数 電圧値 N0 N0/e ①電子エネルギーを高くしないと、ノイズと区別できない!!(25kVで十分ノイズと区別できる) ②長時間(具体的には100時間位)実験。電圧が高いと放電が心配 ③電圧を下げると、理論的には単位時間当たりの電子数増加 ノイズの主な原因 ○ターゲットでの二重散乱 ○ターゲットホルダーなどからの散乱 ○外部からの環境放射線 }ソース起源 }外部起源 外部起源の ノイズを減らそう

ノイズがなぜいけないか 最大で0.8% 統計誤差~0.5% 観測されるぎりぎりの線 今回の実験で予想されるアシンメトリーの値 相対誤差の値(ノイズとモット散乱電子数が1:1の時) N:ノイズの個数 我々の実験を当てはめてみると、6時間の測定ではN=40000から さらにノイズが増えると、この式では効かなくなる 統計誤差~0.5% 観測そのものが無意味になる 観測されるぎりぎりの線

ノイズ対策:鉛 鉛で覆うと外部からのノイズを劇的に落とすことができる 1MeV 程度のエネルギーを持つ入射フォトンで1.76cmあればエネルギーは1/eになる 鉛で覆うと外部からのノイズを劇的に落とすことができる

実際に覆ってみました 2mm厚の鉛の板を五重巻きにした → 1cm厚の鉛 元からのステンレスの厚さ → 1cm 外からのノイズを劇的に除くことに成功 鉛で覆う前   ノイズ:モット散乱された電子=1:1 鉛で覆った後  ノイズ:モット散乱された電子=1:4

電極層 アクリルガイド 高電圧 耐電圧ケーブル

Target層

PMTの取り付け位置 θ 70度 θ=70度付近が最適と判断 今回の実験ではθ=70度となっている!!

シンチレーター γ線Vs電子でシンチレーター内の反応は違う 有名なBethe-Blochの公式を使う γ線:平均自由行程は約1cm程度。シンチレーター内で離散的に散乱 電子:エネルギーを落としながらシンチレーター内でとまる   今回の実験では、極板間電圧の関係から200keV程度にピークを持つエネルギー分布 シンチレーター γ線 電子 まず、200keV程度のエネルギーの電子は、どのくらいの厚さの シンチレーターを用意すれば、十分止めることが出来るかを考える 有名なBethe-Blochの公式を使う

Bethe-Blochの公式 シンチレーターを二重に!! グラフより、200keVの電子でも0.5mmあれば十分にシンチレーター内部でとめることが出来る 止めることが出来ると、エネルギースペクトルが取れて、電子とγ線を区別できるようになる さらに、γ線起源のノイズを落とすための改良 シンチレーターを二重に!!

二重のシンチレーター γ線の平均自由行程が長いことを利用して、      γ線起源のノイズをカット

シンチレーター 時定数の異なる二つのシンチレーターを用意 赤:時定数の早いシンチレーター EJ-212 plastic Scintillator Rise time:0.9ns Decay time:2.4ns Pulse Width:2.7ns threshold 青:時定数の遅いシンチレーター BC-444 plastic Scintillator Rise time:19.5ns Decay time:179.7ns Pulse Width:171.9ns 時定数の速いシンチレーターでスレッショールドを決めてやることで、γ線のイベントだけを効果的に落とすことが出来る。

Target&Target Holder 真空に引くまでの時間:12時間非常に長い 真空を切らずにターゲットを変える工夫が必要 材質:アルミ 理由:ターゲットホルダーからの散乱でアシンメトリー        が出ないようにするためZの小さいアルミを使う

ターゲット 統計誤差 金の厚さ2.5μまで外挿すると アシンメトリー:0.8%程度 実際はこれより少ない 相対誤差の値、今年の予備実験での単位時間当たりの電子の数 から 金の厚さ 去年と同様2.5μmが最適 アルミの厚さ 去年より2倍強厚い24μm

source holder の製作 electron源として使用した137Csをフランジに固定するソースホルダーを今回は新たに製作した。 この穴を用いてネジで固定することで、フランジの中央に正確に配置することができる。 この溝を用いてネジで固定することで、フランジ中心から最大で約2mm中心からずらして使用することができる。 今回の実験では、横方向に1mmずらして測定を行った。 中心軸を合わすことができる

マグネット ダイポールマグネットを作成 実際の測定から、電子の軌道は少し外側に傾いていることが判明!! 直さなければ、正確なアシンメトリーは測れない ダイポールマグネットを作成 計算によれば1.2A 程度の電流で軌道を修正できる→可能だ!!

実際の磁場 うまくいっている

回転フランジの目的 昨年の実験でTarget槽と電極槽との境についての不安として、以下のようなものがあった。 フランジの規格が不均一 O-Ringが両方に切ってあり、真空の保持という観点で不安 中心軸の保持に不安 Target槽と電極槽との境に一枚新たにフランジを加え、以下の効果を期待する。 ビームのより高度な制御が可能 真空値の保持 Slitの役目 これを考慮し、次のような設計で回転フランジを作成した。

Target槽と、回転フランジとをネジで、固定する。 「Target槽+回転フランジ」を、寸切で固定する。

長時間(約15時間、途中10数回の回転試行を含む)高い真空度を保つことに成功! 回転フランジ導入の結果  長時間(約15時間、途中10数回の回転試行を含む)高い真空度を保つことに成功! さらに、寸切での固定なくして真空値を保つことにも成功。これにより、 回転試行のたびにしなければならない動作の削減 より細かい角度範囲についての実験の可能性 など、実験の幅が格段に広がったといえる。

回路 以下のような設計で回路を組み実験を行った。 High Pass Filter

Long Gate と Narrow Gate 今回の実験では二つのGateを用いて測定を行った。 Longはもちろんエネルギー測定用・NarrowはPMT 3のシグナル測定用である。 Narrowに関してPMT 1及び2でも測定を行い、後に解析でnoiseを消去することを考える。

High Pass Filter Dividerを通した時に、妙なsin関数を射影したようにPEAKが二つに分裂。

第3章 Experimental Method

実験手順について 以下のような手順で実験を行った。 磁気レンズ・ADC等、諸器具の電源を入れる。  以下のような手順で実験を行った。 磁気レンズ・ADC等、諸器具の電源を入れる。 測定するTargetについてビーム中心を合わせ、測定する角度に合わせる。 高電圧をかける。 ADCを用いて測定を行う。 停止後、高電圧を切る。 再び2.へ戻り、次の角度について測定を行う

注意点 高電圧の取り扱い 角度設定時のズレ 放電 虎ロープの囲いをつけることで幾分かは回避。 GROUNDに直結させることで槽の電位をゼロに保つ。 角度設定時のズレ 試行回数を増やすことで誤差を小さくする。 放電 ・・・・・・・・神に祈る・・・・・・・・・。

第4章 Preliminary Experiment 4.1 本実験セットアップについて 4.2 エネルギー較正 4.3 Mott-Scatteringの確認

4.1 本実験のセットアップについて 今実験では、「PMT A」のデータと「PMT B」のデータを足し合わせることで装置の対称性を整え、かつサンプル数を増やすことを考えている。そのためには、二つのPMTのデータが著しく異なっていてはならない。二つの測定データ数を、できうる限り「同じ」にしなければならない。 この観点から、最終的に実験で用いるThreshold、及びHVの値が決定した。 PMT No.3だけThresholdが特出して大きいのは、このデータについてだけAMPを用いて信号を増幅したためである。

4.2 エネルギー較正 エネルギー較正について、今回の実験で用いるScintillatorは、noiseを抑えるために「可能な限り薄く」作られている為に、137Csのconversion lineを確認することができない。(625keVを止めきることができない) そのためPMT No1と2とのエネルギー較正はMott-Scatteringの確認と共に行われる。 PMT No.3についてのみエネルギー較正が可能である。

Conversion Line と Pedestal 0 [ keV ] 625 [ keV ] ⇒ これから、エネルギーとチャンネルとの対応付けが成される。 0keV = 63.7ch 625keV = 1877ch ⇒ 線形を近似する          ことで、対応付け    ができる。

多少ずれてはいるが、近似的に線形になっている。 CALIBRATION PMT No.3 多少ずれてはいるが、近似的に線形になっている。

4.3 Mott Scatteringの確認 今回の実験で得られたシグナルが本当にMott-Scatteringによるものかどうかを考える。 いずれのPMTについても、データ点は良く一直線上にのっている。 ⇒ 測定されたシグナルは、確かにMott-Scatteringによるものであるといえる。

第5章 Results of Experiments

測定結果について 今回の実験の測定結果を挙げる。 これは、 (3時間)×(8方位)×(Target:3種類)×(表・裏) = 144時間                    = 144時間  ・・・という長丁場の実験の記録である。

測定結果θ=0° ・ターゲットをアルミにした時の各々のPMTでのシグナル ・ターゲットを空にした時の各々のPMTのシグナル Al Au ・ターゲットを金にした時の各々のPMTでのシグナル ・ターゲットを空にした時の各々のPMTのシグナル ・ターゲットを空にした時の各々のPMTのシグナル

いずれもきれいなGAUSSIANの形になっている 測定結果θ=0° ・ターゲットを金にした時の各々のPMTでのシグナルから、空の時のシグナルを引いたもの ・ターゲットをアルミにした時の各々のPMTでのシグナルから、空の時のシグナルを引いたもの Al-empty Au-empty いずれもきれいなGAUSSIANの形になっている

6.1 測定結果 6.2 Scatter Plot 6.3 誤差の評価 6.4 フォトマルアシンメトリー 6.5 データ評価 第6章 Analysis 6.1 測定結果 6.2 Scatter Plot 6.3 誤差の評価 6.4 フォトマルアシンメトリー 6.5 データ評価

6.1 測定結果 得られたデータをPAWを用いてヒストグラムを作り解析する。 6.1 測定結果 得られたデータをPAWを用いてヒストグラムを作り解析する。 GAUSSIANでフィットを行い、半値幅・2σ幅で、ヒストグラムを積分し、その結果をモット散乱によって得られたシグナルである、とした。

シグナル数(空でのデータを引いた残り)は同程度 測定結果 (金・2σ・表) シグナル数(空でのデータを引いた残り)は同程度 しかし、空のデータ(=Back Ground)は減少

Scintillator を2枚重ねて用いること によって、Back Ground を減少させること 測定結果 省略するが、他の値(アルミ・半値幅・裏等)でも同じような結果 ⇒  表・裏、ともに当初の目標は達成。 しかし、もう少し詳しく測定結果を見てみよう。 ⇒ Scatter Plot Scintillator を2枚重ねて用いること によって、Back Ground を減少させること

6.2 2次元スキャッタープロット Au Al empty 縦軸はロングゲートでのスケーラーの値を各イベントごとにプロットしたもので、横軸はナローゲートのそれである。

この辺の密度は大体同じくらいになっている 2次元Scatter Plot の比較 Au empty この辺の密度は大体同じくらいになっている noise ここのシグナル数が違っている Mott シグナル ・・・といくばくかの noise

2次元Scatter Plot の比較 画面中央のカットにモット散乱のデータが含まれている。 Au 画面中央のカットにモット散乱のデータが含まれている。 上半面でプロットされているのはよりエネルギーの高い粒子と考えられ、これによりロングゲートでノイズを減らすことに成功したといえる。 long narrow empty long narrow

6.4 フォトマルアシンメトリー ・ 様々な装置それ自身のアシンメトリー 1runにおける左右のフォトマルのアシンメトリー 6.4 フォトマルアシンメトリー フォトマルアシンメトリーの定義 ・ 様々な装置それ自身のアシンメトリー 1runにおける左右のフォトマルのアシンメトリー 3時間分(Front , Back)、及び、6時間分(Front+Back)はつぎのようになった。

ビーム軸のずれに対する装置のアシンメ トリーについての考察 ここでグラフは            の形をしているがこのサインカーブはφの係数が1であることから以下で述べるような理論で予想されるビーム軸のずれからくる装置のアシンメトリーを表していると考えられる。

装置のアシンメトリーについての考察 ビーム軸がわずかに傾いているだけで数%もの装置のアシンメトリーがあらわれる。磁場を用いてアルミのアシンメトリーを後で述べる理由により1%以下にしたかったが表、裏で変化してしまった。 しかし、これは、パラメーターを決定することで完全に理論的に予測することが可能である。

6.5 データ評価 装置のアシンメトリーの多くは次の操作をすることにより消えることが予想される。 6.5 データ評価 装置のアシンメトリーの多くは次の操作をすることにより消えることが予想される。 この操作で定義されたアシンメトリーは次のようになった。

測定結果 Asymmetry

Asymmetry : FRONT + BACK

Asymmetryについての解析 ターゲットアルミでの散乱の場合 この式での第3項はZが小さいためほとんど効いてこない。 アルミのビーム軸の装置のアシンメトリーをビーム軸の傾きに対するヌルアシンメトリーと定義しそのパラメーターから金のヌルアシンメトリーを予想することができる。パラメーターは最小2乗法により決定した。 それを金の本データから差し引くことでみたい電子の偏極からくるアシンメトリーをとりだした。

Asymmetry 結果 1

Asymmetry 結果 2 理論から予想されるアシンメトリーは電極によるスピンの運動と多重散乱の効果を合わせると0.006程になることが予想される。これは実験結果と一致する。

Multiple Scatteringによる寄与 厚さが増すにつれて、得られるAsymmetryは小さくなることが確認される。この効果が、今回の実験で用いた範囲まで線形に続いているのかは実は定かではないが、ここではそうなっているとして考えている。

Asymmetryが無いとした時の、χ2乗では、約23%程度 χ2 を用いてのデータの分析 左の式で与えられるχ2乗は、以下の分布に従うことが知られている。 Χ2乗が、約0.74%で最小 =0.946 Asymmetryが無いとした時の、χ2乗では、約23%程度 χ2乗=0.9462では、  約91% 

理論上期待される値と、ほぼ同程度の、Asymmetryの測定に成功した。 結論 0.74% 理論上期待される値と、ほぼ同程度の、Asymmetryの測定に成功した。

今後の改善点について 今回の実験を継続していくにあたっての、改善点について記述する。 ・・・来年もこの実験やるんですかねぇ・・・ 表・裏の違いによる非対称を消すためにホルダーをより強く固定する工夫を考える。 より薄い金の薄膜を用いる。 より時間をかけて統計的な誤差を小さくする。 安定なマグネットレンズを手に入れる。 四重極マグネットを用いてカウント数を増やす。 放電しない電極板を手に入れる。 ・・・来年もこの実験やるんですかねぇ・・・

(補足) 四重極マグネット 理論上はcount数が20倍になることが予想された

Acknowledgments 笹尾先生、野村先生、畑先生、TAの横山さん、 そして、この実験に関わってくださった全ての方々、 本当にありがとうございました。 中野 シンタロー