Ⅲ 結晶中の磁性イオン 1.結晶場によるエネルギー準位の分裂 2.スピン・ハミルトニアン

Slides:



Advertisements
Similar presentations
無機化学 I 後期 木曜日 2 限目 10 時半〜 12 時 化学専攻 固体物性化学分科 北川 宏 301 号室.
Advertisements

光・放射線化学 4章 4.4 FUT 原 道寛.
化学概論 第5回 GO⇒41⇒GO を押してください 33 / 80.
大学院物理システム工学専攻2004年度 固体材料物性第3回
材料系物理工学 第5回弱い磁性も使いよう 佐藤勝昭.
平成18年度 構造有機化学 講義スライド 復習: 混成軌道 軌道のs性とその応用 奥野 恒久.
第2回応用物理学科セミナー 日時: 6月 2日(月) 16:00 – 17:00 場所:葛飾キャンパス研究棟8F第2セミナー室
固体の圧電性.
核磁気共鳴法とその固体物理学への応用 東大物性研: 瀧川 仁 [Ⅰ] 核磁気共鳴の基礎と超微細相互作用
小笠原智博A*、宮永崇史A、岡崎禎子A、 匂坂康男A、永松伸一B、藤川高志B 弘前大学理工学部A 千葉大大学院自然B
クラスター変分法による 超新星爆発用 核物質状態方程式の作成
第1回応用物理学科セミナー 日時: 5月19日(月) 15:00ー 場所:葛飾キャンパス研究棟8F第2セミナー室 Speaker:鹿野豊氏
電子物性第1 第6回 ー原子の結合と結晶ー 電子物性第1スライド6-1 目次 2 はじめに 3 原子の結合と分子 4 イオン結合
TTF骨格を配位子に用いた 分子性磁性体の開発 分子科学研究所 西條 純一.
空孔の生成 反対の電荷を持つイオンとの安定な結合を切る必要がある 欠陥の生成はエンタルピーを増大させる
平成18年度 構造有機化学 講義スライド テーマ:炭素陰イオン&二価炭素 奥野 恒久.
中性子過剰核での N = 8 魔法数の破れと一粒子描像
Ⅰ 孤立イオンの磁気的性質 1.電子の磁気モーメント 2.イオン(原子)の磁気モーメント 反磁性磁化率、Hund結合、スピン・軌道相互作用
核磁気共鳴法とその固体物理学への応用 東大物性研: 瀧川 仁 [Ⅰ] 磁気共鳴の原理と超微細相互作用、緩和現象
MnCuNiFe合金の低温における 内部摩擦の研究
2.2.1 ブラベー格子 単位格子:原子が配列している周期的な配列の中で最も     単純で最小な単位    
Ⅳ 交換相互作用 1.モット絶縁体、ハバード・モデル 2.交換相互作用 3.共有結合性(covalency)
大学院理工学研究科 2004年度 物性物理学特論第7回 -磁気光学効果の電子論(3):バンド理論-
質量数130領域の原子核のシッフモーメントおよびEDM
材料系物理工学 第3回 鉄はなぜ磁気をおびる?
核磁気共鳴法とその固体物理学への応用 東大物性研: 瀧川 仁 [Ⅰ] 核磁気共鳴の基礎と超微細相互作用
1次元電子系の有効フェルミオン模型と GWG法の発展
平成18年度 構造有機化学 講義スライド テーマ:芳香族性 奥野 恒久.
Dissociative Recombination of HeH+ at Large Center-of-Mass Energies
原子核物理学 第8講 核力.
結晶工学特論 第2回目 前回の内容 半導体デバイス LED, LD, HEMT 半導体デバイスと化合物半導体 種類の豊富さ、直接遷移型、
平成22年6月6日 修士課程入試ガイダンス 大きなゆらぎと相転移現象 宮下精二.
HERMES実験における偏極水素気体標的の制御
大学院物理システム工学専攻2004年度 固体材料物性第2回
Ⅱ 磁気共鳴の基礎 1.磁場中での磁気モーメントの運動 2.磁気共鳴、スピンエコー 3.超微細相互作用、内部磁場 references:
Ⅴ 古典スピン系の秩序状態と分子場理論 1.古典スピン系の秩序状態 2.ハイゼンベルグ・モデルの分子場理論 3.異方的交換相互作用.
研究課題名 研究背景・目的 有機エレクトロニクス材料物質の基礎電子物性の理解 2. 理論 3. 計算方法、プログラムの現状
Cr-アセチリド-テトラチアフルバレン型錯体による
理研RIBFにおける 中性子過剰Ne同位体の核半径に関する研究
量子力学の復習(水素原子の波動関数) 光の吸収と放出(ラビ振動)
Appendix. 【磁性の基礎】 (1)磁性の分類[:表3参照]
物性物理学で対象となる 強相関フェルミ粒子系とボーズ粒子系
2次元系における超伝導と電荷密度波の共存 Ⅰ.Introduction Ⅱ.モデルと計算方法 Ⅲ.結果 Ⅳ.まとめと今後の課題 栗原研究室
遅いダイナミックスを誘起する 相互作用の微視的機構
アセチリド錯体を構成要素とする 分子性磁性体の構築と その構造及び磁気特性の評価
冷却原子系を用いた 量子シミュレーション: 格子場の理論に対する 新奇シミュレーション技術の 現状と未来
Why Rotation ? Why 3He ? l ^ d Half-Quantum Vortex ( Alice vortex ) n
学年   名列    名前 物理化学 第1章5 Ver. 2.0 福井工業大学 原 道寛 HARA2005.
第一原理計算でひも解く合金が示す長周期積層欠陥構造の形成メカニズム
第6回講義 前回の復習 ☆三次元井戸型ポテンシャル c a b 直交座標→極座標 運動エネルギーの演算子.
目次 1. 原子における弱い相互作用 2. 原子核のアナポールモーメント 3. アナポールモーメントから何がわかるか?
原子核の殻構造の相対論的記述 n n n σ ω n σ ω n 柴田研究室 石倉 徹也 1.Introduction n n
ストレンジネスで探る原子核 -ハイパー核の世界-
インフレーション宇宙における 大域的磁場の生成
13族-遷移金属間化合物の熱電材料としての応用
格子ゲージ理論によるダークマターの研究 ダークマター(DM)とは ダークマターの正体を探れ!
学年   名列    名前 物理化学 第1章5 Ver. 2.0 福井工業大学 原 道寛 HARA2005.
メスバウアー効果で探る鉄水酸化物の結晶粒の大きさ
原子核物理学 第7講 殻模型.
原子核物理学 第6講 原子核の殻構造.
工学系大学院単位互換e-ラーニング科目 磁気光学入門第7回 -磁気光学効果の電子論(2):量子論-
工学系大学院単位互換e-ラーニング科目 磁気光学入門第7回 -磁気光学効果の電子論(2):量子論-
講師:佐藤勝昭 (東京農工大学大学院教授)
現実的核力を用いた4Heの励起と電弱遷移強度分布の解析
第20回応用物理学科セミナー 日時: 2月25日(木) 16:10 – 17:40 場所:葛飾キャンパス研究棟8階第2セミナー室
第39回応用物理学科セミナー 日時: 12月22日(金) 14:30 – 16:00 場所:葛飾キャンパス研究棟8F第2セミナー室
複合結晶[Ca2CoO3+δ]pCoO2の磁性と結晶構造
複合アニオンに起因した多軌道性と低次元性からうまれる 強相関電子物性の研究
60Co線源を用いたγ線分光 ―角相関と偏光の測定―
軽い原子核の3粒子状態 N = 11 核 一粒子エネルギー と モノポール a大阪電気通信大学 b東京工業大学
Presentation transcript:

Ⅲ 結晶中の磁性イオン 1.結晶場によるエネルギー準位の分裂 2.スピン・ハミルトニアン Ⅲ 結晶中の磁性イオン 1.結晶場によるエネルギー準位の分裂 2.スピン・ハミルトニアン 3.Jahn-Teller (ヤーン・テラー) 効果

周囲の陰イオンが作る電場は球対称性を破る。 Ⅲ-1 結晶場によるエネルギー準位の分裂 色々なイオン結晶磁性体の構造 K, La Cu, Mn F, O Mn, Fe F, O ペロブスカイト(cubic), KCuF3, LaMnO3 ルチル(tetragonal), MnF2, VO2 スピネル(cubic), Fe3O4, ZnCr2O4, LiV2O4 周囲の陰イオンが作る電場は球対称性を破る。 d状態のエネルギー準位が分裂 Li, Zn V, Cr, Fe

2.陰イオンのp状態との混成(d-p 混成) 3d遷移金属イオンでは結晶場のエネルギーがスピン軌道相互作用より大きい。 結晶場の原因 1.周囲の陰イオンが作る静電ポテンシャル 2.陰イオンのp状態との混成(d-p 混成) 大きさを正確に計算するのは困難 結晶場の固有状態は対称性によって決まる。(群論) 例:正八面体の結晶場(Oh:4C3, 3C4, 6C2 など) 3d波動関数 (線形変換)

正八面体結晶場の固有状態とエネルギー準位

1.結晶場 < Hund結合 (弱い結晶場、High Spin State) 多電子状態 1.結晶場 < Hund結合 (弱い結晶場、High Spin State) 基底L多重項の (2L+1)の状態が結晶場で分裂する。 例:3d6  (Fe2+) S=2 2.結晶場 > Hund結合 (強い結晶場、Low Spin State) S=0

基底状態に軌道の縮退がないとき、軌道角運動量の期待値はゼロ。 Ⅲ-2 スピン・ハミルトニアン 軌道角運動量の消失 基底状態に軌道の縮退がないとき、軌道角運動量の期待値はゼロ。 ハミルトニアンは実関数 波動関数jg(r)は実関数に選ぶことが出来る。 軌道ゼーマンエネルギーの1次の項は消えるが、高次の項が残る。 軌道常磁性(van Vleck paramagnetism)と有効スピン・ハミルトニアン

LS多重項(Hund則)のうち、2L+1個の軌道状態が結晶場によって分裂 van Vleck 軌道常磁性 結晶場準位 (無摂動項) 磁場によって誘起された軌道磁気モーメント 磁化率

有効スピン・ハミルトニアン 基底軌道状態に縮退のない場合: 2次摂動エネルギー(スピン状態に縮退がある。)

他の項も含めると: の主軸系では L>0 : gテンソルの主値<2 L<0 : gテンソルの主値>2 1イオン性異方性エネルギー Van Vleck 軌道常磁性 gテンソルの異方性 の主軸系では L>0 : gテンソルの主値<2 L<0 : gテンソルの主値>2   Sz=0 例:S=1,D<0のとき  (イジング的異方性) Sz=1 正方晶(tetragonal):DK0 斜方晶(orthorhombic):EK0

Ⅲ-3 Jahn-Teller効果 dz=b/2aでエネルギー最小 基底状態が縮退しているとき 例:Cu2+(3d)9 tetragonalにひずむと: 電子のエネルギー利得:-a dz 格子のエネルギー増加:b(dz)2 dz=b/2aでエネルギー最小 (歪むことで必ずエネルギーの得がある。) (3d)8 (Ni2+)の場合は起こらない。 tetragonal cubic 原子変位:dz Cu2+ Ni2+ 結晶中ではJahn-Teller歪みが周期的に生じる。(協力的Jahn-Teller効果) 一様な歪み(q=0):La2CuO4 交替的な歪み(q=(p, p)):KCuF3, LaMnO3

交替的Jahn-Teller効果 反強軌道秩序 KCuF3 LaMnO3 共鳴X線散乱による軌道秩序の観測:Murakami et al., Phys. Rev. Lett. 81 (1998) 582. 格子弾性エネルギー 結晶場エネルギー(電子系) 電子間クーロン相互作用 スピン間交換相互作用