有機EL材料を用いた 新しいシンチレーターの開発 久野研究室 2005年度 室井 章 荒木慎也 宮本紀之 佐藤朗
目次 シンチレータについて 開発目標 有機ELとは 有機EL発光材料 研究計画 励起・発光スペクトルの計測 まとめ
シンチレータに要求される性質 減衰時間が短い 高発光 減衰長が長い 加工性に優れる 安定性に優れる エネルギー分解能 時間分解能 薄型検出器 時間応答性 時間分解能 高発光 エネルギー分解能 時間分解能 薄型検出器 減衰長が長い 大型検出器の設計が可能 加工性に優れる 安定性に優れる
シンチレータの特徴 有機・無機 主成分 発光量 減衰時間 減衰長 安定性 加工性 プラスチック ポリスチレン × 65 ◯ 2.4ns ◯ シンチレータの特徴 有機・無機 主成分 発光量 減衰時間 減衰長 安定性 加工性 プラスチック ポリスチレン × 65 ◯ 2.4ns ◯ 250cm ◯ 液体 トルエン プソイドクメン × 50~80 ◯ 3.7ns 結晶 アントラセン △ 100 △ 30ns 結晶 NaI 260 0.23μs 2.59cm CsI 175 1.0μs 1.86cm
新しいシンチレータの開発目標 固体シンチレータ 液体シンチレータ 有機EL発光材料に着目 高発光 時間応答がはやい 減衰長が長い 安全、取り扱いが容易 高発光 減衰長が長い 有機EL発光材料に着目
有機EL(エレクトロルミネッセンス)とは 有機物質材料(高分子化合物)に電圧を印加して発光させる 少量の電圧で高発光を起こす新しい光源 新型ディスプレイの発光材料として実用化 陰極 電子 電子輸送層 発光層(有機物質) 0.2~0.3nm 正孔輸送層 陽極 正孔 有機ELディスプレイ (SONY) 有機EL発光素子
有機EL発光材料の特徴 高発光 減衰時間が短い 高分子化合物 水溶性に優れた材料がある 様々な波長の材料が開発されている
入手した有機EL発光材料 ADS086BE ADS128GE Coumarin-6 PPV ADS128GE(ポリマー) クマリン6(燈色粉末)
研究計画 励起・発光スペクトルの測定 今回の発表 水(界面活性剤)、有機溶媒に対する溶解度の測定 自己吸収の有無を調べる 水(界面活性剤)、有機溶媒に対する溶解度の測定 水溶性の検討、既存の蛍光体との溶解量の比較 放射線による励起時の発光量(PMTを用いる) 放射線耐性の測定
励起・発光スペクトルの計測 目的 方法 場所 発光した光を自己吸収することのない蛍光体を選ぶ 蛍光分光光度計を用いる 医学研究科共同研究実習センター 光源 励起波長 選択器 発光波長 選択器 光検出器 HITACHI蛍光分光光度計 F-3000 光源:Xeランプ 測定波長範囲:220nm~800nm 試料
励起・発光スペクトルの計測(2) プソイドクメン + ADS128GE ADS128GE 505nm 483nm 335nm プソイドクメン 300 400 500 600 700 300 400 500 600 700 プソイドクメン + ADS128GE 333nmで 励起 ADS128GE 505nm 483nm 4000 3000 2000 1000 [a.u] -1000 -2000 -3000 335nm プソイドクメン -4000 505nmの 発光 励起波長[nm]
まとめ 励起・発光スペクトル測定 新しいシンチレータ 今後の予定 有機溶媒ベース、水ベースで測定中 有機EL発光材料 溶解度の測定 PPVフィルムで測定 発光量 放射線耐性
365nm UVで発光!!
励起・発光スペクトルの計測(3) プソイドクメン + クマリン-6 [nm] [nm] 300 400 500 600 700 300
60Coによるコンプトン散乱を観測し、ピーク -予備- 光量の測定 ADC gate 発光量測定装置 60Co 1.33MeV 1.17MeV γ線 discriminator PMT 発光 delay signal 計測する溶液 コンプトン端 60Coによるコンプトン散乱を観測し、ピーク の半分の位置をコンプトン端と決定して 比較する。 counts adc channel
-予備- 励起・発光波長の計測-溶液調合- 単位はすべて[ g/ℓ ] 塩化ベンゼトニウムは180 [ g/ℓ ]で溶解 これらの溶液の励起・発光波長を測定する。 PPV(水溶液、フィルム)については溶かさずにそのまま測定。 PPO POPOP bis-MSB クマリン6 ADS086BE ADS128GE プソイドクメン 6.0 0.07 2.0 4.0 12 1 水+塩化ベンゼ トニウム 未調合 13 [ g/ℓ ]
-予備-励起・発光波長の計測-測定-(2) 名前 励起波長 発光波長 溶媒 プソイドクメン (269nm) (293nm) 第1蛍光体 PPO 359nm(+56nm) 378nm(+14nm) 第2蛍光体 POPOP 400nm(+15nm) 424nm(+6nm) Bis-MSB 413nm(-34nm) 432nm(+20nm) 有機EL材料 Coumarin-6 403nm(-47nm) 525nm(-25nm) ADS086BE 455nm(+52nm) 470nm(-4nm) ADS128GE 483nm(+26nm) 505nm(+36nm) Poly 358nm 440nm
-予備- KamLAND実験で用いられている液体シンチレータ 組成 プソイドクメン 20% PPO 0.15% パラフィンオイル(C12H26) 80% ⇒発光効率が低下 発光量 50%アントラセン 程度 安定な溶媒に、純度の高い、波長変換剤を必要としない蛍光体を用いる ⇒発光効率アップ ⇒UP! KamLAND 液体シンチレータ
-予備-有機シンチレータの組成と発光機構 POPOP PPO ポリスチレン (個体) トルエン プソイドクメン 第2蛍光体 第1蛍光体 主成分 (液体) 発光(364nm) 発光(418nm)⇒検出 波長 200nm 300 400 500 可視光領域 プソイドクメン (有機溶媒)励起 (269nm) 第1蛍光体 (PPO) 励起(303nm) 第2蛍光体 (POPOP) 励起(385nm) 紫外線励起の場合
-予備-有機シンチレータ[液体・プラスチック]の発光効率について Φ:蛍光量子収率 (Quantum Yield) 励起状態の分子数 蛍光放出の分子数 = 放射線エネルギー ΔE 溶媒分子の励起 溶媒 Φ トルエン 0.140 プソイドクメン 0.157 溶質 Φ PPO 0.830 POPOP 0.930 振動など 非輻射的エネルギー移行 衝突など 第1蛍光体の励起 振動など 輻射的エネルギー移行 発光 第2蛍光体の励起 振動など 輻射的エネルギー移行 発光 放射線のenergy loss ΔE に対して発光する 効率がよくない! 光検出器
-予備-従来の有機シンチレータの問題点 発光効率が悪い 液体シンチレータの主成分が有機溶媒である 主成分の蛍光量子収率(Φ)が小さい 放射線のenergy lossに対して発光に使われる割合が小さい 主成分はエネルギーの自己吸収を起こす プソイドクメン:293nm、トルエン:287nm、ポリスチレン : 波長変換剤が必要(量子収率<1) 液体シンチレータの主成分が有機溶媒である プソイドクメン、トルエンなど 揮発性、可燃性があり取り扱いにくく、安全面も問題がある 大容量の場合ノルマルパラフィンで希釈して使われる 発光効率下がる原因
-予備- 研究目標 高発光・時間の速い・安定・発光波長に対して透明・加工しやすいなシンチレータを作りたい -予備- 研究目標 高発光・時間の速い・安定・発光波長に対して透明・加工しやすいなシンチレータを作りたい 波長変換体を必要としない、発光効率のよい主成分 ポリマーとして使用できる材質 より安定で扱い易い溶媒を用いた液体シンチレータを制作する 水溶性に優れた蛍光体 大容量、大面積が可能かつ高発光で純度の高い液体シンチレータが可能 ⇒蛍光体として有機EL発光材料に着目
P=0.3Bρ B ΔE ΔE 時間分解能 エネルギー分解能 ΔE大きい 多重散乱 エネルギー・運動量の揺らぎ 薄型・高発光 ΔE小さい シンチレータ 時間分解能 エネルギー分解能 B ΔE大きい 多重散乱 エネルギー・運動量の揺らぎ シンチレータ 薄型・高発光 ΔE小さい ΔE 荷電粒子