多国籍企業による21世紀型ビジネスの探求 -利益と社会貢献の同時実現- 菅原 秀幸(北海学園大学) 日本経営学会第82回全国大会

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多国籍企業による21世紀型ビジネスの探求 -利益と社会貢献の同時実現- 菅原 秀幸(北海学園大学) 日本経営学会第82回全国大会 日本経営学会 第82回全国大会 日本経営学会第82回全国大会 2008年9月5日 多国籍企業による21世紀型ビジネスの探求 -利益と社会貢献の同時実現- 菅原 秀幸(北海学園大学) http://www.SugawaraOnline.com hide@SugawaraOnline.com SUGAWARA Hideyuki

BOP(貧困層)ビジネスとは何か? BOP = Bottom / Base of the Pyramid 世界の所得ピラミッド 約40億人 日本経営学会 第82回全国大会 BOP(貧困層)ビジネスとは何か? BOP = Bottom / Base of the Pyramid 世界の所得ピラミッド 1日5ドル 1日2ドル 1日1ドル 年収20,000ドル 年収2,000ドル 年収730ドル 年収365ドル 約40億人 (世界人口の約65%) 約28億人 (世界人口の約53%) World Bank(2005)より作成 援助の対象 or 安価な生産拠点⇒ 40億人・5兆ドルの市場 SUGAWARA Hideyuki

国際社会による貧困層へのアプローチ MDGs (ミレニアム開発目標) Global Compact 日本経営学会 第82回全国大会 国際社会による貧困層へのアプローチ MDGs (ミレニアム開発目標) - 2015年までに世界の貧困層を半減 50年間 2兆5千億ドル (日本の国家予算4年分) Global Compact 人権、労働、環境の分野における10原則 一日の所得が2ドル未満の貧困層の全世界人口に占める比率 66.7% (1981年)  →  52.9%(2001年)  15ポイントの現象  しかし、中国を除くと 58.8% (1981年)  →  54.9%(2001年)  4ポイントの現象 「拡大する市場フロンティアと、世界を動かす対話プラットフォーム」(2008/08/15) 7月に開かれた主要国首脳会議(洞爺湖サミット)で主要8カ国(G8)は、2005年に英グレンイーグルズ・サミットでG8が発表した、MDGs(ミレニアム開発目標)とODA(政府開発援助)に関する国際公約を再確認した。この国際公約では、2010年までにODA年間総額を500億ドル増額し、うち250億ドルはアフリカ向けとすることが掲げられている。 欧州連合(EU)はこの国際公約の実現に力を入れてきている。経済協力開発機構(OECD)の開発援助委員会(DAC)にも加盟しているEU加盟15カ国のODA総額は、2004年には429億ドルだったが、2007年には621億ドルと、200億ドル近く増額されている。そしてその資金は、EUが推進している「EUウォーター・イニシアティブ(EUWI)」「EUエネルギー・イニシアティブ(EUEI)」「EUアフリカ開発基金(EDF)」など数々のイニシアティブにおいて、 14億人 (2008.年8.月2日 世銀発表) SUGAWARA Hideyuki

BoP Key player = MNCs 貧困層ビジネスの登場 新たな市場 多国籍企業 ⇒利益追求 新たな アプローチ 40億人 日本経営学会 第82回全国大会 貧困層ビジネスの登場 -利益追求と貧困削減の同時実現- 経営上の意義 + 社会的な意義 Key player = MNCs 新たな市場 MoP ToP 多国籍企業  ⇒利益追求 新たな アプローチ BoP 40億人 グローバル社会  ⇒貧困削減 本業を通じた貢献 = 21世紀型のビジネス 企業サイドの要請 1. フロンティア市場探求 2. Sustainability 3. CRS SUGAWARA Hideyuki

BOPビジネスの主たる研究機関 University of Michigan, 日本経営学会 第82回全国大会 BOPビジネスの主たる研究機関 University of Michigan,  WDI's Base of the Pyramid Initiative  (http://www.wdi.umich.edu/ResearchInitiatives/BasePyramid/) Cornell University, Johnson School,  Center for Sustainable Global Enterprise  (http://www.johnson.cornell.edu/sge/) UNDP,  Growing Sustainable Business Initiative  (http://www.undp.org/partners/business/gsb/index.shtml) 本業を通じた貢献 = 21世紀型のビジネス 企業サイドの要請 1. フロンティア市場探求 2. Sustainability 3. CRS BoPビジネスは、企業の中核事業とは無縁の慈善事業として展開されるものではなく、 まさに企業の中核事業の一環として、貧困層の人々をパートナーとして展開される SUGAWARA Hideyuki

BOPビジネスに関する主たる研究 Hammond, A. L., et.al.(2007), 日本経営学会 第82回全国大会 BOPビジネスに関する主たる研究 Hammond, A. L., et.al.(2007), The Next 4 Billion: Market Size and Business Strategy at the Base of the Pyramid, World Resource Institute & International Finance Corporation. Hart, S.L and Al Gore (2007), Capitalism at the Crossroads: Aligning Business, Earth, and Humanity (2nd Edition), Wharton School Publishing. London, T. and S. Hart (2004), ‘Reinventing strategies for emerging market: beyond the transnational model’, Journal of International Business Studies, 35:350-370 Porter M. E. and M. R. Kramer (2006), ‘Strategy & Society: The Link Between Competitive Advantage and Corporate Social Responsibility’ Harvard Business Review, December: 78-92 Prahalad, C. K. (2002), The Fortune at the Bottom of the Pyramid: Eradicating Poverty Through Profits, Wharton School Publishing. 本業を通じた貢献 = 21世紀型のビジネス 企業サイドの要請 1. フロンティア市場探求 2. Sustainability 3. CRS BoPビジネスは、企業の中核事業とは無縁の慈善事業として展開されるものではなく、 まさに企業の中核事業の一環として、貧困層の人々をパートナーとして展開される SUGAWARA Hideyuki

Key concept: Serve the poor profitably 日本経営学会 第82回全国大会 21世紀型のビジネス 経営上の意義 + 社会的な意義 New Market Sustainability CSR 慈善事業ではなく、 ビジネスとしてBOPにアプローチ Key concept: Serve the poor profitably 「本業を通じた貢献」 本業を通じた貢献 = 21世紀型のビジネス 企業サイドの要請 1. フロンティア市場探求 2. Sustainability 3. CRS BoPビジネスは、企業の中核事業とは無縁の慈善事業として展開されるものではなく、 まさに企業の中核事業の一環として、貧困層の人々をパートナーとして展開される 事業外の位置付けで社会貢献活動に取り組むのではなく、中核事業が結果として社会貢献を実現する。 SUGAWARA Hideyuki

BOPの市場規模 (セクター別推計) 水道; 200億ドル ICT; 510億ドル 保健医療; 1580億ドル 運輸; 1790億ドル 住宅; 3320億ドル エネルギー; 4330億ドル 食品; 2兆8950億ドル (Source) Hammond, et al., (2007)

多国籍企業ネスレの歩み 1866年 スイスにて創立 1921年 途上国で最初の工場をブラジルに設立 日本経営学会 第82回全国大会 多国籍企業ネスレの歩み 1866年 スイスにて創立 1921年 途上国で最初の工場をブラジルに設立 Organizing milk collection, Building roads and cool stations, Giving free technical support, Promising to buy milk. - Milk- India, Pakistan, Philippines, China, Morocco, Chile, South Africa, Kenya…. - Coffee - Ethiopia, Nicaragua, El Salvador, Costa Rica, Thailand, Vietnam…. 500 factories; about half in developing countries 86 countries in which the Company has operations. Sourcing profile Nestlé buys CHF 8 billion of agricultural commodities from emerging economies every year – around two-thirds of the Company’s total expenditure on raw materials – and nearly 40% goes towards three key commodities: milk, coffee and cocoa. Over half a million farmers (610 000) supply Nestlé directly. 480 factories; about half in developing countries. SUGAWARA Hideyuki

Nestlé Creating Shared Value Report - 2007 日本経営学会 第82回全国大会 Nestlé Creating Shared Value Report - 2007 (http://www.Nestlé.com/SharedValueCSR/CSVatNestlé/Reporting/ ReportingSharedValue.htm) Our first principle is that our investment must be good for the Company and for the countries where we do business. Nestlé’s long-term objectives is to create sustainable value for its shareholders. To do this, we need to create value for the societies where we operate. SUGAWARA Hideyuki

Nestlé’s Concept of CSR: Creating Shard Value 日本経営学会 第82回全国大会 Nestlé’s Concept of CSR: Creating Shard Value (http://www.Nestlé.com/SharedValueCSR/Overview.htm) Nestlé(2006)より GE-ecomagination HP 外部の標準的な基準に合わせるためや、慈善活動として行うのではなく、 企業が長期的に競争力を保持していくために、社会的・環境的利益を生み出していく。 Value for Society, Value for Nestlé SUGAWARA Hideyuki

Shared Value Creation Analysis 日本経営学会 第82回全国大会 Shared Value Creation Analysis Organic growth 5-6 % SUGAWARA Hideyuki

Long term Shared Value Partnership Nestlé の成功要因 近江商人の三方よし 日本経営学会 第82回全国大会 Nestlé の成功要因 Long term Shared Value Partnership 近江商人の三方よし  「売り手よし 買い手よし 世間よし」  SUGAWARA Hideyuki

Unconventional Partnership with NGOs 企業と市民社会とのかかわりに関するアンケート調査 http://www.SugawaraOnline.com/research/CSRsurvey.htm 日・米・欧多国籍企業350社からの回答の単純集計結果 (出所)菅原秀幸・加藤誠久(2006), p14

貧困層ビジネスの事例 1. UNDP GSB (Global Sustainable Business) Initiative 目的は、企業が市場原理に基づいて途上国で活動して得られる商業上の利益と、途上国における開発上の利益を合致させること。 16 カ国( アルバニア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、カンボジア、エル・サルバドル、エチオピア、 インドネシア、ケニヤ、マケドニア、マダガスカル、マラウィー、モルドバ、モンテネグロ、セルビア、タンザニア、トルコ、ザンビア) 1. UNDP GSB (Global Sustainable Business) Initiative 2. Center for Sustainable Global Enterprise, Cornell University     Stuart Hart, BOP Protocol(2008) The SC Johnson Company (2005, Kenya) The Solae Company (2006, India) 3. Hammond, et al.(2007), The Next 4 Billion    World Resource Institute & International Finance Corporation

日本経営学会 第82回全国大会 貧困層ビジネスと従来型ビジネス チャンス、チャレンジ SUGAWARA Hideyuki

利益と社会貢献の同時実現が21世紀の進歩? 「テーゼ(命題)とアンチテーゼ(反対命題)という 正反対の力が統合されることが歴史の進歩」 「テーゼ(命題)とアンチテーゼ(反対命題)という    正反対の力が統合されることが歴史の進歩」                       ドイツ人哲学者ヘーゲル            多国籍企業による利益と社会貢献の同時実現が21世紀の進歩           = 21世紀型ビジネス 事業外の位置付けで社会貢献活動に取り組むのではなく、中核事業が結果として社会貢献を実現する。