第2回 サービス・マーケティング論 サービスのマーケティング・ミックス 8Pと分類
サービスの定義 ある主体が別の主体に提供する経済活動 通常、時間単位の行動であり、受け手に対して期待通りの結果をもたらす 第2回 サービス・マーケティング論 サービスの定義 ある主体が別の主体に提供する経済活動 通常、時間単位の行動であり、受け手に対して期待通りの結果をもたらす 顧客は、金銭、時間、活動を対価とし、サービス提供に関わる物を利用し、価値を手に入れることを期待 ただし、通常はサービス提供に関わる物の所有権を得ることはない。 サービスとは、ある主体が別の主体に提供する経済活動である。 通常、時間単位の行動であり、受け手自身あるいは受け手の所有物や財産に対して期待通りの結果をもたらすものである。 顧客は、金銭、時間、活動の対価として物、労働力、専門技術、設備、ネットワーク、システムを利用し、価値を手に入れることを期待している。 ただし、通常はサービス提供に関わる物の所有権を得ることはない。 サービスを2つの主体による経済活動として定義 市場における売り手と買い手の価値交換 通常「時間単位の行動」 サービス購入の目的は「期待通りの結果」 「価値を手に入れることを期待して」、「金銭、時間、活動の対価として」購入 「サービス提供に関わる物を利用する」ことから価値が生まれる
サービス業特有のマーケティング課題 サービスには在庫がない 無形要素がサービス価値を生み出す 可視化が難しい 顧客が共同生産者となる 第2回 サービス・マーケティング論 サービス業特有のマーケティング課題 サービスには在庫がない 無形要素がサービス価値を生み出す 可視化が難しい 顧客が共同生産者となる 顧客がサービス経験を左右する インプットとアウトプットの変動が大きい 時間が重要な要素である オンライン・チャネルが存在する サービス業特有のマーケティング課題 製造業で確立されたマーケティング概念やマーケティング手法は所有権の移転を伴わないサービス業には当てはまらない。 購入とレンタルでは顧客の期待や意思決定基準が異なり、サービスを提供する組織とどのようにかかわるかという顧客経験も違う。
広範囲なマーケティング・ミックスが必要なサービス業 第2回 サービス・マーケティング論 マーケティングこそが営業利益につながる活動 マーケティングには、経営陣による「競争戦略」、各部署のマネージャーによる「日常業務」、「組織全体の顧客志向の発想」などなどの側面がある。 ここではマーケティングを「顧客に対する全活動」とする。 広範囲なマーケティング・ミックスが必要なサービス業
サービス・マーケティングの8P Product Elements Place and Time 第2回 サービス・マーケティング論 サービス・マーケティングの8P Product Elements Place and Time Price and Other User Outlays Promotion and Education Physical Environment Process People Productivity and Quality 物的製品のマーケティング戦略策定の際には製品、価格、流通、プロモーションの4つの基本的な項目について検討するのが一般的。 Product Elements サービス・プロダクト Place and Time 場所と時間 Price and Other User Outlays 価格とその他のコスト Promotion and Education プロモーションと教育 Physical Environment 物的環境 Process サービス・プロセス People 人 Productivity and Quality 生産性とサービス品質 各要素は統合され、相乗効果を生むように組み合わされなくてはならない
Product Elements (製品要素) 第2回 サービス・マーケティング論 Product Elements (製品要素) マーケティング戦略の根幹をなすもの ターゲットとする顧客に価値を提供し、顧客ニーズを満たすような、サービス・コンセプトを策定 顧客の中核的ニーズを満たす「中核要素」とサービス価値を高めるための「付帯要素」で構成される マーケティング戦略の根幹をなすもの ターゲットとする顧客に価値を提供し、競合相手以上に顧客ニーズを満たすような、サービス・コンセプトの策定
Place and Time (場所と時間) 顧客はインターネットの登場により、都合のよい時間と場所で情報サービスを受けられる。 第2回 サービス・マーケティング論 Place and Time (場所と時間) 顧客はインターネットの登場により、都合のよい時間と場所で情報サービスを受けられる。 サービス提供側は顧客に直接サービスを提供する場合もあれば、小売店などに業務を委託する場合もある サービス提供の高率に大きく影響する要素 顧客にサービスを提供するためには、場所、手順、手段、チャネルを決めなくてはならず、サービス特性に応じて、物的チャネルとオンライン・チャネルのいずれかを選択する。 顧客はインターネットの登場により、都合のよい時間に好きな場所でネットワークを介して情報サービスを得られるようになっている。 サービス提供側は顧客に直接サービスを提供することもあれば、手数料を払って、小売店などに委託する場合もある。 サービス提供の効率に大きく影響する。
Price and Other User Outlays (価格とその他のコスト) 第2回 サービス・マーケティング論 Price and Other User Outlays (価格とその他のコスト) サービスそのものの費用とそれ以外の費用 サービスに付随する費用も考慮し最小限に抑える努力が必要 顧客がサービス施設に出向くための交通費や時間が必要 顧客がストレスや不快感を感じている場合もある Outlays の意味は「経費・費用」 基本的に物的製品と同じ。 ただし、サービス施設へ必ず出向く必要がある場合は交通費や時間などを十分に考慮する必要がある。 サービスそのものの費用とそれ以外の費用についても考慮する必要がある。 サービス提供側にとっては、価格戦略によってコストを回収し、利益を得るための収入の仕組みが決まる。 価格戦略は柔軟な対応が必要であり、顧客の属性・サービスの時間と場所、サービスの需要状況、サービスの提供能力に合わせて随時変更しなくてはならない。 顧客にとってはサービス価格はメリットを享受するために支払わなくてはならないコストの一部であり、あるサービスが「価値ある」ものかどうかを評価するためにはサービス価格だけではなく、必要な時間や労力についても配慮し、付随するコストについても最小限に抑える努力が必要である。
Promotion and Education (プロモーションと教育) 第2回 サービス・マーケティング論 Promotion and Education (プロモーションと教育) 特に新規顧客を対象に啓発的なコミュニケーションを行う サービスのベネフィット サービス提供の場所と時間 効果的なサービス・プロセスへの参加方法 マーケティングでは効果的なコミュニケーションは極めて重要な要素 1 必要な情報やアドバイスを提供する 2 ブランドやサービスのメリットをターゲット層に説明する 3 特定の時期に行動を起こすように働きかける という3つの役割を持つ サービスマーケティングでは 特に新規顧客を対象に啓発的なコミュニケーションを行い、サービスのベネフィット、サービス提供の場所と時間、効果的なサービス・プロセスへの参加方法などの必要な情報を提供する。
Process (サービス・プロセス) 「どのように」サービスが提供されたのかは「どのような」サービスが提供されたのかとともに重要 第2回 サービス・マーケティング論 Process (サービス・プロセス) 「どのように」サービスが提供されたのかは「どのような」サービスが提供されたのかとともに重要 顧客がサービス・プロセスに深くかかわるため、不適切なプロセスでは非効率的となる また、スタッフも業務をスムーズに遂行できなくなる 「どのように」サービスが提供されたのかは「どのような」サービスが提供されたのかとともに重要である。 顧客がサービスの共同生産者となる場合を始め、顧客がサービス・プロセスに積極的にかかわることが多いので、的確なサービス・プロセスを設計しないとサービスに時間がかかり手順が複雑で、非効率的なものとなり、無駄な時間が増えて顧客の期待を裏切ることになる。 スタッフも業務をスムーズに遂行できず、生産性が低下するとともにミスが増える。
Physical Environment (物理的環境) 第2回 サービス・マーケティング論 Physical Environment (物理的環境) 物理的環境から得られる視覚的要素がサービスの品質を表象 物理的環境が顧客の印象を大きく左右する 建物の外観、景色、乗り物、インテリア、機器、スタッフの制服、掲示物、印刷物などすべての視覚的要素がサービス品質を表象する 物的環境が顧客の印象を大きく左右する
People (人) 多くのサービス業ではスタッフが顧客に直接サービスを提供する 第2回 サービス・マーケティング論 People (人) 多くのサービス業ではスタッフが顧客に直接サービスを提供する 当然、従業員によるサービスが、知覚サービス品質に大きく得供する また、別の顧客が他の顧客のサービス・パフォーマンスを左右する場合もある 多くのサービス業ではスタッフが顧客に直接サービスを提供する。 従業員によるサービスが知覚されるサービス品質に大きく影響する 別の顧客が他の顧客のサービス・パフォーマンスを左右する場合もある これらを考慮し、従業員のマネージメント、顧客のマネージメントに努めなくてはならない。
Productivity and Quality (生産性とサービス品質) 第2回 サービス・マーケティング論 Productivity and Quality (生産性とサービス品質) 生産性と品質は同時に考慮しなくてはならない コスト削減には生産性の改善が必要 不適切なサービス・カットは顧客の不満につながる 「サービス品質」の改善は顧客の立場から行う 理想は、生産性と品質を同時に改善する戦略 生産性と品質は別々に取り扱われるべきものではない。 コスト削減には生産性の改善が不可欠。 不適切なサービスのカットは顧客の不満につながることになる。 「サービスの品質」の改善は顧客の立場から行われなくてはならない。 サービス改善のための投資の際にはコストと売上予想とのバランスを考慮する必要がある。 サービス品質が改善できても顧客が追加費用を払おうとしなければ投資が無駄になる。 生産性と品質を同時に改善する戦略が最大の効果がある 技術革新に伴ってあたらしいサービス機会が生まれる場合があるが、顧客志向のイノベーションを行い、顧客に評価されるような利便性を提供しなくてはならない。
他の部門との連携 オペレーション マネージメント マーケティング マネージメント 顧客 人材 マネージメント
フレームワーク 顧客理解 サービス・モデルの構築 顧客インターフェースのマネジメント サービス戦略の遂行
情報 サービスの4つのカテゴリー 体 物 心 人を対象とする行為 物を対象とする行為 有形の行為 人の身体を対象とするサービス 第2回 サービス・マーケティング論 サービスの4つのカテゴリー 人を対象とする行為 物を対象とする行為 有形の行為 体 人の身体を対象とするサービス 物 有形資産を対象とするサービス 製造業のマーケティングにおいては物が製造されるプロセスを詳しく知る必要がない。 サービスでは顧客がサービスの生産プロセスに関わることが多く顧客の好みのサービス手順がある可能性もある したがって、サービスが提供されるまでのプロセスを把握する必要がある。 美容院と国際線の旅客輸送のように幅がある。 インプットは人・物・情報に大別できる。 アウトプットは顧客自身がサービス対象となる場合もあるし、機械の故障を直す場合は物がサービスの対象となる。 また、財務データが対象となるサービスもある。 インプットが有形・無形 アウトプットが人か物かによって4つにわける。 無形の行為 心 人の心を対象とするサービス 情報 無形資産を対象とするサービス
体に作用するサービス 人の身体を対象とするサービス 医療・宿泊・旅行・美容院・フィットネスジムなど 顧客自身がサービス・プロセスの構成要素 第2回 サービス・マーケティング論 体に作用するサービス 人の身体を対象とするサービス 医療・宿泊・旅行・美容院・フィットネスジムなど 顧客自身がサービス・プロセスの構成要素 十分なベネフィットを得るためには、オペレーションに積極的に協力する必要がある 金銭的な対価以外に 精神的労働・肉体的労働 恐怖・苦痛 顧客に何が起こるのかという観点からプロセスと成果を検討 輸送・食事・宿泊・健康増進・美容など 顧客自身がサービス・システムに入っていなければならない 顧客自身がサービス・プロセスの構成要素 顧客がサービス工場に入り、人や施設からベネフィットを享受 十分なベネフィットを得るためには、オペレーションに積極的に協力する必要がある 組織は顧客に何が起こるのかという観点からサービスプロセスと成果について検討する必要がある 顧客の負担は、金銭以外に、時間と精神的・肉体的労働を費し、恐怖や苦痛を感じる場合もある
物に作用するサービス 有形資産を対象とするサービス サービス対象物が物であるため生産工程と同様の特性を持つ サービスの生産と消費が可分 第2回 サービス・マーケティング論 物に作用するサービス 有形資産を対象とするサービス サービス対象物が物であるため生産工程と同様の特性を持つ サービスの生産と消費が可分 顧客自身がサービス提供現場にいることは少ない 顧客のサービスへの関与も限定的 修理・輸送・設置・回収・廃棄など 家の修理、植栽剪定、機械の修理など これらのサービスは生産工程のようなもの サービスの生産と消費が別々に行われる。 サービス対象物が存在する間の付加価値を高めるための行為も含まれる 顧客自身がサービス提供現場にいることは少ない サービスプロセスへの関与も限定的 サービスの生産と消費が「可分」なもの
心に作用するサービス 人の心を対象とするサービス 教育・情報提供・アドバイスなど 第2回 サービス・マーケティング論 心に作用するサービス 人の心を対象とするサービス 教育・情報提供・アドバイスなど 顧客の心に作用することにより態度や行動に影響を与えるサービス サービス側に強い倫理観が必要 顧客側は精神的努力が必要 提供される情報に接することができればよい サービス現場にいる場合は体に作用するサービスに類似 教育・情報提供・アドバイスなど 顧客の心に作用することにより態度や行動に影響を与えるサービス 顧客が依存的立場であったり、だまされる可能性があったりする場合はサービス提供側に強い倫理観が必要 顧客側がある程度の精神的努力をしなければならない。 しかし、顧客がその場にいる必要はなく、提供される情報に接することができればよい 体に関するサービスと対比すると、 旅客サービスなどは眠っていても目的地に着くが、教育などは眠っていると全く知識を得ることはできない。
情報に作用するサービス 無形資産を対象とするサービス コンピュータの出現により大きく変容したサービス 専門家による情報処理・情報提供 第2回 サービス・マーケティング論 情報に作用するサービス 無形資産を対象とするサービス コンピュータの出現により大きく変容したサービス 専門家による情報処理・情報提供 会計・法律・リサーチ・コンサルティングなど 心に作用するサービスと明確に区別することが困難 心に作用するサービスと合わせて情報サービス コンピュータの出現により大きく変容したサービス 情報はアウトプットとしてはわかりにくいサービス 専門家が知識を駆使して情報処理、情報提供している。 これらはレポート、書籍、CD-ROM、DVDなどで残しておくことができる 会計、法律、マーケティングリサーチ、経営コンサルティングがある。 心に作用するサービスと明確に区分できないものが多く、ここでは、 人の心に作用するサービスと合わせて情報サービスと呼ぶ。
サービス施設への接触 「体に作用するサービス」ではサービス施設と接触することが必要 「情報サービス」ではサービス施設へ接触することが少ない 長年の習慣や専門性などがサービス施設への接触へ影響する