物理システム工学科3年次 物性工学概論 第5回光る半導体 物理システム工学科3年次 物性工学概論 第5回光る半導体 佐藤勝昭
半導体とは何か 半導体にはどんな物質があるか バンド構造とバンドギャップ 半導体の透過色、反射色 吸収スペクトル:バンド間遷移 復習コーナー 半導体の光学現象 半導体とは何か 半導体にはどんな物質があるか バンド構造とバンドギャップ 半導体の透過色、反射色 吸収スペクトル:バンド間遷移 シリコン結晶の金属光沢の原因は?
復習コーナー 半導体とは何か 半導体の抵抗率の範囲とバンドギャップ (佐藤・越田:応用電子物性工学 図4.2)
復習コーナー 半導体の電気抵抗の温度変化 金属と半導体の電気抵抗の温度変化の比較
復習コーナー 導電率、キャリア密度、移動度 導電率、キャリア密度n、移動度の間には = ne の関係式が成り立つ。 抵抗率と導電率の関係は =1/ である。 移動度とは、単位電界E[V/cm]によって得られる平均速度v[cm/s]を表し、v=E である。 例:1mのシリコン膜の表裏の間に1Vの電圧を印加したとき、E=104V/cm、シリコンの=1000cm2/Vsとしてv= E =107cm/sとなる。 このときの導電率はキャリア数1016cm-3として = ne =10161.6 10-19 103=1.6S/cm: =0.625cm
復習コーナー 周期表と半導体 IIB IIIB IV V VI B C N O Al Si P S Zn Ga Ge As Se Cd In Sn Sb Te Hg Tl Pb Bi Po IV族(Si, Ge) III-V族(GaAs, GaN, InP, InSb) II-VI族(CdS, CdTe, ZnS, ZnSe) I-VII族(CuCl, CuI) I-III-VI2族(CuAlS2,CuInSe2) II-IV-V2族(CdGeAs2, ZnSiP2))
ダイヤモンド構造 閃亜鉛鉱(ジンクブレンド)構造 黄銅鉱(カルコパイライト)構造 復習コーナー 半導体の結晶構造 閃亜鉛鉱構造 カルコパイライト構造 ダイヤモンド構造
復習コーナー バンド構造による金属・半導体の区別
自由電子からの近似 孤立原子に束縛された電子からの近似 復習コーナー エネルギー帯の考え方 Hartree-Fockの近似 E=(k)2/2m 放物線バンド 孤立原子に束縛された電子からの近似 Heitler-Londonの近似 原子の電子波動関数(s, p, dなど)の1次結合 電子間相互作用を考慮しやすい k
復習コーナー シリコンのバンドと バンドギャップ 孤立原子からの近似
復習コーナー 半導体の光吸収スペクトル 直接吸収端 InSb, InP, GaAs 間接吸収端 Ge, Si, GaP
復習コーナー バンドギャップと半導体の吸収端 フォトン・エネルギーE=hがエネルギー・ギャップEgより小さいとき、価電子帯の電子がE=hを得ても、伝導帯に遷移できないので、光は吸収されず透過する。 フォトン・エネルギーがエネルギー・ギャップよりも大きいと、価電子帯の電子が伝導帯に遷移することができるので、光吸収が起きる。吸収が始まる端っこということで、エネルギー・ギャップを吸収端のエネルギー、それに相当する波長を吸収端の波長という。吸収端の波長より長い波長の光は透過する。 伝導帯 Eg h>Eg h 価電子帯
復習コーナー 半導体のバンドギャップと透過光の色 1.5eV CdS GaP HgS GaAs 3eV 2.5eV 2eV 800nm 300nm ZnS Eg=2eV Eg=2.2eV Eg=2.6eV Eg=3.5eV Eg=1.5eV 白 黄 橙 赤 黒 3.5eV 4eV 透過域
復習コーナー 半導体のバンドギャップと絵の具の色 Mixed crystals of yellow cadmium sulfide CdS and black cadmium selenide CdSe, showing the intermediate-band-gap colors http://webexhibits.org/causesofcolor/10.html
復習コーナー 第4回の問題 さまざまな半導体のバンドギャップ(室温) 半導体 Eg[eV] g[nm] 透過光の色 Si 1.11 1117 不透明 GaAs 1.42 873 不透明 CdSe 1.74 712 赤 GaP 2.26 549 橙 CdS 2.42 512 黄 ZnSe 2.67 463 淡黄 GaN 3.39 366 無色透明 ZnS 3.68 337 無色透明
半導体からの発光 基底状態から何らかの形で励起状態に遷移が起きたとき、基底状態に戻るときに、熱や光の形でエネルギーを放出する。光を放出する現象をルミネセンスという。 光で励起:フォトルミネセンス(PL) 電界で励起:エレクトロルミネセンス(EL) キャリア注入で励起:発光ダイオード(LED) 電子線で励起:カソードルミネセンス(CL)
フォトルミネセンス(PL)(光で励起) 光子(h>Eg)入射 価電子帯から伝導帯へ電子が遷移 伝導帯に電子、価電子帯にホール生成 電子、ホールが移動 再結合してエネルギー差を光子として放出 伝導帯 価電子帯 光を吸収 光を放出
バンド間直接遷移による発光 伝導帯 伝導帯電子と価電子帯ホールの直接再結合 価電子帯
バンド・不純物準位間遷移 伝導帯電子と、アクセプターに束縛されたホールの再結合 Free to Bound Transition (FB) ドナーに束縛された電子と価電子帯ホールの再結合 Bound to Free Transition (BF) 伝導帯 伝導帯 価電子帯 価電子帯 伝導帯→アクセプター ドナー→価電子帯
ドナーアクセプター対遷移 ドナーに捉えられた電子とアクセプターに捉えられたホールとの再結合 伝導帯 光を放出 価電子帯
励起子発光 自由励起子(電子とホールがクーロン力で束縛された状態) 束縛励起子(電子とアクセプタホールが束縛された状態)
自由励起子とは 電子・ホールがクーロン力で束縛された状態 Eg 伝導帯 En n=2 -Eb/4 n=1 -Eb ホール 解離 価電子帯 Eg -Eb/4 n=1 n=2 En ホール 解離 電子が伝導帯に 電子 ホールは価電子帯に
ルミネセンスの種類と応用例 光で励起:フォトルミネセンス(PL) 電界で励起:エレクトロルミネセンス(EL) プラズマディスプレイ(PDP) 電界で励起:エレクトロルミネセンス(EL) キャリア注入で励起:発光ダイオード(LED) 電子線で励起:カソードルミネセンス(CL)
プラズマディスプレイ(PDP) 微小電極間で放電 →気体原子が励起 →紫外線を放出 →紫外線が蛍光体を励起 →可視光発光 予備放電→書き込み放電→維持放電→消去放電 カラーPDPの原理は蛍光灯とよく似ており、極小の蛍光ランプが無数に並んで1枚の画面を作っている、そんなイメージです。 ハイビジョン用 (55V型) 富士通日立プラズマディスプレイ㈱のHPより NECプラズマディスプレイ㈱のHPより
ルミネセンスの種類と応用例 光で励起:フォトルミネセンス(PL):PDP 電界で励起:エレクトロルミネセンス(EL) キャリア注入で励起:発光ダイオード(LED) 電子線で励起:カソードルミネセンス(CL)
無機エレクトロルミネセンス 電子が電界により絶縁体/ZnS界面から放出される 電界で加速されホットエレクトロンとして移動 ホットエレクトロンがMnなど発光中心に衝突 発光中心の電子系が励起される 励起状態から光を放出して基底状態に戻る TDKのHPより
ZnS:Mnの発光(結晶場遷移) ZnS:Mnの発光は、Mn2+イオンの3d5多電子系における励起状態4T1から基底状態6A1へのd-d遷移による。 このような遷移を結晶場遷移または配位子場遷移とよぶ。 1電子系のバンド図では説明できない 基底状態 励起状態 4T2 4T1 4A1 http://sharp-world.com/
有機エレクトロルミネセンス 有機ELは、有機発光層を金属電極と透明電極ではさんだ構造をとっている。 金属電極と透明電極との間に電圧を加えると、有機分子上を電荷が対向電極に向かって移動する。この移動中に、ホールと電子が出会うと、有機発光層の中で再結合し、この時エネルギーを放出する。このエネルギーによって有機発光層が発光する。 (有機LEDともいう) 光産業技術振興協会のHPより 三洋電機のHPより
ルミネセンスの種類と応用例 光で励起:フォトルミネセンス(PL):PDP 電界で励起:エレクトロルミネセンス(EL) 発光ダイオード(LED) 電子線で励起:カソードルミネセンス(CL)
発光ダイオード(LED)と半導体レーザ (LD)
交通信号機が変わった
半導体pn接合 E P形 N形 P形とN形を接合するとキャリア拡散が起きる - 拡散電位差 - + + 拡散電位差
LEDの原理 p型 n型 再結合 空間電荷層 + - pn接合を順バイアス 電子は、p層に注入 ホールはn層に注入 界面付近で再結合
青色LEDの発光スペクトル 350nm 450nm 550nm
赤色LEDスペクトル
ルミネセンスの種類と応用例 光で励起:フォトルミネセンス(PL):PDP 電界で励起:エレクトロルミネセンス(EL) 電子線で励起:カソードルミネセンス(CL) ブラウン管(CRT) 電界放出型ディスプレイ(FED)
CRTの構造 電子銃、偏向板(オシロスコープ)または偏向ヨーク(ブラウン管)、シャドウマスク、蛍光スクリーンから構成される。 小林洋志「発光の物理」(朝倉書店)より
カラーCRTの原理 赤、緑、青の微小な領域に蛍光体が塗り分けられており、各発光色に対応して、3本の電子銃が用いられ、別々に電子ビーム強度が制御される。 小林洋志「発光の物理」(朝倉書店)より
カラーCRTの蛍光体 赤:Y2O2S:Eu 緑:ZnS:Cu,Al 青:ZnS:Ag 緑 青 赤 発光強度 400 500 600 700 波長[nm] 小林洋志「発光の物理」(朝倉書店)より
FED(電界放出型ディスプレイ) 真空中において電極から電子を電界放出 低速電子線が対抗電極上の蛍光体を励起 光産業技術協会HP
さまざまな電界放出電子源 スピント型電子源 カーボンナノチューブ (CNT)電子源 表面電導電子 (SCE)電子源 弾道電子表面放出デバイス (BSD) 高効率電界放出デバイス (HEED) 金属・絶縁体・金属(MIM) 電子源
電界放出ディスプレイの原理 電界放出とは? 電界放出とは? 固体表面に強い電場がかかると、電子を固体内に閉じこめている表面のポテンシャル障壁が低くかつ薄くなり、トンネル効果により電子が真空中に放出される。この現象を「電界放出(field emission)」と呼んでいる。 この現象を観測するには、非常に強い電場を固体にかけなくてはならない。そのとき、電圧をかける面積が小さくなればその分だけ電場が集中するので、「電界放出型電子源」の金属針の先端は、鋭くとがらせたものを用いるのが一般的だ。 http://www.nanoelectronics.jp/kaitai/nanotube/fed.htm
FEDの仕組み http://www.nanoelectronics.jp/kaitai/fed/
FEDの構造 FEDの大まかな構造は、真空の空間が二つのガラスシートによってはさまれたものになっている。そのガラスシートのうち、カソード(陰極)からは電界放出によって電子が放たれる。このときの電子はカソードとゲート電極の間の電圧の差によって生じる。 真空中に放出された電子はアノード(陽極)の方に向かって進み、途中で蛍光体に衝突して光を放つ。こうして、RGBの三つの蛍光体一組から発せられた可視光が、ディスプレイの1ピクセルに相当する。
ノリタケ双葉電子
ミニテストの結果について 平均点 85.9/100 問題1 25.7/30 問題2 36.5/40 問題3 11.5/15 平均点 85.9/100 問題1 25.7/30 問題2 36.5/40 問題3 11.5/15 問題4 12.2/15
来週の予定 光電変換:光を電気に変える 光伝導(photoconductivity) 光電子放出(photoelectron emission) 光起電力効果(photovoltaic effect) フォトダイオード、フォトトランジスタ 太陽電池
第5回の問題 励起のメカニズムによりルミネッセンスを分類し、それぞれどのように応用されているかを述べよ。