マントルゼノリス(マントル捕獲岩)からの推定:

Slides:



Advertisements
Similar presentations
無機化学 I 後期 木曜日 2 限目 10 時半〜 12 時 化学専攻 固体物性化学分科 北川 宏 301 号室.
Advertisements

構造制御および電子状態制御に基づく新物質の開発 小さい HOMO-LUMO ギャップ 分子が自己集積すると同時にキャリアーが発生 強い三次元性 高い相転移温度 多フロンティアー  -d 系 M(tmdt) 2 M= Ni, Au, Cu, Pd, Pt pd  (-) asym-L  (d) sym-L.
物性工学概論 第2回 金属の話 (1) 佐藤勝昭. 講義計画 4/8 イントロ 4/15 改めてイントロ 金属の話 4/22 金はなぜ金ぴかか 金属の光学的性質 5/6 シリコンの金属光沢 半導体のバンド構造と光 5/13 青色 LED とレーザ 半導体の発光 5/20 太陽電池と光センサ 半導体の光起電力効果.
表、グラフ、 SmartArt の実習課題. 1月1月睦月 January 7月7月文月 July 2月2月如月 February 8月8月葉月 August 3月3月弥生 March 9月9月長月 September 4月4月卯月 April 10 月神無月 October 5月5月皐月 May.
星間物理学 講義3資料: 星間ガスの熱的安定性 星間ガスの力学的・熱的な不安定性についてまとめる。星形成や銀河形成を考える上での基礎。
元素の周期表 教科書 p 元素を 原子番号 順に並べる 性質の良く似た元素がある周期で現れる 元素の周期律 周期表
6//24 地球環境と生物のイベント:先カンブリア時代 7/15 地球環境と生物のイベント:古生代
地球内部の温度分布とニュートリノ地球科学
第12章 層と層を結びつける 固体の地球,液体の海,気体の大気
固体の圧電性.
低質量X線連星(X線バースト天体)における元素合成
電気電子材料 電気電子工学科 2年次 鮫島俊之、飯村靖文.
Fe Ag Au C O 陽子と中性子:原子核内でバランスよく存在する Q : Biって中性子の方が多くね? 安定な原子核の例 陽子だけだと
薬品分析学3.
物理システム工学科3年次 物性工学概論 第3回講義
Materials Science and Engineering
海洋の起源 水惑星の形成と維持 東大・理・地球惑星科学 阿部 豊.
分光結晶を用いた蛍光XAFSシステムの開発
電気電子材料 電気電子工学科 2年次 鮫島俊之、飯村靖文.
生体分子を構成している元素 有機分子   C, H, O, N, P, S(C, H, O, N で99%) 単原子イオン 
In situ cosmogenic seminar
微小宇宙物質の 高感度元素定量法の確立 校費 350,000円 旅費 50,000円 平成15年度共同利用研究費査定額
バーチの法則と状態方程式 バーチの法則 Vp= a(M) + br Vp(km/sec) = r (g/cm3)
地球惑星物性学1 ( ~) 参考文献: 大谷・掛川著 地球・生命 共立出版
生命起源への化学進化.
鉱物学輪講 The pyroxenesより Jadeite-omphacite-diopside
Methodology for in situ cosmogenic 10Be and 26Al analyses
信川 正順、小山 勝二、劉 周強、 鶴 剛、松本 浩典 (京大理)
単色X線発生装置の製作 副島 裕一.
マントルにおける相転移とマグマ 1.マントルの相転移 マントル遷移層と下部マントル上部の相転移 下部マントルの相転移
第3章 地球物質とその性質.
マントルゼノリス(マントル捕獲岩)からの推定:
銀河物理学特論 I: 講義3-4:銀河の化学進化 Erb et al. 2006, ApJ, 644, 813
6.2 ケイ酸塩構造と混合物に関する一般概念 ケイ酸塩鉱物は少し複雑であるため化学式と[SiO4]4面体をつないだ関係がその一般
物理システム工学科3年次 物性工学概論 第2回講義 火曜1限0035教室
6.5 二重鎖ケイ酸塩ー角閃石  (P.160~) No.1 角閃石鉱物の構造と振る舞いは多くの点で輝石に似ている。(このセクションでは角閃石と輝石を比較する) 角閃石はその化学的構造のせいでとても複雑である。 角閃石鉱物の本質的な特徴は[SiO4]4面体の二重鎖です。それは(図6.29)の様に鏡面で角を共有することで2本の単鎖をつなげるという考え方です。鏡面構造は鎖が直線でないときでさえ、すべての角閃石で保存される。4面体の半分は(2つの架橋酸素、2つの非架橋酸素)をもち、残りの半分は(3つの架橋酸素、
2.地球を作る物質と化学組成 1)宇宙存在度と隕石 2)原始太陽系星雲でのプロセス:蒸発と凝縮
金属のイオン化傾向.
ザクロ石グループ Garnet Group.
第3回 地球内部の不均質性:.
地球惑星物性学1 ( ~) 参考文献: 大谷・掛川著 地球・生命 共立出版 島津康夫著・地球の物理 基礎物理学選書 裳華房
2. 地球を作る物質と化学組成 1)宇宙存在度と隕石 2)原始太陽系星雲でのプロセス:蒸発と凝縮
様々な隕石 月からの隕石、火星からの隕石.
物理システム工学科3年次 「物性工学概論」 第1回講義 火曜1限67番教室
第3章 地球物質とその性質.
地球で最初の海.
2018/09/13 分子雲: 星間ダスト進化と 惑星形成を架ける雲 (Molecular clouds: connecting between evolution of interstellar dust and formation of planets) 野沢 貴也 (国立天文台 理論研究部)   
超新星爆発におけるp核の合成 ~重力崩壊型超新星の場合~
金属欠乏星の亜鉛組成 ~亜鉛組成の中間報告~
プレートテクトニクス 講義レジメ [VI] 固体地球を“生きさせている”エネルギー源
燃えるとはどんなことか.
矢印や凡例を順番に重ねて,最後にグループ化
物理システム工学科3年次 物性工学概論 第2回講義 火曜1限0023教室
バーチの法則と状態方程式 バーチの法則 Vp= a(M) + br Vp(km/sec) = r (g/cm3)
強磁性半導体のMCD(協力研究) 藤森 淳 ・ 2003A報告 Zn1-xCoxO, Zn1-xVxO, Ga1-xMnxN
第3章 地球物質とその性質.
13族-遷移金属間化合物の熱電材料としての応用
シュウ酸による焼却残渣中のカルシウムの再生
はやぶさ試料(RA-QD )の X線CT解析 – X線CT岩石学の適用例 - X線CT解析の結果に基づいて試料を切断し分析
初期太陽系と初期地球の形成過程.
3.ワイドギャップ半導体の オーム性電極材料開発
第12章 機械構成部品の性質 燒結技術の応用 昔し:溶解や鋳造の困難なセラミックス、高融点金属(W、Mo、など)、高融点化合物(WC、TiCなど) 近代: *青銅系燒結含油軸受け(多孔性を利用)。 *鉄系の含油軸受け 燒結技術が応用される理由は: *小型部品の大量生産 *合金粉の開発に伴って、予備焼結体を熱間鍛造により、真密度に近い大型部品の量産化.
3.建築材料の密度 密度の支配因子 原子量 原子の配列状態 一般的に原子量(原子番号)が大きいほど、密度は大きい
Au蒸着による酸化物熱電変換素子の内部抵抗低減化効果
Distribution of heat source of the Earth
はやぶさ帰還カプセルの試料容器から回収された 微粒子がイトカワ起源であると判断する根拠
初期太陽系と初期地球の形成過程.
原子記号の復習 日本語→記号 記号→日本語   H.Kadoi.
地学講義 I 第1回 太陽系と地球の起源、隕石と初期太陽系 第2回 初期地球の形成過程.
第3章 地球物質とその性質.
Presentation transcript:

マントルゼノリス(マントル捕獲岩)からの推定: 地球の化学組成の推定 1)隕石の化学組成からの推定 2成分モデル (Ringwood, Bankeなど) Ringwoodの2成分モデル: 地球は、   低温成分: C1コンドライト 10%   高温成分: 還元的な条件で、過熱して揮発成分を蒸発させた物質 90%           Enstatite chondriteを仮定する場合もある。 天然の岩石からの推定:   マントルの化学組成を推定する。 マントルゼノリス(マントル捕獲岩)からの推定:  マントル起源の岩石には、カンラン岩(peridotite)と榴輝岩(エクロジャイトeclogite)が存在する。  カンラン岩はカンラン石、輝石(斜方輝石,単斜輝石)からなりエクロジャイトは石榴石(ガーネット)、単斜輝石、(石英)からなる。  マントルは主として、カンラン岩からなると考えられている。  マントルカンラン岩には、アルミナを含む鉱物として斜長石(Plagioclase),尖晶石(Spinel)、石榴石(Garnet)を含むものがある。それぞれ、   斜長石カンラン岩(Plagioclase peridotite):高温低圧 尖晶石カンラン岩(Spinel peridotite):低温低圧 石榴石カンラン岩(Garnet peridotite):高温高圧 b) マグマからの推定:超苦鉄質マグマ:コマチアイトマグマ

PREM 

1、マントルの化学組成の推定方法: 始源的マントルの推定方法   マントル捕獲岩からの始原的マントルの組成の推定 (McDonough, 2001) MgO~38wt.% primitive

Silicate Earth: 地殻+マントル

マントル+地殻の元素存在度の特徴 (1)Ca, Al, REE, U, Thなどの難揮発性元素はC1コンドライトの約1.16倍 (2)SiはC1コンドライトの約0.83倍: マントルは輝石でなくかんらん岩的 (3)V, Cr, MnはC1コンドライトの0.23~0.62倍 (4)Fe, Ni, Co, Wなどの親鉄元素はC1コンドライトの約0.08~0.15倍    ニッケルのパラドックス:     低圧での平衡分配に比較してマントルに多すぎる。 (5)Na, KなどはC1コンドライトの0.18~0.22倍:     熱源となるKは少ないのは、揮発性元素として枯渇しているのか?    それとも核に存在するのか(核の熱源として重要)? (6)Pt, Ir, Reなどの貴金属はC1コンドライトの約0.003倍    強親鉄元素のパラドックス:     低圧での平衡分配に比較して存在度はマントルに多すぎる。 (7)S, Cd, Seなどの揮発性元素はC1コンドライトの10-4~10-2

地球の地殻・マントルは揮発性元素に枯渇している。 揮発性元素の一部は核に存在するのか? 地球は高温起源であったのか?

揮発性元素の枯渇 親石元素 親鉄元素 強親鉄元素 難揮発性親石元素 揮発性親石元素 >1350 1000 700 400 x Ca Al Ti REE U Th etc Mg Si Cr V Li Mn Na K Cu Rb Ca F Zn In Fe Ni Co W P Mo As Ag Sb Ge Cs Cd Cl Pb Br Bi Tl S Se Os Re Ir Pt Pd Au 強親鉄元素 親鉄元素 親石元素 難揮発性親石元素 揮発性親石元素 >1350 1000 700 400 Condensation temperature, K 1.0 0.1 0.01 0.001 Depletion factor

図 5 (Mantle+Crust)/C1 1.0 0.1 0.01 低 高 0.001 難揮発性の元素 揮発性・やや揮発性の元素 <1300K 親鉄元素 Re Os Ir Au Fe Co Ni Cu Zn P In Cd Ge Ag Cr Mn Ga Sn Na K Rb Cs Tl Pb Bi Zr Mg Nb Al Si Ca Sc Ti Sr Y Ba La Ce Nd Sm Eu Tb Yb Lu Ta Th U V Li 強親鉄元素 難揮発性の親石元素 揮発性の程度 低    高 揮発性元素

Mg/Si ratio of the mantle: Volatility (e.g., McDonough, 2003) vs Removal of Si into Core (e.g., O’Neil, 1991; Allegre et al., 2001) McDonough (2003) Log 50% condensation temperature (K) at 10-4 atm Relative abundance 3.2 3.1 3.0 2.9 2.8 2.7 Lithophile elements Refractories Moderately volatiles Volatiles Planetary volatility trend @1AU Mantle Removal of Si from the mantle by metallic iron may explain Mg/Si ratio of the mantle: Entry of 5~7 % of Si into the core? 7

地球の2成分モデル 地球のモデルとしてRingwoodやWankeによって提案された二成分モデルがある。 地球は2成分の混合で説明できる。 A成分 (低温成分:Orgueil) B成分 (高温成分:高温~1000 Cで加熱またはE-Chondrite的な成分) 地球はA成分10%、B成分が90%からなる。 すなわち、C1コンドライトに比べて揮発成分に枯渇している。 火星はA成分が30%、B成分が70%からなる。

地球のマントルのニッケルのパラドックス マントル中にNiは過剰に存在する。すなわち、 マントルにおいて、NiとCoの存在度は、ほぼ等しい。しかし、金属鉄とケイ酸塩の間の分配係数は大きく異なる。 なぜか。 マントル起源のカンラン石中のNi~2000ppm程度 常圧、高温でのNiとCoの分配係数 D(Ni)~3100 D(Co)~200 コンドライトや火星隕石においては、カンラン石中のNi量が少ない。 隕石中のカンラン石中のNi~数百ppm

図 5 (Mantle+Crust)/C1 1.0 D~200 0.1 D~3100 0.01 低 高 0.001 難揮発性の元素 揮発性・やや揮発性の元素 <1300K 親鉄元素 Re Os Ir Au Fe Co Ni Cu Zn P In Cd Ge Ag Cr Mn Ga Sn Na K Rb Cs Tl Pb Bi Zr Mg Nb Al Si Ca Sc Ti Sr Y Ba La Ce Nd Sm Eu Tb Yb Lu Ta Th U V Li 強親鉄元素 難揮発性の親石元素 揮発性の程度 低    高 揮発性元素 D~200 D~3100

3100 200

図19 ニッケルはマントルに入りやすくなる。 ニッケルのパラドックスの説明

マントル内のCo/Ni 比は、低圧で高温の実験結果とあわない。 での核形成 Ni D, 分配係数 Co >40 GPa 圧力, GPa Co/Ni in the mantle implies very deep magma ocean

ニッケルのパラドックスの解釈 深いマグマオーシャンでの核マントルの平衡と分離 核とマントルが非平衡であった。

初期地球の諸過程

強親鉄元素のパラドックス: 強親鉄元素は、マントルに多すぎる。 マントル中に強親鉄元素、Ir, Pt, Au, などは金属鉄とケイ酸塩の元素分配で期待されるよりも過剰に存在する。

3100 200 >3x104 >4x104 105

図 5 (Mantle+Crust)/C1 1.0 0.1 0.01 低 高 0.001 難揮発性の元素 揮発性・やや揮発性の元素 <1300K 親鉄元素 Re Os Ir Au Fe Co Ni Cu Zn P In Cd Ge Ag Cr Mn Ga Sn Na K Rb Cs Tl Pb Bi Zr Mg Nb Al Si Ca Sc Ti Sr Y Ba La Ce Nd Sm Eu Tb Yb Lu Ta Th U V Li 強親鉄元素 難揮発性の親石元素 揮発性の程度 低    高 揮発性元素

強親鉄元素のパラドックスは: 地球集積のなごり:隕石重爆撃 マントルの強親鉄元素存在度と隕石衝突 Late Veneerの存在の有無 Late Veneerの存在の有無 海の起源とLate Veneer Late Veneerによる有機物の供給: 生命の起源 小天体衝突と恐竜絶滅:イリジウムの異常の説明 隕石中の強親鉄元素

Impact event: 月と地球への隕石重爆撃の痕跡か? レゴリス研究の重要性 The Sm-Nd age and the 39Ar - 40Ar age of A-881757 [1] indicate their source basalt flow crystallized at 3870 Ma and was impacted at 3800 Ma. [1] Misawa et al. (1993) GCA 57, 4687-4702 Impact event: 月と地球への隕石重爆撃の痕跡か? レゴリス研究の重要性

初期地球の諸過程

地殻+マントルの元素存在度と元素の分類

CM CO CV

図11

図12