2014/9/24 山梨大学 大学教育センター反転授業公開研究会 2014/09/24 (於: 山梨大学 甲府キャンパス)

Slides:



Advertisements
Similar presentations
M2B システム (Moodle/Mahara/BookLooper) の使い方. パスワード:<自分のパスワード> SSO-KID (数字10桁)は学生証の裏に パスワードを忘れた場合は、 から「パスワードを忘れた」を選択.
Advertisements

QUIZLETの活用による 語彙学習の習慣化を促す試み(の失敗例) 名古屋学院大学 国際文化学部 講師 工藤 泰三 1.
特殊講義(経済理論) B 初級ミクロ経済学 第 1 回 古川徹也 研究室 1号館 714 HP : 2015/09/25 特殊講義(経済理論) B/ 初級ミクロ経 済学 1.
統計学入門2 - 後期 第 1 回 - 1 統計学入門2 講義内容の紹介 推測統計とは. 統計学入門2 - 後期 第 1 回 - 2 教科書 & 参考書 教科書 特に使用しない 参考書 「統計解析の基本と仕組み」 ( 秀和システム ) 「データ分析のための統計入門」(共立出版)
自然言語処理 平成 24 年 11 月 5 日 (No5)- 東京工科大学 コンピュータサイエンス学部 亀田弘之.
言語教師としての 役割と認知 平成 21 年度教員免許状更新講習 3 共立女子大学 02/08/2009 笹島茂 1.
初級ミクロ経済学 第 1 回 (週2回講義,月3,金1) 古川徹也 研究室 1号館 714 HP : 2014/9/22 経済学入門 B/ ミクロ経済学基礎 1.
東京工科大学 コンピュータサイエンス学部 亀田弘之
寺尾 敦 青山学院大学社会情報学部 atsushi [at] si.aoyama.ac.jp
研修のめあて 授業記録、授業評価等に役立てるためのICT活用について理解し、ディジタルカメラ又はビデオカメラのデータ整理の方法について研修します。 福岡県教育センター 教員のICT授業活用力向上研修システム.
プログラミング入門 ガイダンス.
自然言語処理:第3回 1.前回の確認 2.構文解析 3.格文法.
4,297 words 2016年1月 大学入試センター試験(英語) 筆記試験は引き続き長文易化傾向 大問 分野 word数 60wpm
プログラミング 平成25年11月19日 森田 彦.
H17年度授業評価アンケート報告 教務WG:山澤一誠.
第1回 担当: 西山 統計学.
寺尾 敦 青山学院大学社会情報学部 atsushi [at] si.aoyama.ac.jp
第4回 (10/16) 授業の学習目標 先輩の卒論の調査に協力する。 2つの定量的変数間の関係を調べる最も簡単な方法は?
プログラミング 平成24年10月23日 森田 彦.
オンライン英単語・リスニング 学習ソフト 佐々木研究室 N02k1114 北隅 麻実.
世界に発信!“京都”を伝えるムービー作成プロジェクト
教科用教材ソフトの「英語フラッシュカード」を電子黒板で実行
データ構造とアルゴリズム論 第4章 レコード構造を使った処理-クラスの利用
一致の非対称の 極小理論的分析 小林 亜希子 島根大学 「言語と情報研究プロジェクト研究会:言語理論の動向を考える」 広島大学
東京工科大学 コンピュータサイエンス学部 亀田弘之
2009年2月26日 奈良先端科学技術大学院大学 情報科学研究科 FD研修会 H20年度授業評価アンケート報告 教務WG:山澤一誠.
統率・束縛理論2.
IT入門B2 (木曜日1限) 第一回 講義概要 2004年月9日30日.
第6章 ユニフィケーション解析 ユニフィケーション解析とは?
岐阜県算数コンテンツ 情報共有化プロジェクト
子どものコミュニケーションチェックリスト(CCC-2) 日本語版の標準化:定型就学前児
2010年度 コンピュータリテラシー クラス:  B1 講義日: 前学期 月曜日7時限.
ICTを利用します 講義の進め方 チェックテストについて
丹波市立西小学校 教諭 細見 隆昭 2007年2月25日(日) 神戸市ハーバーランドダイヤニッセイビル
経済情報処理ガイダンス 神奈川大学 経済学部.
技術者英語 対象: 電気電子システム工学科 2年生 時限: 前期 水曜日 Ⅳ限 担当: 武藤 真三、本間 聡
寺尾 敦 青山学院大学社会情報学部 atsushi [at] si.aoyama.ac.jp
主体的学習を支援するWebCTの利用 情報センター 菊沢正裕.
Moodleの使い方 基幹教育セミナー用 ※利用しない機能のスライドは、適宜、削除してご利用下さい。
データ構造とアルゴリズム論 第9章 木構造 平成17年12月20日 森田 彦.
マクロ経済学(山田) IT講義法の説明 Ver
2017年度 経済史入門 第1回 ガイダンス 経済学部 准教授 菅原歩 水4 C200.
コンピュータプラクティス I コンピュータプラクティスⅠ 校正 水野嘉明 校正.
統計学 西 山.
~夢はここで実現する~ 北条高校 POWER UP HIGH SCHOOL
湘南工科大学 2013年10月8日 プログラミング基礎1 湘南工科大学情報工学科 准教授 小林 学.
○○中学校・高等学校は 2019年度入学試験において インターネット出願を導入します。 いつでもどこでも、出願できます。
数理統計学 西 山.
数理統計学 オリエンテーション   担当: 西山.
AO入試合格者に対する入学前学習課題としての 大学入試センター試験受験の試み (大学教育学会 第32回大会 愛媛大学 2010/6/5)
データ構造とアルゴリズム論 第9章 木構造 平成29年12月20日 森田 彦.
東京工科大学 コンピュータサイエンス学部 亀田弘之
TA (teaching assistant) :尾関 伸之
データ構造とアルゴリズム論 第4章 レコード構造を使った処理-クラスの利用
日本の高校における英語の授業は 英語がベストか?
プログラミング 平成22年12月15日 森田 彦.
データ構造とアルゴリズム論 第4章 レコード構造を使った処理-クラスの利用
情報処理基礎A・B 坂口利裕 横浜市立大学・商学部
プログラミング 平成24年11月13日 森田 彦.
東京工科大学 コンピュータサイエンス学部 亀田弘之
福井県立大学 菊沢 正裕 大教室授業における グループ学習の効用 福井県立大学 菊沢 正裕
 期末試験と成績評価について  2012年度「企業論」 川端 望.
テキスト理解,論点設定, 論述のスキルを高める アクティブ・ラーニング
数理統計学  第12回 西 山.
データ構造とアルゴリズム論 第9章 連結リスト
自然言語処理2016 Natural Language Processing 2016
映像を用いた 「からだ気づき」実習教材の開発
東京工科大学 コンピュータサイエンス学部 亀田弘之
東京工科大学 コンピュータサイエンス学部 亀田弘之
岩村雅一 知能情報工学演習I 第7回(後半第1回) 岩村雅一
Presentation transcript:

小林 亜希子 (島根大学) akiko.kobayashi.2005@soc.shimane-u.ac.jp 2014/9/24 山梨大学 大学教育センター反転授業公開研究会 2014/09/24 (於: 山梨大学 甲府キャンパス) 反転授業の実践報告: 「英語学講義I」 小林 亜希子 (島根大学) akiko.kobayashi.2005@soc.shimane-u.ac.jp

1. 問題意識 1.1. 英語学講義I ・生成文法理論の基礎 ・履修資格: 3年生~ (ゼミの選択に影響) ・問題① 学生の理解度に大きな差がある ・問題② 一度休むとついて行けない       ∵積み上げ式,専門用語

1. 問題意識 ※教科書より 「まず,語彙配列からtheとboardを取り出し,2つを併合することにより,boardを中心とする構成素,すなわち名詞句 (noun phrase: NP) が形成される。(中略) (16) においてNPの中心となる語彙項目,ここではN board のことをNPの主要部 (head) と呼ぶ。逆に,NP the board はNを中心として大きくなった構成素であるので,Nの投射 (projection) であるという。(中略) NP, VPなどの構成素の範疇記号を節点 (node),そこから延びている線を枝 (branch) と呼ぶ。」 (田中智之 (2013) 『統語論』 東京: 朝倉書店. pp.9-11)

1. 問題意識 1.2. 前年度 (2013年度) の試み パワーポイント(パワポ)を利用 そのファイルをクラウドに保存    学生が復習,自習できるように

1. 問題意識 pp. 10-11 用語 節点 (node) VP 枝 (branch) 構成素 V PP resign P NP from D とN が併合(Merge) D the N board NPの主要部 (Head)

1. 問題意識 1.3. 試みの結果 学生にはおおむね好評 パワポだけでは自習しにくいかも パワポのファイルに, 音声を付けて パワポ操作に気を取られる パワポ,黒板,教科書,配付資料・・・面倒くさい! パワポだけでは自習しにくいかも パワポのファイルに, 音声を付けて 保存できたら・・・

2. 2014年度の試み 2.1. 授業の流れ ✔ 回 内容 反転 1 イントロ 2~6 第1章 7~9 第2章 10, 11 第3章(前半) 12~14 第3章(後半) 15 まとめ 16 期末テスト

2. 2014年度の試み 2.2. 反転部分の進め方 ※授業前 パワポ作成+録音 アップロード 学生に通知 学生が予習 1つのファイルは5分程度で,練習問題を付ける。 1回の授業で2~3のファイル+解答。 アップロード 「島根大学Moodle」の,この授業のサイトへ。 ※スマホでは視聴しにくいので,wmvとpptxのみ 学生に通知 ※学生はアカウントとメルアドを登録ずみ。 学生が予習 視聴し,練習問題を解いておく。 ※パワポの紙資料も一応配布している。 ※いつログインしたかは,教員側から見える。

でき具合をチェック,間違いを指摘,質問に答える 2. 2014年度の試み 2.2. 反転部分の進め方 ※授業当日 (学生が登校) ※学生はいつ来てもよい 「復習問題」を配布 ※できたら提出して帰ってよい 見回り,助言など でき具合をチェック,間違いを指摘,質問に答える 視聴してこなかった 学生は別室で視聴 ※自宅ネットの不具合で視聴できなかった 学生1名(2回)のみ

3. 反転授業の様子

生成文法での説明: 他動詞文の派生(復習) 3.5.1 英語における受動文 生成文法での説明: 他動詞文の派生(復習) (55) a. θ基準 T’ TP T [Past] Case付与とAgree EPP v’ vP v NP t2 残置affixフィルター NP Mary2 [3.sg] VP 主 V t1 (Agent, Theme) NP pictures of John take1 ✔ ✔ 対

※ (a), (b) は§3.3(前半)の練習問題2を参照。 3.5.1 英語における受動文 練習問題1. 次の文の tree を書きなさい。 ※ (a), (b) は§3.3(前半)の練習問題2を参照。 The door was opened. A wallet was put on the desk. The politician will be arrested by the police. (d) That the earth was flat was once believed. (once はvP付加詞。that 節はCPとし,下は省略)

3. 反転授業の様子

※ 自筆の紙1枚(B4) のみ持ち込み可,とする。 4. 授業の成果 4.1. 期末テスト 大問 配点 内容 [A]~[E] 46点 1章 [F]~[H] と選択問題 54点 2~3章 反転部分に関わる問題 ※ 自筆の紙1枚(B4) のみ持ち込み可,とする。

4. 授業の成果 ※期末テストのサンプル [A] 下線を引いた単語の範疇 を答えなさい。 [B] 次の文のうち,主節動詞の項 に下線を引きなさい。   [C]  下線を引いた付加詞 のθ役を答えなさい。 [D]~[G]  樹形図を書きなさい。 (選択問題) 複雑な文の樹形図を書く。 授業で学んだルールを 正しく用いて句の構造を示す。

4. 授業の成果 4.2. 2013年度との比較① 2013 2014 履修登録者 36 17 登録しただけ 6 3 途中でドロップアウト (テスト寝坊1) 受験者 28 13 受験者の平均欠席回数 1.75 1.19※ ※反転を視聴しているのに授業は欠席=0.5回欠席とカウント

4. 授業の成果 4.2. 2013年度との比較 ①

4. 授業の成果 4.2. 2013年度との比較 ① グループ統計量 年度 N 平均値 標準偏差 平均値の  標準誤差 成績 2013 28 78.57 15.99 3.02 2014 13 83.96 7.28 2.02 独立したサンプルのt検定 2013年度と2014年度の成績を比較した結果,統計的に有意な差は見られなかった。

4. 授業の成果 4.3. 2013年度との比較 ② [A]~[E] [F] 以降

4. 授業の成果 4.3. 2013年度との比較 ② グループ統計量 年度 N 平均値 標準偏差 平均値の 標準誤差 A_E_sum 2013 28 34.86 7.60 1.44 2014 13 35.88 5.90 1.64 F_select_sum 43.71 9.99 1.89 48.08 2.93 .81 独立したサンプルのt検定 2013年度と2014年度の成績を比較した結果, A-Eまでの得点では有意な差は見られなかったが, F-Hと選択問題の得点では,有意な差が見られ,2013年度よりも2014年度の方が得点が高かった。

4. 授業の成果 4.4. 考察 ・反転部分での成績は向上 ・成績のバラつきが縮小 ↓ 「底上げ」効果あり?

5. その他の気づき 5.1. 良かった点 ・理解の遅かった学生にはメリットあり ・ドロップアウト組の消失 ・学生たちの協力?  問題が自力で解けるようになる  教員や友だちに質問しやすい ・ドロップアウト組の消失 ・学生たちの協力?  選択問題の選び方に偏りがあった  試験前に,グループで質問に来る ・応用問題に言及する時間的余裕

5. その他の気づき 5.2. 考えるべき点 ・「できる学生」への対応 ・授業の「ライブ感」は? ・「その場の理解」≠「理解の定着」   問題が30分でできて手持ちぶさたに,協働の姿勢△ ・慣れてくると,全体的に中だるみ感?   できない学生も遅く来る,資料を持参しない,など ・授業の「ライブ感」は? ・「その場の理解」≠「理解の定着」   多くが授業直前に視聴   数回前に解いた問題を覚えていないことも ・どういう部分を反転にすべきか?   今回は,特に難しいところは反転しなかったが・・・ ボーナス問題の設定

Thank you! ※謝辞 今回の反転授業は,森朋子先生,七田麻美子先生,鹿住大助先生からのご指導と ご助言があってこそ実施できたものです。島根大学反転プロジェクトメンバー間の意見交換からも多くのアイデアをいただきました。また,学生アンケートや成績の分析では,本田周二先生のお手を煩わせました。温かくサポートして下さった多くの方々に感謝申し上げます。