冷却性能向上を目指したsaltpillの製作 卒業論文 冷却性能向上を目指したsaltpillの製作 宇宙物理実験研究室 0041030 新妻周子
①本研究の目的 ◎TES型マイクロカロリメータ TES ◎極低温冷凍機 ◎目標 カロリメータ導入 60mKを10時間保持 X-ray X線入射の際の微細な 温度変化をとらえる 吸収体 TES TES温度計・・・ 超伝導遷移端にて 温度に対し大きな抵抗変化 ◎極低温冷凍機 動作温度 ~100mK程度 ◎目標 カロリメータ導入 60mKを10時間保持 液体ヘリウム24時間保持 温度安定性DTrms=1μK 無重力空間では 断熱消磁冷凍機のみ 実現可能
①本研究の目的 ◎TES型マイクロカロリメータ このため、断熱消磁冷凍機(ADR) が必要。動作温度は、~100mK。 ◎目的 X線の入射エネルギーを温度上昇として測定 ↓ 極低温において、高いエネルギー分解能 このため、断熱消磁冷凍機(ADR) が必要。動作温度は、~100mK。 ◎目的 ADRの心臓部であるsaltpillの設計、 組み立て、および結晶作成。
①本研究の目的 Al saltpill detector table 液体Heタンク ◎TES型マイクロカロリメータ ADRの構造 ◎TES型マイクロカロリメータ X線の入射エネルギーを温度上昇として測定 ↓ 極低温において、高いエネルギー分解能 このため、断熱消磁冷凍機(ADR) が必要。最低到達温度は、~30mK。 Al ◎研究内容 ADRの心臓部であるsaltpillの設計 および結晶作成。 液体Heタンク saltpill detector table
②断熱消磁の冷却原理 =b ADR ---Adiabatic Demagnetization Refrigerator ◎極低温における常磁性体の磁気的相転移を利用 磁性体の 局在スピン 熱浴 強磁性領域での スピン相互作用 ◎冷凍サイクル(FAAを例) =b 強磁場 熱浴 熱平衡 0T 0.08T エントロピー(J/K-mol) ※到達温度 60mK保持 3T 30mK 断熱 熱浴 ※磁気比熱 3K C:キュリー定数 ≫電子/格子比熱
②冷却原理 常磁性塩に磁場を与える。 B/T=B’/T’=const スピンがそろい、 エントロピーが下がる。 磁性体の 局在スピン 熱浴 ◎冷凍サイクル(FAAを例) 強磁場 熱浴 熱平衡 0T その状態で断熱し、 磁場を取り去る。 0.08T エントロピー(J/K-mol) 60mK保持 3T 左上の式に従って、 常磁性塩の温度が 下がる。 30mK 断熱 熱浴 3K
②冷却原理 常磁性塩に磁場を与える。 B/T=B’/T’=const スピンがそろい、 エントロピーが下がる。 ◎冷凍サイクル(FAAを例) その状態で断熱し、 磁場を取り去る。 0.08T エントロピー(J/K-mol) 3T 左上の式に従って、 常磁性塩の温度が 下がる。 3K
③ADRデュワーの構造 ヒートスイッチ 稼働部 ○蒸気冷却方式 コンパクト化 ○多層断熱 80枚Al蒸着フィルム ○蒸気冷却方式 コンパクト化 ○多層断熱 80枚Al蒸着フィルム ○7ℓ He tank 減圧してさらに低温に 液体 ヘリウム 注入口 ガラスエポキシ support shell He t a n k Al蒸着 フィルム 473mm detector table 初段アンプ導入部
④ADR中心部の構造 saltpill ヒートスイッチ ◎saltpill --- 磁性体のカプセル FAA(鉄ミョウバン) 89.8g(0.187mol) ◎超伝導マグネット NbTi線 約4万turn max 4T@7.8A 補償コイル 磁場を99%キャンセル 220mm 超伝導 マグネット 補償コイル saltpill ケブラー ワイヤー detector table X-ray
⑤デュワー性能 ◎蒸気冷却 ◎冷却試験結果 蒸発Heガス 注入口流入熱 ~20mW 液体ヘリウムの 蒸発ガスで 支持材料とshieldを 支持材料その他の 流入熱 ~100mW He tank 輻射熱 ~0.1mW 50K shield 150K shield 全流入熱理論計算値 ~120mW 300K真空槽 4.2ℓ減圧液体ヘリウム ---1.7K 保持時間 --- 24hours ◎冷却試験結果 流入熱測定値-----~127mW ほぼ計算値通り
⑥断熱消磁試験 (K) heat switch 02/06/28 冷却試験 He tank top detector table 02/06/28 冷却試験 He tank top detector table ① 等温磁化 ② 断熱消磁 ヒートスイッチ on off 90mK ① エントロピー 電流(mA) ② 温度 Time(min)
⑦冷凍サイクル 0:00 デュワー真空引き 液体窒素予冷 液体ヘリウム予冷 液体ヘリウム減圧 等温磁化、断熱消磁 最低温度到達 ~100mK 4hours 8hours detector table 77K 3hours 4.2K 1.5hours 2.5K 2hours 4:00 12:00 = 600~650Gaussと測定 (15回の断熱消磁試験) 15:00 ◎saltpillへの流入熱測定値 0.6~0.8μW(ほぼ設計通り) 16:30 ◎極低温保持時間(熱負荷 1μW) 60mK --- 3.1hours 100mK --- 20.7hours 18:30
⑧温度制御 i(t) = i(t-1) + P×(T-Tset) + I×Di + D×DT Lab Windowsで 自動温度モニター、 100mK以下において DTrms ~3μKが実現可能 磁性体自身を、磁場を用いて制御 ◎コイル電流の方程式(PID model) i(t) = i(t-1) + P×(T-Tset) + I×Di + D×DT P, I, D : 制御パラメータ i(t) : コイル出力電流 T : 温度平均値 Tset : 設定温度 ΔT : 温度変化平均 Δi : 電流変化平均 Dt : 平均時間 ADRデュワー PC saltpill LabWindows 電流源 KEITHLEY2400 GPIB 超伝導コイル Lab Windowsで 自動温度モニター、 電流制御 抵抗ブリッジ CryoCon 62 RuO2 ThermoMeter
⑨温度制御試験 ◎温度測定系のノイズ DTrms =7.8μK相当(@100mK) 長期ランニング試験 2時間以上の制御で 大きなブレなし(02/11/23) 79.96 80 80.04mK number 100 DTrms = 13.5μK @80mK Time(min)-Temp(mK) -1.1mA/s 電流(mA) Time(min) パラメータをチューニング(03/01/19) DTrms=8.1μK@70mK number 20 70 70.03 70.06mK 温度測定系のノイズが壁
⑩TES型カロリメータ導入試験 TESカロリメータを マウント V (max10V) 10kΩ TES 100mK 1.7K シャント 抵抗 V (max10V) 10kΩ TES SQUID 100mK 1.7K ◎TESバイアス回路図 素子 : SII-32(セイコーインスツルメンツ) Ti/Au = 50/120nmの2層薄膜 転移温度138mK 2回の断熱消磁試験で60-65mKに正常に冷却できることを確認 TESカロリメータを超伝導遷移させることは成功
⑪ADRの現状と課題 ADR ◎デュワー性能 減圧液体ヘリウム温度 1.7K、保持時間~24hours ◎断熱消磁 消磁開始温度 ~3K、最大磁場 ~3T 100mK以下に到達を確認。 ◎温度制御 DTrms=8.1mK@70mK、2時間以上の制御を確立 ◎TES型カロリメータ導入試験 冷却まではOK ◎課題 最低温度30mKを目指す、 温度安定性1mK以下 X線検出 ◎将来目標 入射窓導入、X線ビームラインに接続 X線 ジェネレータ ADR X-ray
SQUID system ◎SII(セイコーインスツルメンツ)製 200 Serial SQUID Array Amp 使用 21mm Shieldを設計 自作のshieldにて 試験 振幅130mV 1.7Kにて 測定モードに入ることを確認 ノイズパワースペクトル 磁気トラップによるノイズが大きい
横に倒しての冷却試験 ※液体ヘリウム注入後、注入口が上になるよう倒す 最初のみ蒸発速度が増す 正常に冷却が可能。流入熱も変化なし
③改善点 今のところ最低到達温度は75mK FFAの本来の 最低到達温度は30mK 30mKまでいかない一番の 要因は、saltpillの中の 結晶の状態にあると思われる。
③saltpillの作成 ◎saltpillの条件 熱伝導性 --- 0.2mmφ金線160本 対強酸性、対極低温性 --- 内部はSUS,Au,アクリル 対圧性 --- 容器にSUSを採用 結晶を育てる構造--- パイプを2本使用 saltpill3号機の必要性 ・1号機は、最低到達温度 30mKまでいかない ・2号機は、密封が不完全 ・3号機 常磁性塩を変更 真空シール部の改良
④CrKミョウバンの結晶作成 ◎最低到達温度(理論値) 鉄ミョウバン---約30mK CrKミョウバン---約10mK ◎比熱 KCr(SO4)2・12H2O --- 6.980g 蒸留水 --- 20g 温度(※) --- 27℃、30℃、32℃ <作成方法> 1、ビーカーに試料と蒸留水を入れ 一定の温度(※)で攪拌 2、上をろ過し、数日間放置 左記の方法で結晶が 約3.4g析出(30℃の場合)。 (必要量は約85g)
⑤現状報告と今後について ◎設計と組み立て 密封方法を改善したsaltpill 3号機を設計。 ◎結晶 3.4gのCrKミョウバンが析出。 今後、攪拌時の温度、放置時の温度、 放置日数を変え、最適な条件を決定。
②saltpillについて ◎saltpill ADRの冷却原理 saltpillの仕事はdetector tableを 極低温状態にもっていくことであり、 この中に磁性体が入る。 ADRの冷却原理 常磁性塩に磁場を与える。 スピンがそろい、 エントロピーが下がる。 ヒートスイッチ その状態で断熱し、 磁場を取り去る。 超伝導マグネット 下の式に従って、 常磁性塩の温度が 下がる。 B/T=B’/T’=const detector table ADR中心部の構造