一般編 転倒による災害や事故を 撲滅しよう! あっ、危ない! その場所、その靴、その行動 転倒災害防止のための研修教材(一般編:従業員向け) あっ、危ない! その場所、その靴、その行動 転倒による災害や事故を 撲滅しよう! 一般編 平成26年11月 編集:長野労働局労働基準部健康安全課
転倒による災害や事故は、職場や日常生活の中で、 身近に発生しています! 職場では・・・ 転倒災害は、労働災害全体の約2割を占めており、近年さらに増加しています。 (人) 死傷者数全体 うち転倒災害 資料:長野労働局「労働者死傷病報告」
転倒による災害や事故は、職場や日常生活の中で、 身近に発生しています! 職場では・・・ 平成25年の転倒災害は515人で最も多くなっています。 また、製造業や商業などで、多く発生しています。 資料:長野労働局「労働者死傷病報告」
転倒による災害や事故は、職場や日常生活の中で、 身近に発生しています! 日常生活では・・・ 今や国民的課題です!! 平成7年に約1万5千人だった交通事故死は、平成25年には約6千人と半分以下に減少しています。 一方、転倒・転落による死亡は、じわじわと増え続け、平成25年には7,766人に達しています。また、大半が、65歳以上の高齢者です。 転倒・転落死 交通事故死 資料:厚生労働省「人口動態統計 死因分類別死亡者数の推移」
転倒災害や事故を防ぐために、心がけることは?? 一般編
1.転倒災害は、どんなところで発生しているの?? 危険な場所や環境に応じて、具体的な対策を講じる リスク要因・・・その1 リスクアセスメントやKY活動を通じて 身近にどんな危険が潜んでいるか みんなでチェックしましょう!! 転倒災害が多発している場所は危険! (作業フロア、駐車場、通路、階段、斜面など) 作業フロアや通路などに、段差や凹凸、突起物、継ぎ目などはありませんか? 床面に、凍結や水たまり、油、砂、粉、障害物などはありませんか? 照明器具は、十分な明るさが確保されていますか? 階段や斜面は、安全に歩けるようになっていますか? チェックポイント 凍結、水たまり、油、 障害物なし、ヨシ!
バリアフリーで、高年齢労働者にも優しく! 対策・・・その1 私は、こうする! こうしてもらう! 作業フロアや通路などの段差や凹凸、突起物、継ぎ目などを解消する! 床面の凍結や水たまり、油、砂、粉、障害物などは、すぐに取り除く! 照明器具を点検し、明るいものに取り換える! 階段や斜面には、手すり、滑り止めなどを設ける! 危険個所には、見やすい場所に「注意喚起」のステッカーなどを貼る! バリアフリーで、高年齢労働者にも優しく! 4Sの徹底 (整理、整頓、清掃、清潔) 足元の明るさは大丈夫? 危険の「見える化」で、 慎重に行動できる!
職場の取組・・・ワンポイントアドバイス その1・・・ 4S活動(災害の原因を取り除く!) 4Sの基本は・・・ 「必要な物が、 必要なときに、 「4S」とは「整理」「整頓」「清掃」「清潔」のことで、 これらを日常的な活動として行うのが「4S活動」です。 ◆ 4S活動は、労働災害の防止だけではなく、作業のしやすさ、作業の効率化も 期待できます。 ◆ 荷物やゴミなど、物が散らかっている職場や、水や油で床が滑りやすい職場は、 災害の危険が高くなります。 4Sの基本は・・・ 「必要な物が、 必要なときに、 必要な場所に、 必要な数(量)だけあるように 心がけること!」 かたづけ! 分別! 床ふき! お掃除!
職場の取組・・・ワンポイントアドバイス その2・・・ 危険予知(KY)活動(潜んでいる危険を見つける!) 危険予知活動は、作業前に現場や作業に潜む危険要因とそれにより発生する災害について話し合い、作業者の危険に対する意識を高めて災害を防止しようというものです。 (作業の状況) 商品の仕分け作業庫で、商品を運搬しています・・・ ○ 対策 ・床面に散水したときは、すぐに拭き取る。 ・商品を運ぶときは台車を使用する。 どのような危険が 潜んでいるでしょうか? ・大きな荷物を抱えているため、床面の 水たまりに気づかず、滑って転倒する。 ⇒ 始業前に職場で「その作業では、どんな危険が潜んでいるか」を話し合い、「これは危ない」というポイントについては対策を決め(「○○ときは、○○する!」)、作業のときは、一人ひとりが「指差し呼称」をして行動確認します。
職場の取組・・・ワンポイントアドバイス その3・・・ 危険の「見える化」(危険を知らせる!) 危険の「見える化」は、職場の危険を可視化 ( = 見える化)し、従業員全員で 共有することです。 ◆ KY活動で見つけた危険のポイントに、ステッカーなどを貼りつけることで、 注意を喚起します。 ◆転倒や衝突などのおそれのある箇所が分かっていれば、慎重に行動することが できます。 危険の「見える化」の例 通路の交差部等に「死角」があり、歩行者同士がぶつかる危険がある。 ステッカー表示例 「死角」で見えない他の歩行者にいち早く気付くよう、天井に凸面鏡(ドームミラー)を設置。 凸面鏡を設置することで、死角位置(写真の事例では右側方向)から接近する他の歩行者を「見える化」した。
危険な行動や状態を理解し、慎重に行動する 2.どんな行動や状態が危ないの?? 危険な行動や状態を理解し、慎重に行動する リスク要因・・・その2 あわてる、錯覚、見落し、考え事、よそ見、手荷物、身体機能の衰えなど・・・ 転倒のメカニズムをよく理解する!! 作業フロアや通路を走ったり、急ぎ足で歩いていませんか? 荷を運ぶ時に、両手がふさがっていませんか? 階段などで、ポケットに手を入れたまま、書類を見ながら、携帯電話を使いながら、人と話をしながら歩いていませんか? 運動不足で、体が硬くなったり、バランス感覚や体力が落ちていませんか? チェックポイント
「滑り」、「つまずき」、「踏み外し」は こうすれば防げる! ① 滑りのメカニズム ◆急ぐほど滑る ◆歩幅が大きくなるほど滑る ◆曲がるとき、方向転換するとき滑る ◆重いものを持つほど滑る ◆昇りより、下りで転倒しやすい ① 滑りのメカニズム 対策は・・・ ◆急がず、走らず、慎重に行動する! ◆歩幅を小さく! ◆できるだけ両手をふさがない! ◆重い物を運ぶときは、台車などを使う! ◆滑りにくい履物を履く!
「滑り」、「つまずき」、「踏み外し」は こうすれば防げる! ② つまずきのメカニズム ◆小さな段差ほど、つまずきやすい ◆段差は、降りる方向から見えにくい ◆障害物が段差を遮る ② つまずきのメカニズム ◆バリアフリー(段差、凹凸、突起、継ぎ目の解消)! ◆危険個所の表示など危険の「見える化」の推進! ◆4Sの励行! 対策は・・・
「滑り」、「つまずき」、「踏み外し」は こうすれば防げる! ③ 踏み外しのメカニズム ◆急いでいるときに踏み外しやすい ◆降りるときに踏み外しやすい ◆階段を降りるとき、出入口で踏み外しやすい ◆暗い照明の階段で踏み外しやすい ◆昇りより、下りで転倒しやすい ③ 踏み外しのメカニズム ◆階段の昇降はゆっくりと(走らない)! ◆危険個所の表示など危険の「見える化」の推進! ◆4Sの励行! ◆十分な照明を確保する! ◆ポケットに手を入れたままあるかない! ◆「ながら行動」はしない! 対策は・・・
対策・・・その2 私は、こうする! 作業フロアや通路などでは、急がず、走らず、足元に注意して慎重に行動する! 対策・・・その2 私は、こうする! 作業フロアや通路などでは、急がず、走らず、足元に注意して慎重に行動する! 荷を運ぶ時は、台車などを使用する! 階段などでは、ポケットに手を入れたり、書類を見ながら、携帯電話を使いながら、人と話をしながら歩かない! 日ごろからストレッチや適度な運動を取り入れ、転倒予防のための体力づくりを心がける!
滑らない履物はない! 滑りにくい履物を選ぶ! 3.どんな履物を選べばいいの?? 滑らない履物はない! 滑りにくい履物を選ぶ! リスク要因・・・その3 作業内容や作業環境と履物の相性を理解する! 履物は、転倒防止のための「保護具」です! 転倒災害は、 多様な履物で発生! ・運動靴 ・スニーカー ・長靴 ・ブーツ ・防寒靴 ・安全靴 ・作業靴 など・・・ 作業内容やリスク要因(水、油、砂、粉、凍結など)に応じて、滑りにくい靴底の履物を使用していますか? 定期的に、履物の状態を点検し、靴底がすり減っている場合は、新しいものに取り替えていますか? チェックポイント
対策・・・その3 私は、こうする! 作業内容や作業環境、床面の状態(水、油、砂、粉、凍結など)に適した滑りにくい履物を使用する! 対策・・・その3 私は、こうする! 作業内容や作業環境、床面の状態(水、油、砂、粉、凍結など)に適した滑りにくい履物を使用する! 定期的に靴底の状態をチェックし、靴底がすり減っているような場合は、新しいものに取り替える!
滑りにくい靴底の例 食品工場(ライン) 飲食店 フロア作業 食品加工 厨房 水を使う作業 薬品取扱い 配送業 倉庫作業 屋根上作業 内装業 合成ゴム底 PVC底 一般製造 組立ライン 建設業 熱職場 金属加工業 (切粉が出る) (油作業) 発泡ウレタン底 ラバーテック底 低発泡ウレタン底
高齢者向けシューズの例(平成21年3月「高年齢労働者に配慮した職場改善マニュアル」から抜粋) 靴の重量バランスの改善! つま先部に重量が偏っていると、高年齢労働者はつまずきの要因となるので、樹脂先芯化で靴の重量バランスを改善する。 つま先の高さを確保! (トゥスプリング) つま先部の高さが低いと、高年齢労働者はつま先部を床にぶつけたりしてつまずき事故が生じやすくなるので、つま先部の高さを確保する。
転倒予防のための「いきいき安全体操」のすすめ・・・ 「いきいき安全体操」は、バランス能力、敏捷性、筋力を向上させるための運動プログラムで、約5分間、音楽に合わせて立ったままで行います。 全身ストレッチと、平衡機能・敏捷性・下肢筋力の向上を目的とした5つの動作の繰り返しで構成されています。 転倒予防のための体力づくりに、みんなで実践してみましょう! ※転倒災害防止と身体機能改善を目的として、マツダ(株)安全健康推進部健康推進センターのトレーナーが考案、実施された効果的なプログラムです。 図1 つま先かかと立ち:足関節の背屈・底屈(つま先を上げる前脛骨筋の強化) つま先かかと立ち4回×2セット
図2 フォアードランジ:前後方向への重心移動、上肢の前後方向への素早い動作(バランス能力、上肢・下肢敏捷性、 下肢筋力、股関節可動域の向上) (右足踏み出し2回→左足踏み出し2回)×2セット 図3 つま先タッチ:垂直方向への重心移動(バランス能力、敏捷性、筋力、股関節可動域の向上) (右足タッチ2回→左足タッチ2回)×8セット
図4 サイドランジ:左右方向への重心移動、急速な下肢の左右方向への踏み出し、上肢の左右方向への素早い動作 (バランス能力、上肢・下肢敏捷性、下肢筋力、股関節可動域の向上) (右足踏み出し2回→左足踏み出し2回)×2セット 図5 片足スクワット:垂直方向への重心移動(バランス能力、筋力、足関節・股関節可動域の向上) (右足2回→左足2回)×2セット
職場では、実際にこんな災害が起きています 事例研究 その1 業種・職種 発生状況 飲食業・ウェイトレス 客に提供する料理をトレイに載せて運ぼうとしていたときに、厨房の出入り口付近に置いてあったごみ箱につまずいて転倒し、割れた皿で右手親指の付け根付近を切った。 年代・性別 40代 女性 怪我の程度 休業6日 再発防止のワンポイントアドバイス 床面に物を置かない! 転倒災害防止の基本も「整理・整頓」! 両手で物を運ぶ時は、特に足元注意!
職場では、実際にこんな災害が起きています 事例研究 その2 業種・職種 発生状況 小売業・配達員 新聞配達先で、玄関に向かって歩いているとき、暗かったため、アプローチの石畳の溝に気づかず、足が溝に引っかかり、捻ってしまい捻挫した。 年代・性別 50代・女性 怪我の程度 休業3週間 再発防止のワンポイントアドバイス 夜間はヘッドランプなどを携帯し、通路の状況をよく確認する! 足元に注意して、慎重に行動する!
職場では、実際にこんな災害が起きています 事例研究 その3 業種・職種 発生状況 小売業・販売員 豚肉を冷蔵保管庫に取りに入ったところ、床に氷が張っていたため、滑って転倒し、左手首を捻挫した。 年代・性別 30代・女性 怪我の程度 休業11日 再発防止のワンポイントアドバイス 床の水たまりや氷は放置せず、その都度取り除く! 「清掃・清潔」を徹底する! 滑りにくい靴底の履物を着用する! 足元に注意して、慎重に行動する!
職場では、実際にこんな災害が起きています 事例研究 その4 業種・職種 発生状況 小売業・販売員 店舗裏の資源ゴミ置き場へゴミの入った段ボール箱を2人で運んでいた。被災者は後ろ向きで運んでいたため、進行方向に積んであった新聞紙の束に気づかず、足が引っ掛かりバランスを崩して転倒した。 年代・性別 40代・女性 怪我の程度 休業10日 再発防止のワンポイントアドバイス 通路に物を置かない! 転倒災害防止の基本も「整理・整頓」! 大きな荷物を運ぶ時は、台車を使用する! 二人で荷物を運ぶ時は、お互いに声を掛け合い、足元注意しながら慎重に行動する!
職場では、実際にこんな災害が起きています 事例研究 その5 業種・職種 発生状況 社会福祉施設 介護職 職場の事務所内で、朝の会議終了後、自分の席から向かい側の机の所まで資料を取りに行き、戻る際にストーブのコードに足を引っかけてしまい転倒した。 年代・性別 50代・女性 怪我の程度 休業1か月 再発防止のワンポイントアドバイス 床面のコード類は、つまずいて転倒する要因になります。コード類は整理して床に這わせない! 「整理・整頓」を徹底する!
職場では、実際にこんな災害が起きています 事例研究 その6 業種・職種 発生状況 食料品製造業 製造工 空のコンテナを4段積んで持ちながら現場内を歩行していたところ、通路に置いてあった台車が見えなかったため、台車につまずいて転倒し、膝を強打した。 年代・性別 50代・女性 怪我の程度 休業1か月 再発防止のワンポイントアドバイス 大きな荷物を運ぶ時は、台車を使用する! 通路に台車を放置しない! あらかじめ台車の置き場所を決めておく! 置き場所にはペイントなどによる表示も忘れずに!
職場では、実際にこんな災害が起きています 事例研究 その7 業種・職種 発生状況 食料品製造業 製造工 ビスケットの製造ラインで作業を行っていたときに、高さ約30cmの踏み台に上ろうとしたところ、床面がビスケットの粉で滑りやすくなっていたためスリップして転倒した。 年代・性別 60代・女性 怪我の程度 休業1か月 再発防止のワンポイントアドバイス 砂や粉なども滑る要因のひとつです。床面の清掃、清潔を徹底する! 砂や粉などに適した滑りにくい靴底の履物を着用する!
「いいえ」の項目は早急に改善しましょう! 自己チェックしてみよう!! 転倒災害防止のためのチェックリスト チェック項目 はい いいえ 1 床の水たまりや氷、油、砂、粉類、段ボール箱、コード類などは放置せず、その都度取り除いていますか? □ 2 身の回りの整理・整頓を行っていますか? 3 通路、階段、出入り口に物を放置していませんか? 4 上記の1~3について、指差し呼称で確認していますか? 5 作業場や階段、通路では、走らずに慎重に行動していますか? 6 荷物を運ぶ時は、できるだけ台車を使うようにしていますか? 7 ポケットに手を入れたり、人と話しながら、携帯電話を使いながら歩いていませんか? 8 作業に適した滑りにくい靴を履いていますか? 9 ストレッチや体操など転倒予防のための軽い運動を行っていますか? 「はい」の項目はいくつありましたか? 「いいえ」の項目は早急に改善しましょう!
ご安全に!