Unit18 設けるにもルールあり
1) 善管注意義務と忠実義務 取締役は、会社から経営を委託された者であり、委任の定めが適用される(会330条) そのため、「善良なる管理者の注意」をもって事務を処理し、会社のためにその職務を執行する義務を負う(民法644条・善管注意義務) * 「取締役の責任」とは取締役会構成員としての個々の取締役の会社に対する責任一般をさす だから… 取締役会決議に参加した取締役で、議事録に異議をとどめなかった取締役は決議に賛成したものと推定される(会423条3項3号)
会社は営利を目的としているので、取締役は、会社や株主にとって最も有利となるように忠実に業務の遂行に当たる義務を負う(忠実義務) 会355条 取締役は、法令及び定款並びに株主総会の決議を遵守し、株式会社のため忠実にその職務を行わなければならない
善管注意義務と忠実義務の関係その1 善良なる管理者の注意義務 競業 忠実義務 利益 相反 *会356条:競業と利益相反を一括して一条に… 取締役の法的義務 善良なる管理者の注意義務 忠実義務 競業 利益 相反 *会356条:競業と利益相反を一括して一条に…
会社のための業務執 行において懈怠がな いようにつとめること *取締役としての地位を自らの利益のための利用することの禁止 善管注意義務と忠実義務の関係その2 善管注意義務 会社のための業務執 行において懈怠がな いようにつとめること 忠実義務 *取締役としての地位を自らの利益のための利用することの禁止
2) 善管注意義務とBJR 取締役の善管注意義務は、通常の企業人ならばどう判断したかという「ビジネス・ジャッジメント・ルール(経営判断の原則)」を基準に決定される つまり、合理的に判断し、最善を尽くしてやったかどうかが問われる
株主=所有者 選任=委任 取締役 株式保有 Toshiba Co. 完全子会社化 Big loss Westinghouse Co.
株主 取締役 株式 Toshiba Co. Sell out!
損害賠償=代表訴訟 委任契約 × 善良なる管理者の注意義務
損害賠償請求 Business Judgement Rule 委任
ビジネス・ジャッジメント・ルール Yes No 責任を負わない 責任を免れない 意思決定が会社の利益のためになされたか? 意思決定が会社の利益のためになされたか? 経営決定の過程で慎重であったか? 決定された行為は適法か? 決定内容が明らかに不合理とはいえないか? Yes No 責任を負わない 責任を免れない
3) 新旧の「取締役の責任」規定 旧・商法266条第1項 下記行為をした取締役は連帯して責任を負う 3) 新旧の「取締役の責任」規定 旧・商法266条第1項 下記行為をした取締役は連帯して責任を負う ①290条第1項(利益配当の限度額)の規定に違反する利益配当に関する議案を総会に提出し又は、293条の5第3項(中間配当の限度額)の規定に違反する金銭の分配を為したるとき ―違法に配当又は分配された額 ②294条の2第1項(株主の権利行使に関する利益提供の禁止)に違反して財産上の利益を供与したとき―供与利益額 ③他の取締役に対し金銭の貸し付けを為したとき―未弁済額 ④前条第1項の取引をなしたるとき-自己取引金額 ⑤法令又は定款に違反する行為をなしたるとき―会社が蒙った損害額
新会社法では… 423条 ①取締役、会計参与、監査役、執行役又は会計監査人…は、その任務を怠ったときは、株式会社に対し、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。 ②取締役又は執行役が〔利益相反取引・競業取引〕の規定に違反して〔当該取引〕をしたときは、当該取引によって取締役、執行役又は第三者が得た利益の額は、前項の損害の額と推定する。 ③〔利益相反取引・競業取引〕によって株式会社に損害が生じたときは、次に掲げる取締役又は執行役は、その任務を怠ったものと推定する。 (以下、略)
ほとんどの訴訟で、善管注意義務を果たしたかどうかが問われる 4) 取締役の義務と責任の整合性 重要なのは旧・商法266条1項5号の「法令違反」行為。 *訴訟もこれに集中 ほとんどの訴訟で、善管注意義務を果たしたかどうかが問われる 「善良なる管理者の注意義務」法令違反との関係 =法令違反があると当然に善管注意義務違反か?
a) 旧商法254条3項と266条5項の微妙な「すれ違い」 「株主のため」に善良な 管理者として行動する 「法令違反」を責任根拠とする 旧商法266条1項5号 =法令違反をしてはいけない
「株主の利益をはかる」ためには取締役は何でもできる! どう説明づける? 「株主の利益をはかる」ためには取締役は何でもできる! えっ?、絶対うそ!! そこで… 「法令違反」行為は禁止される =法令に違反すると自動的に「善管注意義務違反」
確かに… 例1 殺人! 単刀直入にライバル社の 取締役と技術者を殺しに! どうしてもライバル社 にかなわない 業績好転
これは?… 例2 取締役 役人と結託! 贈賄
ところが… 例3 仕方がないのでスピード違反! とても大事な 顧客を空港に 迎えに… でも、大渋滞! 無事間に合って商談成立
さらに… 例4 外国為替管理法違反? 大型トレーラーを北朝鮮に輸出
旧・商法266条1項5号は取締役の「儲けるためならなんでもできる」という行き過ぎを抑止する役割を担っている、という「大儀」 ところが、「法令違反」を厳格に解釈するとその機能は非現実的になってしまう
b) 野村證券事件 信託銀行 野村證券 10億円 TBS 投資アドバイス等 投資
限定説 フィルター 下記以外の法令 330条3項 355条 法令違反行為? *かつて266条1項5号 違反 公序・良俗にかかわる法令 会社法的な利害にかかわる法令 法令違反
非限定説 すべての法令 法令違反の可能性
5) BJRと「法令違反」の関係 取締役の 取締役の 経営判断 義務の厳 の重視 格な運用 =会社の =株主の 機動性 利益 確保 機動性 確保 取締役の 義務の厳 格な運用 =株主の 利益 法令違反=客観的 義務違反 非限定説 限定説