平成21年度「新世代ネットワークサービス基盤構築技術に関する研究開発 〜ネットワーク『見える化』の実現にむけて〜」の開発成果について

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平成21年度「新世代ネットワークサービス基盤構築技術に関する研究開発 〜ネットワーク『見える化』の実現にむけて〜」の開発成果について 1.施策の目標 ネットワークユーザを支援する計測技術のうち、利用者側の視点で『ネットワークの見える化』を実現する基盤技術の開発をおこなう。 2.研究開発の背景 ISP は拡大し続けるバックボーン帯域に対する需要を満たすために設備、回線投資を継続しなければならない。この結果、長期的にはインターネットの利用者の負担増につながる。同じ通信相手先であっても通信性能は常に変化するが、端末側からネットワーク内部情報にアクセスするための機能は全く提供されていないため、利用者はネットワーク内部を「推定」することしかできない。また、利用者が異常を感じてISP に申告する際にも、正常時の情報が欠落しているため、正常/障害の判断を瞬時におこなうことが難しい。 3.研究開発の概要と期待される効果 ネットワーク利用者を支援する計測技術を開発する。すなわち、ネットワーク利用者が通信経路上のネットワーク情報にアクセスする枠組みを提供し、利用者側の視点で『ネットワークの見える化』を実現する。さらに、利用者、ネットワーク提供者など、通信関係者すべての情報開示ポリシを尊重する枠組みも併せて実現する。利用者側の視点で『ネットワークの見える化』を実現することで、ネットワーク内部の情報を常に記録、比較することができるようになる。その結果、システマティックな障害検出、切り分けが容易になり、利用者にとって信頼性の高いサービスを利用できるようになる。また、運用者側にとっては運用コストの低減が期待される。 ネットワークの見える化 これまでの成果と今後の方針 見える化対応ルータを開発し、仮想的なテストベッドをJGN2plus上に展開 アプリケーション側から、ネットワークの内部情報を取得するためのAPIを開発し、取得情報を利用するアプリケーションを開発 利用帯域・位置情報を利用する アプリケーションを開発 P2Pネットワークにおける最適ピア選択、通信の局所化・最適化技術の実装 運用ポリシに合わせた情報取得技術の実装 4.研究開発の期間及び体制  平成20年度~平成22年度(3年間)  NICT委託研究(早稲田大学、独立行政法人産業技術総合研究所) 1

平成21年度「新世代ネットワークサービス基盤構築技術に関する研究開発 〜ネットワーク『見える化』の実現にむけて〜」の平成21年度成果 ネットワークの『見える化』機能が実装されたルータをJGN2plus上に展開した。 アプリケーションがネットワークの内部情報を取得するためのインタフェースを開発した。 ネットワークの内部情報を可視化するためのアプリケーションを開発した。 JGN2plus上に『見える化』機能を実装したルータを配置し、実験環境を構築した。 20年度に開発した、 『見える化』機能実装したi-Pathルータに対して、アプリケーションが情報取得を行うための機能を提供するAPIを開発した。 本APIにより、取得する対象のルータの絞り込み、取得する情報の種類を指定することにより、アプリケーション側からネットワークの内部情報を取得・利用することが可能となった。 位置情報を利用するアプリケーション i-Pathルータから、設定されている緯度、経度情報を取得し、経路上のルータの位置を表示するアプリケーションを構築した。 位置情報の取得は、P2Pネットワークにおけるピア選択の最適化、トラフィックの局所化に応用が可能。 利用帯域情報を利用するアプリケーション 経路上のi-Pathルータが利用している帯域情報を取得し、長時間の計測が可能なアプリケーションを構築した。 正常時と故障時の状況をモニタリングすることが可能となる。 ネットワーク上のボトルネックを抱える経路の特定が可能となる。 2

①ネットワークの見える化技術の主な成果 ネットワークの見える化技術開発 JGN2plus基盤への展開 ①ネットワークの見える化 ネットワーク内部情報を利用するためのライブラリ、および収集した情報を利用するアプリケーションをJava実行環境上に設計、実装した。 ライブラリを利用するアプリケーションによってネットワークの内部情報である、位置情報・利用帯域を収集することが可能となった。収集した情報を利用するアプリケーションは、地理情報を地図上に表示することが可能となり、利用帯域情報をグラフ上に表示することが可能となった。 米国におけるデモを行い、複数事業者をまたがる通信経路上であっても情報収集が可能なことを実証するとともに、スケーラブルな計測環境を構築した。 日米間の拠点での情報取得に成功 ネットワークの内部情報を収集・利用するAPIの開発 JGN2plus基盤への展開 位置情報を利用する アプリケーションを開発 『見える化』機能を提供する SIRENS 拡張機能をルータに実装、機能を検証した。 仮想化基盤上に構築される SIRENS 拡張 L3 基盤で、物理基盤の情報を提供するための、収集、キャッシュ機能を実装した。 利用帯域情報を利用するアプリケーションを開発 明示的なネットワークパス情報収集方式SIRENSによって収集された情報を利用するAPIを開発した。 収集されたルータの位置・利用帯域情報を利用するアプリケーションを開発した。 収集された情報をリアルタイムで利用できることからP2Pアプリケーション等におけるオーバーレイネットワークの構造最適化アルゴリズムに適用が可能。 3

②開示ポリシ尊重技術の主な成果 開示ポリシ尊重のための選択的情報開示技術 開示ポリシが設定された後のネットワーク Alice Bob ネットワークの見える化へ実現のための開示ポリシの尊重技術 Alice Bob 『見える化』を実現するにあたっては、ネットワークの情報すべてが開示されるのではなく、ネットワーク利用者と参加する事業者の情報開示ポリシを尊重する枠組みも同時に提供する必要がある。 利用者、ネットワーク提供者が独立な開示ポリシを適用 Alice’s policy Bob’s policy ISP policy ネットワークの利用者・提供者情報開示機構をFree UNIX 上に実装し、JGN2plusテストベッド上に展開した。 ネットワーク利用者、および各事業者すべての情報開示ポリシを尊重する枠組みとして、端末間で選択的に情報開示を行うための枠組みおよびプロトコルを設計して、実装した。 ネットワーク機器が管理する一般情報を取得する際には、情報開示範囲を定める等の問題を考慮しなければならない。 開示ポリシを尊重するための選択的情報開示技術を開発しテストベッドへ展開した。 開示ポリシ尊重技術を関連国際会議・学会にて発表した。 開示ポリシ尊重のための選択的情報開示技術 開示ポリシが設定された後のネットワーク 相手端末に対するネットワーク内部情報開示の可否を自端末からのルータホップ数で選択的に記述する機構をFreeUNIX上に設計、実装した。 研究開発テストベッドJGN2Plusに実証実験環境を構築した 『自端末に近いルータには通信相手から保護されるべき情報が多く非開示とすべき』といった開示ポリシは『しきい値以降のルータホップ数の情報のみを開示する』ことで実現される。 ルータ側に ACL を設定することで、管理ドメイン毎に独立したポリシに沿って情報を取得することが可能。 データを送受信する際には、送受信者が開示可能なルータを指定することが可能になり、P2P・CDN のピア・サーバ選択、可用資源に最適化された符号化方式、端末位置・経由地情報の利用、予約パスの検証が実現する。 通信経路上のルータからの情報をもとに、通信の最適化を行う 取得される情報はポリシに 沿って取得、利用される オーバレイネットワークにおけるネットワーク構成の最適化が実現 選択的情報開示を行う機構によりルータに設定されたポリシーに沿った情報収集を可能とする技術を開発・実装した。

1.これまで得られた成果(特許出願や論文発表等)  1.これまで得られた成果(特許出願や論文発表等)  研究論文 研究発表 展示会 ネットワークの見える化に関する研究開発 2 (1) 5 (4) (5)  2.研究成果発表会等の開催について 海外で2件、国内で3件の研究発表を行った。 スーパーコンピューター・ネットワークを用いた世界的な国際会議Super Computing 2009(SC09)に出展し、今年度開発したネットワーク『見える化』APIとソフトウエアのデモンストレーションを行った。 SC09はACM(米国計算機協会)とIEEE(米国電気電子学会)が後援する広帯域ネットワークと高度データ処理速度が複合した研究成果について評価を行う世界でも有数の国際会議であり、高性能なコンピューティング、ネットワーキング、ストレージの研究紹介が行われる。2009年はオレゴン州のポートランドのオレゴン コンベンションセンターで開催された。 5