電子回路Ⅰ 第3回(2008/10/20) バイポーラトランジスタの動作原理
今日の内容 半導体とは ドーピング キャリアの運動(電流) pn接合 pn接合ダイオードの動作原理 バイポーラトランジスタの動作原理 バイポーラトランジスタの直流動作
半導体とは 固体を電気を流す、流さないで分類 金属 電気を良く流す(自由電子) アルミニウム(Al), 銅(Cu), 金(Au), ・・・ 金属 電気を良く流す(自由電子) アルミニウム(Al), 銅(Cu), 金(Au), ・・・ ニクロム(NiCr), ステンレス(FeCrNi), ・・・ 半導体 流すときと流さないときがある シリコン(ケイ素,Si), ガリウム砒素(GaAs), ・・・ 絶縁体 電気を流さない ガラス(SiO2), その他多くの物質
固体中の電子(絶対ゼロ度) Si 伝導帯 禁制帯 価電子帯 エネルギー Siの最外殻電子数(価電子数)は4つ 結合に使われている電子は動けない
固体中の電子(室温) Si 伝導帯 自由電子 (負の電荷を運ぶ) 禁制帯 正孔 (正の電荷を運ぶ) 価電子帯 熱によって結合が切れ、自由電子が発生 隣の結合の電子が移動することによって、切れた結合も移動できる(正孔:電子の抜け穴) 自由電子と正孔は電荷を運ぶ 電気を流すことができる 自由電子と正孔の密度は温度とともに増加
金属、半導体、絶縁体の違い 金属 半導体 絶縁体 伝導帯 伝導帯 伝導帯 禁制帯 禁制帯 禁制帯 価電子帯 価電子帯 価電子帯 伝導帯に電子が多数存在 電流は流れる 半導体 禁制帯の幅が狭い 電流はそこそこ流れる 絶縁体 禁制帯の幅が広い 電流はほとんど流れない
半導体へのドーピング(n型) IV族元素のSiにV族のPをわずかに添加 ドナーイオン (+) 周りの原子との結合には電子は4つで十分 電子が1つあまる 容易に自由電子となる Si Si Si Si 結合に寄与しない電子 Si P Si Si 電子を供給する(donate)する元素のことをドナー(donor)という ドナーがドーピングされた半導体は、正孔よりも自由電子の密度が高い n型半導体(単体では電気的に中性) Si Si Si Si Si Si Si Si
半導体へのドーピング(p型) IV族元素のSiにIII族のAlをわずかに添加 アクセプタ イオン (-) 周りの原子との結合には電子が4つ必要 電子が1つ足りない 容易に正孔となる Si Si Si Si 電子の受け入れ場所 Si Al Si Si 電子を受け入れる(accept)する元素のことをアクセプタ(acceptor)という アクセプタがドーピングされた半導体は、自由電子よりも正孔の密度が高い p型半導体(単体では電気的に中性) Si Si Si Si Si Si Si Si
キャリア密度の温度依存性 ドーピングしないとき(真性半導体) ドーピングしたとき(外因性半導体) 1017 1016 1015 不純物 温度上昇によって生成されるキャリア密度が増加する ドーピングの密度で制御できる
固体中では、電子と正孔が、それぞれドリフトと拡散によって運動する 固体中のキャリアの運動 キャリア(carrier) = 自由電子 または 正孔 ドリフト(電界から力を受けて動く、電気的な運動) 拡散(密度むらがあると、密度が均一になるように動く、 電気に関係のない運動) 固体中では、電子と正孔が、それぞれドリフトと拡散によって運動する
pn接合(空乏層の発生) 接合直前 接合後 接合直後 アクセプタイオン ドナーイオン p n 空乏層 (空間電荷層) 電位 拡散によりキャリアが移動する 位置
pn接合の電流 p(アノード) n(カソード) 電位の障壁 pに+, nに-(順バイアス) pに-, nに+(逆バイアス) p n p n 正孔と電子は接合を超えられる 正孔と電子は接合を超えない 電流が流れる 電流が流れない
pn接合ダイオードのI-V特性 立ち上がりはゼロボルトではない
バイポーラトランジスタの構造 pnp型とnpn型 p n p n p n 2つのpn接合ダイオードを直列に並べた構造 C C p n p n p n B B エミッタ ベース コレクタ エミッタ ベース コレクタ E E 2つのpn接合ダイオードを直列に並べた構造 (実際はダイオードを上図のように配線してもトランジスタとしての動作はしない)
トランジスタの写真 エミッタ ベース ベース エミッタ コレクタ コレクタ
トランジスタの型番 2 S B 1815 A 名称 種別 用途 2SA pnp 高周波、スイッチング用 2SB 低周波 2SC npn 2SD 低周波用、電力増幅用 2 S B 1815 A トランジスタを意味する 改良型を意味する 半導体を意味する 用途 登録番号
トランジスタの特性表 各社のホームページからダウンロードできる 2SC1815の特性表
トランジスタのバイアス(pnp) エミッタ ベース コレクタ p n p 順バイアス 逆バイアス
トランジスタの動作原理 一部 再結合 拡散 加速 (ドリフト) 電位 再結合 ベース幅が短いことが重要 p n p
トランジスタを流れる電流 (理想的にはゼロ)
接地方式 ベース接地 エミッタ接地 E C B RL IE IB IC VCE VBE E C B VBE VCB IE IC IB RL
ベース接地電流増幅率 a 入力 IE E C 出力 IC VBE B VCB RL IB
エミッタ接地電流増幅率 b(hFE) E C B RL IE 入力 IB 出力 IC VCE VBE
まとめ トランジスタのタイプ npnとpnp VBEは順バイアス、 VCBは逆バイアス VBEは0.6V以上必要 ベース接地電流増幅率 a ( 1より少し小さい) エミッタ接地電流増幅率