検出器/電子回路に関する これからの課題 立教大学理学部物理 村上浩之.

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検出器/電子回路に関する これからの課題 立教大学理学部物理 村上浩之

目次 放射線計測の栄光の時代 現在の問題点 放射線計測のエレクトロニクス界での立場 将来に向けての課題 解決策はあるのか

放射線計測(検出器/電子回路)の 栄光の時代 1950年代から1970年代 放射線計測(検出器/電子回路)の 栄光の時代 1950年代から1970年代 原子力開発 エレクトロニクスの発展 原子核・高エネルギー実験の精密化要求 豊富な研究資金と人材 欧米と日本の研究開発環境の差

1950年代 黎明期ー真空管からトランジスターへ トランジスターの実用化 電子計算機の実用化 放射線計測の多様化  トランジスターの実用化     ゲルマニュウムTrが使用され環境に敏感ー>シリコンTrの開発     高周波動作が苦手ー>高速化へ様々な構造が考案される  電子計算機の実用化      現在のプログラム電卓より貧弱な性能      Tr化で小型化と安定した動作が可能になった  放射線計測の多様化      様々な検出器の開発 ー>最適化された信号処理回路の開発

1960年代 ー発展期ー 放射線計測のシステム化 集積回路の実用化 飛翔体に搭載する観測機の高度化 ミニコン・マイクロコンの出現    NIM ・ CAMAC 規格の誕生 集積回路の実用化 飛翔体に搭載する観測機の高度化 ミニコン・マイクロコンの出現 データ処理の高度化と高速化の始まり 豊富な研究開発資金と人材 日本では?  輸入品の模倣ー>技術・人材の衰退    一部の異端者グループだけが検出器・信号処理回路の技術開発を継続    資金力のある研究機関は輸入品と模倣品の使用方法習熟に終始

1970年代 ー成熟期ー NIM ・ CAMAC モジュールの多様化 研究資金の枯渇 放射線計測技術研究の停滞の始まり    殆ど全ての実験が市販モジュールで行われる    技術力のあるグループは最適化した手作りの検出器・モジュールを使用 研究資金の枯渇 放射線計測技術研究の停滞の始まり     人材育成の放棄ー>検出器・計測回路の技術継承の途絶     日本では1950年後半から放棄ー>一部を除いて 集積回路の高集積化・高性能化    高性能集積回路で一部のモジュールは高性能化ー>技術の長寿命化    新規開発の放棄ー>技術継承・人材育成がメーカーレベルで放棄    人材はデータ処理・シミュレーションに集中ー>検出器・計測回路の    ブラックボックス化ー>基礎研究の衰退

1980年代から2000年代 技術力の衰退と1極集中 放射線計測結果の画像の微細化要求 放射線計測学の継承の危機    医療用画像・高エネルギー実験    検出器の微細化と多チャンネル化ー>検出器・計測回路の集積回路化 放射線計測学の継承の危機 電子機器の小型軽量化と部品体系の変化    従来のモジュールの製造が困難ー>生産中止    再設計は経済的理由と技術者不在のため不可能ー>メーカーの撤退ー>    計測回路の購入が不可能(特注も不可)ー>自前で制作(実際上困難) 集積回路万能の錯覚 研究開発資金の偏在     ディジタル信号処理技術に人材と資金が集中ー>アナログ信号処理     技術の衰退ー>放射線計測技術の衰退

現在の問題点 放射線計測に関する基礎研究の不在 放射線計測学の継承が行われていない 研究費と人材の不足 部品の入手が困難    検出器・計測回路に関する基礎研究が行われていない。 放射線計測学の継承が行われていない     正しく教育を行える人材が殆どいない。 特に回路設計 研究費と人材の不足 部品の入手が困難     表面実装部品以外は生産が縮小又は廃止ー>特注を出来ない部品が多い      最低購入数量が数千個単位になりコストが増大 部品に関する知識の欠如 応用研究と開発研究の混同 環境問題との調和

放射線計測のエレクトロニクス業界での立場 必要な技術レベルは最先端    信号は連続波でなく単発でランダムな信号 ー> 少数派    統計的な信号処理手法ー>現在でも最先端の技術的手法 生産量は少量    独自部品の使用は困難 ー> 他力本願 高額な医療用機器を除いて産業界は無視    生産規模が小さく専任の技術者の確保が経済的な理由で困難    60年、70年代の技術遺産の継承のみで技術再生産の放棄    放射線計測回路の設計技術者の不足(壊滅的な状況)

将来への課題 人材育成 研究資金の確保 放射線計測回路の教育・研究職の確保 部品の確保 実験グループとの連携 基礎研究の復活

解決策は在るのか 人材育成 ー> 最後のチャンス、教科書充実 部品・素材ー>継続的な共同購入 人材育成 ー> 最後のチャンス、教科書充実 部品・素材ー>継続的な共同購入 実験技術(特に電子回路・検出器)の基礎研究に対し継続的な研究資金の投入 実験技術の教育・研究職を確保し継続的に技術継承を行う 実験グループの中に実験技術の研究開発の出来る人材を確保(育成)する

まとめ 放射線計測システム・回路の設計を行える人材の育成 部品・素材の確保 開発・研究資金の確保 教育・研究職の確保