北大MMCセミナー 第74回 附属社会創造数学センター主催 Date: 2017年8月4日(金) 15:00~16:30 Speaker: 田口 和稔(東京大学大学院数理科学研究科) Kazutoshi Taguchi (Graduate School of Mathematical Sciences, The University of Tokyo) Place: 電子科学研究所 中央キャンパス総合研究棟2号館 5F北側講義室(北12条西7丁目) Title: 離散1調和写像流方程式について On discrete one-harmonic flow equations Abstract: 1調和写像流方程式と呼ばれる方程式の離散版について講演する.1調和写像流方程式は,形式的には,等方的な全変動の多様体M上に値を制限した束縛付きL^2-勾配流方程式として得られるので,その解はスパース性を誘導するように発展していくことが期待される.このことから,1調和写像流方程式は画像処理におけるノイズ除去や結晶粒界の数理モデル等に応用されている.特に画像処理で,近似的に区分定数と考えられるような画像においては,この方程式を区分的定関数により離散化したものが適用される.そのような離散化の一つに,儀我-黒田-山崎(2005, 2007)により提案された区分的定関数による離散1調和写像流方程式がある.これは全変動の劣微分をもつ微分包含方程式として定式化され,彼らによってその可解性が明らかにされた.一方で,多様体値への束縛により全変動の凸性が失われるため,有限次元の問題であるにも関わらず,解の一意性については明らかではなかった.本講演では,束縛付き全変動が離散化された空間において測地的半凸性という性質をみたすことに着目し,半凸性に由来する発展不等式を経由して,解の一意性が得られることを紹介する.また,方程式に登場するノルムを異方的なものに変更した場合についても簡単に紹介したい. アブストラクト: 等高線法を用いた結晶のスパイラル成長の数理モデルを用いて、共回転対と呼ばれる、 同じ回転方向を示すらせん転位の対による結晶表面の成長速度について考察する。 Burton-Cabrera-Frankによると、対の距離がある臨界距離より遠い場合は 単独のらせん転位による結晶表面の成長と見分けが付かないとされる。 他方その臨界距離より近い場合は、対を限りなく近づけた時の成長速度が 単独のらせん転位の2倍になるとされるが、その中間の距離において 成長速度がどうなるかという評価式は与えられていない。 そこで上記の事実について数値計算実験を行った結果、臨界距離にずれがあることを発見した。 そこで共回転対による成長速度の評価を行い、その観点から臨界距離の新しい定義とその数値を与え、 これが数値計算実験の結果と非常に良く合うことを報告する。 評価と臨界距離の改善において重要な役割を果たしたのは単独のらせん転位により 与えられるスパイラルステップの回転速度で、Burton-Cabrera-Frankはこれを アルキメデスのらせんによる近似から計算していた。この結果をより精度の良いものに 改めることによりある程度の指標となる成長速度の評価式を得ることができた。 連絡先: 北海道大学電子科学研究所 附属社会創造数学研究センター 人間数理研究分野 長山 雅晴 内線: 3357 nagayama@es.hokudai.ac.jp