ゲノム解析の立場から、皮膚のフェノタイプについて考える

Slides:



Advertisements
Similar presentations
理化学研究所 発生・再生科学総合研究センター 発生・再生科学総合研究センター. 発生メカニズムの解明 1つの受精卵からどの様にして複雑な個体が発生 するのか。 再生メカニズムの解明 生物はどのようなメカニズムで、怪我や病気、加齢で失った 組織や臓器を再生するのか。 再生医療への学術基盤の構築 細胞移植を中心としたヒトの再生医療に応用可能な発生・再生メカニズムの.
Advertisements

患者さんとご家族のための 双極性障害ABC すまいるナビゲーター 双極性障害ブックレットシリーズ No.1 監修 : 理化学研究所脳科学総合研究センター 精神疾患動態研究チーム チームリーダー 加藤 忠史 こころの健康情報局 すまいるナビゲーター
Meet The Expert 2016 永瀬内科医院 副院長 永瀬 亮 先生 『(仮)糖尿病と大血管障害』
1. 動脈硬化とは? 2. 動脈硬化のさまざまな 危険因子 3. さまざまな危険因子の 源流は「内臓脂肪」 4. 動脈硬化を防ぐには
関節リウマチ関連遺伝子と その予後予測への利用の可能性
抗CCP抗体による関節リウマチスクリーニング研究
統計学 第3回 「データの尺度・データの図示」
2012年度 総合華頂探求(生命情報科学実習) 華頂女子中学高等学校 2年 医療・理系コース 小倉、北川、木村、久留野、田中、野村、山下
突然ですが、 金政分析へのコメント 大阪大学大学院人間科学研究科 平井 啓 2017年3月13日(月)
ヒトゲノムの違いから わかること 東京大学大学院医学系研究科 国際保健学専攻 人類遺伝学分野 徳永 勝士 川崎市立川中島中学校
2012/11/3(土) 平成24年度 第2回 データベース講習会 「創薬研究のためのデータベース講習会」
第6章 数量化I類.
7大学連携先端的がん教育基盤創造プラン主催
第2回栄養セミナー 川崎医科大学 糖尿病内分泌内科 衛藤 雅昭 生活習慣病(肥満,糖尿病,高脂血症)の 食事療法
第5回リーディングプログラム アレルギークリニカルカンファレンス 日 時:平成 26年 6月 18日(水)18:00より
長崎大学熱帯医学研究所 長崎大学医学部歯学部附属病院(熱研内科) 有吉紅也
糖尿病と眼合併症 元住吉眼科 廣澤 恵子.
看護研究における 統計の活用法 Part 6 京都府立医科大学 浅野 弘明 2012年11月10日 1.
糖尿病 診断・治療の流れ 診断と治療の流れ 問診・身体診察 検査 診断 治療
女子大学生におけるHIV感染症のイメージと偏見の構造
高尿酸血症と心腎連関セミナーin岡山 『 糖尿病とinnate immunity -尿酸の病態への関与- 』 『慢性腎臓病における
第9回ハイリスクリウマチ膠原病ネットワークセンター 学術講演会のご案内
第9回OKAYAMAリウマチネットワーク研究会 * * * * * * * 【休憩】 20:00-20:15 * * * * * * *
第2回 徳島GMラウンド 徳島県地域医療支援センター 「総合診療の指導力育成事業」
第11回京都のがん薬物療法を熱く語る会 日 時 :平成27年 4月16日(木) 19:00~
ベーチェット病と診断された患者さまへ 当院では治験に参加して いただける方を募集しております
疫学概論 患者対照研究 Lesson 13. 患者対照研究 §A. 患者対照研究 S.Harano,MD,PhD,MPH.
疫学概論 患者対照研究 Lesson 13. 患者対照研究 §A. 患者対照研究 S.Harano,MD,PhD,MPH.
メタボリック シンドローム.
血液学入門セミナー 第15回:悪性リンパ腫ってなぁに? 日時:2009年2月25日(水) 午後7時から
薬剤師 早瀨 久美
 統計学講義 第11回     相関係数、回帰直線    決定係数.
シトルリン化フィブリノーゲンにおける 関節リウマチの自己抗原部位の同定
第19回 HiHA Seminar Hiroshima Research Center for Healthy Aging (HiHA)
対立仮説下でのみ存在する 遺伝形式という母数を持つ 2x3分割表検定に関する考察 ~SNPによるケース・コントロール関連検定~
感染症集団発生事例に対する基本的対応 大山 卓昭 感染症情報センター 国立感染症研究所.
日本人類遺伝学会 2014/11/20 京都大学 医学研究科 統計遺伝学分野 山田 亮
モデルの逆解析 明治大学 理工学部 応用化学科 データ化学工学研究室 金子 弘昌.
細胞の形と変形のための データ駆動型解析手法
T2統計量・Q統計量 明治大学 理工学部 応用化学科 データ化学工学研究室 金子 弘昌.
M022 ゲノム科学と医療 統計遺伝学分野 2010/11/18,25 山田 亮
ゲノム科学概論 ~ゲノム科学における統計学の役割~ (遺伝統計学)
リウマチ性疾患における 遺伝因子解析の視点 ~フェノタイプを考える~
遺伝統計学の骨組み Skeleton of Genetic Statistics
分子生物情報学(2) 配列のマルチプルアライメント法
多変量解析 ~主成分分析~ 1.主成分解析とは 2.適用例と解析の目的 3.解析の流れ 4.変数が2個の場合の主成分分析
テイラーメード医療のための 確率・統計 1.
遺伝統計学 集中講義 (4) SNPによる領域の評価
東日本大震災におけるご遺体身元確認と行方不明家族捜索のためのDNA鑑定
経過のまとめ 家族歴、基礎疾患のない14歳女性 筋力低下、嚥下障害を主訴としてDM発症 DMは、皮膚症状と筋生検にて確定診断
内科ないか? 〜精神科コンサルト前に〜 沖縄県立中部病院ER 岡正二郎.
2011/05/28 京都大学大学院 附属ゲノム医学センター統計遺伝学分野 山田 亮
患者さんへの説明補助イラスト -脳せきずい液中のオステオポンチン に関する疾患比較研究- 版
データの型 量的データ 質的データ 数字で表現されるデータ 身長、年収、得点 カテゴリで表現されるデータ 性別、職種、学歴
川口 喬久 川上 弘人 山田 亮 関根 章博 中村 祐輔 山本 一彦 角田 達彦 理化学研究所 遺伝子多型研究センター
尤度の比較と仮説検定とを比較する ~P値のことなど~
研究科横断型教育プログラム(Bタイプ) 統計遺伝学 全5回
森美賀子 山田亮 小林香子 川井田礼美 山本一彦
親子鑑定に見る尤度比を 角度を変えて眺めてみる
薬理学研究科 のための 遺伝的多様性 11/02/2013 医学研究科 統計遺伝学分野 山田
北海道大学病院 がん遺伝子診断部 ☎ (FAX; 7099)
クラスタリングを用いた ベイズ学習モデルを動的に更新する ソフトウェア障害検知手法
1. 糖尿病による網膜の病気 =糖尿病網膜症 2. 自覚症状が現れないまま 進行します 3. 糖尿病網膜症の 予防法・治療法 4.
人類集団の歴史的変遷 出典:Mascie-Tailor CGN (1993) The Anthropology of Disease, Oxford Univ. Press.
遺伝統計学 集中講義 (6) 終わりに.
疫学概論 §C. スクリーニングのバイアスと 要件
確率的フィルタリングを用いた アンサンブル学習の統計力学 三好 誠司 岡田 真人 神 戸 高 専 東 大, 理 研
三重大学医学部附属病院 総合診療部 竹村 洋典
『 関節リウマチのトータルマネージメント 』
遺伝統計学 Genetic Statistics 2010
Presentation transcript:

ゲノム解析の立場から、皮膚のフェノタイプについて考える 2011/11/17 金沢大学病院皮膚科セミナー 京都大学大学院医学研究科 附属ゲノム医学センター 統計遺伝学分野 山田 亮

関節リウマチ・膠原病(内科) 京大病院皮膚科 外来 京大病院免疫・膠原病内科 入院 膠原病 2% 弱 SLE 88 RA 72 京大病院免疫・膠原病内科 入院 SLE 88 RA 72 PM/DM 36 血管炎症候群 29 SSc 25 MCTD 21 BD 18 その他… 京大病院皮膚科 外来 膠原病 2% 弱

内科症状 皮膚科症状 内科外症状 皮膚科外症状 内科症状 皮膚科症状 内科外症状 皮膚科外症状 どれも、みな、症状 「多彩」である証拠

多彩な症状をどう扱うか

GARNET (東京女子医科大学・理化学研究所・京都大学) 関節リウマチの GWAS GARNET (東京女子医科大学・理化学研究所・京都大学)

RA 関連遺伝子解析のフェノタイプ ケース(診断された) コントロール(診断されていない・一般集団) 気になるそれ以外のこと(共変量) 性別 年齢 生活習慣 疾患の亜分類(自己抗体の保有状態)

現在の解析モデル 「ふつうのGWAS」ではどういうモデル? あるSNP (A / G) Aを持つ本数 モデル AA, AG, GG 2, 1, 0 モデル Aの本数とRAになる確率に相関がある/ない

どうしてモデル化する? モデル化してどうする? モデル化しないと、解析のしようがないから 比較的少ない変数を用いて、フェノタイプを説明するモデルを作る 遺伝因子が(環境因子でもよいが)変数の値に影響を与えるか、与えないか、について、検討する

1つのやり方 0か1かだけでなく、段階を考慮する 多項目からなる「診断・分類基準」からスコアを算出する 「1次元値」で「確定」診断 関節リウマチの場合→こちらへジャンプ

別のやり方 疾患をパーツ化する パーツの有無で疾患を分類する Phenotypic and Genotypic Analyses of Genetic Skin Disease through the Online Mendelian Inheritance in Man (OMIM) Database Journal of Investigative Dermatology (2009) 129, 2628–2636; doi:10.1038/jid.2009.108; published online 18 June 2009

皮膚病変でパーツ化する (さらに、各項目を細分化) Cornification Pigmentation Vascular Connective tissue Neoplasms Blistering diseases Erosions/ulcerations Photosensitivity/porphyrin disorders Premature aging Immune mediated Hiar/Nails Metabolic mediated Sweat disorders Acne Mucosal Aberrant landmark/structural topography Urticaria

皮膚病変パーツ 1つだけの疾患もたくさんあるが、 2、3,4個のパーツにまたがる疾患も少なくない

皮膚外臓器・系でパーツ化する Auditory Biochemical/metabolic Cardiovascular Developmental Endocrine Gastrointestinal Hematological Immune system Lymphatic

パーツ化するとは・・・ SLE 蝶形紅斑 円板状紅斑 漿膜炎 口腔内アフタ 関節炎 光線過敏症 血液学的異常 腎病変 ANA 免疫学的異常 神経学的異常

パーツ化するとは・・・ これもパーツ化 遺伝因子解析では、診断基準項目というパーツも、解析ルーチンにはなっていない SLE 蝶形紅斑 円板状紅斑 漿膜炎 口腔内アフタ 関節炎 光線過敏症 血液学的異常 腎病変 ANA 免疫学的異常 神経学的異常 これもパーツ化 遺伝因子解析では、診断基準項目というパーツも、解析ルーチンにはなっていない

パーツ化と「1段下げて考える」こと

オミックス解析とフェノタイプ分解 トランスクリプトーム解析・プロテオーム解析が、「診断に有用な」「状態説明に有用な」バイオマーカーをたくさんもたらすかもしれない 診断・分類基準が精緻になる(複雑になる)

皮膚病変でパーツ化する (さらに、各項目を細分化) Cornification Pigmentation Vascular Connective tissue Neoplasms Blistering diseases Erosions/ulcerations Photosensitivity/porphyrin disorders Premature aging Immune mediated Hiar/Nails Metabolic mediated Sweat disorders Acne Mucosal Aberrant landmark/structural topography Urticaria

皮膚病変でパーツ化する (さらに、各項目を細分化) Cornification Pigmentation Vascular Connective tissue Neoplasms Blistering diseases Erosions/ulcerations Photosensitivity/porphyrin disorders Premature aging Immune mediated Hiar/Nails Metabolic mediated Sweat disorders Acne Mucosal Aberrant landmark/structural topography Urticaria こういうパーツ化でよいのか・・・

皮膚病変でパーツ化する (さらに、各項目を細分化) Cornification Pigmentation Vascular Connective tissue Neoplasms Blistering diseases Erosions/ulcerations Photosensitivity/porphyrin disorders Premature aging Immune mediated Hiar/Nails Metabolic mediated Sweat disorders Acne Mucosal Aberrant landmark/structural topography Urticaria こういうパーツ化でよいのか・・・ パーツ化=カテゴリ変数化

カテゴリ分類と量的分類 どうせ変数化するなら、カテゴリ化より、量的変数化が「解析の力」が強い

持ち込みにくい対象も変数化したい ひらひら びらびら くりっと丸い ひらべったい

持ち込みにくい対象も変数化したい くりっと丸い ひらひら びらびら ひらべったい 負の曲率 ゼロの曲率 正の曲率

これも、(頑張れば)2,3個のパラメタに落とせる

まとめ 遺伝因子解析はフェノタイプを数値化したい 診断の「あり・なし」→「程度の強弱」 診断のパーツ化 分類・バイオマーカー・オミックス研究 数値化になじまないフェノタイプも数値化したい 形・パターン