第1回婦人科腫瘍診療に関する アンケート調査(平成23年2月)報告

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第1回婦人科腫瘍診療に関する アンケート調査(平成23年2月)報告 婦人科腫瘍診療における地域間格差と施設種別の違い 平成23年度「拡大医療改革委員会」兼「産婦人科医療改革公開フォーラム」 (平成24年1月29日、東京ステーションコンファランス) 医療改革委員会(海野信也委員長) 調査担当者:委員・主務幹事 高倉 聡 調査協力者:永田 知映(慈恵医大)

目的 全国の日本産科婦人科学会専攻医指導施設と婦人科腫瘍登録施設における婦人科腫瘍症例の取扱い状況とその診療提供体制を調査し、今後の体制整備へむけた施策立案のための基本情報を収集すること

アンケート回答率(施設種別) 送付 施設数 回答 回答率 (%) 医学部・医科大学 附属病院(医育機関)【大学】 114 90 78.95 がん専門病院【がん専門】 16 13 81.25 その他の病院【その他】 618 380 61.49 総計 748 483 64.57

アンケート回答率(地域別) 地域 都道府県 送付 施設数 回答 回答率 (%) 北海道 34 21 61.76 東北 青森、岩手、宮城、秋田、山形、福島 60 39 65.00 北陸 新潟、富山、石川、福井 35 25 71.43 関東 茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉、東京、神奈川 230 148 64.35 甲信 山梨、長野 13 61.90 東海 静岡、岐阜、愛知、三重 86 51 59.30 近畿 滋賀、京都、大阪、兵庫、奈良、和歌山 135 91 67.41 中国 鳥取、島根、岡山、広島、山口、 31 60.78 四国 徳島、香川、愛媛、高知 30 16 53.33 九州 福岡、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島 57 42 73.68 沖縄 9 6 66.67 総計 748 483 64.57

施設毎人員(施設種別平均値) 施設毎の産婦人科医、専門医、麻酔医:大学>がん専門、その他 施設毎の婦人科医:大学、がん専門>その他 施設毎の広汎執刀医、腫瘍専門医:がん専門>大学>その他   いずれもp<0.05

施設毎人員(地域別平均値) 地域毎の施設毎人員に有意差なし

婦人科悪性腫瘍新規症例数 ( 施設種別 年・非手術例を含む) 婦人科悪性腫瘍新規症例数 ( 施設種別 年・非手術例を含む) 総数 疾患別総数 子宮頸癌 子宮体癌 卵巣癌 % 施設毎 平均値 疾患別施設毎 標準偏差 中央値 大学 8664 2999 3097 2610 38.65 98.45 33.70 34.80 29.33 62.70 80 がん専門 2390 964 867 559 10.66 183.85 74.15 66.69 43.00 92.82 179 その他 11365 3022 4237 3898 50.69 30.14 8.49 11.24 10.37 21 全体 22419 7165 8201 7067 100 46.90 14.95 17.12 14.78 52.66 30 全体の約半数(49.3%)の症例は大学病院やがん専門病院で治療を受け、 約半数はその他の病院で治療を受けている。 施設毎悪性腫瘍症例数、各疾患別症例数(子宮頸癌、子宮体癌、卵巣癌): がん専門病院>大学病院>その他の病院(p<0.05).

婦人科悪性腫瘍新規症例数 ( 地域別 年・非手術例を含む) 婦人科悪性腫瘍新規症例数 ( 地域別 年・非手術例を含む) 総数 施設毎平均値 標準偏差 施設毎中央値 北海道 823 41.15 46.04 26 東北 1314 33.69 43.72 18 北陸 1041 41.64 38.54 39 関東 7487 51.63 61.26 35 甲信 589 49.08 34.63 46 東海 2365 46.38 48.48 30 近畿 4072 44.75 56.12 22 中国 1412 45.55 36.86 38 四国 566 35.38 48.91 16 九州 2670 63.57 51.76 53 沖縄 79 13.17 11.05 11 全国 22419 46.90 52.66 地域間では施設毎症例数に有意差なし

手術数(施設種別) 産科手術件数=産婦人科手術件数ー婦人科手術件数 良性疾患・非浸潤癌手術件数=婦人科手術件数ー浸潤癌手術件数

手術数( 地域別 ) *1子宮内容除去術・子宮内膜試験掻爬を除く, *2産科手術を除く 施設毎手術件数に地域間で有意差なし 手術数( 地域別 ) 産婦人科手術件数*1 婦人科手術件数*2 婦人科浸潤癌手術件数 総数 施設毎 平均値 北海道 7725 386.25 5826 291.30 716 37.68 東北 13725 351.92 9096 233.23 789 21.32 北陸 9075 363.00 6141 245.64 808 32.32 関東 72999 496.59 45321 314.73 7081 49.17 甲信 4938 411.50 2493 207.75 544 45.33 東海 21187 423.74 13570 271.40 2039 42.48 近畿 34785 404.48 23425 269.25 3293 37.85 中国 12352 411.73 8060 260.00 1260 40.66 四国 5432 339.50 3450 215.63 520 32.50 九州 18786 447.29 12290 292.62 1995 47.50 沖縄 2238 373.00 1103 183.83 83 13.83 全国 203242 429.69 130775 277.07 19128 40.96 *1子宮内容除去術・子宮内膜試験掻爬を除く, *2産科手術を除く 施設毎手術件数に地域間で有意差なし

手術数( 地域別 ) 産科手術件数=産婦人科手術件数ー婦人科手術件数 良性疾患・非浸潤癌手術件数=婦人科手術件数ー浸潤癌手術件数

初診から婦人科悪性腫瘍手術までの期間 期間 全施設の平均値は28.36日、中央値は30日 手術までの期間が60日以上の施設は17/429=3.96% 手術までの期間が50日以上の施設は30/429=6.99%

初診から婦人科悪性腫瘍手術までの期間(施設種別) 施設(年間症例数) 施設数 施設毎 平均値 標準 偏差 中央値 大学 87 36.76 21.00 40 がん専門 13 30.00 12.51 30 その他 329 26.00 10.76 21 全施設 429 28.36 13.13 大学>その他 p<0.05

初診から婦人科悪性腫瘍手術までの期間(地域別) 施設(年間症例数) 施設数 施設毎平均値 標準偏差 施設毎中央値 北海道 18 20.89 10.90 17 東北 34 28.29 10.65 30 北陸 24 22.52 12.35 21 関東 129 32.37 14.26 甲信 11 28.55 13.74 28 東海 45 35.85 15.00 近畿 83 26.11 9.77 25 中国 24.60 10.14 四国 14 22.21 8.32 九州 37 24.91 13.50 沖縄 4 17.25 3.20 全体 429 28.36 13.13 東海>北海道、北陸、近畿、中国、四国、九州 関東>北海道、北陸、近畿  いずれもp<0.05

都道府県別手術までの平均期間と 医師当たりの手術症例数の相関 産婦人科手術数/産婦人科医:相関係数 -0.05929 p=0.6922 婦人科手術数/婦人科医:相関係数 0.28583 p=0.0515 浸潤癌手術数/広汎執刀医:相関係数 0.46070 p=0.0011

施設種別合併症などのリスクをもつ 悪性腫瘍患者の受け入れ 全体で43.2%の施設で合併症などのリスクをもつ患者の受け入れに制限あり 制限あり:がん専門>その他 p<0.05、がん専門>大学 p<0.001、その他>大学 p<0.001

地域別合併症などのリスクをもつ 悪性腫瘍患者の受け入れ 制限なし:東海<北海道、東北、関東、近畿(p<0.05)

受け入れできないリスク 合併症 受け入れでき ない施設数 % 85歳以上の高齢者 32 17.78 1年以内に発作をおこしている喘息患者 16 8.89 外来で投薬治療中の統合失調症患者 (統合失調症のための入院の必要はない) 94 52.22 インスリンもしくは血糖降下剤の投与が必要な糖尿病患者 25 13.89 NYHA II度の心不全患者(心疾患患者で日常生活が軽度から中等度に制限されるもの。安静時には無症状だが、普通の行動で疲労・動悸・呼吸困難・狭心痛を生じる) 74 41.11 NYHA III度の心不全患者(心疾患患者で日常生活が高度に制限されるもの。安静時は無症状だが、平地の歩行や日常生活以下の労作によっても症状が生じる) 137 76.11 透析が必要な腎不全患者 101 56.11 その他(自由記載欄は作製してなかったが、余白に記載あり) 9 5.00 180施設が記載(該当するものすべてにしるしをお願いした)

施設種別化学療法実施場所 (シスプラチン使用時を除く) がん専門病院と大学病院で有意差あり p<0.05 がん専門病院とその他の病院で有意差あり p<0.01

地域別化学療法実施場所 (シスプラチン使用時を除く)

施設種別局所進行子宮頸癌に対する根治照射の可否 がん専門病院と大学病院で有意差あり p<0.05 がん専門病院とその他の病院で有意差あり p<0.001 大学病院とその他の病院で有意差あり p<0.001

地域別局所進行子宮頸癌に対する根治照射の可否 九州と北海道(p<0.01)・東北(p<0.05)・関東(p<0.05)・東海(p<0.01) 北海道と東海(p<0.05)・九州(p<0.01)

終末期医療 自施設での死亡の割合 (地域別) 東北、北陸、関東、東海、近畿>九州 p<0.05

地域別終末期医療の院内診療体制 地域別:有意差なし

まとめ 日本産科婦人科学会専攻医指導施設と婦人科腫瘍登録施設を対象にアンケート調査を行い、回答率は64.7%(483/743)であった。 回答施設において年間22419例の新規婦人科悪性腫瘍症例(子宮頸癌、子宮体癌、卵巣癌)が治療されており、本邦での同疾患の年間新規治療例の84.4%と推測される。 回答施設において、悪性腫瘍患者の治療は38.7%が大学附属病院で、10.7%ががん専門病院で、50.7%はその他の病院で行われている。 回答施設において、人員の不足はあるものの、初診から婦人科悪性腫瘍手術まで平均1か月程度で行うことができている。しかしながら、手術までの期間が60日を超える施設も4.0%存在する。 そのほとんどが中核病院である回答施設において、合併症などのリスクをもつ悪性腫瘍患者の受け入れ制限が43.6%の施設で行われている. 質の高い婦人科腫瘍の治療を迅速に供給するには、産婦人科専攻医の増加、婦人科腫瘍専門医の育成に加え、合併症に対応できる診療体制の構築、手術室の増加・外来化学療法の導入・放射線治療可能施設数の増価・終末期医療の体制の充実・地域施設との連携などにむけたソフト・ハード両面の整備が必要である。