甲南大学理工学部物理学科 宇宙粒子研究室 学籍番号 11061019 氏名 鴨川 敦樹 宇宙線断層撮像装置の開発(1) 甲南大学理工学部物理学科 宇宙粒子研究室 学籍番号 11061019 氏名 鴨川 敦樹
研究目的 シンチレーションカウンターを用いた宇宙線断層撮像装置の開発を目的とし ている。(例:二次宇宙線のミューオンや電子を用いて建物や地下の構造を調 べる。) ・ミューオンは物質を貫通しやすく、電子は物質で吸収されやすいという 性質を利用し、断層撮像の精度をさらに向上させる。 そのために、シンチレータの特性測定をする。
宇宙線と空気シャワー 宇宙線とは、星が爆発してできる超新星残骸な どから放出される陽子や原子核である。 それが地球に入ってくると、大気の原子核と反応 してニュートリノやミューオン、電子、陽電子、ガ ンマ線などがつくられる。 粒子の束がシャワーのように広がっていくことか ら、空気シャワーと呼ばれれている。
各粒子による透視可能な物体の大きさ X線 電磁成分 ミューオン ニュートリノ 粒子によって物質との相互作用の強さ、つまり透過力が異なります。 X線は数10cm、電子や陽電子やガンマ線を含む電磁成分は数mから数 10m、ミューオンは数10mから数km、ニュートリノは数1000kmの物体を透 視するのに適しています。 X線 電磁成分 ミューオン ニュートリノ 0.1mm 1m 10m 100m 1km 10km 100km 1000km
宇宙線断層撮像装置 e m X Y X’ Y’ 吸収物質 X’’ Y’’ 5cm x 75cm : 16 本 4層 光検出器 電子回路系 コンピュータ
宇宙線断層撮像装置の原理 ミューオンは物質を貫通しやすい 電子は物質で吸収されやすい という性質を用いて、断層撮影の精度を向上させる e m X ミューオンは物質を貫通しやすい 電子は物質で吸収されやすい という性質を用いて、断層撮影の精度を向上させる Y X’ Y’ 吸収物質 X’’ Y’’
ミューオンによるコンピュータ断層撮像の例 ピラミッドを宇宙線で透視 ミューオン透視技術高度化プロジェクト (H23-H27) (東京大学地震研究所) http://www.asahi.com/science/update/0629/OSK201206280219.html
ミューオンを用いた撮像装置の開発 私たちが実際に屋上で作成した実験装置です。 この装置によって、ミューオンがどの角度から入ってくるのかまたはどれくらいの 時間で通過するのかが分かります。
シンチレータ と 波長変換ファバー 電子やミューオンなどの荷電粒子 が通過すると蛍光するものをシン チレータと呼ぶ。 シンチレータ と 波長変換ファバー 電子やミューオンなどの荷電粒子 が通過すると蛍光するものをシン チレータと呼ぶ。 粒子がシンチレータを通過する時、 シンチレータ中の電子を励起状態 にする。しかし、励起された電子は 10万分の1秒から10億分の1秒とい う短い時間で元の状態に戻る。こ の時に、シンチレーション光を放出 する。 波長変換材があることにより、通常 反射条件を満たさずファイバーの外 に出ていく光を波長変換材が吸収し、 等方的に再発光することにより全反 射の条件を満たすもののみファイ バーの中を伝搬していく。
実験装置:シンチレーションカウンター 装置原理 PC PMT 1CH PMT 2CH 暗箱 宇宙線(ミューオン) 高電圧 1CH 1650V シンチレータ 波長変換ファイバー 宇宙線通過時にシンチレータ内で蛍光を発する PMT 2CH シンチレータ 光を電気信号に変換し、信号を増幅する オシロスコープ アンプ ディスクリミネーター コインシデンス PMTで増幅された信号を更に増幅する ノイズ成分を除去する A B PC
実験方法 実験方法 ①高電圧の電圧をかける。(この実験では、PMT(1)にかける電圧は1650VでPMT(2)にかけ る電圧は1500Vである) ②コインシデンスの切り替えスイッチをONにする。 ③オシロスコープでRun/Stopを繰り返す。 ④オシロスコープで信号がきていることが確認できたら、オシロスコープにPCを接続し3000 イベント測定する。 ⑤が終了すれば、次はコインシデンスのスイッチをAをOFFにしてBをONにする。 ⑥オシロスコープでRun/Stopを繰り返す。 ⑦信号が確認できたら、PCに接続し3000イベント測定する
宇宙線1粒子当たりの1p.e.の測定結果 <測定結果> 宇宙線1粒子ピークの値 PMT 1CH 14.0[pC] 1粒子のピーク 1粒子のピーク 図1: 宇宙線1粒子の信号の大きさ(コインシデンスのスイッチをAをOFF , BをON) 図2: 宇宙線1粒子の信号の大きさ(コインシデンスのスイッチAとBをON)
結論 <結果> 各測定結果より、 宇宙線1粒子当たりの1p.e.は PMT 1CHでは、15.6[p.e.] PMT 2CHでは、16.0[p.e.] のシンチレーション光を観測することがで きた。 私の実験では、シンチレータ二本でも光量を確認することができた。 この本数を増やすことにより、より多くの光量を確認でき、ミューオンが来る角度 や時間が分かるようになる。詳しくは、次の発表の役割で分かります。 PMT 1CH PMT 2CH 0.09 1p.e. 0.1 宇宙線1粒子 14.0 16.0 [pC]
宇宙線断層撮像装置 の研究発表(役割担当) ← 稲垣さん、柳澤君 ← 澤田君 ← 久下君 e m 吸収物質 光検出器 大道君 → 電子回路系 ← 稲垣さん、柳澤君 m の研究発表(役割担当) ← 久下君 光検出器 ← 澤田君 大道君 → 電子回路系 田中君、石田君 → 吸収物質 コンピュータ
補足説明
ミュオグラフィ ミューオンの透過性を利用して撮影する手法を“ミュオグラフィと呼んでいます。 ミュオグラフィで見ることのできる対象は検出器を置いた位置よりも高い位置の ものだけに限られるので、山は格好の対象になります。 また、その利点はもう一つあり、ミューオンは水平方向から飛来するものの方が 垂直からのものと比べて通り抜ける力が強いのです。 水平方向から飛来するミューオンの方が元々高いエネルギーを持っているから です。 火山内部の透視法の原理: 火山の麓に設置した検出器を用いて、火山を通り抜けてきたミューオンの方向と数を測定する
火山の透視 マグマが火山内部の通り道を上ってくると減圧を受け、マグマに溶け込んでいた揮発成分が ガスとして分離します。火山噴火ではガスがマグマに閉じ込められ、マグマの中のガスの体 積はどんどん膨張し爆発するか、マグマからのガスが効果的に抜けて静かな噴火が起きるか のどちらかです。 これが地下で本当に起きているならば、地下から地表に向かいマグマの泡が増えていき、マ グマの通り道が観察されることになります。 昭和新山の透視画像: ミュオグラフィによって、平均密度の分布が明らかになった。赤は密度が大きく、青は密度が小さい。中央下に周囲より密度が高い部分があり、そこがマグマの通り道ではないかと考えられる。
空気の深さと宇宙線の成分 地上(1000g/cm2 )ではミューオンが一番多くなり、次に多いのは電子成分である。 Downward fluxes of the cosmic rays components. (A. M. Hillas, "Cosmic Rays", Pergamon Press, pg. 50). www.isao.bo.cnr.it/~climstor/ michele/cr/cr.html
宇宙線のエネルギースペクトル 詳細シミュレーション及び数学予測モデルによる 2006年6月の東京における宇宙線スペクトル計算結果 EXPACSのホームページ http://phits.jaea.go.jp/expacs/jpn.html 大気中の宇宙線強度を迅速、精緻に計算できるプログラムを開発 http://www.nirs.go.jp/report/nirs_news/200706/hik02p.htm
空気シャワー中の粒子のエネルギースペクトル 入射粒子 エネルギー:1019 eV 種類:陽子 入射天頂角:0゜, 60゜ 入射天頂角0゜の場合の平均的な粒子のエネルギーは ミューオン: 20 GeV 電子: 10 MeV ガンマ線: 4 MeV 空気シャワー中の粒子の平均的なエネルギーは単発で捕えたときの粒子のエネルギーよりかなり高くなっている。 参考文献: Extensive Air Showers, P.K.F. Grieder
PHITS 広いエネルギーを持つ各種の放射線を扱える汎用 の粒子・重イオン輸送計算コード。 任意の体系中における陽子・中性子・重イオン・電 子・光子などの挙動を,核反応モデル及びデータを 用いて模擬することができます。 加速器工学、放射線医療、宇宙工学、また粒子と 原子核の輸送現象に関係する多くの分野の研究を サポートします。 http://phits.jaea.go.jp/indexj.html