最高エネルギー宇宙線ソース 同定のロードマップ ~理論的な展望~ 最高エネルギー宇宙線ソース 同定のロードマップ ~理論的な展望~ 京都大学 基礎物理学研究所 長瀧 重博 2012年10月28日 東大宇宙線研、柏
目次 荷電粒子法による探索 非荷電粒子法による探索 まとめ
§ 荷電粒子法による探索 ~最高エネルギー宇宙線~ § 荷電粒子法による探索 ~最高エネルギー宇宙線~
陽子のエネルギーロス距離 Kotera and Olinto 11
原子核エネルギーロス距離 Yamamoto et al. 04
高エネルギー粒子の伝搬可能距離 Kotera and Olinto 11
素直な理論通り、カットオフが見えた。 TA Collaboration, 2012
到来方向に対する素直な理論 宇宙は大きいスケールで ならせば一様・等方。 小さいスケールでは 非一様・非等方。 Z=0.012=50.5Mpc Z=0.14 = 573.8Mpc Z=0.28 = 1111.6Mpc Z=1.00 = 3317.2Mpc Z=2.00 = 5244.5Mpc SDSS, 銀河マップ (SDSS Home Page)。
Near from the Earth
素直な理論に従えばカットオフ以上の エネルギーでAnisotropyが見える 銀河からの最高エネルギー宇宙線到来方向分布のシミュレーション例。 Yoshiguchi, S.N., Sato 04
現状の課題 ソース密度が高いかもしれない。 磁場が強いかもしれない。 電荷が大きいのかもしれない。 解析しているエネルギーが低いかもしれない。 TA Collaboration 12 白丸:57EeV以上の イベント。 グレー:近傍銀河から 期待される 到来方向分布。 又、統計が足りないのかもしれない。
Deflection and Time Delay Due to B-Fields apparent source direction Deflection and Time Delay Due to B-Fields charged particle Gamma Neutrino Figure from Hoffman (Modified) AGN
カットオフエネルギー以上に行けば これらの問題は解消される方向。 加速源天体の数も少なく絞られる方向。 荷電粒子の 曲り角度 Q: 電荷 これらが小さくなる。 曲り角を1度以内に抑えるのが重要(後述)。 -> カットオフエネルギー以上のイベントを、数多く。 鉄だと更にもう一桁高いエネルギーが必要か。
補足1:カットオフ機構が働かないとどうなるか。 ガンマ線バーストの到来方向分布 (z~1~3000Mpcから主にやってくる)。 超高エネルギーニュートリノ分布も同様になるだろう。 角度分解能がdegreeオーダーでは正体が判らなかったことも ガンマ線バーストと同様。
補足2:距離と角度分解能 D = R×θ R 10Mpc 50Mpc 100Mpc 3000Mpc Θ D 粒子の曲り角だけでなく 検出器の角度分解能も需要。 D = R×θ θ R R 10Mpc 50Mpc 100Mpc 3000Mpc Θ 1度 175kpc 875kpc 1.75Mpc 52.5Mpc 1分 2.9kpc 14.5kpc 29kpc 870kpc 1秒 48.5pc 242.5pc 485pc 14.6kpc 1ミリ秒 0.0485pc 0.24pc 0.5pc 14.6pc 高エネルギー ニュートリノ。 カットオフ以上のエネルギーなら、ソースを同定出来る。 地球 c.f. 銀河間の平均距離~Mpc. 銀河のサイズ~10kpc 星間の平均距離~pc. Chandra衛星(X線)の分解能~0.5秒。 Subaru望遠鏡(Opt)の分解能~60ミリ秒。 ALMA望遠鏡(電波)の分解能~10ミリ秒。 例:(AGNではない)普通の 銀河がソースであると 証明出来る可能性がある。
補足3:組成の同定について TA-Augerで組成についての共同研究開始。 次世代の問題でなく、現世代で解決 (不定性がひとつ除かれる)。 次世代の問題でなく、現世代で解決 (不定性がひとつ除かれる)。 TALE・LHCも一役買える(低エネルギー側から)。 10^20以上のスペクトル観測からも組成に ついて言及出来る(戎崎氏講演)。
補足4:2点相関関数等、等方性からのずれはカットオフエネルギー以下でも見える。 多くのイベント数による統計議論が可能。 ただ起源天体同定というとどうか。 Gray: Isotropic, Dots: Simulations Yoshiguchi, S.N. Sato ApJ 04
最高エネルギー宇宙線の分野で 果たして来た日本の主導的役割 AKENO (1979-1995) AGASA (1990-2004) TA (2008-現在) ● TA2 or JEM-EUSO (20XX-) 今後も日本が主導し、最高エネルギー宇宙線の謎を解明する。
§ 非荷電粒子法による探索 ~ニュートリノ・ガンマ線~ § 非荷電粒子法による探索 ~ニュートリノ・ガンマ線~
Deflection and Time Delay Due to B-Fields apparent source direction Deflection and Time Delay Due to B-Fields charged particle Gamma Neutrino Figure from Hoffman (Modified) GRB
最高エネルギー宇宙線到来時間の遅れは深刻。 荷電粒子の 時間の遅れ。 比較: ガンマ線バーストの継続時間は10秒程度。
真実がフレア現象であればどうなるか Yoshiguchi, S.N., Tsubaki, Sato 03 5000 Events 最高エネルギー宇宙線の到来方向分布はAnisotropic。 しかし、対応天体は見つからない。
ガンマ線バーストニュートリノ 高エネルギーニュートリノ 高エネルギーガンマ線 Figure from P. Meszaros 大質量星 ガンマ線バースト 残光 高エネルギーニュートリノ 超高速ジェット 高エネルギーガンマ線 GRBからの高エネルギーニュートリノはガンマ線バーストと同時刻、同方向から やってくる(完全なソース同定)。 たとえ角度決定精度がdegree程度であっても、時間同期が取れるので、 フレア現象であれば遠方の対応天体が分かる。 比較:大気ニュートリノのイベントレート 結論:バックグラウンドフリー (TeVでもOK!)
ニュートリノのエネルギーは親の5%程度。 ニュートリノを捉えれば、親粒子のエネルギーが推定出来る。 最高エネルギー宇宙線ソース同定の証拠として使える。 注:この天体からの最高エネルギー宇宙線検出自体は極めて困難。
AGNフレアでも類似の議論可能 2006 July 28 flare of PKS 2155-304 (z=0.116=475Mpc) Aharonian et al. 2007 , by H.E.S.S.
ガンマ線バーストと相関しない高エネルギーニュートリノなら 遠方AGNからの高エネルギーニュートリノが最有力 IceCubeがAGN: ○ 全てのAGNがそれ程ニュートリノを出す訳ではないことを証明した。 を棄却した × 全てのAGNがニュートリノを出さないことを証明した。
2次粒子としてのガンマ線はどうか 超高エネルギーガンマ線なら、 近傍(~10Mpc)であれば 可能性あり。 遠方になるとTeVまで カスケードしてしまう(最高 エネルギー宇宙線の証拠に ならない)。 Mpc TeV PeV
§ まとめ
最高エネルギー宇宙線ソース 同定のロードマップ 第一の正攻法は荷電粒子法により、カットオフ エネルギー以上の到来方向を狙うべき。 素直な理論に従えばカットオフエネルギー以上のイベントで必ずAnisotropyが見え、1度程度の 角度分解能でもソース同定の可能性が出てくる。 もう一つの有力なアプローチとして非荷電粒子法がある。特にフレア現象に対して強力 (Multi-Messenger Approach)。 超高エネルギーフォトンは近傍に活路がある。