コロナ放電による揮発性有機物の分解 ○吉澤 宣幸 佐藤 孝紀 伊藤 秀範 田頭 博昭(室蘭工業大学) 下妻 光夫(北海道大学)

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コロナ放電によるベンゼンの分解 ○吉澤 宣幸 林 押忍 佐藤 孝紀 伊藤 秀範 田頭 博昭(室蘭工業大学) 下妻 光夫(北海道大学)
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コロナ放電による揮発性有機物の分解 ○吉澤 宣幸 佐藤 孝紀 伊藤 秀範 田頭 博昭(室蘭工業大学) 下妻 光夫(北海道大学) 平成14年度 電気学会 基礎・材料・共通部門大会 武蔵工業大学 13 September 2002 Ⅶ-31 コロナ放電による揮発性有機物の分解 Destruction of volatile organic compounds using corona discharges ○吉澤 宣幸 佐藤 孝紀 伊藤 秀範 田頭 博昭(室蘭工業大学) 下妻 光夫(北海道大学) ○N.Yoshizawa, K.Satoh, H.Itoh and H.Tagashira (Muroran Institute of Technology) M.Shimozuma (Hokkaido University) はじめに 実験装置・条件 実験結果 まとめ

背景 ベンゼン 実用性を考えると大気圧下での分解が必要である 環境省は排出量削減のため,全国5地域に地域自主管理計画の策定を要請 近年,工場や自動車の排ガスに含まれるVOC(揮発性有機物)による環境破壊が問題となっている ベンゼン VOCのひとつであるベンゼンは発ガン性や催奇形性を持ち,白血病との因果関係がある 環境基準値(3mg/m3)が定められ排出量の削減が求められている コークス炉の排ガスに多く含まれる 環境省は排出量削減のため,全国5地域に地域自主管理計画の策定を要請 室蘭地区,鹿島臨海地区,京葉臨海中部地区,水島臨海地区及び大牟田地区 ベンゼンは低気圧直流グロー放電によってほぼ100%分解される[1] 実用性を考えると大気圧下での分解が必要である [1]佐藤 他 :電学論A ,Vol.122-A pp.479-484 (2002)

背景と目的 ○大気圧下の代表的な放電 コロナ放電・誘電体バリア放電・パックドベット放電・沿面放電 ○コロナ放電の利点 放電領域を大きくとることができ,大量のガス流に対して適合性がある (吉岡 芳夫 :電学論A ,Vol.122-A pp.676-682(2002)) GD2002(2-6 Sep.) S.Pekarek MULTI HOLLOW NEEDLE TO PLATE ELECTRICAL DISCHARGE IN MIXTURE OF AIR WITH N-HEPTANE (proceedings of the XIV GD2002, vol.2 pp.80-83) ○目的 コロナ放電による,大気圧下でのベンゼンの分解特性を明らかにする

実験装置 FTIR DC Power Supply GASTEC Capsule Dial Gauge Photonic マクセレック(株)製 LS40-10R1 放電チェンバー (ステンレス製) 平板電極(ステンレス製) 直径:f80mm 厚さ:10mm グランド側 Vmax±40kV, Imax±10mA 内径:f197mm 高さ:300mm DC Power Supply GASTEC 針電極 (ステンレス製) 直径:f4mm 高圧側 GASTEC社製 NO.121 Capsule Dial Gauge 測定範囲 : 2.5~312ppm Photonic Multi-Channel Analyzer EDWARDS CG16K 浜松ホトニクス(株)製  PMA-11 フルスケールレンジ :1040mbar 精度 :±2% 波長測定範囲 :200~950nm 波長分解能 :<2nm 波長精度 :±0.75nm 時間間隔 :>1sec Baratron Manometer Ionization Gauge 日本MKS(株)製 622A12TCE ANELVA製 M-430HG-J 測定圧力範囲 :1.3Pa~10-6Pa 感度 :0.045Pa-1 精度 :0.25% フルスケールレンジ :1.33×104Pa 分解能 :1×10-5F.S. 精度 :0.25% Diffusion Pump 島津製作所製 FTIR-8900 FTIR 干渉計 :30°入射マイケルソン 干渉計 光学系 :シングルビーム方式 波数範囲 :7800cm-1~350cm-1 波数精度 :±0.125 S/N :20000:1 データサンプリング :He-Neレーザー Rotary Pump O2 N2 C6H6 エア・ウォーター(株)製 関東化学(株)製 純度:99.5% 純度:99.999% 純度:99%

電極構成 針対平板配置(平板電極を接地) 複数針対平板配置(平板電極を接地) 針7本 針13本 針36本 放電領域の拡大による ベンゼン分解の高効率化を期待 複数針対平板配置(平板電極を接地) 針電極 :ステンレス製 直径f4mm 台座 :真鍮製 直径f50mm 針密度 :0.35本/ cm2 針電極 :ステンレス製 直径f4mm 台座 :真鍮製 直径f50mm 針密度 :0.66本/cm2 針電極 :真鍮製 台座 :鉛製 縦横 25×25mm 針密度 : 5.76本/cm2 針7本 針13本 針36本

実験条件と測定内容 ○実験条件 ガス圧: ○測定内容 全圧 1013hPa 窒素分圧 813hPa (3) 酸素分圧 200hPa (2) ガス封入順序 針電極極性 電極間隔[cm] 放電電圧[kV] ベンゼン濃度[ppm] 正極性 3 22,24,26 (約90~600mA ストリーマコロナが発生) 0~300 負極性 24 (約200~300mA グローコロナが発生) 40 ○測定内容 放電後のベンゼン濃度 初期ベンゼン濃度 = ×100[%] 1- 放電電流の時間変化 ベンゼンの分解率(ガス検知管) 放電形状の観測

印加電圧の極性の影響 放電電流の時間変化と分解率 正極性のストリーマコロナによってベンゼンが効率よく分解される 針13本 放電電圧 24kV ( )数値は分解率 正極性 40ppm 負極性 40ppm 正極性のストリーマコロナによってベンゼンが効率よく分解される

放電電流と放電形状(針1本の場合) 放電電流の時間変化 放電形状の時間変化(49ppm) (a) (b) (c) (d) 0min 正極性 放電電圧 22kV 放電電流の時間変化 矢印の位置で火花放電に転移 放電電流は最初,時間とともに減少した後,上昇に転じ,急激に上昇して最終的に火花放電に至る ベンゼンの分解率は85%以上となった ベンゼン濃度の増加に伴って,火花放電に至るまでの時間が長くなっている ( )内の数値は分解率 0ppm 13ppm 30ppm 49ppm 90ppm (a) (b) (c) (d) 放電形状の時間変化(49ppm) (a) (b) (c) (d) 35min 20min 30min 0min

放電電流と放電形状(針7本の場合) 放電電流の時間変化 放電形状の時間変化 0min 針7本電極では火花放電にならない 7本電極 5min 正極性 放電電圧 24kV 放電電流の時間変化 0ppm 20ppm 39ppm 92ppm 254ppm 針7本電極では火花放電にならない 7本電極 矢印の位置で火花放電に転移 ( )内の数値は分解率 放電形状の時間変化 0min 5min 30min

放電電流と放電形状(針13本の場合) 放電電流の時間変化 13本電極 放電形状の時間変化 0min 正極性 放電電圧 24kV 放電電流の時間変化 ベンゼン濃度によらず,安定した放電が観測された 電極外周で発光の強いストリーマコロナが観測された 初期ベンゼン濃度によらず,同じ電流特性を示した 0ppm 39ppm 78ppm 260ppm ( )内の数値は分解率 13本電極 放電形状の時間変化 電極外周でストリーマの発光が強い 0min 5min 30min

放電電流と放電形状(針36本の場合) 放電電流の時間変化 36本電極 放電形状の時間変化 0min 正極性 放電電圧 26kV 放電電流の時間変化 ベンゼン濃度によらず,安定した放電が観測された 電極外周で発光の強いストリーマコロナが観測された 初期ベンゼン濃度によらず,同じ電流特性を示した 0ppm 37ppm 77ppm 268ppm ( )内の数値は分解率 36本電極 放電形状の時間変化 放電している 放電していない 0min 5min 30min

電極構成と放電電流 正極性 ベンゼン濃度 60ppm 針7本 針13本 0ppm 39ppm 78ppm 260ppm ( )内の数値は分解率 放電電圧:24kV 0ppm 30ppm 60ppm 120ppm 300ppm 放電電圧:24kV 矢印の位置で火花放電に至る( )内の数値は分解率 針36本 放電電圧:26kV 針電極の本数が多く放電が安定する時は,電極構成によらず放電電流の特性および,電流値がほぼ同じである 0ppm 37ppm 77ppm 268ppm ( )内の数値は分解率

分解率の時間変化 ベンゼンはストリーマコロナ発生と同時に分解されはじめる ストリーマコロナが発生し始める (15kV~20kV) 正極性 針13本電極 24kV 約40ppm ストリーマコロナが発生し始める (15kV~20kV) ベンゼンはストリーマコロナ発生と同時に分解されはじめる

堆積物の調査 赤外吸収スペクトル 堆積例 針電極の真下に堆積物が観測された ベンゼンの分解生成物と考えられる 針36本電極 正極性 SiO,OH2 =CH2(C2H4) NH CO2 HOH CO2 正極性 ベンゼン濃度 300ppm 正極性 ベンゼン濃度 260ppm 負極性 ベンゼン濃度 268ppm 針電極の真下に堆積物が観測された 負極性 ベンゼン濃度 257ppm ベンゼンの分解生成物と考えられる

まとめ 針対平板間にコロナ放電を発生させ,ベンゼンの分解を試みた 極性の影響 放電電流と放電形状の時間変化 分解率の時間変化 正極性のストリーマコロナによりベンゼンは効率よく分解される 負極性のグローコロナではあまり分解されない 放電電流と放電形状の時間変化 針の本数が少ない時,放電は火花放電に至りやすい 針の本数が増加すると放電が安定する(火花放電に至らない) 針電極が密集している時,電極の外周からのみストリーマコロナが発生する 分解率の時間変化 ベンゼンはストリーマコロナ発生と同時に分解されはじめる 10分で95%の分解率を得た(針13本)