放電学会のプラズマ研究と学会連携への期待

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放電学会のプラズマ研究と学会連携への期待 東京大学 大学院工学系研究科 電気系工学専攻 日髙邦彦

目次 1.放電学会の歴史 2.放電学会の現状 3.放電学会のカバーするプラズマの特色 4.放電学会の参加大学院生、研究者の特色 5.学会連携による放電学会のメリット

1.放電学会の歴史 放電学会(旧、放電研究グループ)は、1957年(昭和32年)10月、電離気体現象に関する国際会議に参加する日本代表を学術会議に推薦することを直接の動機として結成された。

第1号の会誌

鳥山四男 (昭和32年度~34年度) 本多侃士 (昭和35年度~37年度) 浅見義弘 (昭和38年度~44年度) 篠原卯吉 (昭和45年度・46年度) 鳳誠三郎 (昭和47年度・48年度) 三好保憲 (昭和49年度・50年度) 法貴四郎 (昭和51年度・52年度) 小島昌治 (昭和53年度・54年度) 武田 進 (昭和55年度・56年度) 大木正路 (昭和57年度・58年度) 玉河 元 (昭和59年度~62年度) 御所康七 (1988年度・1989年度) 家田正之 (1990年度・1991年度) 赤崎正則 (1992年度・1993年度) 河村達雄 (1994年度・1995年度) 堀井憲爾 (1996年度・1997年度) 堺 孝夫 (1998年度・1999年度) 宅間 董 (2000年度・2001年度) 原 雅則 (2002年度・2003年度) 柳父 悟 (2004年度・2005年度) 酒井 洋輔 (2006年度・2007年度) 日髙邦彦 (2008年度・2009年度) 歴代会長

2.放電学会の現状 発足以降、放電・プラズマ現象に関する広範囲な研究について、“自由に”情報交換や討論を行う場として利用されている。 今日でも情報交換、討論などを主体とした日本学術会議協力研究団体として、我が国の科学技術の進歩に寄与することを目的として活動を行っている。 2007年には創立50周年を迎え、2008年度より22代目の会長として日髙が選任されている。

具体的な活動 年次大会(毎年11月に開催)、シンポジウム(年1,2回)、講演会、セミナー、総会(毎年3月に開催)の開催 学会誌「放電研究」の発行(年4回、最新刊としてVol. 52、No. 1を3月末に発行予定) 放電現象やその応用に関する国際会議(アジア放電会議、日韓放電・高電圧ジョイントシンポジウムなど)の協賛や情報提供 大学院生、若手研究者やエンジニアの育成のために若手セミナーの開催

会員 本会で活動している正会員数を所属別でみると、国立大学・学校等90校120名、私立大学・学校76校128名、研究所等10機関19名、電機メーカ・電力会社等37社55名など、合計330名弱となっている。

3.放電学会のカバーするプラズマの特色 放電現象の研究は、そのままプラズマの研究と言ってもよく、その歴史は古く、かつ応用分野も極めて広範囲にわたっている。 放電学会が対象とする研究は、従来から行われている気体・液体・固体中の放電現象(弱電離プラズマ)の他に、気体レーザー、強電離プラズマの研究も加わっている。 電力技術におけるUHV送電(100万ボルト級送電)あるいは機器の大容量、小型化に伴う電気絶縁に関連する放電プラズマ現象や、エネルギー開発に関連する核融合プラズマの研究についても議論を行っている。

更に、電子技術関係、環境技術関係においても、プラズマによる半導体処理、表面改質、有害ガス処理、環境改善、オゾンによる水処理など各種放電プラズマ応用装置の新技術に対して研究推進を学術の側面から支援している。

  2008年度春季シンポジウム「大気圧放電プラズマと産業応用」での講演 (1) 総論「大気圧放電プラズマと産業応用」(吉岡芳夫、金沢工業大学) (2) 「脱臭・除菌装置への放電型光触媒の応用」(志村尚彦、東芝) (3) 「電気集塵装置における再飛散防止とナノ粒子の集塵効率」(安本浩二、富士電機システムズ) (4) 「放電による有害ガス分解」(福永康隆、三菱電機) (5) 「プラズマを用いた加工技術」 (堀 勝、名古屋大学) (6) 「溶接アークの科学と最新技術 」(田中 学、大阪大学接合科学研究所) (7) 「アーク放電とレーザとの複合熱源による加工」(殖栗成夫、近畿高エネルギー加工研究所)

2006年度年次大会の特別講演では物理学会、プラズマ・核融合学会関係者のご協力を得て次の講演を企画  「原子・緩和過程に支配されるプラズマの相乗的複雑性と構造形成」(岸本泰明、京都大学) 2008年度年次大会の特別講演ではレーザー学会のご協力を得て次の講演を企画  「産業用高出力レーザー開発への放電の応用」(溝口 計、ギガフォトン)

4.放電学会の参加大学院生、研究者の特色 年次大会の参加者を見ると、大学院生の参加が過半数であり、また、若手研究者を加えると全参加者の7割程度が35才以下の若手となっている。 発足当初から若い研究者や技術者の研修を目的とした若手セミナーを開催しており、若手セミナー経験者が次の放電学会を支えるように機能していると感じている。 新しい分野における研究・技術開発には、従来の専門分野にこだわらず電気電子工学、物理学、化学をはじめとする多くの分野の知識が必要であり、これらの関連分野にまたがる広範な研究者が放電学会に加わっているようにも思っている。

5.学会連携による放電学会のメリット プラズマが関係する学術や技術の広がりを考えると、放電学会のみで対応できるわけではないのは明白であり、放電学会としては、電気学会、応用物理学会、照明学会、静電気学会、プラズマ・核融合学会、物理学会、レーザー学会、溶接学会、機械学会、化学系学会、など多くの学術団体とより一層の連携・協力を行って活動を進めていくことを絶えず考えている。 幸いにして放電学会の多くの会員は上記学協会の会員でもありことから、学会連携の重要性を認識して、これからも連携のパイプ役を果たして頂けると期待している。