多様性の生物学 第6回 多様な生物6 和田 勝 東京医科歯科大学教養部.

Slides:



Advertisements
Similar presentations
アメフラシ属 Aplysia Aplysia californica アメフラシ(雨降らし、雨虎、雨降)は、腹足綱後鰓類の無楯類 (Anapsidea, Aplysiomorpha) に属する軟体動物の総称。 より.
Advertisements

第 14 章 競争を生き抜く 生物多様性の創造における進化と絶 滅 ガラパゴス諸島の異なる島々から得られたフィ ンチ.ダーウィンによるオリジナルの挿絵.
アマゾンで 生き延びるには.
食べ物と栄養 2013 年 10 月 22 日(火) 金子弥生 動物生態学④. 講義内容 1.生息地とは 2.哺乳類の食性: ①食肉目 ②草食獣 3.食物の評価 4.栄養要求 5.栄養状態を表す指数.
生物学基礎 第2回 生物の多様性と進化      細胞の発見へ 和田 勝 東京医科歯科大学教養部.
多様性の生物学 第4回 多様な生物4 和田 勝 東京医科歯科大学教養部.
生物学 第12回 ヒトの発生について 和田 勝.
細胞の構造について復習しよう 植物細胞と動物細胞を見てみよう どんなちがいがあるかな? すべての生き物の身体は
生物学 第2回 多様な生物を分類する      生物を観察する 和田 勝.
歯の健康と歯科健診の受診について 〈6月4日は「虫歯予防デー」です〉 2013年6月 出光興産健康保険組合.
ビタミン (2)-イ-aーJ.
(1)行動分析学の基礎 「実験する」ことの意味
多様性の生物学 第8回 多様性を促した外的要因 和田 勝 東京医科歯科大学教養部.
無機質 (2)-イ-aーH.
特論B 細胞の生物学 第2回 転写 和田 勝 東京医科歯科大学教養部.
生物学基礎 第4回 細胞の構造と機能と      細胞を構成する分子  和田 勝 東京医科歯科大学教養部.
骨格筋のインスリン抵抗性が肥満の引き金 1 参考 最近、エール大学のグループは、骨格筋のインスリン抵抗性がメタボリック症候群を引き起こす最初のステップであることを報告した。BMIが22-24の男性をインスリン感受性度で2グループに分け、食事(55%炭水化物、10%蛋白質、35%脂肪)を摂取してから、筋肉のグリコーゲン量をMRI(核磁気共鳴画像法)で調べたところ、インスリン感受性群に比べて、抵抗性群ではグリコーゲン生成が61%減少していた。肝臓のグリコーゲン量は2群間で有意差はみられなかった。しかし、肝臓の
生物学 第3回 生物は進化した 和田 勝.
生物多様性優先保全地域 BPA:Biodiversity Priproty Areas
生物学 第11回 多細胞生物への道 和田 勝.
動物実験代替法って何? 日本動物実験代替法学会 企画委員会.
ヒトとは何か/どこからヒトか われわれはどこからきたのか       われわれは何なのか      われわれはどこへ行くのか                        Gauguin 
岩礁潮間帯のキーストン種 大阪府教育センター理科教育研究室.
栄養と栄養素 三大栄養素 炭水化物(糖質・繊維) 脂質 たんぱく質 プラス五大栄養素 ビタミン 無機質.
内胚葉(間葉)から血液と血管系が作られる
せきつい動物 学籍番号:****** 名前:*****.
実に面白い植物 9班 松本凛 宮本恵佑 森有花 山口静瑠.
個体識別したオオサンショウウオの 行動の追跡による生態解明
リラックスの                     いろいろ 四阿 菜々子.
生命科学基礎C 第5回 早い神経伝達と遅い神経伝達 和田 勝 東京医科歯科大学教養部.
生命科学基礎C 第3回 神経による筋収縮の指令 -ニューロン 和田 勝 東京医科歯科大学教養部.
粘菌.
多様性の生物学 第3回 多様な生物3 和田 勝 東京医科歯科大学教養部.
顕微鏡(けんびきょう)で観察できる微生物
生命科学基礎C 第4回 神経による筋収縮の指令 -伝達 和田 勝 東京医科歯科大学教養部.
個体と多様性の 生物学 第6回 体を守る免疫機構Ⅰ 和田 勝 東京医科歯科大学教養部.
静止膜電位の成り立ちと活動電位の発生 等価回路 モデル ゴールドマン の式
生命科学基礎C 第10回 個体の発生と分化Ⅰ 和田 勝 東京医科歯科大学教養部.
酸化と還元.
高脂血症の恐怖 胃 基礎細胞生物学 第14回(1/22) 2. 胃酸の分泌 1. 胃 3. 消化管(小腸)上皮細胞の更新
信号電荷の広がりとデータ処理パラメータの最適化
4.生活習慣病と日常の生活行動 PET/CT検査の画像 素材集-生活習慣病 「がん治療の総合情報センターAMIY」 PET/CT検査の画像
受粉 風媒(wind-pollination) 少数の種が均質な大群落を形成するような場合に有利。 イネ科草原,マツ林,スギ林など
日本の帰化生物の課題 湖南市立日枝中学校        元   義隆.
プレゼン資料で画像を効果的に見せるコツ.
植物系統分類学・第15回 比較ゲノミクスの基礎と実践
アザン染色 (Azan stain) 結合組織の染色
生物統計学・第3回 全体を眺める(1) R、クラスタリング、ヒートマップ、各種手法
C09010 国枝 周栄 C09011 倉尾 高弘 C09018 寺田 直司 C09026 山本 竜也 C09023 町田憲太郎
錯視の原理 MR9068 吉村勇輝.
生命科学基礎C 第8回 免疫Ⅰ 和田 勝 東京医科歯科大学教養部.
第22章 顔面と四肢の発生.
新聞発表 /7/16 大和田・菅原・鈴木・山中.
生命科学基礎C 第1回 ホルモンと受容体 和田 勝 東京医科歯科大学教養部.
生命科学基礎C 第2回 筋収縮の信号 カルシウムイオンの役割 和田 勝 東京医科歯科大学教養部.
植物系統分類学・第14回 分子系統学の基礎と実践
生命科学基礎C 第6回 シナプス伝達の修飾 和田 勝 東京医科歯科大学教養部.
個体と多様性の 生物学 第6回 体を守る免疫機構Ⅰ 和田 勝 東京医科歯科大学教養部.
生物情報計測学 第6回 植物の栄養状態の計測と診断.
●食物の消化と吸収 デンプン ブドウ糖 (だ液中の消化酵素…アミラーゼ) (すい液中の消化酵素) (小腸の壁の消化酵素)
個体と多様性の 生物学 第11回 外界の刺激の受容 和田 勝 東京医科歯科大学教養部.
関根の拡張固有表現階層 (ver ) TOP 名前 時間表現 数値表現 名前_その他 人名 職業名 病気名 神名 識別番号 色
自律神経系(autonomic nervous system)起源の信号
●チョウ目(鱗翅目) Lepidoptera
村石悠介・橋口岳史 農学部資源生物科学科1回生
水田地帯における 小型魚類の分布状況と 環境要因について
生物学 第18回 どうして地球上には多様な生物が 生息しているのか 和田 勝.
11月21日 クローン 母性遺伝.
特論B 細胞の生物学 第6回 エネルギーはどこから 和田 勝 東京医科歯科大学教養部.
多様性の生物学 第11回 多様性の整理 和田 勝 東京医科歯科大学教養部.
Presentation transcript:

多様性の生物学 第6回 多様な生物6 和田 勝 東京医科歯科大学教養部

これまでのまとめ

脊索動物門(Chordata) 脊索動物の共通した特長は次の4点である。 1)背側に脊索を持つ 2)中空な神経索が脊索のすぐ背側 を走行する   を走行する 3)咽頭に鰓裂をもつ 4)肛門よりさらに後方に尾がある

脊索動物の特徴

脊索動物門(Chordata) 脊索動物は次の3亜門に分けられる。 尾索動物亜門(Urochorata) 頭索動物亜門(Cephalochordata) 脊椎動物亜門(Vertebrata)

脊索動物門(Chordata) 上の3つが脊索動物に含まれる主な動物である。ぜんぜん違うじゃない、という感じがするだろう。

尾索動物亜門(Urochorata) これはカタユウレイボヤである。この姿を見ると、「これが本当に我々に比較的近い動物なの?」と思ってしまうだろう。

頭索動物亜門     (Cephalochordata) 頭索動物といえば、ナメクジウオである。

脊椎動物への進化 このようにホヤとナメクジウオは脊索動物の進化を考える上で重要な位置を占める動物なのである。現在、ホヤのゲノム解析はほぼ終わり、ナメクジウオのゲノム解析が行なわれている。

脊椎動物亜門(Verebrata) ここからが脊椎動物の仲間たちである。すでに述べたように、脊椎動物では脊索は発生の途中で現われるが、後には脊椎骨に置き換わってしまう。体を支える働きをするのは、リン酸カルシウムを主成分とする、いわゆる「骨」になるのである。

脊椎動物亜門(Verebrata) 無顎動物

無顎動物下門(Agnatha) メクラウナギ綱(Myxini) ヤツメウナギ綱(Cephalaspidomorphi)

メクラウナギ綱 メクラウナギとヌタウナギがいる。どちらの名前も、この動物の性質を良く表していて、メクラウナギの名から分かるように、この動物には眼は無く痕跡器官となっている。またヌタウナギのヌタという語が表しているように、体表の分泌腺から多量の粘液状の分泌物を出す。

ヌタウナギ独特な行動と粘液

外見はウナギに似ているが、顎が無いことに加えて胸鰭が無い。体長はおよそ60cmで茶褐色をしている。口の両側に4対の長いひげがあり、体側には、6対まれに7対の外鰓孔がある。いずれも海産で、新潟などでは食用にする。皮膚は丈夫なので、なめして財布やハンドバックの材料にもなる。

ヤツメウナギ綱 眼の後ろに7対の鰓孔が並ぶので、本当の眼とこの鰓孔を合わせて八つ目鰻と呼んでいる。

ヤツメウナギ(lamprey) 網にかかった魚に吸い付いて擦り取って食べるので、猟師に嫌われる。

ヤツメウナギ泳ぎの神経支配

脊椎動物になって

頭索動物と脊椎動物の脳

脊椎動物になって

神経冠(neural crest) 発生の途中で神経管ができるとすぐに、神経管のすぐ上、背側表皮の下に神経管に沿って現われる外胚葉由来の細胞

神経冠(neural crest) 生物学実験で出てきたのを憶えていますか? 黒色素細胞、脊髄神経節、交感神経節、副腎髄質、グリア細胞 ●胴部神経冠細胞:  黒色素細胞、脊髄神経節、交感神経節、副腎髄質、グリア細胞 ●頭部神経冠細胞:  三叉神経の一部、その他のいくつかの脳神経、頭部鰓弓骨格系

有顎動物下門(Gnathostomata) 顎と肢

有顎動物下門(Gnathostomata) 軟骨魚綱(Chondrichthyes) 硬骨魚綱(Osteichthyes) 両生綱(Amphibia) 爬虫綱(Reptilia) 鳥綱(Aves) 哺乳綱(Mammalia)

軟骨魚綱(Chondrichthyes) 軟骨魚類は、内骨格が軟骨性で、頭蓋も軟骨頭蓋である。サメ・エイほか多数の種を含む板鰓類と、ギンザメを含む全頭類

サメ・エイの仲間 鰾(うきぶくろ)あるいは肺に類似した器官を全く持たない 5対の鰓孔 口と鼻孔は腹面に開口

サメ・エイの仲間 エイも5対の鰓孔、口と鼻孔は腹面に開口する

サメ・エイの仲間 硬骨魚類と異なり、尾は上の図のように上側へ曲がる。

顎の進化 ここで鰓孔とそれを支える鰓弓が重要になってくる。 1)咽頭の内胚葉が膨らみ咽頭嚢を形成 2)裂け目ができ体壁をも分断して鰓裂 3)鰓裂をかこむ部分を内臓弓(あるいは咽頭弓、広義には鰓弓) 4)内臓弓の中に内臓骨格(あるいは鰓弓骨格)が発生

顎の進化 この内臓骨格(あるいは鰓弓骨格)が顎になった

硬骨魚綱(Osteichthyes) ふつうに「オサカナ」と言っているグループである。脊椎動物のなかで、個体数も種数ももっとも多い。硬骨魚類は大きさ1cmから6mを越えるものまで幅広く、海域あるいは淡水域に広く分布している。

硬骨魚綱の体のつくり サメと異なり、静止していても呼吸ができる 柔らかい鰭を使って泳ぎが上手い

硬骨魚綱の特徴 鰾(うきぶくろ)の存在 消化器系から突出した空気袋で、浮力を調節。鰾に分布した血管との間で酸素を行き来させて、鰾の大きさを変えて魚体の密度を調節

硬骨魚綱 条鰭亜綱(Actinopterygii) 総鰭亜綱(Crosspterygii) 肺魚亜綱(Dipneustei) に分けられる。

条鰭亜綱(Actinopterygii) ふつう、オサカナと言うと条鰭類。コイ、サケ、マグロ、マス、イワシ、タラなど思いつくオサカナは大体ここにはいる。 扇のような形態の鰭で、扇の骨に当たる鰭条(骨ではない)とその間をつなぐ薄い組織からなる。 多くの種が、淡水域から海水域へ進出して適応放散して繁栄

総鰭亜綱(Crosspterygii) 胸鰭と腹鰭の基部は筋肉質で、骨で支持されている。

シーラカンスの発見 1938年に最初の個体が発見され、Latimeria chalumnaeと命名された。

シーラカンスの発見 1998年にインドネシアのセレベス島沖でも発見。

肺魚亜綱(Dipneustei) 南半球のアフリカ、南アメリカ、オーストラリアだけに住む。

肺魚 淀んだ池や沼地に住み、肺に空気を飲み込んで鰓での呼吸を補助。 アフリカや南アメリカのハイギョは、乾季に水が干上がっても、泥中に穴を作ってもぐり込み、活動を止めて肺に溜めた空気で生き延びることができる。

四足動物(肢)の進化 浅い淡水域の繁茂した植物を掻き分けて進むためには、鰭が肉質でしっかりしていたほうがよかったのであろう。

両生綱(Amphibia) こうして、両生類が誕生した。 アシナシイモリ イモリ カエル

オオサンショウウオ オオサンショウウオは、現生種では世界最大の両生類で、全長144cmという記録がある。

オオサンショウウオ 日本のオオサンショウウオが世界に紹介されたのは、19世紀半ばにシーボルトがオランダに持ち帰った のが最初であった。オオサンショウウオの生息しないヨーロッパでは化石でしか知られていなかったため 大きな話題となった。

カエルの仲間

カエルの仲間

カエルの変態