動画像品質調整機能を組み込んだ プロキシキャッシングシステムの 実装と評価

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動画像品質調整機能を組み込んだ プロキシキャッシングシステムの 実装と評価 大阪大学 基礎工学部 情報科学科 村田研究室 谷口義明 2002年2月26日 村田研究室の谷口義明です. ただいまから,動画像品質調整機能を組み込んだプロキシキャッシングシステムの実装と評価,というタイトルで私の研究報告をさせていただきます.

動画像ストリーミングサービス 大量の動画像データを定常的に送出 ネットワークの負荷の増大 データ配送遅延の増加 ネットワーク接続形態の違い(ADSL, FTTH, Dialup)システム性能の違い(PC, PDA, ポケットPC) クライアントごとに異なる処理能力 プロキシ技術によるネットワーク負荷の軽減 近年,ネットワークの発展に伴い,動画像ストリーミングサービスの利用が増加してきています. しかしながら,動画像ストリーミングサービスは定常的に大量のトラヒックを発生するため,ネットワークの負荷の増大やデータ配送遅延が増加することが問題になっています. また,ADSLやLAN,ダイヤルアップ,無線といった多様なネットワーク接続形態,パーソナルコンピュータや,PDA,ポケットPCといったシステム性能の違いによりクライアント毎の処理能力が異なります. ここで,ネットワークの負荷を抑え,データ配送遅延を小さくするための手法として,WWWでよく用いられているプロキシを導入することは非常に有効であると考えられます.また,クライアント毎に異なる処理能力を考慮するために,送出する動画像品質を調整することが有効であると考えられます. そこで,動画像ストリーミングサービスにおいて,動画像品質調整機能を組み込んだプロキシキャッシングシステムというものが提案されています. 処理能力に合わせた動画像品質調整

動画像品質調整機能を組み込んだ プロキシキャッシングシステム Cache miss ! Cache hit ! クライアント 要求(高品質) プロキシ 要求(高品質) 高性能 転送(高品質) 広帯域 サーバ 転送(高品質) 高品質 蓄積 高品質 要求(低品質) 転送(低品質) 品質調整 では,動画像品質調整機能を組み込んだプロキシキャッシュを適用した動画像ストリーミングサービスの概要について説明させていただきます. 各クライアントはプロキシを介してサーバに接続された環境でストリーミングサービスの利用を開始します. 例えば,高速なアクセス回線で接続されており,動画像転送に利用可能な帯域が大きく,また,高性能なコンピュータを使用しているクライアントが高品質な動画像の転送要求をしたとします.このとき,プロキシは,要求された動画像データがなければサーバより高品質な動画像データを取得し,キャッシュバッファに蓄積します.その後,クライアントに要求品質の動画像データを送ります. 続いて,別の低速なアクセス回線で接続されており,低性能なコンピュータを使用しているクライアントが,同じ動画像データに対して低品質な動画像の転送要求をしたとします.その際には,プロキシはキャッシュされている高品質な動画像データを低品質な動画像データに加工し,クライアントに転送します. このように,プロキシの機能に動画像品質調整機能を加えることで,クライアントは処理能力に応じた動画像ストリーミングサービスを受けることができます. 狭帯域 低性能 キャッシュバッファ 低品質 ネットワーク クライアント

動画像ストリーミングサービスの特徴 1つの動画像ファイルが数ギガバイトにもおよぶ ユーザが動画像を参照する順序には時間的 特性がある クライアント毎に動画像への要求品質が異なる 従来のキャッシングメカニズムでは対応が難しい しかしながら,動画像ストリーミングの性質としましては,一つのファイルが数ギガバイトにもおよび巨大であるという点,また,クライアントによる動画像の要求順序に時間的特性があるという点があります.また,クライアント毎に異なる動画等要求品質を考慮する必要があります.これらの特徴は,従来のプロキシ技術で扱うにはあまり適さない構造ですので,動画像ストリーミングサービスに効果的なキャッシングアルゴリズムを考える必要があります. 動画像ストリーミングサービスに効果的な キャッシングメカニズムが必要

動画像の特徴を考慮した キャッシングメカニズム [2] 動画像を一定時間ごとにセグメントという単位にわけ,セグメントを転送,処理の単位として扱う. キャッシュバッファ,伝送帯域の有効利用 通信状態やユーザの要求を考慮して,サーバから取得する動画像品質を決定する キャッシュバッファ,伝送帯域の有効利用,将来の転送要求に備える あらかじめキャッシュに動画像を先読みする 将来の転送要求に備える サーバからの取得データとキャッシュ内データを 置き換える 有限なキャッシュバッファの有効利用 私たちの研究グループでは,動画像品質調整機能を組み込んだプロキシキャッシングシステムにおける,効果的なキャッシングメカニズムをすでに提案しており,シミュレーションにより評価を行いました. メカニズムでは,動画像を一定時間ごとにセグメントという単位に分割し,セグメント単位で処理を行うことでキャッシュバッファの有効利用や,伝送帯域の有効利用をはかります.また,通信状態やユーザの要求を考慮して,サーバから取得する動画像品質を決定します. 将来の転送要求に備え,あらかじめキャッシュに動画像を先読みを行う 有限なキャッシュバッファを有効に利用するためのキャッシュの置換えも行います. [2] M.Sasabe, N.Wakamiya, M.Murata, and H.Miyahara, ‘‘Proxy caching mechanisms with video quality adjustment,’’ in Proceedings of ITCom 2001, Aug. 2001.

実システムへ適用する際の問題点 キャッシングメカニズムにおける仮定 実装上の問題 動画像品質調整に要する遅延を考慮していない パケット棄却による再生動画像品質の低下を 考慮していない 実装上の問題 音声を含めた動画像の管理 しかしながら,シミュレーションにおけるプロキシキャッシングシステムを実システムに適用しようとすると,さまざまな問題点が発生します. 例えば,キャッシングメカニズムのシュミレーションでは,仮定として,動画像品質調整に要する遅延を考慮していないという点があります.また,実装する上では,音声を含めた動画像をどう管理するか,といった問題や.パケット棄却による再生動画像品質の低下といった問題がでてきます.

研究の目的 動画像品質調整機能を組み込んだプロキシキャッシングシステムの実装と評価 プロキシキャッシングシステムの実現可能性 処理遅延の評価 キャッシングメカニズムの有効性 再生動画像の品質評価 トラヒック量の測定 そこで,本報告では,動画像品質調整機能を持つプロキシの実装を行うことで,さきほど述べた問題点を含めて,プロキシキャッシングシステムの実現可能性を検討すること,また,再生動画像品質やトラヒック量の測定をもとに,キャッシングメカニズムの有効性を実装システムを用いて評価することを目的とします.

実装システムの概要 Video Server Proxy Video Client Control MPEG-2 PS Data RTSP RTSP RTSP Server RTSP Client RTSP Server RTSP Client Video Table Cache Manager Cache Disk Manager Low-pass Filter Low-pass Filter Monitor 実際に作成したシステムの概要はこのようになっています.本日は,時間の関係で,概要図を示すのみとします. (説明する場合) では,実際に作成したシステムの概要を簡単に説明させていただきます. まず,クライアントは,説明の詳細は省かせていただきますがTFRCという手法により利用可能な帯域を推定し,それを動画像の要求品質とします. そして,動画像ストリーミングの制御プロトコルとして一般的なRTSPをもちいてプロキシに動画像データ転送を要求します.プロキシからクライアントへと動画像データが渡される際には,高周波成分を削除することで品質をおとすローパスフィルタを用いてクライアントの要求にあった品質の動画像データに加工します.その後,実時間転送のためのプロトコルであるRTPを用いてクライアントに動画像データを転送します. また,実装では音声を含めた動画像を考慮するため,音声と映像を分ける機能Demultiplexerと,音声と映像から動画像を生成する機能Multiplexerを追加します. Decoder Demultiplexer Multiplexer Multiplexer TFRC TFRC RTP RTP RTP Receiver RTP Sender RTP Receiver RTP Sender Control MPEG-2 PS Data

品質調整に要する遅延 品質8Mbpsの動画像の品質調整に1秒あたり500ミリ秒弱で処理が可能 処理前の動画像品質に比例した遅延が生じる 実時間処理が可能である プログラムの最適化やハードウェア化により多くのクライアントに対しサービスが提供可能 処理前の動画像品質に比例した遅延が生じる 600 500 では,システムの実装を通して,あきらかになったことを説明させていただきます. まず,キャッシングメカニズムのシミュレーションでは考慮されていなかった,実際の品質調整による遅延を測定しましたところ,8Mbpsの品質の動画像に対し,1秒あたり400ミリ秒強で品質調整が行えることがわかりました.つまり,動画像品質調整機能に関しては実時間処理が可能で,プログラムをさらに最適化,あるいは,ハードウェアを高速化することにより,より多くのクライアントに対してサービスが行えるようになると考えられます. [msec] 400 300 時間 200 100 1 2 3 4 5 6 7 目標レート [Mbps]

デモ クライアントの要求品質(動画像レート)が変化 Video Client Proxy 時間 [ 秒 ] 品質 [kbps] 1000 RTSP Client RTP Receiver Decoder Video Client RTSP Server RTP Sender Cache Manager Cache Proxy RTSP RTP Multiplexer Demultiplexer Low-pass Filter Table TFRC Monitor 1000 2000 3000 4000 5000 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 時間 [ 秒 ] 品質 [kbps] では,実際にプロキシ-クライアント間の動作デモをおこなわさせていただきます. デモの概要としては,クライアントがプロキシに要求する動画像の品質を,図のように変化させた場合に,クライアントでの再生動画像間がどう変わるかを見てもらいます.今回はあらかじめ結果をファイルに保存しておきましたので,それを再生いたします.

デモ では,実際に再生させていただきます.左上が実際に作成したクライアントのアプリケーションになります.時間ごとに品質が変化していることに注目してご覧ください. このように,時間ごとに品質が変化していることがわかると思います.

まとめと今後の課題 まとめ 今後の予定 動画像品質調整機能を組み込んだプロキシキャッシングシステムの実装を通して実現可能性を示した. プロキシで動画像品質調整を行っても,実時間性を 失うことなくユーザに動画像を提供可能 今後の予定 複数の動画像ストリームへの対応 インタラクション(巻き戻し,早送り)への対応 システムのスケーラビリティの検討および向上 最後にまとめといたしまして,本報告では 動画像品質調整機能を組み込んだプロキシキャッシングシステムを実装し,実装上の問題を解決することで,実際に動作するものを作成しました. 今後の課題といたしましては,複数の動画像ストリームへの対応や,早送り,巻き戻し操作への対応があげられます. これで,私の研究報告を終わらせていただきます.