Physics via Penetrating Probes at ALICE 志垣 賢太 (広島大学) for the ALICE Collaboration 2007 年 9 月 24 日 日本物理学会 年次大会 於 北海道大学
発表概要 RHIC/PHENIX における物理成果を踏まえて LHC/ALICE における物理課題, 意義, 測定実現性 直面する課題; 現存する壁; 進展への施策 透過的測定によるパートン非閉込相の包括的理解へ LHC/ALICE における物理課題, 意義, 測定実現性 J/Y, 熱輻射光子 LHC/ALICE の現状, 予定, 推進体制 まとめ 2007 年 9 月 24 日 Physics via Penetrating Probes at ALICE / Kenta Shigaki / JPS Fall 2007
2007 年 9 月 24 日 Physics via Penetrating Probes at ALICE / Kenta Shigaki / JPS Fall 2007
RHIC における成果の精髄: パートン非閉込相 稠密: クォークのエネルギー損失 ジェット (高横運動量粒子) 収量抑制 ジェット形状変化 パートン由来: 色価遮蔽, クォーク自由度顕在化 J/Y 収量抑制 構成クォーク数スケーリング則 強結合: 完全流体 流体力学で記述される集団運動 高エネルギー密度: 高温熱輻射 (!?) 熱輻射 (仮想) 光子 (!?) The matter is strongly coupled The matter is dense The matter may melt and/or regenerate J/y’s The matter modifies jets The matter is hot 2007 年 9 月 24 日 Physics via Penetrating Probes at ALICE / Kenta Shigaki / JPS Fall 2007
高エネルギー原子核物理学が直面する課題 到達パートン密度 到達温度, 持続時間 衝突初期の時空発展 カイラル対称性回復, ハドロン質量起源 より高い横運動量領域でのジェット抑制, 変更 J/Y, 抑制/再結合 (熱的生成) 到達温度, 持続時間 熱輻射光子 衝突初期の時空発展 熱輻射光子 HBT 相関 カイラル対称性回復, ハドロン質量起源 低質量ベクトル中間子質量状態 i.e. 透過的測定による包括的理解 2007 年 9 月 24 日 Physics via Penetrating Probes at ALICE / Kenta Shigaki / JPS Fall 2007
パートン非閉込相の包括的理解に現存する壁 (主として) 技術, 測定条件による壁 レプトン測定: 中性中間子ダリツ崩壊起源の背景雑音 → PHENIX 実験 HBD 検出器 光子測定: 中性中間子崩壊光子起源の系統誤差 → ALICE 実験 PHOS 検出器 (主として) 物理条件による壁 “重い” クォークの系統的測定実現性 cf. 森野雄平 (PHENIX) 24pZC12 → LHC 加速器 熱輻射光子の測定実現性 2007 年 9 月 24 日 Physics via Penetrating Probes at ALICE / Kenta Shigaki / JPS Fall 2007
LHC 加速器 ALICE 実験 LHC 加速器において唯一原子核実験に特化 30 か国, 90 研究機関, ~1,015 共同実験者 CMS 1000th ALICE member LHC-b ALICE ATLAS 2007 年 9 月 24 日 2007 年 9 月 24 日 Physics via Penetrating Probes at ALICE / Kenta Shigaki / JPS Fall 2007 Physics via Penetrating Probes at ALICE / Kenta Shigaki / JPS Fall 2007
自明かつ重要な課題: 重いクォーコニア RHIC/PHENIX における成果 LHC/ALICE における課題 J/Y 生成抑制確認 パートン非閉込相生成の有力信号 抑制機構の定量的理解へは未到達 理解困難な測定結果 SPS と RHIC のエネルギー領域で同程度の抑制 エネルギー密度の低い前方領域でより強い抑制 理論的説明に不定性 cf. 郡司卓 (PHENIX) 24pZC10 LHC/ALICE における課題 J/Y, , 励起状態を含めた系統的測定 抑制機構, 競合過程の包括的理解 NA50 at SPS (0<y<1) PHENIX at RHIC (|y|<0.35) PHENIX at RHIC (1.2<|y|<2.2) 2007 年 9 月 24 日 Physics via Penetrating Probes at ALICE / Kenta Shigaki / JPS Fall 2007
ALICE における J/Y, の精密測定 ALICE (, CMS): 励起状態を分離可能 質量分解能 ~ 100 MeV が必要 ALICE e+e- s < 80 MeV CMS m+m- s ~ 80 MeV ALICE m+m- s < 100 MeV ATLAS m+m- s > 120 MeV 2007 年 9 月 24 日 Physics via Penetrating Probes at ALICE / Kenta Shigaki / JPS Fall 2007
困難かつ重要な課題: 熱輻射光子 RHIC/PHENIX における成果 LHC/ALICE における課題 仮想光子を用いた間接測定 300 - 500 MeV の熱輻射を示唆 熱輻射を含めた理論に不定性 LHC/ALICE における課題 熱輻射光子の直接測定 熱輻射持続時間増大 ジェット抑制による背景光子低減 PHOS 検出器 パートン多体系の熱的性質の理解 2007 年 9 月 24 日 Physics via Penetrating Probes at ALICE / Kenta Shigaki / JPS Fall 2007
ALICE における光子の精密測定 高分割高精度 “光子スペクトロメータ” PHOS ref. 鳥井久行 (ALICE) 24aZC10 世界最高級のエネルギー分解能 s/E ~ 3 %/E [GeV] PbWO4 (タングステン酸鉛) 単結晶 8.28 g/cm3; モリエル半径 22 mm; 放射長 8.9 mm 既知の無機シンチレータ中で最稠密 22 (1.0 RMoliere)×22×180 (20 X0) mm3 APD (雪崩式光ダイオード) 読出 磁場耐性; 小型; 低消費電力; 高量子効率 雑音低減の鍵: 冷却, 温調 単結晶から前置増幅器まで -250.1 ˚C 56×64×5 モジュール (17,920 チャンネル); 12.5 t ref. 鳥井久行 (ALICE) 24aZC10 2007 年 9 月 24 日 Physics via Penetrating Probes at ALICE / Kenta Shigaki / JPS Fall 2007
LHC (+ ALICE) 立上日程 立上日程 当初数年間に期待される実験条件 2007/11/05 ALICE-PHOS 1 号機設置 2008/04 加速器, 実験閉鎖 2008/05 ビーム調整 (p+p, s = 14 TeV) 2008/07 衝突開始 2008/末 p+p, s = 14 TeV, 1032 cm-2s-1 当初数年間に期待される実験条件 p+p s = 14 TeV, < 1031 cm-2s-1 (ALICE) Pb+Pb s = 5.5 TeV, 1027 cm-2s-1, 2 – 3 年 “p”+Pb s = 8.8 TeV, 1029 cm-2s-1, 1 年 Ar+Ar s = 6.3 TeV, 1029 cm-2s-1, 1 年 2007 年 9 月 24 日 Physics via Penetrating Probes at ALICE / Kenta Shigaki / JPS Fall 2007
日本国内推進体制: ALICE-J 正式参加機関として 2006 年 MoU 調印 広島大学 東京大学 CNS 筑波大学 主として光子測定による物理 PHOS 検出器開発, 建設 “Tier 2” 解析センター 東京大学 CNS 主として電子測定による物理 TRD 検出器建設 筑波大学 主として集団運動測定による物理 (?) CERN 分室開設 2007 年 9 月 24 日 Physics via Penetrating Probes at ALICE / Kenta Shigaki / JPS Fall 2007
LHC 計算機グリッド広島 “Tier 2” 稼働準備最終段階 ALICE/LHC 解析環境 Xeon 5160×2 CPU×38 ノード = 116K Spec Int 2000 RAID ディスク 42 TB 数年内に 2 – 10 倍の規模拡充予定 ALICE/LHC 解析環境 LCG ミドルウェア + “AliEn” ref. 洞口拓磨 (ALICE) 24aZC11 2007 年 9 月 24 日 Physics via Penetrating Probes at ALICE / Kenta Shigaki / JPS Fall 2007
まとめ 積年の探索に終止符: パートン非閉込相存在確認 パートン非閉込相の性質探求と包括的理解へ クォーク自由度が支配する高温稠密な物質相 RHIC における成果の精髄 パートン非閉込相の性質探求と包括的理解へ 複数の透過的測定が鍵 ALICE における最重要課題, 測定実現性 高横運動量パートン衝突, 重いクォークの物理に最適合 低~中間横運動量光子の物理に拓かれる新たな舞台 LHC/ALICE 稼働まで ~ 1 年 ALICE-J として (PHENIX-J と並列に) 全力を傾注 物理成果の豊穣期継続の期待 2007 年 9 月 24 日 Physics via Penetrating Probes at ALICE / Kenta Shigaki / JPS Fall 2007