巨大加速器が解明する 素粒子と宇宙の謎 駒宮幸男 2010年1月23日 東京大学大学院理学系研究科物理学専攻・教授 巨大加速器が解明する 素粒子と宇宙の謎 2010年1月23日 駒宮幸男 東京大学大学院理学系研究科物理学専攻・教授 東京大学素粒子物理国際研究センター・センター長
根源的な疑問と物理学者の野望 素粒子物理学と宇宙論の究極的な課題 宇宙(我々)は何故このように存在するのか? 根源的な疑問と物理学者の野望 素粒子物理学と宇宙論の究極的な課題 宇宙(我々)は何故このように存在するのか? 宇宙(我々)は何なのか(何からできているのか)? 宇宙(我々)はどこから来て、どこへ行くのか? ⇒ 宗教的に悟るのではなく客観的に説明したい これらの哲学的な疑問を科学で解明したい。
国際的な時代認識 2009年にジュネーブのCERN(欧州原子核研究機構)ではLHCが走り始め、近いうちにヒッグス粒子や超対称性、またはそれらにとって代わる新粒子・新現象の発見が期待される。 革命前夜 次いで、国際リニアコライダーILCにおけるクリーンな実験環境での精密測定で背後の物理を解きほぐし、過去における反粒子の発見やゲージ原理の確立に匹敵するような素粒子物理の新たなパラダイムを開く。 ただし、国際的な経済状況は厳しく、大型計画をいかにして実現していくか知恵を絞っていくべき時代である。
エネルギーの単位 電子ボルト 1 [ eV ] = 1.6 ×10-19 [ J ] 化学反応のエネルギー e- 錬金術:化学反応のエネルギーで原子核変換をしようとした。 1.5 V e- 1 [ MeV ] = 106 [eV ] (メガ) 原子核反応のエネルギー 1 [ GeV ] = 109 [eV] (ギガ) 1 [ TeV ] = 1012 [eV] (テラ) 素粒子反応のエネルギー E=mc2 質量の単位もエネルギーの単位で測る。 例: 電子の質量 me= 9.1×10-31 kg = 0.511 MeV
素粒子物理学の歴史 「標準理論」の成立
物質の階層構造とそのスケール 水素原子 分子 原子 原子核 核子 素粒子 u-クォーク d-クォーク 分子 原子 原子核 核子 素粒子 陽子 酸素原子 u-クォーク 酸素原子核 中性子 d-クォーク 水素原子 H2O 水の分子 電子 10-10 m 10-15 m <10-18 m 0.1 nm 1 fm <1 am
最初の素粒子「電子」の発見 1897年 J.J. Thomson 下の装置で電子の比電荷(Q/m) を測定した。 ⇒ 原子構造の探求へ
ラザフォードの原子核の発見 原子モデル 1 原子モデル 2 電子 均質な+電荷 硬く重い核 +電荷 電子 ぶどうパンモデル 太陽惑星モデル 原子モデル 1 原子モデル 2 電子 均質な+電荷 硬く重い核 +電荷 電子 ぶどうパンモデル 太陽惑星モデル J.J.トムソン ラザフォード 長岡半太郎
ラザフォードの原子核の発見 1911年 弟子のガイガーとマースデンの実験で決着 α線源 α線(He原子核) 検出器 (シンチレータ) 1911年 弟子のガイガーとマースデンの実験で決着 α線源 α線(He原子核) 検出器 (シンチレータ) 薄い金箔 ほとんどすり抜ける。たまに大角度に散乱される。 ⇒ このモデルが正しい。 素粒子実験の原型
1930年代初頭の「素粒子」 - 電子 e 1897年 陽子 p 1911年 中性子 n 1932年 光子 γ 1905年 中性子 n 1932年 光子 γ 1905年 非常に単純、美しい体系 しかし、これでは終わらなかった +
湯川博士のπ中間子の予言(1935年) p p n p p n n n π0 π+ π- π0 新しい相互作用 新しい相互作用 電磁力よりも強い引力 相互作用の本質 力を媒介する粒子の存在 新粒子の性質の予言 力の到達距離⇒π中間子の質量の予言 + + 中性子 陽子 p p n p p n n n π0 π+ π- π0 宇宙線中にπを探索⇒μ粒子の発見 Anderson+Neddermeyer 1937 ⇒2中間子論(武谷、谷) π中間子の発見 Powell+Occhialini 1947 π→μ→e の崩壊を写真乾板で発見 (アンデス山中)
相互作用 ゲージ原理 電磁力 γ(光子) 弱い相互作用 W±、Z0 10-5 10-2 e 強い相互作用 重力相互作用 1 10-40 _ 相互作用 ゲージ原理 相対強度 @1GeV 電磁力 γ(光子) 弱い相互作用 W±、Z0 10-5 10-2 _ _ e 電子 N’ N + W± ν 原子核 原子 原子核β崩壊 強い相互作用 重力相互作用 グルーオン (8種類) 重力子 (未発見) 1 10-40 地球 原子核 陽子 太陽 クォーク
加速器による新粒子群の発見 π 、 π 、π 、K、K、K、K、ρ、ρ、ρ、ω、….. p、n、Λ、Σ、Σ、Σ、Ξ、Ξ、…..、p 1950-60年代には加速器によって多くの強い相互作用する粒子群(ハドロン)が生成され、収拾がつかなくなった。 「もしこんな多くの粒子の名前を全て覚えることができたら、私は植物学者になっていたであろう 」 E.Fermi π 、 π 、π 、K、K、K、K、ρ、ρ、ρ、ω、….. p、n、Λ、Σ、Σ、Σ、Ξ、Ξ、…..、p 複合粒子モデル(坂田昌一) 1959 p、n、Λ、p、n、Λ が基本粒子、全てのハドロンは、この組み合わせ 例 π =pn + - ー +
クォークモデル Gell-Mann Zweig 1964 坂田モデル ⇒ クォークモデル p u-クォーク 電荷=2/3 n ⇒ d-クォーク 電荷=-1/3 Λ s-クォーク 電荷=-1/3 p = uud 電荷=2/3+2/3ー1/3 =1 n = udd 電荷=2/3ー1/3ー1/3 =0 クォークは実在するか ⇒ ラザフォードの実験の進化形 高エネルギー電子を陽子に衝突させて陽子に硬い芯のあることを発見。 1960年台終わりころ。
The November Revolution 1974年11月 J/ψの発見 クォークとレプトンが 物質を形成する基本粒子であることが実験家にも明確に分かった e+e- →ψ SLAC Richter et al. J→ e+e- BNL Ting et al.
素粒子の世代構造 Zボゾンの生成断面積 素粒子の世代数は3で打ち止め N=2.9841 ± 0.0083 (LEP)
ゲージボソンの精密測定(LEP・OPAL実験) e+e- → W+W- → μ+νμ + qq Ecm=200 GeV e+e- → Z0Z0 → e+ e- + qq Ecm=200 GeV
ゲージボソンの精密測定(ゲージ原理の検証) (a)だけ (a)と(b)だけ W+ Wー e+ e- νe (a) W+ Wー e- e+ γ (b) W+ Wー e- e+ Z (c)
素粒子の標準理論 (1)物質を形成する粒子 (J=1/2) クォーク レプトン u c t νe νμ ντ d s b e μ τ (1)物質を形成する粒子 (J=1/2) クォーク レプトン u c t νe νμ ντ d s b e μ τ +反粒子 +反粒子 (2)相互作用を担う粒子 (J=1) 電磁相互作用 γ (光子) 弱い相互作用 W+ W- Z0 (ウイークボゾン) 強い相互作用 g (8種類) (グルーオン) (3)質量の起源 (J=0) H0 (ヒッグス粒子) 未発見
素粒子の「標準理論」の3本の主柱 ゲージ相互作用 ヒッグス粒子 クォーク レプトン 物質を作る基本粒子はクォークとレプトン 3世代×4種類=12種類 全て発見済み ☑ 素粒子間の力は 「ゲージ相互作用」 LEPなどで精密検証 ☑ ヒッグス粒子がゲージ対称性を壊す⇒質量の起源 実験的には全く手付かず ゲージ相互作用 ヒッグス粒子 クォーク レプトン
宇宙と素粒子物理の関係
宇宙が一次元だったら宇宙が膨張したらどうなるだろう 宇宙の膨張 3次元の宇宙で膨張を考えるのは難しい 宇宙が一次元だったら宇宙が膨張したらどうなるだろう V r 観測者 ゴムひものように伸びる宇宙で、観測者は宇宙のどこにいても良い 観測者から見て遠い点ほど速く遠ざかる v = H0 r
宇宙膨張 ジョージ・ガモフ(ロシア人) 1946 熱い宇宙モデル(ビッグバン) 過去にさかのぼれば 宇宙は高温高圧の状態 膨張宇宙の映画のフィルムを逆回しすると(時間をさかのぼると)収縮して熱くて密度の高い宇宙になる。 1946 熱い宇宙モデル(ビッグバン) 過去にさかのぼれば 宇宙は高温高圧の状態 宇宙膨張 圧縮すると温度が上がる
(後退速度) = H X(距離) 現在 H ハッブル定数 = 68 - 75km/秒/Mpc
宇宙のエポックと素粒子 現在:暗黒エネルギー、暗黒物質 2.7K宇宙背景輻射、 2.2K宇宙背景ニュートリノ 星と銀河の形成 宇宙の晴れわたり(分子、原子の形成) Heなど軽い原子核の形成 弱い相互作用と電磁相互作用の分岐 現在の加速器の限界 強い相互作用と電弱相互作用の分岐 137億年 インフレーション 大統一 プランクスケールの世界 量子重力の世界
宇宙全体のエネルギー組成 原子 = 4.4±0.3 % 宇宙背景輻射の揺らぎ 暗黒物質 = 22±2 % (WMAPなどでの観測) 原子 = 4.4±0.3 % 暗黒物質 = 22±2 % 暗黒エネルギー = 74±2 % 宇宙背景輻射の揺らぎ (WMAPなどでの観測) (2) 超銀河団の大規模構造 (3) 超新星(タイプ1a)の分布 (4) 宇宙初期の軽い原子核生成 エネルギー組成の96% は未解 暗黒物質:超対称性粒子 ? 暗黒エネルギー・インフレーション :スカラー粒子=真空と同じ量子数?
素粒子物理学の進展
まだ分からないこと 素粒子の質量の起源はヒッグス粒子(真空の構造)か 何故3世代のクォーク・レプトンがいてそれぞれの質量が異なるのか (ニュートリノの質量は何故軽いか、トップクォークは何故重いか) 何故4種類の力があるのか、重力を理論の枠組にいれられるか 宇宙の暗黒物質、暗黒エネルギーの正体は何か なぜ時空は空間3次元、時間1次元か 宇宙はどのようにして生じたか 南部陽一郎先生(シカゴ大学)
ヒッグス粒子(質量の起源) ゲージ対称性があると 素粒子の質量はゼロ ヒッグス粒子はゲージ対称性を破り素粒子に 質量を与える ゲージ対称性があると 素粒子の質量はゼロ ヒッグス粒子はゲージ対称性を破り素粒子に 質量を与える LEP実験ではヒッグス粒子を114~200GeVの狭い 質量範囲に絞り込んだ。 LHCで粒子発見 ⇒ILCで原理発見
ヒッグス粒子と真空 φ 初期宇宙 φ 膨張による冷却 φ0= ヒッグス場の真空期待値 ヒッグス粒子は「真空」と同じ量子数を持つ ヒッグス粒子は「真空」と同じ量子数を持つ ⇒ 真空でのヒッグス場が φ=0 から φ=φ0 に転移する。 水が氷になるような相転移が生ずる. V(φ) 真空 φ 初期宇宙 φ₀ V(φ) 真空 φ 膨張による冷却 φ0= ヒッグス場の真空期待値 真空(エネルギーが最も低い状態) では φ=0 . ヒッグス場は真空で φ0 という値を取り,対称性が敗れる.
ヒッグス場のポテンシャルと真空 実際にはヒッグス場φは複素数なので右のようなポテンシャルとなる(ワインボトルの底の形) φ=0 が真空ならば軸対称 真空は円の「どこか」となる。 真空がどこかに決まれば対称性はなくなる(自発的対称性の破れ) 力 力 鋼の棒(軸対称) ペコン 対称性が壊れた方が安定な(エネルギーが低い)例は物理ではいくらでもある 力 力
LEPなどの実験で質量 114 GeV~200 GeV に絞り込んだ 空間(真空)に充満しているヒッグス粒子と衝突する ことによって素粒子はブレーキをかけられる 動き難さ = 質量 γ x e W t LEPなどの実験で質量 114 GeV~200 GeV に絞り込んだ
超対称性(Supersymmetry) 4次元時空の拡張 フェルミ粒子とボーズ粒子は対称であるべき 360°回転すれば元に戻る。 フェルミ粒子 電子など スピン 1/2、3/2、… 同じ状態に2粒子以上入れない。 ⇒ 原子の電子軌道の殻構造 電子は720°回転しないと元に戻らない。 ボーズ粒子 光子など スピン 0,1,2、… 同じ状態に2粒子以上入れる。 360°回転すれば元に戻る。 4次元時空の拡張 フェルミ粒子とボーズ粒子は対称であるべき スピン =粒子の自転の量子数 =時空の構造
超対称性(SUSY)は、力の大統一を予言 超対称性の間接的な証拠 (1)力の大統一 (2)暗黒物質 (3)Higgsは軽い (4)Higgs質量発散の除去 (5)超弦理論で必須
超対称性 (SUSY) ~ ・超対称性=フェルミ粒子とボーズ粒子を入れ換える対称性 重力を含む力の統一で決定的な役割 (新たな時空の対称性) 重力を含む力の統一で決定的な役割 (新たな時空の対称性) ・全ての素粒子に超対称性パートナーが存在し、その質量はTeV程度以下 ⇒超対称性パートナーの発見は反粒子の発見に匹敵する成果 ・最も軽い超対称性粒子は、宇宙の「暗黒物質」の最有力候補 ⇒宇宙構造の理解 超対称性は破れている m(e) ≠m(e) 破れのメカニズム??? ~
超対称性粒子(SUSY) ⇒ SUSY事象の特徴 e+ e- → χ01 χ02 → χ01 χ01qq R-parity 保存 R=1 (SM粒子) R=-1 (SUSY粒子) (L-R symmetry) (1) SUSY粒子はペアで生成される (2)最も軽いSUSY粒子LSP( )は 安定で電荷=0 宇宙の暗黒物質の最有力候補 最終的に2個生成されるLSPはニュートリノ のように測定器をすり抜ける ⇒ SUSY事象の特徴 Missing Momentum Missing Energy χ01 ~ χ01 ~ ~ ~ ~ ~ ー e+ e- → χ01 χ02 → χ01 χ01qq
加速器の発展
初めての本格的 加速器 ローレンス(アメリカ) サイクロトロンの発明 交流電場で荷電粒子を加速 F = q E 一定磁場で軌道を曲げる ローレンス(アメリカ) サイクロトロンの発明 交流電場で荷電粒子を加速 F = q E 一定磁場で軌道を曲げる F = q v×B B Ernest Lawrence (1901 - 1958) E
加速器の技術革新 (75年の歴史) LHC 2008年完成 2009年稼動 直径9km, エネルギー 14TeV レマン湖 ジュラ山脈 加速器の技術革新 (75年の歴史) レマン湖 ジュラ山脈 ジュネーブ空港 CERN LHC 2008年完成 2009年稼動 直径9km, エネルギー 14TeV 9km/13cm = 69,231 14TeV/80keV = 175,000,000 175,000,000/69,231 = (1.11)75 1932年 ローレンス世界初のサイクロトロン 直径13 cm, エネルギー80keV
粒子衝突型加速器(コライダー)の威力 (1) 従来の加速器を用いた素粒子実験 (標的実験) (2) コライダーでの素粒子実験 E E E (1) 従来の加速器を用いた素粒子実験 (標的実験) E 衝突エネルギー=√2mE m: 標的粒子の質量 (2) コライダーでの素粒子実験 E E 衝突エネルギー=2E
電子・陽電子衝突 vs 陽子・陽子衝突 例 ヒッグス粒子生成 電子・陽電子は素粒子 素過程の直接観測 e ⇒ 実験は容易 - e bb 電子・陽電子衝突 vs 陽子・陽子衝突 電子・陽電子衝突 例 ヒッグス粒子生成 μ+μ- Z - 電子・陽電子は素粒子 素過程の直接観測 ⇒ 実験は容易 e Z - e + H bb 陽子・陽子衝突 陽子は複合粒子 ⇒ 反応は複雑 高放射線 高事象頻度 ⇒ハイテクが必要 hadrons p g t - bb H g p hadrons
(Large Hadron Collider) LHC (Large Hadron Collider)
LHC 陽子・陽子衝突 2009- Ecm=10-14 TeV (LEP e+e- 1989-2000 Ecm(max)=209 GeV) ジュラ山脈 池袋 渋谷 CERN 上野 フランス 東京 スイス ジュネーブ空港
ATLAS実験 我が国も大きな貢献: 15研究機関から約100人の研究者 国際共同実験 37±2か国 研究者2700± 人 100 1000
ATLAS ミュートリガーチェンバー LHC加速器
LHCでヒッグス粒子はどう見えるか pp→H+….. Z Z μ+μー μ+μー μ+ μー μ+ μー
最もクリーンなシグナル H→Z Z* → l+l- l+l-
LHCでのSUSY事象 はどう見えるか 高いエネルギーの ジェット 複数 カスケード多段崩壊 最も軽いSUSY粒子が最後に2個 カスケード多段崩壊 高いエネルギーの ジェット 複数 最も軽いSUSY粒子が最後に2個 ⇒運動量とエネルギー欠損 時々レプトン(電子やミュー粒子) 検出さ れない SUSY
Meff (GeV) = missing Et + ΣPt of jet レプトンが1個以上見えるモード レプトンを要求するとBGが落とせる Topが主なBGで予言精度も高い ⇒ excessが綺麗に見える SUSY signal Mass=1TeV Counts/1fb-1 400GeV Meff (GeV) = missing Et + ΣPt of jet
LHC:文部科学省用プロパガンダ
恐らく実際は ヒッグスボゾン
(International Linear Collider) ILC (International Linear Collider)
円形電子・陽電子コライダーの限界 反応は単純、実験は容易 しかし… 2R 電子は磁場で曲げられると放射光を出してエネルギーを失う。 反応は単純、実験は容易 しかし… 電子は磁場で曲げられると放射光を出してエネルギーを失う。 一周に失うエネルギーΔE は ΔE ∝ (E/m)4/R E:粒子のエネルギー m:粒子の質量 R:半径 ローン破産のような状態 E, m 2R エネルギー欠損を補ってより高いエネルギーを得たい (1) 重い粒子を回す (陽子質量/電子質量=1800) ⇒ LHC (2) Rを大きくする ⇒ LEP(周囲27km)が限界 ⇒ ILC
電子・陽電子リニアコライダー 放射光のエネルギー欠損を補ってより高いエネルギーを得たい Rを大きくする ⇒ R=∞ にしてしまえ ! Rを大きくする ⇒ R=∞ にしてしまえ ! 放射光の出ない線形加速器 (リニアコライダー) e- e+ 一方から電子、他方から陽電子を加速して正面衝突高加速勾配、ビームを小さく絞り込む技術が必要 LEP/LHC加速器を伸ばしたくらいの長さ
次世代の加速器 国際リニアコライダー ILC 電子・陽電子の衝突は、 陽子・陽子の衝突と比べて反応が簡単。 ⇒実験が簡単 加速器はチャレンジング⇒技術開発、工学設計 我が国に誘致したい
ILCでのヒッグス粒子の研究 ILC は ヒッグス・ファクトリー O(10 ) 個の事象を生成して徹底的に研究 質量の起源 「真空」の構造 質量の起源 「真空」の構造 5 - M(素粒子) = g(結合定数) v(真空期待値) e+e- → Z0H0 → e+ e- + bb - 結合定数 質量[GeV]
ILCでの超対称性粒子の探索(電子偏極) μ 電子スピン縦方向偏極 (90%) beam μ スカラーμの生成 バックグラウンド 電子スピン無偏極 中西研究室(名古屋大学)
? 力(相互作用)の統一 アインシュタインの夢 LHC/ILC ゲージ原理 超対称性に よる 大統一? 超弦理論? マックスウエル フェルミ 電気 電磁気力 マックスウエル 磁気 電弱理論 ワインバーグなど 超対称性に よる 大統一? β崩壊 弱い力 フェルミ ゲージ原理 標準理論 (LEPで精密検証) 原子核 強い力 量子色力学 超弦理論? 湯川 LHC/ILC 地球上での物体の運動 ガリレオ 重力 一般相対性理論 量子重力? ニュートン 天体の運行 アインシュタイン ケプラー
国際的な時代認識 長年の懸案であった「ヒッグス粒子」と「超対称性」 (またはそれに代わる新粒子が新現象)を直接生成して発見できる時代が迫っている。 2009年にはLHCが走り始め、近いうちにヒッグス粒子や超対称性またはそれらにとって代わる新粒子・新現象の発見が期待される。 次いで、国際リニアコライダーILCにおけるクリーンな実験環境での精密測定で背後の物理を解きほぐし、過去における反粒子の発見やゲージ原理の確立に匹敵するような素粒子物理の新たなパラダイムを開く。
大型基礎科学計画
最高エネルギーのコライダー ヨーロッパ 日本 SSC 米国 SppS LEP/LHC PEP TRISTAN SLC HERA ISABELLE ⇒ RHIC PETRA PEP TRISTAN SLC HERA DORIS SPEAR ISR SppS TEVATRON SSC LEP/LHC
最高エネルギーのコライダー ILC もはや、世界で協力して一基を建設する段階 ヨーロッパ 日本 SSC 米国 SppS LEP/LHC ISABELLE PETRA PEP TRISTAN SLC HERA DORIS SPEAR ISR ILC SppS TEVATRON SSC LEP/LHC
ILCの予算 (我が国にサイトがきた場合) 国民一人一年に ラーメン一杯 餃子ライス 約7年間
ILC budget (for a host country/region) ドイツ版(日本ドイツ年) Euro/Yen/Dollar per person per year Bier vom Fass eine Wurst mit Sauerkraut 7 years
国民の理解がなければ純粋な基礎科学への投資は出来ない。基礎科学よりも、むしろ福祉、教育、赤字財政の再建…に予算を使うべきという意見が当然あるが、バランスが肝心。 1969年、米国の巨大加速器建設を計画中のフェルミ研究所に米国の議員団が来て質問した: 「このような装置は国家の防衛にどのように役立つのか?」 当時の所長ウイルソン氏、答えて曰く: 「直接防衛には役立ちませんが、わが国を尊敬され、品格のある、 守るに足る国家にできます」 極限すれば、「国家の品格は素粒子物理学の研究から」 純粋な基礎科学のプロジェクトは自然や宇宙に対する全く新しい科学観・宇宙観をもたらすばかりでなく、若者に夢と希望を与え、先鋭的なプロジェクトはハイテクや新たな技術の宝庫でもある。
宇宙や素粒子研究のもたらした技術 アインシュタインの「一般相対性原理」を証明する実験のために正確な原子時計を作った ⇒ GPSに応用 (カーナビ、携帯電話の地図) 研究者がコンピュータの介して情報やデータをやりとり ⇒ CERNでのWorld-Wide-Web(WWW)の発明 ⇒ インターネット 情報化社会 素粒子の実験に使う加速器技術 ⇒ 医療用の加速器(癌の治療)、滅菌用の加速器、 超伝導技術(リニアモーターカー、超伝導磁石)、… … このほかに、以前に素粒子研究者だったひとたちは様々な職種で活躍しています。(メーカー、IT、外交官、…)
まとめ LHC加速器が稼動を始め、新たな物理が潜んでいるTeV エネルギー領域を直接研究できる時代が来た。 これに続きリニアコライダーではクリーンな環境での実験でその詳細が明らかになる。 素粒子物理の新たなパラダイムを構築する時代が来る。