東京大学 物性研究所、CREST(JST) 日本物理学会2005秋季大会シンポジウム「半導体物性研究におけるイメージング計測の現状 」 @同志社大学( 05.9.20 ) 20p-WF-5 へき開再成長GaAs量子井戸および細線 デバイスの顕微発光イメージング 東京大学 物性研究所、CREST(JST) 吉田正裕、秋山英文 Outline: 1. はじめに -- 半導体ナノ構造の顕微発光イメージング・分光測定 2. 高品質T型量子細線・量子井戸構造の作製と評価 -- へき開再成長表面・界面制御と顕微発光イメージング 3. GaAs T型量子細線の光物性とレーザー発振 -- 量子細線中の一次元電子正孔系(励起子)の光物性 -- レーザー発振と利得起源 4. まとめ タイトルで「デバイス」と入れている理由
半導体ナノ構造の顕微発光イメージング・分光測定 <半導体ナノ構造の物性研究> 物性計測 -- 新奇物理現象の観測と解明 構造の制御と評価 --高品質化、構造不均一低減 空間スケールの決定要因 ・キャリア拡散 ・結晶成長時の表面 原子の拡散 <ローカルプローブ計測法> カソードルミネッセンス(CL) 近接場顕微鏡(NSOM) 顕微分光(micro-PL) <特徴> 高空間分解能 ~mm(~光波長) 高集光効率 2次元画像計測、スペクトログラフ 顕微鏡光学系 顕微鏡対物レンズ 高感度撮像素子(可視、近赤) CCD,CMOSセンサー InGaAsセンサー
顕微発光イメージング・分光計測系 励起モード: 顕微系 一様励起、点励起 検出モード: 発光像 発光スペクトル スペクトログラフ 一様励起、点励起 検出モード: 発光像 発光スペクトル スペクトログラフ 顕微系 He-Ne Ti:Sa etc. ソリッドイマージョンレンズ(SIL) 0.4 mm (NAeff>1.0) @Ti:Sa Sasaki et al. JJAP 36, L962 (1997). Yoshita et al. APL 73, 635 (1998). mag.= x 40 NA= 0.5 使用した顕微計測系はこのようになっています。 試料は液体ヘリウムフロータイプのクライオスタット内に置き、クライオの外においた光学顕微鏡用の対物レンズを用いて観察しました。 発光測定用に励起には、対物レンズを通して励起する点励起と呼ばれる方法と、試料表面全体を一様に励起する一様励起の2種類の方法を用いました。 また、検出側には、CCDカメラまたは分光器を置き、発光画像、発光スペクトルを切り替えて測定できるようになっています。 励起、検出もモードをいろいろ組み合わせることで、様様な物理量を測定することができます。 この系の分解能は、ほぼ回折限界となっています。 T= 4 ~ 300 K 空間分解能 0.65 mm @633nm 0.8 mm @Ti:Sa Yoshita et al. JAP 83, 3777 (1998).
2. 高品質T型量子細線・量子井戸構造の作製と評価 -- へき開再成長表面・界面制御と顕微発光イメー ジング Outline: 1. はじめに -- 半導体ナノ構造の顕微発光イメージング・分光測定 2. 高品質T型量子細線・量子井戸構造の作製と評価 -- へき開再成長表面・界面制御と顕微発光イメー ジング 3. GaAs T型量子細線の光物性とレーザー発振 -- 量子細線中の一次元電子正孔系(励起子)の光物性 -- レーザー発振と利得起源 4. まとめ
へき開再成長法 In situ Cleave 600oC 490oC Cleaved-edge overgrowth (CEO) with MBE In situ Cleave (001) MBE Growth (110) MBE Growth [110] [001] GaAs substrate 600oC 490oC L. N. Pfeiffer et al., APL 56, 1679 (1990).
High Quality T-wire 成長中断アニール法による表面平坦化 表面AFM像 490oC Growth 600oC Anneal M. Yoshita et al., JJAP 40, L252 (2001). Atomically flat interfaces 600oC Anneal High Quality T-wire (110) arm well このようにして作成されるT細線の特長は、どちらも2次元成長のため構造制御性が良い。物性計測に向いている。 ところが、ここにしめすように、その品質は必ずしも良いとはいえない状態でした。 (001) stem well
成長中断アニール法による界面制御 M. Yoshita et al., APL 81, 49 2002. GaAs厚(nominal) 600C, 10 min. GaAs厚(nominal) 6nm (=30 ML) 原子平坦 Ga 分子線空間分布方向 2~3ML高 島構造 アニール表面を制御するという観点から 供給量のずれの効果 界面の制御 Ga flux分布 1 %/mm 1ML深 ピット構造 M. Yoshita et al., APL 81, 49 2002.
(110)量子井戸の表面AFM像と発光像 原子平坦界面量子井戸構造が実現 非常に良い一致 アニール表面が井戸界面に保存されている。 量子井戸の発光像(一様励起) 非常に良い一致 アニール表面が井戸界面に保存されている。 へき開面は原子平坦である。 Yoshita et al. APL 81, 49 (2002). @ 堆積量が整数倍となる位置 原子平坦界面量子井戸構造が実現
エネルギー分解発光像 n+2 n+2 n+1 n+1 n n n n n 2~3ML-high islands 1ML-deep pits 堆積量が整数倍となる領域では両界面が原子平坦!! n+2 n+2 n+1 n+1 n n n n n 励起子拡散長 > 1 mm !!
(110)GaAs量子井戸の発光線幅 狭い発光線幅 発光強度の劣化なし アニール(600C,10分)による 界面ラフネスの減少 これまでのarm QW
3. GaAs T型量子細線の光物性とレーザー発振 -- 量子細線中の一次元電子正孔系(励起子)の 光物性 -- レーザー発振と利得起源 Outline: 1. はじめに -- 半導体ナノ構造の顕微発光イメージング・分光測定 2. 高品質T型量子細線・量子井戸構造の作製と評価 -- へき開再成長表面・界面制御と顕微発光イメー ジング 3. GaAs T型量子細線の光物性とレーザー発振 -- 量子細線中の一次元電子正孔系(励起子)の 光物性 -- レーザー発振と利得起源 4. まとめ
単一T型量子細線レーザー G=4.6x10-4 Probability of Photon Probability of Electron Cavity length 500 mm G=4.6x10-4 20周期の事も触れておく。 主には、シングルレーザーの話だが、20周期の結果も示す。 Probability of Electron Hayamizu et al., APL 81, 4937 (2002).
ContinuousPL peak over 20 mm T-wire stem well T-wire stem well scan T=5K ContinuousPL peak over 20 mm PL width < 1.3 meV We characterized our sample by scanning micro-PL spectra for 1 micro m spot along the quantum wire. These were measured by 10 micro m steps for 500 micro m region. And for this 25 micro m region we made scan by finer 0.5 micro m steps. The high energy peaks are from stem well and the low energy peaks are from a quantum wire. (Arm well peak was not observed at this low pumping level.) These tiny low energy peaks of wire are attributed to localized excitons caused by monolayer fluctuation of the arm well thickness. In this region, there is no tiny peak of localized excitons, and this shows that the region without monolayer fluctuation extends over 20 micro m. This results prove the high quality of this quantum wire.
発光励起スペクトル(PLE) E-field E-field // to wire _ to wire // to arm well I 点励起。 Stokesシフト < 0.3 meV バンド端吸収に1D状態密度の1/√E発散は見られない。 H. Akiyama et al., APL 82, 379 (2003). H. Itoh et al., APL 83, 2043 (2003).
顕微透過吸収測定セットアップ 吸収の絶対量
単一量子細線の透過スペクトル(5K) 顕微透過測定 Fabry-Perot fringes Coupling efficiency = 20% Y. Takahashi et al. APL 86, 243101 (2005).
単一量子細線の吸収スペクトル(5K) 一次元励起子吸収 吸収線幅 1.6 meV 吸収係数 80 cm-1 G=4.6x10-4 透過率1.5%相当 @ 500mm導波路 G=4.6x10-4 500umを通ってきた光でも幅が1.6 mev 吸収係数の絶対値がでた。これは、ガンマ(光閉じ込め係数)で補正する前、つまりモーダル吸収 光導波路としても有効。 Y. Takahashi et al. APL 86, 243101 (2005).
Y. Takahashi et al. submitted. 室温吸収スペクトル(20周期量子細線) 一次元励起子吸収 大きな吸収, 線幅7~8 meV(全幅) 大きな偏光依存性 T=297K 室温デバイスの可能性 Y. Takahashi et al. submitted.
単一量子細線のレーザー発振 500mm gold-coated cavity Threshold 5mW Y. Hayamizu et al., APL 81, 4937 (2002).
レーザー端面からの発光・発振パターン (20周期細線レーザー) 導波路モード(計算) Wire Arm Stem 発光像 (弱励起) ようやく、物性を議論できる品質の細線ができ、デバイスとしての可能性を議論できるようになってきたところです。 今後、得られた特性をもとに、デバイス応用を考慮して皿に勧めていくことが重要であると思う。 また、T型細線は物性向きなので、より閉じ込めの大きな構造の検討などもあわせていくべきだ。 今後のことにもコメント 電流注入、 高温動作 Stem 発光像 (弱励起) レーザー発振像 (強励起)
レーザー発振スペクトルと発光スペクトル 起源は? Single wire laser レーザー発振起源は 自由励起子ではない。 レーザー発振ピーク 自由励起子発光ピークと重ならない。 レーザー発振起源は 自由励起子ではない。 発振ピーク ブロード発光の裾と重なる。 Free exciton In our previous work, we demonstrated the lasing from a single quantum wire. This figure shows a spontaneous and stimulated emission spectra from the single quantum wire laser at 5K as a function of energy. Cavity mirrors of this laser are coated by gold thin layers. The threshold of the excitation power is about 5 mW. The blue curve shows the spontaneous emission at the low excitation power. This peak is attributed to a free exciton. The red curve show the spontaneous emission,and the black curve shows stimulated emission at the excitation power above the lasing threshold. The lasing peak does not overlap with a free exciton peak. This indicate that free excitons does not contribute to lasing. While, the lasing peak overlaps with the shoulder of a broad peak. To investigate the lasing mechanism of a quantum wire laser, we measured the gain spectra. 起源は? Y. Hayamizu et al. APL 81, 4937 (2002).
量子細線発光の励起強度依存性 スペクトログラフ法 励起光 スポット ・分光器入射スリット上に試料像を結像 ・試料配置 細線 // 分光器スリット ・分光器入射スリット上に試料像を結像
M. Yoshita, et al. cond-mat/0402526 量子細線発光の励起強度依存性 n1D = 1.2 x 106 cm-1 (rs = 0.65 aB) aB ~13nm Electron-hole plasma Density n1D = 1.2 x 105 cm-1 (rs = 6.6 aB) Biexciton+Exciton EB =2.8meV n1D = 3.6 x 103 cm-1 (rs = 220 aB) Exciton n1D ~ 102 cm-1 M. Yoshita, et al. cond-mat/0402526
Spectrometer with spectral resolution of 0.15 meV 吸収・利得スペクトル(強励起) Excitation Light :cw TiS laser at 1.631eV Gain Absorption Spontaneous emission Spectrometer with spectral resolution of 0.15 meV EFE EBE Stripe shape Cassidy’s Method Waveguide Emission 8.3mW Polarization parallel to Arm well D. T. Cassidy JAP 56, 3096 (1984).
吸収・利得スペクトルのキャリア密度依存性 T = 5K 縮退電子正孔プラズマ 1、連続的な吸収スペクトル Fermi Filling 重要 2、励起子ピークの減少 Phase-Space Filling 重要 3、束縛エネルギー 一定 遮蔽効果 重要でない 0 mW 励起子
Hayamizu et al. unpublished 発光 吸収 T = 5K 電子正孔 プラズマ 縮退電子正孔 プラズマ Fermi Filling ? 縮退 励起子 励起子分子 非縮退 Phase-Space Filling レーザー発振の強度と対応するところのスペクトルから レーザー発振の起源は、縮退電子正孔プラズマ 0 mW 励起子 励起子 Hayamizu et al. unpublished
まとめ 高品質T型量子細線・量子井戸構造の作製と顕微発光イメージング評価 GaAs T型量子細線の光物性とレーザー発振 1.成長中断アニール法によるへき開再成長表面・界面の制御 原子平坦界面量子井戸の実現 2. 高品質なT型量子細線の実現 空間均一性 > 20 mm, 発光線幅 < 1.3 meV,Stokesシフト < 0.3 meV. GaAs T型量子細線の光物性とレーザー発振 3. T型量子細線の吸収スペクトル ようやく、物性を議論できる品質の細線ができ、デバイスとしての可能性を議論できるようになってきたところです。 今後、得られた特性をもとに、デバイス応用を考慮して皿に勧めていくことが重要であると思う。 また、T型細線は物性向きなので、より閉じ込めの大きな構造の検討などもあわせていくべきだ。 今後のことにもコメント 電流注入、 高温動作 大きな励起子吸収 吸収係数 80 cm-1、線幅1.6 meV(T=5K) 4. T型量子細線レーザーからのレーザー発振と発振起源 細線基底状態からのレーザー発振 電子正孔密度増加に伴い、励起子吸収からプラズマ利得への変化 利得の起源は、強いクーロン相互作用を伴った電子正孔プラズマ
共同研究者: Lucent, Bell Labs. Loren Pfeiffer Ken West MBE結晶成長 東京大学 物性研究所 CREST(JST) 呉 智元(PD→帰国) 早水 裕平(DC→AIST) 高橋 和(D3) 伊藤 弘毅(D2) 顕微光学測定 -- 発光イメージング -- 吸収・利得測定 -- レーザー発振