絶滅危惧種サギソウの遺伝的分化 保全生態学研究室 20117056  鈴木雅之.

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絶滅危惧種サギソウの遺伝的分化 保全生態学研究室 20117056  鈴木雅之

目次 ・背景 ・目的 ・調査方法 ・結果 ・考察

背景 現在、人類のもたらした地球環境破壊が深刻な 問題となり、生物多様性がかつてないほどの速 度・規模で減少している。 1992年の地球サミットで生物多様性のもつ意義 と重要性が認識され始めた。

生物多様性 複合性 生態系レベルの多様性 種レベルの多様性 遺伝子レベルの多様性 個体性

研究試料 ラン科サギソウ属 低地の湿地に生息する多年草 絶滅危惧Ⅱ類(VU)に分類 和名 サギソウ 学名 Pecteilis radiata   研究試料 ラン科サギソウ属 低地の湿地に生息する多年草 絶滅危惧Ⅱ類(VU)に分類 和名 サギソウ 学名 Pecteilis radiata 平均減少率 約60% 100年後の絶滅確率 約99%

 サギソウの現状 現存する株数 168メッシュ 以前からの増減 レッドデータブック 2000~2006 より

目的 遺伝的距離 サギソウの保全へ 遺伝的多様性 遺伝的分化

調査場所

調査方法 酵素の抽出 各調査地(県芸大,M1,M3)でランダムに30個体を 選定(M2では10個体),1個体ごとに葉を1枚採集。  採集した葉に電気泳動解析を行い、酵素を抽出。 集団遺伝学的解析  各集団(県芸大,三ツ池(M1,M2,M3))ごとに酵素の多 型・頻度を確認し集団間に違いがあるかを確認した

7酵素12遺伝子座で解析 ○ : 変異が確認された遺伝子座 酵素 遺伝子座 県芸大 M1 M2 M3 リンゴ酸脱水素酵素 mdh-1 6-ホスホグルコン酸脱水素酵素 6pg トリオースリン酸イソメラーゼ tpi シキミ酸脱水素酵素 skdh 酸性ホスファターゼ acp-1 acp-2 acp-3 ホスホグルコムターゼ pgm-1 pgm-2 ホスホグルコイソメラーゼ pgi ○ : 変異が確認された遺伝子座

遺伝子頻度 結果 HI HS HT FIS FIT FST GST 県芸大 M1 M2 M3 0.133 0.160 0.195 0.167 遺伝子頻度  結果 HI HS HT FIS FIT FST GST 県芸大 0.133 0.160 0.195 0.167 0.316 0.320 0.260 M1 0.208 0.219 0.048 -0.068 -0.046 M2 0.000 E M3 0.175 0.198 0.118 0.103 0.052 Gst 0.25以上で 集団間分化が起きている HI ;各集団の平均ヘテロ接合頻度   HS;各集団の遺伝子多様度   HT;全体の遺伝子多様度        FIS;分集団内近交係数   FIT;全近交係数 FST;固定指数           GST;遺伝子分化係数

遺伝距離・系統樹 結果 各調査地におけるサギソウの遺伝距離(左下)、遺伝的同一度(右上) D/I 県芸大 M1 M2 M3 - 0.930  遺伝距離・系統樹  結果 各調査地におけるサギソウの遺伝距離(左下)、遺伝的同一度(右上) D/I 県芸大 M1 M2 M3 - 0.930 0.938 0.976 0.070 0.866 0.962 0.062 0.134 0.923 0.024 0.038 0.077

考察 ・M2のみ遺伝的に離れている 誰かが種子を持ち込んだ可能性がある ・M2の遺伝的多様性が0 環境変動に対応できなくなる可能性がある ・集団間分化がおきている 自然環境の破壊・分断化 (ポリネータの不在)

絶滅危惧植物の保全のために 播種を行う際、その記録を正確に 人の立ち入りの制限 調査・研究は継続的に行う 開発のため、個体を一時的に採取・保存すると きは複数年分の個体を行う

ご清聴ありがとうございました

今後の課題  サギソウの球根は土中で何年も休むことができ、 年によって遺伝的性質が異なる可能性がある 継年的な調査が必要

個体群 A P Hi Hs 県芸大 1.500 0.417 0.133 0.160 M1 1.667 0.208 0.219 M2 1.000 0.000 M3 1.417 0.175 0.198 平均 1.396 0.313 0.129 0.144 標準偏差 0.283733 0.2085 0.091399 0.099258 D/I 県芸大 M1 M2 M3 - 0.93 0.938 0.976 0.07 0.866 0.962 0.062 0.134 0.923 0.024 0.038 0.077

遺伝子座 対立遺伝子 県芸大 M1 M2 M3 mdh1 N 30.000 10.000 a 1.000 b 0.000 mdh2 mdh3 0.567 0.267 0.500 0.433 0.333 c 0.400 6pg tpi 0.867 0.350 0.517 0.133 0.633 0.483 0.017 skdh acp1 acp2 acp3 0.117 0.250 pgm1 pgm2 0.883 0.533 0.550 0.067 0.050 0.467 0.450 pgi 0.617 0.717 0.383 0.283

調査方法 各調査地(県芸大,M1,M3)でランダムに30個体を 選定(M2では10個体)し,1個体ごとに葉を1枚採集  多型・頻度を確認した。

目的 集団ごとの遺伝的多様性 遺伝的分化の度合い 集団間での遺伝的距離 サギソウの保全へ

電気泳動法

調査方法 各調査地(県芸大,M1,M3)でランダムに30個体を 選定(M2では10個体)し,1個体ごとに葉を1枚採集 電気泳動解析を行い、バンドを検出