前期量子論 1.電子の理解 電子の電荷、比電荷の測定 2.原子模型 長岡モデルとラザフォードの実験 3.ボーアの理論 量子化条件と対応原理 4.ゾンマーフェルトの理論 量子化条件と原子の構造 5.物質の波動性 ド・ブロイ波
電子の理解 Millikan(ミリカン)の実験:1909年 電子の電荷(電気素量): e=1.602x10-19C Thomson(トムソン)の陰極線の実験 比電荷(e/m)の測定 電子の質量: m=9.109x10-31Kg
原子模型 トムソン模型 長岡模型 (Thomson) (長岡半太郎) - + -
放射線 Becquerel(ベクレル)、 Curie(キュリー): ~1896年 放射性元素 垂直磁場 真空排気 β γ α 写真乾板
ラザフォード(Rutherford)の実験: 1911 金箔 蛍光板 ラジウム α線 α線:ヘリウムの原子核
トムソン模型 (Thomson) - α線
ラザフォードの実験 α線 + 金の原子核
ラザフォードの結論 + 原子の構造:中心に正の電荷Zeをもつ重い核があり、そのまわりにZ個の電子がむらがっている。 長岡・ラザフォードの原子模型の弱点 輻射 + ー
原子スペクトル ランプ プリズム スリット 写真乾板
原子スペクトル バルマー(Balmer、1885)による 水素の発するスペクトルの測定
原子スペクトル リュードベリ(Rydberg)による 水素のスペクトルの整理: 1890 Rydbergの公式 RH=1.097x107/m Rydberg定数
水素のスペクトルの式 系列名 波長域 n 式 ライマン (Lyman) 紫外 1 バルマー (Balmer) 紫外 可視 2 パッシェン (Paschen) 赤外 3 ブラケット (Brackett) 4 赤外 フンド (Pfund) 赤外 5
ボーア(Bohr)の仮説:1913年 仮定1 原子内の電子は、原子に特有のとびとびのエネルギーE1, E2, ・・・だけを取ることが許される。各々のエネルギー状態を定常状態とよび、定常状態では電子は光の放出や吸収を行わない。 量子化 古典論では連続である物理量がとびとびの値しか とれなくなる エネルギー準位 電子が取り得るとびとびのエネルギーE1, E2, ・・・
ボーアの仮説:1913年 ボーアの量子化条件 L=merv : 角運動量 rn +e -e vn M me 量子数 量子化条件:量子的に許される状態をきめる条件 L=merv : 角運動量 rn +e -e vn M me
ボーアの仮説:1913年 ボーアの振動数条件 仮定2 電子が1つの定常状態から他の状態に移るとき、電子は光の放出や吸収を行う。 遷移 電子が1つの定常状態から他の状態に移ること ボーアの振動数条件 遷移En→Emに際して、放出または吸収される光の振動数ν
電子の遷移 光 遷移
ボーアの仮説:1913年 仮定3 定常状態において電子は通常の力学の法則にしたがって運動する。 rn +e -e M me
水素原子についてのボーアの理論 ボーアの量子化条件により 仮定3により クーロン力=遠心力 電子の全エネルギー
水素原子についてのボーアの理論 n番目のエネルギー準位En En n n=4 3 2 1 0 eV ∞ -0.85eV 4 -1.51eV 3 n=4 3 2 1 -3.39eV 2 基底状態 1[eV ] = 1.6x10-19[C] ・1[V] = 1.6x10-19[J] -13.6eV 1
水素原子についてのボーアの理論 水素のn番目の電子の軌道半径rn n=1のときの半径:ボーア半径
水素原子についてのボーアの理論 En n パッシェン バルマー ライマン 0 eV ∞ -0.85eV 4 -1.51eV 3 2 バルマー ボーアの振動数条件 -13.6eV 1 ライマン
ボーアの理論 対応原理 1.量子数が大きい極限においては、量子論で計算 された結果は、古い考えによって計算された結果と 一致しなければならない。 2.遷移に関する規則は、量子数が大きくても小さく ても変わらない。 意義: 破綻した古典論の「つぎはぎ」(過渡的な便法) 新しい「完全な理論」への指針
問1 ボーアの理論では、水素のn番目の電子の軌道半径rnは で与えられること、またn番目のエネルギー準位Enは で与えられることを証明せよ。 この結果から、リュードべり定数を求めよ。
問2 トムソンの原子模型と長岡の模型を説明せよ。 長岡の模型の「弱点」を説明せよ。