エレクトロニクスII第2回: ACアダプターを分解しよう ーダイオードと整流回路ー 佐藤勝昭
ACアダプター 電話機、ノートパソコン、液晶テレビ・・ 多くのエレクトロニクス機器にはACアダプターが必要です。電灯線はAC 100Vです。これをエレクトロニクス機器に必要なDC 6V, 12V, 15Vに変換するのがACアダプターです。 AC=alternating current (交流)、DC=direct current (直流) 構成は、トランス、全波整流ダイオードブリッジ、コンデンサーというシンプルなものです。
実体験コーナー ACアダプターを分解すると トランス、4本のダイオード、 電解コンデンサからできている ここにドライバを入れて ハンマーで叩くと分解 ダイオード 電解コンデンサ 2200μF トランス
実体験コーナー ACアダプターの回路図 タップつきトランスを用いる方法 ダイオードブリッジを使う方法 いま分解した アダプターの回路
実体験コーナー トランスの役割 電灯線の100Vを必要な低圧に変換 磁性体巻き心に1次コイルと2次コイルを巻いたもの 電圧比は1次コイルと2次コイルの巻き数比で決まる。 軟磁性体の磁心 1次コイル 2次コイル
実体験コーナー 整流-半波整流と全波整流- 交流 電灯線:交流、正負の極性が時間とともに正弦波的に周期的に変化E=E0sint 半波整流:一方の極性のみをとる E’= E0sint (2n<t<(2n+1)) E’=0 ((2n+1)<t<2(n+1)) 全波整流:絶対値をとる E’= -E0sint ((2n+1)<t<2(n+1)) RMS E0 半波整流 脈流 全波整流
半導体ダイオードと整流作用 半導体のpn接合はp側が正のとき、ある閾値を超えると電流がよく流れる(順方向) 逆方向に電圧を加えると 電流が流れにくい ツェナー電圧を超えると 急に電流が流れる ツェナー電圧 スケール拡大
ダイオードを用いた半波整流 ダイオードは、スイッチとして働く 負荷と直列にダイオードを入れるだけで半波整流ができる。 ~ 負荷
ダイオードブリッジを用いた全波整流 Aの電位がCより高いとA→B, D→Cのスイッチが開くのでBが正, Dが負になる。 Cの電位がAより高いと、D→A, C→Bのスイッチが開きBが正, Dが負となる。 A C B D ~ + 交流 電源 ダイオード ブリッジ 負荷
コンデンサの役割は? 脈流をコンデンサで平滑化して滑らかな直流を得る RC回路は積分作用をもち、低域濾波器となる 入力:脈流 出力:リップルを含む直流
うんちくコーナー ダイオードの元の意味は二極管 ダイオードの元の意味は、2極管(カソードとアノードのみからなる真空管)です。整流作用をもち、交流を単極性の脈流に変える作用があります。 現在では、2極管と同じ整流作用をもつ半導体素子をダイオードといいます。 filament フィラメント cathode 陰極 anode 陽極
発展コーナー 半導体(semiconductor)とは 導体(金属)と不導体(絶縁物)の中間的な導電性をもつ物質 金属では、温度上昇とともに導電性が低下する(=電気抵抗が上がる)が、半導体では温度上昇とともに導電性が向上する(=電気抵抗が下がる) 半導体を特徴づけるのは、そのエネルギー状態に電子の詰まった「価電子帯」と、電子がほとんど占有しない「伝導帯」とがあり、両者を隔てる「バンドギャップ」が存在することである。
発展コーナー 半導体の抵抗率 (佐藤・越田:応用電子物性工学 図4.2)
発展コーナー 半導体の電気抵抗率の温度変化 佐藤・越田:応用電子物性工学
発展コーナー 半導体pn接合とは? p形半導体:ホールがキャリアである半導体(例:B(ホウ素)添加Si) n形半導体:電子がキャリアである半導体 (例:P(リン)添加Si) p形半導体とn形半導体を接合すると、電子・ホールの拡散により、接合部に空乏層ができ、拡散電位差が発生する。 整流用ダイオードも、発光ダイオード(LED=light emitting diode)、半導体レーザ(LD=laser diode)も、フォトダイオード(PD)、電荷結合撮像素子(CCD=charge coupled device)もpn接合が基本 (物理システム工学実験I,IIテキスト、Fディジタル回路のp.140「F2 トランジスタでディジタル回路を作る」参照)
発展コーナー pn接合の原理 p形半導体とn形半導体を接合すると、p形側からホールがn形側に、n形側から電子がp形側に拡散する。 すると境界には、p形側ではホールのいなくなった(負に帯電した)部分が、n形側では電子がいなくなった(正に帯電した)部分ができる。この領域を「空乏層」という。 この領域では、正負電荷の間に電位差が生じ、これ以上の電荷移動を防いでいる。この電位差を「拡散電位差」または「内蔵電位差」という。 p形 n形 - + p形 n形 接合形成 ホールが拡散して N領域の電子と再結合 空乏層 p形 n形 電子が拡散して P領域のホールと 再結合
演習コーナー ダイオードの動作点 整流性:ダイオードは、理想的にはスイッチと考えられる。 実際には、閾(しきい)特性をもつので、スイッチ動作させるには、ある電圧を必要とする。 動作点とは、ダイオードに実際にかかっている電圧と、流れている電流で表される点 ダイオードのIDとVDの関係はグラフで与えられる。キルヒホフの法則からID=(E-VD)/R 両方を満足させるのは、交点である。これを動作点という。 ID=(E-VD)/R 動作点 R ダイオード 特性 E VD ID
演習コーナー ダイオードの動作点 あるダイオードの順方向特性は右図で表されるとする。このとき次の問に答えよ。 (1) 順電圧VD(V) ダイオードに直列に100の抵抗を接続し、直列回路の両端に7Vの直流電圧を順方向になるように加えたとき、ダイオードに流れる電流ID、ダイオードの両端の電圧VD、抵抗の両端の電圧VRを図に負荷線を描いて求めよ。 ID VD
問題コーナー 配布した紙に学年、学籍番号、氏名、連絡用メールアドレスを書いて下さい。(なければ、学籍番号のアドレスy225***@ug.tuat.ac.jpにメールします。) pn接合ダイオードのI-V特性を測定するには、どのような装置を用意し、どのような配線をすればよいかを考えて、具体的なやり方を書いて下さい。