2段式ADR冷却サイクル に関する研究 宇宙物理実験研究室 浅野 健太朗 2009.3.2.

Slides:



Advertisements
Similar presentations
超伝導磁束量子ビットにおける エンタングルメント 栗原研究室 修士 2 年 齋藤 有平. 超伝導磁束量子ビット(3接合超伝導リング) 実験 結果 ラビ振動を確認 Casper H.van der Wal et al, Science 290,773 (2000) マクロ変数 → 電流の向き、 貫く磁束.
Advertisements

2007/01/27 - 卒業論文合同発表会 - ♪ 早稲田大学理工学部 電気・情報生命工学科4年 神保直史 熱音響管の解析とシミュレーション.
第3段階: 孤立した反陽子原子の生成 超低速反陽子ビームでなにができるか 超低速反陽子ビームを如何に作るか 経過と今後の計画.
ヒートポンプによる冷暖房の原理 物理化学III
内燃機関と外燃機関.
2009年6月25日 熱流体力学 第11回 担当教員: 北川輝彦.
冷媒回路のしくみ<ヒートポンプを分解すると>
今後の予定 7日目 11月 4日 口頭報告レポート押印 前回押印したレポートの回収 口頭報告の進め方についての説明 講義(4章),班で討論
冷媒回路のしくみ<ヒートポンプを分解すると>
現場における 熱貫流率簡易測定法の開発  五十嵐 幹郎   木村 芳也 
川口則幸教授 退任記念ワークショップ 日通機における 電波天文機器の開発 2014年6月3日 日本通信機株式会社 武井 健寿.
TES型X線マイクロカロリメータの 性能向上を目指した性能評価と ノイズ抑制の研究
熱力学Ⅰ 第1回「熱力学とは」 機械工学科 佐藤智明.
鉄ミョウバンを用いた 磁気冷凍に関する研究
断熱消磁冷凍機向け ヒートスイッチの開発 宇宙物理実験研究室 高岡 朗.
永久磁石を用いた 残留ガスモニターの製作 環境計測 西村荒雄.
第10回受信機ワークショップ 2010/3/6 (国立天文台) GM冷凍機の温度振動逓減 高知大理    西岡 孝 共同研究者
極低温X線検出器のための 断熱消磁冷凍機の開発 宇宙物理実験研究室 床井 和世
TES型X線マイクロカロリメータの製作プロセスの構築
課題演習 B6 量子エレクトロニクス 物理第一教室・量子光学研究室 教授 高橋義朗
Transition Edge Sensor (TES)
冷却性能向上を目指したsaltpillの製作
較正したホール素子を用いた 低温での超伝導マグネットの 磁場分布測定 宇宙物理実験研究室 安保匠
Ti/Au 二層薄膜を用いた TES-ETF X線マイクロカロリメータの研究開発
TES型X線マイクロカロリメーターの 基礎特性の解析と分光性能の評価
HLab meeting 6/03/08 K. Shirotori.
低周波重力波探査のための ねじれ振り子型重力波検出器
断熱消磁冷凍機を用いた 精密X線分光システムの開発
Magnetic Calorimeterの 原理と現状
ミリ波検出にむけた超伝導トンネル接合素子検出器(STJ)の開発研究
Multi-Pixel Photon Counter(MPPC)の開発
中性原子磁気トラップの製作 担当大学院生 矢萩 智彦 ( 物理工学科 M1) 指導教員 熊倉 光孝 ( 物理工学科 )
佐藤勝昭研究室 OB会2003年11月22日  磁性MOD班.
核断熱消磁冷凍機 世界有数の最低温度と保持時間をもち、サイズもコンパクト。主に2次元3Heの比熱およびNMR測定に使用中。 核断熱消磁冷凍機
TES型X線マイクロカロリメータの 応答特性の研究
東京都立大学 理学部 物理学科 宇宙物理実験研究室 横田 渉
目的 イオントラップの特徴 イオントラップの改善と改良 イオンビームの蓄積とトラップ性能の評価
27 共鳴管付ループ管型熱音響冷凍機の製作と ナイキストの安定判別に基づく発振条件の解析
回転下における超流動3He 1/14.テーマ 物質系輪講1A 物質系専攻 片岡 祐己 久保田研究室
断熱消磁冷凍機を用いた TES型カロリメータのX線検出実験
「すざく」衛星と日本のX線天文学 July 10, 2005
MICE実験用SciFi飛跡検出器の性能評価(2)
高エネルギー陽子ビームのための高時間分解能 チェレンコフビームカウンターの開発
[内容] 1. 実験の概要 2. ゲルマニウム検出器 3. 今後の計画 4. まとめ
開放端磁場における低温プラズマジェットに関する研究
CPA結晶を用いた冷凍機用 ソルトピルの製作
C4 能動騒音制御を用いたループ管熱音響冷却機の製作
超流動 3Heの量子渦の研究 summer school 2003 poster session 1 3He 5 A相の texture
N型Si基板を用いたMOSFETの自己冷却効果
Why Rotation ? Why 3He ? l ^ d Half-Quantum Vortex ( Alice vortex ) n
適応的近傍を持つ シミュレーテッドアニーリングの性能
X線CCD検出器 ーCCD‐CREST(deep2)ー の性能評価と性能向上 (京阪修論発表会)
TES型マイクロカロリメータの X線γ線に対する応答特性の研究
原子分子の運動制御と レーザー分光 榎本 勝成 (富山大学理学部物理学科)
Dark Matter Search with μTPC(powerd by μPIC)
サーマルプローブを用いたイオン温度計測の新しいアプローチ
TES型X線マイクロカロリメータ の多素子化の研究
2009年7月2日 熱流体力学 第12回 担当教員: 北川輝彦.
低温物体が得た熱 高温物体が失った熱 = 得熱量=失熱量 これもエネルギー保存の法則.
目次 電磁工学講座 超伝導工学分野 (牟田研究室) 超伝導発電機の設計と電力システム特性に関する研究 超伝導パワーデバイスに関する研究
永久磁石を用いた高出力マイクロ波 放電型イオン源の開発
Bi置換したCaMnO3の結晶構造と熱電特性
今後の予定 7日目 11月12日 レポート押印 1回目口頭報告についての説明 講義(4章~5章),班で討論
AVFサイクロトロン高度化 デフレクター:新規交換作業(2003年春期停止時に実施)、 Dee:放電防止作業(2003年夏期停止時に実施)
神岡での重力波観測 大橋正健 and the LCGT collaboration
CPU冷却用素子の開発 理工学研究科環境制御工学専攻 長谷川 靖洋
第29回応用物理学科セミナー 日時: 11月10日(木) 16:10 – 17:10 場所:葛飾キャンパス研究棟8F第2セミナー室
次世代X線天文衛 星に向けた 256素子TES型X線 マイクロカロリメータの開発
TES型カロリメータのX線照射実験 宇宙物理実験研究室 新井 秀実.
TES型X線マイクロカロリメータの開発(VII) ― エネルギー分解能の追求 ―
Presentation transcript:

2段式ADR冷却サイクル に関する研究 宇宙物理実験研究室 浅野 健太朗 2009.3.2

将来の宇宙用冷凍技術(TESカロリメータの 研究目的 TES型マイクロカロリメータ : 0.1—10keVのX線に対し高いエネルギー分解能 100mK以下の極低温にてその性能を最大限発揮 宇宙用としては、無重力でも動作する断熱消磁冷凍機ADRを使用 2段式ADR冷却サイクルの最適化 低温(50mK)保持時間の延長 冷却サイクルの最適化について。 将来の宇宙用冷凍技術(TESカロリメータの プラットホーム)の基礎データ 1

ADR (Adiabatic Demagnetization Refrigerator) ※主要部品は3つ Detector stage (TES) 超伝導マグネット                →磁場制御 ソルトピル   →常磁性体冷媒カプセル ヒートスイッチ(HS)                     →熱伝導度制御 ソルトピル ADRについて。 ヒートスイッチ 超伝導マグネット (高岡さんの発表) LHe-tank(熱浴) 2

断熱消磁冷却 ④ ③ ① ② → ①等温励磁 → ②断熱消磁 エントロピーと磁場の熱サイクル ③温度制御 → ④断熱励磁 CPAピル 熱交換 HS ③ ① L He tank 断熱消磁について。 HS-OFF ② → ①等温励磁  → ②断熱消磁 エントロピーと磁場の熱サイクル ③温度制御  → ④断熱励磁 磁場 磁場 3

低温段への熱流入(1・2段式比較) 断熱消磁4.2K開始・50mK5.7時間保持・最大磁場3.0Tでの見積もり 1段式ADR 2段式ADR LHeタンク 4.2K LHeタンク 4.2K 支持ワイヤー 4.6μW 1st-HS 15.8μW  高温段 1.3K 支持ワイヤーとHS からの熱流入を考慮   1段 50mK 0.94μW 2nd-HS  低温段 50mK 1段式 2段式高温段 2段式低温段 必要結晶量 [g] 5882(FAA) 600(GGG) 85(CPA) 流入熱 [μW] 15.9 4.6 0.94 排熱量 [J] 367.8 52.4 0.55 2段式ADRの方が流入熱・必要結晶量 共に少ない 4

2段式ADR冷却サイクル 通常の冷却サイクル(実測値) 本研究の冷却サイクル(モデル) Low-tmp stage (50mK) Temperature [K] Temperature [K] Low-tmp stage (50mK) 1stHS-OFF 1stHS-OFF 高温段制御温度 2ndHS-OFF 2ndHS-OFF 2nd HS 高温段到達温度 Time[hour] Time[hour] 両段励磁 Magnetic Field [Tesla] 高温段励磁 低温段励磁 High-tmp stage (1.3K) Magnetic Field [Tesla] 高温段消磁 高温段消磁 低温段消磁 低温段消磁 1st HS Time[hour] LHe-tank (4.2K) Time[hour] 別々に断熱励・消磁 同時に断熱励磁 5

保持時間比較 最適化冷却サイクル条件 同時励磁 高温段を物理的限界まで冷却 制御温度は30mK程高温維持 Temperature [K] 本研究で最適化された冷却サイクル 最適化冷却サイクル条件 同時励磁 高温段を物理的限界まで冷却 制御温度は30mK程高温維持 Time [hour] Magnetic Field [Tesla] 通常励磁 同時励磁 高温段 到達温度 [K] 0.97 0.91 高温段 制御温度 [K] 0.94 50mK保持時間 [hour] 8.36 9.26 保持時間増加率 [%] 10.6 同時励磁サイクル冷却によって10.6%低温保持時間向上 6

まとめ 同時励磁冷却の有効性を示した 冷却サイクルの最適化を行い50mK保持時間を最大で10.6%延長出来る事を示した 実験での検証が必要 7

Appendix

宇宙研2段式ADR 宇宙研2段式ADR外観 宇宙研2段式ADR内部

1段式と2段式ADR構造 液体ヘリウムタンク 超伝導マグネット ソルトピル 首都大1段ADR 宇宙研2段ADR 外形 [mm] Φ385×473 Φ385×573 LHe-tank [liter] 7.1 7.4 Saltpill crystal type FAA CPA + GGG

超電導マグネット 電流を流す事で磁場を作る 電流を熱が発生しない NbTi線 超電導マグネット 磁場分布:シュミレーション

ソルトピル 冷媒として常磁性塩 を充填したカプセル 効率のよい 温度域がある 0Tと2TのS-T線図 CPA (CrKミョウバン) FAA (鉄ミョウバン) GGG (Gallium Gadolinium Garnet) ソルトピル

首都大1段・宇宙研2段ADR性能比較 首都大1段ADR 宇宙研2段ADR 50mK保持時間 [hour] × 5.7(見積もり) 温度安定度 [rms] 7μK 10μK 最低到達温度 [mK] 66 50 LHe保持時間 [hour] 39.5(減圧2.2K) >51(非減圧4.2K) 断熱消磁開始温度 [K] 2.5 4.5 Saltpill 重量 [g] 89(FAA) 85(CPA)+600(GGG)

保持時間最適値比較 同時励磁サイクル冷却によって10.6%低温保持時間向上 通常の冷却サイクル 本研究での冷却サイクル 通常励磁 同時励磁① Holdtime [hour] Holdtime [hour] 保持時間増加 最適値 最適値 高温ステージ制御温度 [K] 高温ステージ制御温度 [K] 通常励磁 同時励磁① 同時励磁② 高温段 到達温度 [K] 0.97 0.93 0.91 高温段 制御温度 [K] 0.94 50mK保持時間 [hour] 8.36 9.07 9.26 低温保持時間増加率 [%] 8.3 10.6 同時励磁サイクル冷却によって10.6%低温保持時間向上 6

2段式:熱浴への排熱量 断熱消磁4.2K開始で50mKを5.7時間保持で見積もると 2段式ADRの方が排熱量・必要結晶量 共に少ない 1段式 2段式低温ステージ 2段式 高温ステージ 1段式ADR 2段式ADR 必要結晶量 [g] 5882(FAA) 600(GGG) 排熱量 [J] 367.8 52.4 2段式ADRの方が排熱量・必要結晶量 共に少ない 4 16