岡田安弘 高エネルギー加速器研究機構/ 総合研究大学院大学 2008年11月27日 Bの物理ワークショップ 於箱根

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岡田安弘 高エネルギー加速器研究機構/ 総合研究大学院大学 2008年11月27日 Bの物理ワークショップ 於箱根 New Physics とBファクトリー 岡田安弘 高エネルギー加速器研究機構/ 総合研究大学院大学 2008年11月27日 Bの物理ワークショップ  於箱根

新しい物理の効果 Bファクトリーでは  を通じて新しい物理の効果をさぐる。

内容 とは? とは? とは? “新しい物理” とは?

BB 混合 ~ 標準模型ではBBbar 混合は Cabibbo-Kobayashi-Maskawa 行列で決まっている。 Unitarity triangle の角度や長さを規定する。 ~

いろいろな観測量でunitarity triangle が矛盾無く決まる。小林益川理論の検証。

新しい物理と Unitarity triangle Box diagram に余分な寄与があった場合はunitarity triangle に矛盾が出てくる。 様々な観測量を組み合わせることで小林益川理論からのずれを決めることができる。 New contribution

Super KEKB LoI 5/ab 50/ab Unitarity trangle の検証は模型に依らない新しい物理の効果の解析に有効

ペンギン物理 フレーバーチェンジングニュートラルカレントを表す三角形のファインマン図のことをペンギンダイアグラムという。 b->sg 過程は最も重要なB稀崩壊過程。1993年にCLEO実験で発見された。分岐比は4x10-4程度で実験の誤差と標準模型の理論計算の精度はともに10%程度に達している。両者の一致は良い。標準模型を超える物理に対して有用な制約を与えている。

b->sg と新しい物理 ~ 標準模型ではb-sgの振幅はほとんど位相を持たない。Photon のpolarization は、ほとんどleft-handed. 新しい物理の効果は科ならすしも同じとは限らない。 ~

b->sg のCP非対称性 b->sg のdirect CP violation およびB->K*g などのtime-dependent CP violation はそれぞれ新しい位相やカイラリティー違った相互作用の存在に敏感。 |Acp|<1% in SM Acp~O(ms/mb) in SM

b->sll b->sll やB->K*ll はpenguin だけでなくbox diagramからの寄与がある。 新しい物理に対してより多くの情報が得られえる。

Lepton invariant mass 分布 Forward-backward asymmetry q T.Goto, Y.O.,Y.Shimizu, M.Tanaka,

ハドロンのペンギン過程 一般にb->sgなどによるハドロンへの崩壊では、理論的不定性が大きいので新しい物理の効果を抜き出すのは大変。 B->J/yKs とB->fKsのtime-dependent CP violation の差は標準模型では良い精度で一致するはず。 新しい物理を探る良い方法。 B->fKs B->J/yKs New phase (ex SUSY) “tree” “penguin”

b-s 過程のtime-dependent CP violation

Lepton Flavor Violation m->eg や t->mg はクォークのb->sgに対応する過程。ニュートリノ振動の確立後はこれらのLFV過程は起こるはずと思われている。どのぐらいの大きさの分岐比になるかは、ニュートリノ質量生成の物理の詳細による。単純なDirac 質量やSeesaw 模型ではほとんど無視できるぐらいの分岐比。超対称模型では実験の上限値の近くまで大きくなりうる。

Process Current Future tau LFV (Ti) ミュー粒子とタウ粒子のLFVの関係は新しい物理の模型による。 MEGでLFVが発見されたらタウ崩壊でLFVを探すことは緊急性が高い。

いろいろなタウ粒子のLFV過程 and their CP conjugates

“偏極”タウ 崩壊 角相関によって実質的に偏極したタウ粒子の崩壊実験を行うことができる。 R.Kitano and Y.O. 2001 角相関によって実質的に偏極したタウ粒子の崩壊実験を行うことができる。 LFV相互作用のカイラリティーやCP位相の情報が得られる。 A=-1 case Example: t->lll ではT-odd の量も定義できる。

Weak decay 弱い相互作用によるセミレプトニック崩壊がV-Aタイプであることはほとんどの場合、確立している。 (ミュー粒子崩壊 の陽電子エネルギー分布など。) b quark がt に崩壊する場合の相互作用の形はまだ良くわかっていない。 荷電ヒッグス粒子が存在する場合は、b -t の変換過程に大きな効果が現れうる。(新しいタイプの弱い相互作用) b c(u) t n W H- b c(u) t n +

Two Higgs Doublet Model における B->tn とB->Dtn B(B->tn) B(B->Dtn)/B(B->Dmn) tanb: 二つのヒッグス場の真空期待値の比 もしLHCで荷電ヒッグス粒子が発見されたら、B崩壊過程でその相互作用を 決めることは重要になる。

“新しい物理”

TeV スケール 標準模型は SU(3), SU(2), U(1) の三つのゲージ相互作用と“新しい力”で、強い力、弱い力、電磁気力を説明するという構成で書かれている。“新しい力”とは電弱対称性の自発的な破れを引き起こす未知の力のこと。 LHCは“新しい力”を解明する最初のステップ。 “新しい力”の背景にはいろいろな物理が提案されている。超対称性、複合ヒッグス模型、高次元模型、など、など。 新しい物理の最初のシグナルは“普通の”ヒッグス粒子かもしれない。 “新しい力”の全貌を明らかにするには、より精密な実験や高いエネルギーの実験が必要になるだろう。

フレーバーの問題 フレーバーの問題は論理的にはきっとヒッグス物理の後に来る問題。 湯川結合定数をどう決めるかと言う問題ではなく、ヒッグス場に対するより深い理解が得られたときに、それでは湯川結合がどのようにして生じたのかと言う問題。 “新しい力”が何かにより、何が答えられるかも変わる。 Gauge invariance Higgs sector Flavor sector

標準模型のCKM行列がうまくいっていることは既に新しい物理の効果に制約を与える。 (1) Minimal Flavor Violation (MFV) 新しい物理の寄与のフレーバー構造は標準模型とそろっている。 例。最小超重力理論。T parity のないLittle Higgs 模型。Universal Extra Dimension 模型。 Bs, Bd, K のフレーバーシグナル間に関係式が書ける。 (2)新しい物理のスケールが高い。 で小さくなる。 (3) (1)と(2)のあわせ技

超対称性とフレーバー物理 squark quark slepton lepton gluino gluon neutralino, 超対称模型ではクォーク、レプトンの超対称パートナーを導入する。 スクォーク、スレプトンの質量行列は新たなフレーバーとCPの破れの原因となる。 Super partners SM particles neutralino, chargino gluino slepton squark W,Z,g, H gluon lepton quark Spin 1/2 Spin 0 Spin 1 Spin 1/2 Spin 1 Spin 1/2 Spin 0 Quark mass Squark mass 超対称性の破れ

超対称性の破れ 超対称性の破れは、重力を含む統一理論の枠組みで超対称性の自発的な破れによって生じる。  自発的な対称性の破れ=>真空のダイナミックス さらに、スクォークやスレプトンの質量行列はGUTスケールにある粒子の相互作用により、くり込み効果を受ける。 理論の基本に係わる情報を担っている。

~ スクォーク、スレプトンの質量行列は粒子の直接生成とフレーバー物理の両方合わせて 決められる Quark flavor changing processes Off-diagonal Diagonal ~ LHC/ILC SUSY mass spectrum Lepton flavor violation

超対称大統一理論 GUT interactions 超対称大統一理論の場合、クォーク湯川結合定数がレプトンフレーバーの原因に なり、ニュートリノ湯川結合定数がクォークフレーバーシグナルの原因になる。 Quark Yukawa coupling Neutrino Yukawa coupling GUT interactions Quark flavor signals Time-dep CP asymmetries in B->fKs B -> K*g Bs->J/yf Lepton flavor violation in m->eg t->mg t->eg => T.Goto’s talk

いろいろな観測量の関連を調べることで高いスケールの物理を探ることができる。 超対称模型では のどれにも影響がある。 いろいろな観測量の関連を調べることで高いスケールの物理を探ることができる。  荷電ヒッグス粒子 =>H.Itoh’s talk

Tパリティーを課したリトルヒッグス模型 ~10 TeV, new strong dynamics ~ 1TeV WH, ZH, fij, uH,dH AH T+,T- ~200 GeV A Higgs boson and SM particles Particle content of the littlest Higgs model with T parity. Little Higgs model. 複合ヒッグス模型の一種。 ヒッグス場の量子補正に対する安定性をある程度  保証するために 重いゲージ粒子やトップの  パートナーを導入する。 Tパリティーを入れることにより重い新粒子は1TeV  付近に存在する。 N.Arkani-Hamed,A.G.Cohen, E.Katz,and A.E.Nelson,2002 C.H.Cheng and I.Low,2003

Flavor Physics in the Little Higgs model with T-parity J.Hubisz,S.J.Lee,G.Paz, 2005 重いTodd フェルミオンのセクターに新たなフレーバー混合の原因が生じる d qH WH,ZH,AH VHd d u W VCKM u qH WH,ZH,AH VHu 3つの行列のうち二つが独立 FCNCやLFV 過程に大きなnon-MFV の効果を生む。

Tパリティーを課したリトルヒッグス模型に於けるフレーバーシグナルの例 KL->p0nn vs. K+->p+nn Bs->mm vs. S (J/yf) M.Blanke,A.Buras.S.Recksiegel,C.Tarantino, 2008 => Y.Yamamoto’s talk

余次元模型 余次元模型は超対称性によらずに階層性の問題を解決するとして提唱された。 いろいろなタイプの模型がある。 余次元が平坦か曲がっているか。   どの粒子が余次元に伝播するか。 フェルミオンの質量の階層性を幾何学的に説明しようとするとKKモードの結合にフレーバーの変化が現れる。

LHC 実験ではほとんどのバラメーターをカバーできる。 m g GKK Warped extra dim, GKK-> mm Flat extra dim, KK graviton exchange to mm CMS TDR 2006

Bの物理への寄与:KK graviton の交換 b->sll forward-backward asymmetry Kaluza-Klein graviton の交換でフレーバー チェンジグニュートラルカレントが生じる。 1.5TeV b->sll 過程の角分布に影響 を与える。 Spin 2の性質も 確かめられる。 M=1TeV (Flat large extra dim case) T.Rizzo

ワープした余次元模型におけるKK gluon, KK Z-boson の交換 ワープした余次元の模型ではフェルミオンを5次元空間のどこに局在させるかによって、質量の違いを出すことが出来る。 Kaluza-Klein gluon やKaluza-Klein Z-boson tree-revel フレーバー チェンジグニュートラルカレントが生じる。 S(fKs) vs KK gluon mass 1st KK gluon mass G.Burdman

まとめ Bファクトリーでは  を通じて新しい物理の効果をさぐる。 新しい物理の最初のヒントはLHCに注目。