蛋白質立体構造の進化的解析のための Ninf版並列MGGとその性能評価

Slides:



Advertisements
Similar presentations
多目的GAに対する パレート最適個体の分布制御 九州大学大学院工学府知能機械システム専攻徳井 宏司.
Advertisements

三木 光範 (同志社大学工学部) 廣安 知之 (同志社大学工学部) 花田 良子 (同志社大学工学部学部 生) 水田 伯典 (同志社大学大学院) ジョブショップスケジューリング問 題への 分散遺伝的アルゴリズムの適用 Distributed Genetic Algorithm for Job-shop.
MicroAVS 超入門 赤塚浩太. MicroAVS とは Visualization Tool Excel Java 膨大,高度なデータ処理が困難 高度なプログラミング能力必要 誰でも簡単に可視化できるツールの必要性 Micro AVS.
世帯マイクロデータの適合度評価における 重みの決定手法
遺伝的アルゴリズムにおける ランドスケープによる問題のクラス分類
リフレッシュ型分散遺伝的アルゴリズムの 組み合わせ最適化問題への適用
MPIを用いたグラフの並列計算 情報論理工学研究室 藤本 涼一.
グローバルコンピューティング環境における遺伝的アルゴリズムの検討
キャッシュ付PRAM上の 並列クィックソートと 並列マージソート
超並列計算研究会 PCクラスタにおける ベンチマークと並列ツールの紹介 廣安 知之 三木 光範 大向 一輝 吉田 純一.
遺伝的アルゴリズム  新川 大貴.
全体ミーティング (4/25) 村田雅之.
対話型遺伝的アルゴリズムを用いた室内レイアウトシステムの開発
研究集会 「超大規模行列の数理的諸問題とその高速解法」 2007 年 3 月 7 日 完全パイプライン化シフト QR 法による 実対称三重対角行列の 固有値並列計算 宮田 考史  山本 有作  張 紹良   名古屋大学 大学院工学研究科 計算理工学専攻.
遺伝的アルゴリズム概説 An Outline of Parallel Distributed Genetic Algorithms
PCクラスタにおける2個体分散遺伝的アルゴリズムの高速化
谷村 勇輔 (同志社大学大学院) 廣安 知之 (同志社大学) 三木 光範 (同志社大学) 青井 桂子 (同志社大学大学院)
情報爆発A01支援班 マイサーチエンジン開発環境支援グループ 中村聡史, 大島裕明, 田中克己, 喜連川優
報告 (2006/9/6) 高橋 慧.
遺伝アルゴリズムによる NQueen解法 ~遺伝補修飾を用いた解探索の性能評価~
P,Q比が変更可能なScaLAPACKの コスト見積もり関数の開発
分散遺伝的アルゴリズムによる各種クラスタのベンチマーク
マイクロシミュレーションにおける 可変属性セル問題と解法
ベイジアンネットワーク概説 3.6 構造の探索アルゴリズム
ネットワーク性能に合わせた 分散遺伝的アルゴリズムにおける 最適な移住についての検討
MPIによる行列積計算 情報論理工学研究室 渡邉伊織 情報論理工学研究室 渡邉伊織です。
Occam言語による マルチプリエンプティブシステムの 実装と検証
高速CFDコードを用いた次世代空力応用研究プラットフォーム構築に 向けた実証研究
並列計算技術によるタンパク質の構造解析 IBM RS/6000SPを用いた研究 同志社大学大学院 小掠真貴 同志社大学工学部 廣安知之
過負荷時の分散ソフトウェアの 性能劣化を改善する スケジューリングの提案
P2P方式によるオンラインゲームの研究、開発
MPIを用いた並列処理 ~GAによるTSPの解法~
Deep Learningを用いたタンパク質のコンタクト残基予測
遺伝的アルゴリズムへの 統計力学的アプローチ 大阪大学 大学院理学研究科 鈴木譲 CISJ2005 於早稲田大学理工学部
膜タンパク質の 立体構造予測.
グラフアルゴリズムの可視化 数理科学コース 福永研究室 高橋 優子 2018/12/29.
グローバルコンピューティング シミュレータの概要
オーバレイ構築ツールキットOverlay Weaver
実行時情報に基づく OSカーネルのコンフィグ最小化
第14章 モデルの結合 修士2年 山川佳洋.
アンテナ最適化技術と電波伝搬シミュレーション技術の高速化と高精度化
シミュレーション学講義 第**回 スケジューリング問題とJSSP.
遺伝的アルゴリズムを用いた 構造物の最適形状探索の プログラムの作成
通信機構合わせた最適化をおこなう並列化ンパイラ
進化的計算手法の並列計算機への実装 三木 光範
配偶者選択による グッピー(Poecilia reticulata)の カラーパターンの進化 :野外集団を用いた研究
グリッド向け実行環境Jojo を用いた遺伝的アルゴリズムによる蛋白質構造決定
アスペクト指向言語のための 独立性の高いパッケージシステム
複数ホストにまたがって動作する仮想マシンの障害対策
サポートベクターマシンを用いた タンパク質スレッディングの ためのスコア関数の学習 情報科学科4年 81025G 蓬来祐一郎.
Genetic Algorithm-based Partial Least Squares GAPLS Genetic Algorithm-based Support Vector Regression GASVR 明治大学 理工学部 応用化学科 データ化学工学研究室 金子 弘昌.
InTriggerクラスタ環境の構築 i-explosion 支援班 クラスタ環境の概要 研究に使える「共有資源」を提供
Peer-to-Peerシステムにおける動的な木構造の生成による検索の高速化
並列処理プロセッサTPCOREの 組み込みシステムへの応用 理工学研究科数理情報科学専攻 福永 力,岩波智史,情報システム研究室.
Data Clustering: A Review
遺伝的交叉を用いた 並列シミュレーテッドアニーリングによる タンパク質立体構造予測
遺伝アルゴリズムによる NQueen解法 ~問題特性に着目した突然変異方法の改善~
「マイグレーションを支援する分散集合オブジェクト」
表紙 分散遺伝的アルゴリズムのための 新しい交叉法.
1ーQー18 音声特徴量抽出のための音素部分空間統合法の検討
ユビキタスコンピューティングの ための ハンドオーバー機能付きRMIの実装
情報工学科 05A2301 樽美 澄香 (Tarumi Sumika)
異種セグメント端末による 分散型仮想LAN構築機構の設計と実装
IPmigrate:複数ホストに分割されたVMの マイグレーション手法
渡邉 真也, 廣安 知之, 三木 光範 同志社大学 工学部 Faculty of Engineering,Doshisha Univ
ソケットの拡張によるJava用分散ミドルウエアの高信頼化
分子生物情報学(0) バイオインフォマティクス
各種荷重を受ける 中空押出形成材の構造最適化
遺伝的交叉を用いた 並列シミュレーテッドアニーリングの検討 小掠 真貴 廣安 知之 三木 光範 角 美智子 岡本 祐幸 同志社大学大学院
Presentation transcript:

蛋白質立体構造の進化的解析のための Ninf版並列MGGとその性能評価 小野功(徳島大),今出広明(徳島大), 中田秀基(産総研/東工大),小野典彦(徳島大), 松岡聡(東工大/NII),関口智嗣(産総研), 楯真一(生物分子研究所)

はじめに(1) 蛋白質立体構造決定 ポストシーケンスにおける最重要課題 X線結晶解析とNMRが有力な解析手段 1. 連鎖帰属 2. NOE帰属 高度な専門知識と豊富な経験を持つ専門家が試行錯誤 1人の専門家が1つの蛋白質の立体構造決定に数ヶ月必要 自動化と高速化が望まれている!!

はじめに(2) 遺伝的アルゴリズム(GA)によるNOE帰属の自動化の試み [Ono 02] 13残基のα-helixに適用 専門家と同等の立体構造を自動的に求めることに成功!! 現状の実装:半日程度の時間(Athlon 1GHz) 研究を進める上で高速化が緊急の課題!! 本研究の目的 NOE帰属自動化のためのGA [Ono 02]の並列実装の提案と その性能評価

NMR蛋白質立体構造決定 立体構造解析過程と現状の問題点 構造解析過程 1.試料調製・安定同位体標識 2.NMR測定 3.データ処理 4.主鎖・側鎖シグナルの帰属 5.構造情報の解析 6.構造計算 問題点 1個の蛋白質の構造解析に,専門家が数ヶ月以上の試行錯誤 構造解析自動化の試みはうまくいっていない

遺伝的アルゴリズム(GA)による NOE帰属自動化の試み [Ono 02] (1) 基本的な考え方 ×NOE帰属 立体構造計算 (従来法) ○立体構造生成 NOE帰属による評価 (本研究) 観測されたNOEシグナルをなるべくよく説明する立体構造を探索 アルゴリズムの概略 1.GAにおいて,解候補となる立体構造を生成. 2.立体構造からNOEシグナルを予測. 3.予測シグナルを観測されたNOEシグナルに帰属. 4.帰属に成功した観測NOEの数に基づき評価値を計算.

遺伝的アルゴリズム(GA)による NOE帰属自動化の試み [Ono 02] (2) コード化 二面角(f, y, w, c)からなる実数ベクトル 交叉 二面角 一様交叉 突然変異 各要素1%の確率で[-1o, +1o]の 一様乱数を加える

遺伝的アルゴリズム(GA)による NOE帰属自動化の試み [Ono 02] (3) 世代交代モデル Minimal Generation Gap (MGG) [佐藤 97] Workers Master 子個体の評価 個体評価の時間コストが高い. 個々の子個体の評価は独立に 行うことができる. 個体:立体構造 ランダム 評価 Best 2 観測NOEシグナル

世代交代モデルMGGの並列化(1) 並列化実装の要件 拡張性 投入した計算資源に比例して計算時間が短縮される 頑健性 Workerに障害が起こっても全体の計算は止まらない. 最悪でも計算途中から再開できる. 柔軟性 計算途中でノードの追加・削除ができる. 移植性 多くのプラットフォーム上で動作する. 価格性 性能の異なる計算ノードからなる計算機群の性能を使い切る

世代交代モデルMGGの並列化(2) ミドルウェアと開発言語の選択 ミドルウェアとしてNinfを採用 ソケットやシリアライズなど煩雑なプログラミングから解法 数多くのプラットフォーム上で動作 移植性への対応 グリッド環境への移植の容易さ 開発言語としてC++およびJAVAを採用 Worker側にC++を採用 既存のプログラム資産を利用 Master側にJAVAを採用 強力なスレッド・メモリ管理・例外処理機構を利用 拡張性・頑健性への対応

世代交代モデルMGGの並列化(3) ワーカーの設計 個体の評価には多くのデータが必要 二面角,アミノ酸の3次元情報,原子半径,NMRシグナル情報 二面角以外は全ての個体で使いまわすことが可能 ワーカーでの処理を3つに分割 (1) 初期化 評価器の生成,二面角以外のデータの読み込み (2) 個体評価 二面角情報のみをマスターから受け取り,個体を評価 (3) 終了化 評価器の破棄

世代交代モデルMGGの並列化(4) マスターの設計 メイン・スレッド 他のスレッドの初期化 キューなどのデータ構造の初期化 初期集団の生成 クライアント・スレッドの追加・削除 マスターの設計 クライアント・スレッド キューから指定された個数の 個体を取り出す 個体をシリアライズしてワー カーへ投げて待機. 評価が終了したら世代交代 スレッドに通知. 世代交代・スレッド 集団から親個体を選択 子を生成し,キューに登録 全ての子の評価が終了する か,タイムアウトまで待機 最良2個体を選択して集団に 戻す

世代交代モデルMGGの並列化(5) 提案した実装の特徴 拡張性への対応 複数の世代交代スレッドにより通信の遅延を隠蔽 頑健性への対応 問題のWorkerに対応するクライアントスレッドの切り離し 計算途中の集団情報の定期的バックアップ 柔軟性への対応 クライアントスレッドの追加・削除で対応 移植性への対応 多くのプラットフォーム上で動作する. 価格性への対応 評価個体数をWorkerごとに調整可能.自動調整は研究中...

実験(1) 頑健性,柔軟性の検証 マスター:Athlon MP 1.2GHz ×2 Testbed ワーカー:Pentium III 800MHz ×10 ハブ:100BaseTXスイッチングHUB 全体の計算が止まらないことを確認 計算中に,ワーカーのプロセスを強制終了 計算中に,ワーカー・ノードを再起動 計算中に,ワーカー・ノードのネットワークケーブルを抜く 計算を再開できることを確認 計算中に,マスター・ノードを再起動 計算中にワーカー・ノードの削除と追加の動作確認

実験(2) 拡張性の検証(1) マスター:Athlon MP 1.2GHz ×2 Testbed ワーカー:Pentium III 800MHz ×10 ハブ:100BaseTXスイッチングHUB 対象問題:15残基構造決定問題

実験(3) 拡張性の検証(2) マスター:Athlon MP 2000+ ×2 Testbed ハブ:100BaseTXスイッチングHUB 対象問題:78残基構造決定問題

おわりに まとめ 蛋白質立体構造決定のためのGAにおける世代交代モデル MGGの並列化実装の提案 実験による性能評価 今後の課題 Ninf-Gによるグリッド化とその性能評価 探索アルゴリズムの洗練 ヘテロな環境における個体評価タスクの自動スケジューリング