明るいハードステートに対応する 光学的に薄い降着円盤モデル Oda et al. Remillard et al. 2005 小田寛(千葉大自然) 町田真美(国立天文台)、中村賢仁(松江高専)、松元亮治(千葉大理)
BHCsのX線スペクトル状態 L/LEdd T~107K 放射圧優勢 Slim? SlimDisk Very High T~107K 標準 T~107K ガス圧優勢 High/Soft 1 T~107-9K 磁気圧優勢 Low-b ? ADAF T~109K ガス圧優勢 Low/Hard 0.1 0.01 Energy [ keV ]
熱平衡曲線(二温度モデル) (前々回の年会) 明るいハードステート 磁場を考慮した光学的に薄い円盤の 熱平衡曲線(二温度モデル) (前々回の年会) a=0.05 温度 降着率 表面密度 ADAF SLE Low-b Ti Te 強磁場 弱磁場 円盤の半径方向の構造は? 移流項の近似は正しい? スペクトルは? →光学的に薄い二温度遷音速解 光度曲線 H-Lダイアグラム Low-b ? Disk+Corona? ~0.06LEdd ADAF Soft Hard MJD Gierliński & Newton 2006 電子温度-光度の関係 GX 339-4 電子温度 ~26keV kTe∝L-0.23±0.02 ~0.06LEdd 光度 Miyakawa et al. 2007
基礎方程式 ←質量降着 ※ < >: 方位角方向平均 質量保存 ←磁束降着 運動量保存 磁気張力 角運動量保存 磁場(Maxwell Stress) による角運動量輸送 電子のエネルギー式 放射冷却 クーロン衝突による エネルギー輸送 移流項 イオンのエネルギー式 加熱 シューティング法で遷音速解を求める。(積分には後退オイラー法を用いた)
磁場について トロイダル磁場が優勢な乱流磁場 Maxwell Stress と全圧の比 磁束降着率 z = 0 : 磁束保存( Ideal MHDの誘導方程式 ) z > 0 : BH近傍ほど磁束増加 (Machida et al. 2006 では aB~0.1-0.05) (Machida et al. 2006 では z~1) z>0 z=0
エネルギーバランス 加熱 e 移流冷却 ion 放射冷却 加熱率:磁気エネルギーの散逸によるイオンの加熱 移流加熱? 移流冷却? クーロン衝突 移流冷却 (e.g., Machida et al. 2006 ;Hirose et al. 2006) ion 加熱 移流項 イオンに対しては(恐らく)冷却 電子に対しては? 冷却?加熱?効かない? (Nakamura et al. 1997 では加熱) クーロン衝突によるイオン→電子のエネルギー輸送 (e.g., Stepney & Guilbert 1983) 放射冷却:相対論的制動放射、シンクロトロン放射、逆コンプトン散乱 (νc以下ではシンクロトロン自己吸収によりComptonizeされず、黒体放射) (hν>kTeでもComptonizeされない) (e.g., Narayan & Yi 1995)
結果:円盤構造 1×10-4, 1×10-3, 0.01, 0.02, 0.04, 0.06, 0.08, 0.1 プラズマβ 電子温度、イオン温度 1×10-4 ADAF円盤 1×10-4 BH 境界条件はADAF的な状態 →高降着率で不安定な状態 0.1 0.1 冷却 収縮 円盤の厚さ 表面密度 0.1 Low-b ADAF的 1×10-4 BH 0.1 1×10-4 境界条件の影響 半径 半径
結果:温度、放射冷却 1×10-4, 1×10-3, 0.01, 0.02, 0.04, 0.08, 0.08, 0.1 電子温度、イオン温度 Ti >Te @BH近傍 放射冷却は十分効くがイオン温度は下がらない→ガス圧が下がらない M /MEdd>0.02では放射冷却があまり上がらない 電子温度が下がりシンクロトロン放射は弱まる 制動放射は∝ρ2T1/2なので低温でもある程度効く 高M のわりに余り明るくならない もっと高い降着率ならイオン温度も下がり、電子-イオンカップリングが強くなり、内側も磁気圧優勢になり明るくなる? 1×10-4 0.1 半径 放射冷却率 シンクロトロン放射 制動放射 0.1 0.1 1×10-4 1×10-4 半径 半径 半径
結果:スペクトル シンクロトロン放射 シンクロトロン 黒体放射 コンプトン M/MEdd > 0.02 では 電子温度が下がり シンクロトロンは下がる Cut off 降着率が高い程 傾きはSteepに、 Cut off は低振動数側へ 制動放射 黒体放射 コンプトン 制動放射は∝ρ2T1/2 (温度依存性はシンクロトロン程ではない) なのでまだ上がる 1×10-4, 1×10-3, 0.01, 0.02, 0.04, 0.06, 0.08, 0.1 0.1 1×10-4
まとめ 光学的に薄い二温度遷音速解を求めた 得られた物理量からスペクトルを見積もった 降着率が高い場合に外側は磁気圧優勢、内側はADAF的 内側では放射冷却により電子温度は下がるが、イオン温度は下がらない。 内側で電子温度が下がりシンクロトロン放射が弱まるため、冷却率はそれ程上がらず、余り明るくならない。 より高い降着率ならイオンと電子がカップルして、冷却率が上がる? 高い降着率で遷音速解を得るには境界条件の工夫が必要 得られた物理量からスペクトルを見積もった 高降着率ではシンクロトロンは余り効かない Brems.-Comp.が優勢 傾きはSteepに(光度がもっと大きければVHSの候補になるかも) 低い降着率ではCut off はほぼ一定、高い降着率では低エネルギー側へ(Miyakawa et al. 2007 とコンシステント?)
一温度(Ti=Te)モデルの問題点 電子温度とイオン温度が等しい保証は無い イオンと電子両方が放射で冷却されている 放射するのは主に電子→冷却率は電子温度で評価すべき (シンクロトロン放射、逆コンプトン散乱の効果も入れたい) イオンと電子両方が加熱されている 同じ加熱率である保証は無い(イオンのみが加熱?) 移流も両方同じ 電子は移流加熱?(e.g., Nakamura et al. 1997) or 移流は効かない? 光学的に薄い二温度局所解(前々回) 相対論的制動放射、シンクロトロン放射、逆コンプトン散乱 光学的に薄い二温度定常解
研究の流れ →光学的に薄い二温度遷音速解 光学的に薄い一温度定常解(Oda et al. 2007) 光学的に薄い~厚い一温度局所解(前回) Global 3DMHD(Machida et al. 2006) 光学的に薄い高温ガス圧優勢円盤 →放射冷却により収縮→低温磁気圧優勢円盤 磁場の散逸に依る加熱~放射冷却 光学的に薄い一温度定常解(Oda et al. 2007) 磁場を含めた一次元定常解(局所解&遷音速解) 制動放射による冷却 ADAF、SLEに加え、磁気加熱~放射冷却となる平衡解(Low-b解) 0.1MEdd以上でも存在←明るいハードステート 光学的に薄い~厚い一温度局所解(前回) ガス圧、磁気圧、放射圧を含めた τ≪1で制動放射、 τ≫1で黒体放射 ADAF→SLE→Low-b→ 標準→Slimと繋がる熱平衡曲線 光学的に薄い二温度局所解(前々回) 相対論的制動放射、シンクロトロン放射、 逆コンプトン散乱による冷却 円盤の半径方向の構造は? 移流項の近似は正しい? スペクトルは? →光学的に薄い二温度遷音速解