2012年 2月14日 夏季オホーツク海の海面からの冷却は 大気をどの程度高気圧化させるか The rising of atmospheric pressure cooling from summer Okhotsk sea surface 地球環境気候学研究室 508374 藤田 啓 指導教員 立花 義裕 教授.

Slides:



Advertisements
Similar presentations
2012 年 7 月黒潮続流域集中観測 モデル感度実験 防災科学技術研究所 飯塚 聡 2012 年 12 月 17 日:東北大 学.
Advertisements

宇宙開発事業団 (NASDA) が開発した、環境観測技術衛星「みど りⅡ」 (ADEOS- Ⅱ ) 搭載の高性能マイクロ波放射計 (AMSR) による オホーツク海の流氷 ( 海氷 ) 画像。左図は 2003 年 1 月 18 日の夜間 (20 時半頃 ) に取得されたデータによる擬似カラー合成画像。
CMIP5 気候モデルにおける三 陸沿岸の SST の再現と将来予測 児玉安正・ Ibnu Fathrio ・佐々木実紀 (弘前大学大学院・理工学研究科)
ヤマセ海域の SST 変動と 海洋内部構造の関係 ー2011年の事例解析ー 理工学部 地球環境学科 気象学研究室 4 年 08 S 4025 佐々木 実紀.
過去 100 年に観測された 夏季日本の気候変動 気象研究所 遠藤洋和 第 10 回ヤマセ研究会.
偏光ライダーとラジオゾンデに よる大気境界層に関する研究 交通電子機械工学専攻 99317 中島 大輔 平成12年度 修士論文発表会.
CMIP5 気候モデルにおける ヤマセの将来変化: 海面水温変化パターンとの関係 気象研究所 気候研究部 遠藤洋和 第 11 回ヤマセ研究会 1.
傾圧不安定の直感的理解(3) 地上低気圧の真上で上昇流、 高気圧の真上で下降流になる理由
JRA-55再解析データの 領域ダウンスケーリングの取り組み
数値気象モデルCReSSの計算結果と 観測結果の比較および検討
三重大学・大学院生物資源学研究科 共生環境学専攻 地球環境気候学研究室 教授 立花義裕
力学的ダウンスケールによる2003年東北冷夏の アンサンブル予報実験
成層圏突然昇温の 再現実験に向けて 佐伯 拓郎 神戸大学 理学部 地球惑星科学科 4 回生 地球および惑星大気科学研究室.
ステップガーデンを有する建物と その周辺市街地の熱環境実測
惑星大気大循環モデル DCPAM を用いた 地球大気に関する数値実験
*大気の鉛直構造 *太陽放射の季節・緯度変化 *放射エネルギー収支・輸送 *地球の平均的大気循環
CMIP5マルチ気候モデルにおける ヤマセに関連する大規模大気循環の 再現性と将来変化(その2)
流体の運動方程式の移流項を ベクトルの内積を使って 直感的に理解する方法
東京商船大学における 地上気象データの解析
水の災害について学ぶ 国土交通省 北海道開発局 事業振興部 防災課.
近年の北極振動の増幅 Recent Arctic Oscillation amplification
海氷の再現性の高いモデルを用いた 北半球の将来 地球環境気候学研究室 平野穂波 指導教員 立花義裕教授
2016.3/10 ヤマセ研究会 2013年5月13日の仙台山形の 気温差について 東北大学流体地球物理学講座 修士1年 岩場遊.
2013年7月のヤマセについて 仙台管区気象台 須田卓夫 昨年のまとめ(赤字は研究会後の調査)
三重大学・大学院生物資源学研究科 共生環境学専攻 地球環境気候学研究室 教授 立花義裕
バングラデシュにおける対流活動と局地風に関する研究
全球の海霧の将来変化 気象研究所気候研究部 川合秀明、 神代剛、 遠藤洋和、 荒川理 第12回ヤマセ研究会 2016年3月10日
海氷が南極周辺の大気循環に与える影響 地球環境気候学研究室  緒方 香都 指導教員:立花 義裕教授.
ヤマセによる冷夏をターゲットにした アンサンブルダウンスケール予報実験
地学b 第5回雲と降水 Koji Yamazaki (山崎孝治)
バルク法について ~deepconv を用いて地球の積雲対流の数値計算をするにあたって~
YT2003 論文紹介 荻原弘尭.
2010 年北極振動の 冬から夏への極性反転と 猛暑の連関 ―北極振動と猛暑と今年の夏―
Chiba campaign MAX-DOAS(2D) day2 2017/11/22
冬季北大西洋振動が 翌冬の日本の気候に与える影響
南北両半球間を横断する 水蒸気輸送と降水量との関連性
2009年秋の北極海ラジオゾンデ観測によって観測された 大気の順圧不安定とメソ渦列
海上下層雲のパラメタリゼーション及び、海上下層雲と高気圧の関係
気候シナリオモデルを用いた将来のヤマセ発生可能性について
気候モデルのダウンスケーリングデータにおける ヤマセの再現性と将来変化
菅野洋光 (農研機構東北農業研究センター) 渡部雅浩 (東京大学大気海洋研究所)
Johnson et al., 1999 (Journal of Climate)
傾圧不安定の直感的理解(2) ー低気圧軸の西傾の重要性ー
CMIP3/CMIP5気候モデルにおける ヤマセに関連する大規模大気循環の再現性 ~モデル解像度による違い~
傾圧不安定の直感的理解(2) ー低気圧軸の西傾の重要性ー
ヤマセ時に津軽海峡で発生する強風 島田照久(1) 川村宏(1) 沢田雅洋(2) 余偉明(2)
CMIP5気候モデルにおける ヤマセの将来変化
気候モデルのダウンスケーリングデータにおけるヤマセの再現性と将来変化2
CMIP3 マルチモデルにおける熱帯海洋上の非断熱加熱の鉛直構造 廣田渚郎1、高薮縁12 (1東大気候システム、2RIGC/JAMSTEC)
「ヤマセの季節変化と経年変化について」 境田清隆(東北大学環境科学研究科)
2015 年 5 月下旬のインドの熱波について 報 道 発 表 資 料 平成 27 年 6 月 2 日 気 象 庁
2015 年5 月下旬のインドの熱波について 報道発表資料平成27 年6 月2 日気 象 庁
竜巻状渦を伴う準定常的なスーパーセルの再現に成功
MIROC5による将来のヤマセの再現性について(2)
ラジオゾンデで観測された 千島列島周辺の 激しいSST勾配が駆動する大気循環
2006 年 11 月 24 日 構造形成学特論Ⅱ (核形成ゼミ) 小高正嗣
MOIRCSサイエンスゼミ 銀河団銀河のMorphology-Density Relation
地球環境気候学研究室 513M230 松本直也 指導教員 立花義裕
北極振動の増幅と転調は 何故20世紀末に生じたか? Why was Arctic Oscillation amplified and Modulated at the end of the 20th century? 地球環境気候学研究室 鈴木 はるか 513M228 立花 義裕, 山崎 孝治,
地球温暖化実験におけるヤマセ海域のSST変化- CMIP3データの解析(序報)
全球モデルにおける中緯度下層雲の鉛直構造の解析
将来気候における季節進行の変化予測 (偏西風の変化の観点から)
ヤマセ海域のSST変動と 海洋内部構造の関係 ー2011年の事例解析ー
Meso-scale atmospheric anticyclone disclosed
雲解像モデルCReSSを用いた ヤマセ時の低層雲の構造解析
地球環境気候学研究室 谷口 佳於里 指導教員:立花義裕 教授
スケールモデルを用いた建物群周りの        気温分布の検討 藤原 孝三 指導教員  成田 健一.
「ヤマセの東西性にみられる季節性」 境田清隆(東北大学環境科学研究科)
海氷の生成を考慮した 流氷運動の数値計算 指導教官 山口 一 教授 船舶海洋工学科 80403 昆 純一.
CMIP3マルチ気候モデルにおける 夏季東アジアのトレンド
Presentation transcript:

2012年 2月14日 夏季オホーツク海の海面からの冷却は 大気をどの程度高気圧化させるか The rising of atmospheric pressure cooling from summer Okhotsk sea surface 地球環境気候学研究室 508374 藤田 啓 指導教員 立花 義裕 教授 写真 2011年2月19日 オホーツク海 海氷 写真提供 安藤 雄太

目次 導入と背景 中間発表までのまとめ 使用データ データ解析 考察 参考文献 2

導入と背景 3 要は オホーツク海に高気圧できる→日本寒い 4月後半~9月前半にかけて オホーツク海表面に、寒冷な高気圧が よく発生する。 そして持続する。 ー 「寒冷で背が低い」高気圧 ー 梅雨前線・やませなどに影響 ー 日本の冷夏の原因の1つとされる(7・8月) ー 下層雲・霧を伴う    (Nakamura and Fukamachi 2004 Tachibana et al. 2008) 要は オホーツク海に高気圧できる→日本寒い 1993年7月 平均海面気圧(太contour) 気候値との気温差(細contour) Nakamura and Fukamachi 2004より この高気圧の形成には、夏のオホーツク海が 冷たいことが影響しているといわれている。  → 冷たい海がどの程度、大気に影響しているのか? 3

使用データ 1998年7月と2006年8月を比較する 4 1998年 7月 2006年 8月 1998年 ロシア船クロモフ 1998年 ロシア船クロモフ ラジオゾンデ観測データ  期間 1998年7月9日6:00         ~7月25日12:00  基本6時間ごと 計50回放球 領域気候モデル IPRC Regional Climate Model(iRAM, Wang, 2003) + BATS Model (Dickinson et al, 1993) 領域・解像度 24ºN~67ºN & 125ºE~170ºE,  0.5º格子28層(σ系) 下層の解像度を細かくしてある 積分/解析期間 1998年1月1日~7月31日のうち7月のみ解析 I.C & B.C(横境界) JRA25再解析データ SST OISST(daily) Parameterization Wang 2001(microphysics), Edward and Slingo; Chou et al. 1998 (radiation), Detering and Etling 1985 (turbulent closure), Tiedtk 1989; Nordeng 1995 (cumulus convection) 1998年7月と2006年8月を比較する 2006年 ロシア船クロモフ ラジオゾンデ観測データ  期間 2006年8月16日00:00         ~8月31日12:00  6時間ごと  計63回放球 近年、オホーツク海での ラジオゾンデ観測は この2回しか行われていない データ提供 古関俊也 氏 Nanyang Technological University, SINGAPORE 4

まずSSTを見てみましょう 5 1998年 2006年 平均6℃ ブッソル海峡 平均5℃ 3 17 (℃) 6 9 12 15 放球番号    青 iRAMモデル  (観測値と一番近いグリッド) 平均6℃ 放球番号 2006年 平均5℃ 5 放球番号

1998年 7月 気温の鉛直プロファイル 高度(m) 低温 高温 低温 観測点番号 6

2006年 8月 気温の鉛直プロファイル 高度(m) 低温 高温 低温 観測点番号 7

NEW!! ブッソル海峡ではいつでも 低温・高温・低温の 気温プロファイルをしている 2006年 8月 1998年 7月 8 高度(m) 年が違っても 7月でも8月でも 朝でも昼でも夜でも 日をまたいでも 2006年 8月 1998年 7月 NEW!! 8

風向 風速 混合比 2006年 8月 1998年 7月 1998年7月と2006年8月では ブッソル海峡の大気の場は全く異なる 9

バランスしている ブッソル海峡では大気の場が変化しても 気温は接地逆転型プロファイルで ブッソル海峡の平均的な気温プロファイル 10 低温 気温偏差の標準偏差 高度(m) 高度(m) ブッソル海峡では大気の場が変化しても 気温は接地逆転型プロファイルで バランスしている 低温 バラつきは小さい 高温 接地逆転型プロファイル 低温 気温(℃) 気温(℃) 10

放射を計算してみよう 11 鉛直一次元 放射対流モデル 放射によって、どのように プロファイルが変化するかを計算 鉛直590層 タイムステップ1時間 鉛直一次元 放射対流モデル 時間経過 冷却 水蒸気以外のガス量は一定と仮定 気温・水蒸気量などを基に、放射を計算 放射によって、どのように プロファイルが変化するかを計算 鉛直一次元放射対流モデルはJAMSTECの大淵済氏と、東工大の鈴木遼平氏に提供していただきました。ありがとうございます。 11

・最下層ではブッソル海峡の非常に冷たいSSTが冷却している 放射を計算してみました! 12時間後 24時間後 初期 高度(m) ブッソル海峡ではこの冷却・加熱と バランスするメカニズムが存在する 約1℃/dayの 冷却 ・500~の高度では、下降流に よる断熱圧縮で加熱している ・最下層ではブッソル海峡の非常に冷たいSSTが冷却している 約2℃/dayの 加熱 12 気温(℃)

約1.7hPaの気圧上昇 ブッソル海峡では常に 約1.7hPa気圧上昇していると言える 13 海が起因してこのプロファイルができていると考える P : 気圧(高度の関数) z : 高度 H : スケールハイト <T> : 高度0から高度zまでの平均気温 R : 気体定数 (287 J/K・kg) g : 重力加速度 (9.8 m/s2) ある気柱の平均気温が下がれば、Hが小さくなる よって P(z)が変らないとすると、P(0) (表面気圧)が上がる もし海がなかったら・・・? 約1.7hPaの気圧上昇 ブッソル海峡では常に 約1.7hPa気圧上昇していると言える この面積分、大気が海に冷やされている 面積分の気温変化によっておこる表面気圧の変化が計算できる 13

まとめ 14 1998年7月 2006年8月 ブッソル海峡の特徴 高度900m程度まで非常に大きな接地逆転が見られる 1998年7月 2006年8月 ブッソル海峡の特徴  高度900m程度まで非常に大きな接地逆転が見られる 風や混合比は全く違う環境であったのに 気温はほぼ同じ傾向(接地逆転型)を示している  → ブッソル海峡では接地逆転型でバランスしている 鉛直一次元放射対流モデルに、このプロファイルを入れると  → 500~では冷却、最下層では加熱され接地逆転が弱まる 接地逆転型プロファイルは、放射的には維持されない  → オホーツク海には、接地逆転を維持するメカニズムがある   冷たいSSTによる冷却 下降流による断熱圧縮 オホーツク海の効果によって 大気は常に約1.7hPa程度高気圧化していると考えられる 14

参考文献 Nakamura. H, T. Fukamachi (2004) : Evolution and dynamics of summertime blocking over the Far East and the associated surface Okhotsk high. Q. J. R. Meteorol. Soc. , 130, 1213-1233 Tachibana. Y, T. Nakamura, H. Komiya, and M. Takahashi (2010) : Abrupt evolution of the summer Northern Hemisphere annular mode and its association with blocking. J. Geophys. Res. , 115, D12125, 13 doi : 10.1029/2009JD012894 Ogi. M, K. Yamazaki, and Y. Tachibana (2004) : The summertime annular mode in the Northern Hemisphere and its linkage to the winter mode. J. Geophy. Res. , 109, D20114, doi : 10.1029/2004JD004514 Tachibana. Y, K. Iwamoto, and M. Ogi (2004): Abnormal meridional temperature gradient and its relation to the Okhotsk high. J. Meteor. Soc. Japan. , 86, 753-771 小木 雅世 : 海氷と流量の負の関係 -オホーツク海とアムール川から- 気象研究ノ-ト   気象研究ノ-ト (214), pp. 119-127, 2007-08  日本気象学会 同研究室M2、 西川はつみ さんの卒業研究 15

ご清聴 ありがとうございました 16

こういうギザギザしたプロファイルは どうやって作られるのだろうか? 赤っぽい色ほど 矢印は風向 大きく気圧が上昇 している (と、考えられる) 矢印は風向 こういうギザギザしたプロファイルは どうやって作られるのだろうか? 気象庁のSST図と 観測値の合成図         提供 西川はつみ さん SST勾配の激しく 風向がよく変わるところ

まとめ 今後の展望 1998年7月 2006年8月ともに ・大きな接地逆転 ・混合層 ・複数の逆転層 1998年7月 2006年8月ともに ・大きな接地逆転 ・混合層 ・複数の逆転層 を持つ気温の鉛直プロファイルがそれぞれ観測された モデルでは、SSTの極小域が再現されておらず接地逆転が小さかった モデルにはない高気圧観測された(1998年) 複数の逆転層を持つプロファイルは  静力学的に高気圧化している  単純な顕熱、雲の冷却で形成するには、非常に大きなSST勾配上を何度も横切る必要がある オホーツク海では大きなSST勾配があり、風向も急に変化する(2006年) 今後の展望 iRAMモデルの活用  2006年の計算  三次元的な解析 鉛直一次元放射対流モデルの活用  複数の逆転層を再現できるのかの考察

表面気圧を見てみましょう 1998年 表面気圧 赤 クロモフ観測値 青 iRAMモデル (観測値と一番近いグリッド) 放球番号 2006年    赤 クロモフ観測値    青 iRAMモデル (観測値と一番近いグリッド) 局所的高気圧 台風 放球番号 2006年 放球番号

高度(m) 2006年 8月 1998年 7月 図1 ブッソル海峡上での気温の高度偏差(℃)

風速 風向 (その方向から吹いてくる風) 北 南 東 西

北 南 東 西 風向 (その方向から吹いてくる風)

分類 1998年 2006年 青 接地逆転型  緑 混合層型  赤 複数の逆転層型 ピンク どれでもない型  黒 台風

1998年 7月 2006年 8月 図1 ラジオゾンデ放球地点 数字は放球番号    左 1998年 右 2006年

高度(m) 気温(℃) 図4 鉛直一次元放射対流モデルの計算結果 青 初期気温鉛直プロファイル 橙 1日後の気温鉛直プロファイル 約1℃/dayの 冷却 約2℃/dayの 加熱 気温(℃) 図4 鉛直一次元放射対流モデルの計算結果   青 初期気温鉛直プロファイル   橙 1日後の気温鉛直プロファイル

高度(m) 気温標準偏差(℃) 気温(℃)