SCIntillation Tracking Image Camera (SCITIC) 検出器の宇宙線μを用いたテスト観測 柴田研究室 坂下 耕一 トリガー用プラスチックシンチレータ、観測用シンチレータ、光学系、IITとCCDカメラからなる装置である。(図1) プラスチックシンチレータ μ粒子 IIT シンチレータ SCITIC検出器を用いた実験例 πビームをシンチレータ中に打ち込み、シンチレータ内の核子と散乱することによってΛ粒子が生成される。この粒子の崩壊生成粒子(π、p)の崩壊方向を観測することでΛ粒子の偏極が測定できる。 この一連の動きをSCITIC検出器で観測する。(左図) p π- 静電型 K+ MCP型 CCD 説明 Λ a b 光電子増倍管 π+ 5cm レンズ シンチレータ (アクティブターゲット) 目的 霧箱、泡箱、原子核乾板等の軌跡検出器は、イベントに対してトリガーをかけることができない。統計量を必要とする実験には不向き。SCITICはこの欠点を補う検出器だ。 今回は宇宙線μを用いてテスト観測を行った。 信号処理回路 信号処理回路 シンチレータ 荷電粒子のエネルギーにより励起された電子が基底状態に遷移することで軌跡に沿って光が生じるこの際に使用するシンチレータは任意のものを選択できる。 SCITIC検出器には ①屈折率 ②発光量とその減衰時間の特性が重要となる。 今回は三辺が5cmのCsI(TI)を用いた。 画像化 図1 Experiment Setup1 光学系 シンチレータからの光をIITの表面に収束させる必要がある。任意の倍率での撮像が可能 シンチレータとレンズとの間の距離をaとし、レンズとIITまでの距離をbとすると以下の式が成り立つ。 この場合の撮像倍率はb/aとなる。 ① IIT (Image Intensifier Tube:夜間の暗視用として開発された装置) IITの光電面の直径は8cmであるためシンチレータ表面の対角線の長さ5√2cmがこのIIT口径に収まるような倍率を選択すると5√2/8≒3/4という計算により、倍3/4が最適と考えた。 式①を用いてシンチレータとレンズ、レンズとIITの光電面との距離を求める。CsIの屈折率があるため式①の計算を用いることができない。屈折率による補正を含めたa,bの値は で与えられる。 ここで、A:レンズ系の倍率、f:焦点距離、d:シンチレータの厚さ、n:シンチレータの屈折率 以上から、a=25.2cm、b=12.2cmとした。 光電面 (入射像を光電面で電子に変換) 電場を用いて電子を加速 入射像 出力像 (像そのものを増幅) 図2 静電型IIT 蛍光体 (電子を蛍光体で光子の像に戻る) トリガーシステム ・ディスクリミネ-タで整形された信号は、コインシデンス回路(Coin)によって AND信号として出力される。 ・AND信号を得たときのみIITは、電子を通過する向きになるように電場を反転することとなる。 ・トリガーをかける時間幅をゲートジェネレータで設定できる。μ粒子の軌跡に最適だと思われる1msにゲート間隔を設定した。 MCP (Micro Channel Plate) 極小の口径を持つ光電子増倍管をplate状に配する 光電面 MCP 蛍光面 トリガーをかけられる ・電場の向きを反転させる事で電子の進行を制御できる ・目的のイベントが得られたことを信号として入力するときのみ電子を通過させ、出力像を結ぶ。 入力像 Plastic Scinti. PMT Discri. IIT&CCD Trigger 出力像 Picture Coin. GATE gene. LEVEL adap. Trigger 図3 MCP型IIT Plastic Scinti. PMT Discri. PC 電子 図4 トリガー生成用モジュール 小型の光電子増倍管 テスト結果 まとめ SCITIC検出器の長所 ・任意のシンチレータを用いることができる。 ・任意の倍率で観測可能 ・任意のトリガーをかけれる SCITIC検出器の問題点 ・高倍率(3倍以上)になるとレンズの長さが邪魔になり限界がある。 ・高倍率になると測定範囲が狭くなる → トリガー系の再考が必要 μ粒子 μ粒子 SCITIC検出器の可能性 ・ハイペロン-核子散乱実験 ・宇宙線の観測 Y Y N 図5 5×5×5cmのCsIシンチレータでの軌跡 (1目盛り=1cm) μ粒子 途中でCsI中の電子と散乱したと思われる軌跡を捉えた。 N 右図のようにμ粒子が入射したと考えられる。 プラスチックシンチレータ CsI Telescope