京大理 高エネルギー研究室 修士課程一年 田口 誠 T2K前置検出器にむけたMPPC(Multi pixel photon counter)の基本性能評価(2) 京大理 高エネルギー研究室 修士課程一年 田口 誠
Contents 各測定で用いたMPPCの種類 PDE(photon detection efficiency) クロストーク リニアリティ まとめ
各測定で用いたMPPCの種類 測定 MPPCの種類 PDE HPK21-53-1A-13,14,16,17(100e) (信原さんがビームテストで使用) クロストーク HPK1-43-22(100a) HPK1-32-21(400b) HPK21-53-1A-14(100e) リニアリティ
PDE(photon detection efficiency) 出力されるp.e数/入射フォトン数のことをPDEと呼び、 PDE=εpixel×QE×εGeiger と書ける 受光面に対する有効面積の割合(30~50%) 光電子がガイガー放電を起こす確率(60~80%) 受光面の量子効率(60~80%) MPPCの種類に依存 バイアス電圧に依存 入射光の波長に依存 入射フォトン数を知るのは困難なので,次のようなセットアップで,青と緑でのPMTとの相対的なPDEを測定した。
青色 PDE測定 セットアップ Y x こちら側から見た図 PMTとMPPCの方をX,Y方向に2次元スキャン PMT(13mmφ受光面) 青色LEDを1mm径スリットから十分遠ざけ、スリットを通ってきた光だけをとらえるようにする MPPCとPMTを移動ステージで2次元スキャンし、それぞれ光量が最大の点を探す 光量が最大の点でのMPPCとPMTのp.e数の比をPMTとの相対的なPDEとする MPPCのバイアス電圧を変えて測定 青色LED こちら側から見た図 1mm径スリット MPPC(1mm2受光面) Y MPPC スリット x PMTとMPPCの方をX,Y方向に2次元スキャン PMT
青色 PDE測定 PDE(MPPC)/PDE(PMT) この点でPDEを測定 0.9 2mm 2mm 0.5 MPPC X方向スキャン MPPC Y方向スキャン 300 400 500 600 700 ノイズレート(kHz) 最大でPMTの約0.9倍のPDEを持つことがわかった
緑色 PDE測定 セットアップ Y X PMT こちら側から見た図 MPPC(1mm2受光面) 1mm径の波長変換ファイバーを1mm径のスリットに接着 MPPCとPMTを2次元スキャンし、光量が最大の点を探す 光量が最大の点でのMPPCとPMTのp.e数の比をPMTとの相対的なPDEとする MPPCのバイアス電圧を変えて測定 Blue LED こちら側から見た図 1mm径 ファイバー MPPC(1mm2受光面) Y PMT ファイバー X PMTとMPPCの方をX,Y方向に2次元スキャン MPPC
Green PDE測定 この測定では、ファイバーからの光の広がりの効果を含めたPDEを測定していることになる MPPCの表面の保護膜と受光面までは0.5mmぐらいの距離あり、ファイバーを出た光は40度くらい広がる この測定では、ファイバーからの光の広がりの効果を含めたPDEを測定していることになる 受光面では0.4mmぐらい光が広がっており、MPPCの受光面のサイズは1mm2なので ファイバー 1mm 保護膜 実効的にMPPCに入る光量は減少するはず ~0.5mm 受光面 0.4mm MPPC
緑色 PDE測定 スキャンの幅は約3mmでMPPCの受光面は1mm 光の幅は2mmに広がっている(1mmの光が左右に0.4mm広がるという計算と一致) ファイバーからの光の損失を含めても青色LEDでスリットを使った時と同じくらいのPDEがあることがわかった 300 400 500 600 700 1 PDE(MPPC)/PDE(PMT) ノイズレート(kHz) 0.5 この点でPDEを測定 3mm 3mm MPPC Y方向スキャン MPPC X方向スキャン 1mm径の光が左右に0.4mmずつ広がるという先の計算と一致。しかし‥ Scanの幅が3mmなのでファイバーからの光は2mm径に広がっている
PDE測定(まとめ) PMTと比較してより緑色の光に感度が高いと考えられる PDE(MPPC)/PDE(PMT) 1 緑 青 0.5 @ノイズレート~700kHz 1 MPPC No PDE(MPPC)/PDE(PMT) (緑) (青) 13 0.893 0.785 14 1.000 0.911 16 0.909 0.896 17 0.773 0.670 PMTと比較してより緑色の光に感度が高いと考えられる 緑 青 0.5 4つのMPPCすべてにおいて、ファイバーからの光の広がりによる効果を含めた緑色のPDEは青色LEDでスリットを使った時と同じかそれ以上 300 400 500 600 700 ノイズレート(kHz)
クロストーク測定 クロストーク ‥あるピクセルがガイガー放電している時にフォトンが発生し、他のピクセルのガイガー放電を引き起こすこと 104 光を入れない状態でとったデータのうち、2p.e以上のノイズを1p.e ノイズがクロストークしたものと考えると、 104 103 102 クロストーク率 = 10 と計算できる 0.5p.e 1.5p.e
クロストーク 測定 クロストーク率は最大で0.3ぐらいになった 100e 400b クロストーク率 100a 0.3 0.2 800 600 バイアス電圧を上げると各ピクセルがガイガー放電を起こす確率が高くなる 100e 400b クロストーク率 100a 0.3 0.2 800 600 400 200 ノイズレート(kHz) クロストーク率はバイアス電圧と共に増加 クロストーク率は最大で0.3ぐらいになった ノイズレートもバイアス電圧と共に増加する。横軸をノイズレートにしてプロットすると
クロストーク(HPK100e) 実際のp.e分布をよく再現していることがわかった クロストークを考慮したp.e分布関数 1 2 3 4 5 6 p.e 低光量を入れた時の分布 1p.e ポワソン統計を仮定して計算 0p.e 2p.e データ 3p.e 4p.e 1 2 3 4 5 6 p.e 0p.eの割合からポワソン統計を仮定して計算したp.e分布と実際のp.e分布の間にはクロストークによるずれが見られるが、 P’(n)= (P(n): ポワソン分布関数 ,k:クロストーク率)というp.e分布関数を考えると
リニアリティ 測定(HPK100e) MPPCは各ピクセルがガイガーモードで動作するため、1ピクセルに2つ以上のフォトンが入っても1つとしか数えられない ピクセル数が有限であるため入射フォトン数が大きくなると、1ピクセルに2つ以上のフォトンが入る確率が大きくなり、フォトン数を正しくカウントできなくなる(入射光量に対してMPPCの出力が線形でなくなる) 次のようなセットアップで入射光量に対するMPPCの出力のリニアリティを調べた
リニアリティ測定セットアップ 一様光 PMT MPPC 青色LEDを十分遠ざけて、MPPCとPMTに同じ光量が入るようにする
リニアリティ測定(HPK100e) 50 40 フィットした直線からのずれ 0% ~50p.eでリニアからのずれ20% MPPC ADC count 0% ~50p.eでリニアからのずれ20% クロストーク率=0.03 20% PMT ADC count 入射p.e数 直線でフィット 50 ~40p.eでリニアからのずれ20% 0% クロストーク率=0.2 20% PMT ADC count 入射p.e数 40
リニアリティ 理論曲線 さきほどのデータと比べて見ると と表せる 入射p.e数 フィットした直線からのずれ 20% 0% クロストーク率=0.2 クロストーク率=0.03 入射p.e数 Nfire クロストーク率=0.2 クロストーク率=0.03 ガイガー放電を起こしたピクセル数をNfireとすると、さきほどのクロストークを考慮したp.e分布関数P’(n)を用いて と表せる さきほどのデータと比べて見ると ここで (x:入射p.e数,k:クロストーク率) クロストーク率=0.03と0.2の2つの場合についてフィットした直線からのずれをプロットすると クロストーク率=0.03と0.2の2つの場合について横軸を入射p.e数、縦軸をNfireとしてプロットすると
リニアリティ 理論曲線 クロストーク率=0.03 クロストーク率=0.2 理論曲線 理論曲線 データ データ 20% 20% 50 40 フィットした直線からのずれ 0% 0% 理論曲線 理論曲線 データ データ 20% 20% 入射p.e 入射p.e 50 40 データと理論曲線はほぼ一致し、クロストーク率が大きくなるとリニアからのずれが大きくなることがわかった
リニアリティ 信原さんのビームテストにおけるMPPCの使用条件はノイズレートで言うと300~500KHzだった クロストーク率は0.02~0.1 先ほどの結果から、このクロストーク率でリニアリティ(±20%)は40~50p.eまで保障されている ビームテストでのMIPの光量は10p.e程度 よってビームテストで得られたMIPの光量の範囲ではリニアリティは十分保たれていると言える
まとめ T2Kで使用するのに適している ビームテストのMIPの光量の範囲ではリニアリティは保たれている HPK100eタイプのMPPCは青色と比べて緑色の光に対し感度が高いため、fiber読み出しの場合でもPMTと同じくらいのPDEを達成できている バイアス電圧を上げるとクロストークの影響でリニアからのずれは大きくなり、クロストーク率が0.2の時、入射p.e数が40p.eぐらいでリニアからのずれは20% T2Kで使用するのに適している ビームテストのMIPの光量の範囲ではリニアリティは保たれている T2KではPDEがPMTと同じくらいのところで~200p.eまでのリニアリティが要求されるため、100ピクセル以上のものを使う必要があると思われる
supplement
T2K前置検出器 Off axis detector On axis detector セグメント化されたシンチレーターバー 波長変換ファイバーを用いて読み出す On axis detector
光検出器に対する要請 Off axis detector は0.2Tの磁場中に置かれる 個々のシンチレーターからの光を波長変換ファイバーを用いて読み出すため、読み出しチャンネルは数万チャンネルになる。 MIPの読み出し 磁場に対する耐性 コンパクトサイズ High gain これらの要求を満たす光検出器としてMPPC(multi pixel photon counter)が第一候補に挙がっている
MPPC(Multi pixel photon counter) 100~1000 APD ピクセル in 1mm2 それぞれのピクセルはガイガーモードで動作する (入射フォトン数に依存しない) 出力信号は各ピクセルからの出力のアナログ和 磁場に耐性がある コンパクトサイズ 典型的なゲイン~106 (PMTと同レベル) ~1mm
MPPC signal 熱電子ノイズ Great performance for photon counting!
Noise correction クロストークを考慮したp.e分布を求めるときに、noiseのcorrectionを行っている 光を入れない状態でとったADC分布で、0p.eの割合をfとすると P’’(n)=P’(n)×f+P’(n-1)×(1-f) 実際にはこのP’’(n)をcクロストークを考慮したp.e分布関数としていた
リニアリティ理論曲線 f(q)をq個光電子が発生した時にガイガー放電を起こしているピクセルの数とすると、 f(q+1)=f(q)+(1-f(q))/mとかける よってf(q)=m・(1-(1-1/m))q+1 p.eの分布がP’(n)だったとすると、ガイガー放電を起こすピクセル数の平均Nfireは、 Nfire=ΣP’(n)・m・(1-(1-1/m))nとかける n
Red PDE測定(HPK100e) セットアップは青色の時と同じ LEDの波長=620nm,この波長でのPMTのQE~2% MPPCの場合、redでも最大12%ぐらいのPDEがある