気象予測値を用いた カンシャコバネナガカメムシの 防除適期予測の精度検証 気象庁 地球環境・海洋部 気候情報課

Slides:



Advertisements
Similar presentations
過去の気象データ ダウンロードページ紹介 気象庁 気候情報課 気候リスク管理技術係 荒井 宏明 8 月 21 日(水) ヤマセ研究会.
Advertisements

ヒストグラム5品種 松江城 出雲大社 石見銀山 三瓶山 アクアス しかしグラフで比較するのはめんどうなところがある 端的に1つの数字(代表値)で品種の特徴を表したい.
次世代気候情報の配信システムの検討 プリマ・オキ・ディッキ , 南野謙一 ( 岩手県立大学 ) 高度農業気象情報(作物の発育や病害虫の発 生などを予測するために必要となる農作物生 産地の気象予測情報等)の作成・描画・提供 システムの開発の一環.
○ 対決その1:那覇(沖縄) VS. 札幌(北海道) 那覇(沖縄)と札幌(北海道)の月別の最高気温 (度) 月1月2月3月4月5月6月7月8月9月 10 月 11 月 12月 那覇 (沖縄) 札幌 (北海.
「ベースボール統一球は変わったのか」を検証,予測する。
~環境省セミナープログラム(1日目午前)(予定)~
JRA-55再解析データの 領域ダウンスケーリングの取り組み
4月1日魚沼守門週間天気情報 ポイント予報 魚沼市 週間天気予報 中越地方 注意報 雷 なだれ
北日本における4月と8月気温の強い相関関係とその時間変動(2)
地球温暖化 現在(2010)起きていること.
東北地方の 長期積雪終日の予測 須田卓夫(仙台管区気象台).
いもち病感染危険度予測へ向けた 観測・モデル研究
アンサンブルハインドキャスト実験結果を用いたイネ葉いもち病の発生確率予報の精度検証
仙台管区気象台 気象防災部 地球環境・海洋課 池田 友紀子
2週目の気温予測を用いた東北地方の稲作への影響予測
土木計画学 第5回(11月2日) 調査データの統計処理と分析3 担当:榊原 弘之.
東北地域のヤマセと冬季モンスーンの 先進的ダウンスケール研究 1.気候研究 地球温暖化時代の東北の気候
第6回ヤマセ研究会 2012年9月24~25日 2011年と2012年のヤマセが 水稲に及ぼした影響 宮城県古川農業試験場 菅野博英.
DIASできり拓く ジャストインタイム農業
安全な農作物生産管理技術と トレーサビリティシステムの開発
リスト作成による効果を得るため付加・整理
新たな気候情報を利用した、異常気象に負けない農業技術開発
LCAを用いたパレット運用における総合的な環境影響に関する研究
国立環境研究所 温暖化リスク評価研究室長 江守 正多
気温の予想を用いた 栽培管理指導に向けた水稲の生育量予測
いまさら何ができるのか?何をやらねばならないのか?
GEOSSデータ統合・解析システム」第1回フォーラム
第8回ヤマセ研究会 宮城県古川農業試験場 日平均気温を用いた小麦の開花期予測.
コンテンツ海外展開施策説明会 平成30年2月15日(木) ■総務省施策の説明 ■経済産業省施策の説明 ■農林水産省施策の説明
CMIP5マルチ気候モデルにおける ヤマセに関連する大規模大気循環の 再現性と将来変化(その2)
図表で見る環境・社会 ナレッジ ボックス 第2部 環境編 2013年4月 .
2013年7月のヤマセについて 仙台管区気象台 須田卓夫 昨年のまとめ(赤字は研究会後の調査)
東京大学空間情報科学研究センターを 中心とした空間情報データベースの整備
菅野洋光 (農研機構中央農業総合研究センター) 山崎 剛 (東北大学) 大久保さゆり・紺野祥平 (農研機構東北農業研究センター)
熱中症の救急搬送者数 今日は,熱中症について勉強したいと思います。.
気象変動の影響による 雪氷環境の変化に関する研究
アジアモンスーン地域における気候変動とその農業への影響評価 PI:松本 淳 CI:荻野慎也・森 修一・遠藤伸彦・久保田尚之・徐 健青
東北地域のヤマセと冬季モンスーンの 先進的ダウンスケール研究
応用数理工学特論 期末発表 西口健太郎 渡邉崇充
気象庁 地球環境・海洋部 気候情報課 中三川 浩
農業支援システムの2012年度運用実験(途中経過)と課題
「沖縄におけるスポーツサイエンスの拠点化に向けた
2005年度・公開講座( ) 長期予報はなぜ当たらないか? 北海道大学大学院地球環境科学院 山崎 孝治.
※今後、気象台や測候所が発表する最新の防災気象情報に留意してください。
気候予測情報を活用した 農業技術情報⾼度化に関する 研究成果概要 中三川 浩 気象庁 地球環境・海洋部 気候情報課 第12回やませ研究会
2010年の夏期の高温による 水田土壌窒素発現への影響
~平成30年環境調査~ 集計結果報告.
2013年7月の東北地方の長雨と 日照不足の要因とその予測
生物多様性保全推進支援事業 1.地域における生物多様性の保全再生に資する活動への支援
事業リスク分析をベースとした 意思決定・事業評価手法
ジャストインタイム農業システム (JITAS; Just In Time Agriculture System)
地球温暖化予測情報第8巻 GPVデータを用いた 宮城県の夏の気温の将来予測
医療機関における電波利活用推進のための取組事例の調査について(依頼)
2週目の気温予測情報の 農業情報への翻訳 農業分野において利用しやすい情報作成のために
気候シナリオモデルを用いた将来のヤマセ発生可能性について
気候モデルのダウンスケーリングデータにおける ヤマセの再現性と将来変化
菅野洋光 (農研機構東北農業研究センター) 渡部雅浩 (東京大学大気海洋研究所)
CMIP3/CMIP5気候モデルにおける ヤマセに関連する大規模大気循環の再現性 ~モデル解像度による違い~
農業分野における気候変動への適用に関する 政策から求める海洋地球観測探査システムのあり方
図表で見る環境・社会 ナレッジ ボックス 第2部 環境編 2015年4月 .
2015 年5 月下旬のインドの熱波について 報道発表資料平成27 年6 月2 日気 象 庁
MIROC5による将来のヤマセの再現性について(2)
仙台管区気象台 気象防災部 地球環境・海洋課 渕上 隆雄
東北地域のヤマセと冬季モンスーンの 先進的ダウンスケール研究 1.気候研究 地球温暖化時代の東北の気候
アンサンブルハインドキャスト実験結果を 用いた葉いもち発生確率予報の精度検証
地球環境気候学研究室 谷口 佳於里 指導教員:立花義裕 教授
安全な農作物生産管理技術と トレーサビリティシステムの開発
気象庁 気候情報課 伊藤 晋悟、比良 咲絵、萱場 亙起、中三川 浩
(別紙1) 提案書雛型 令和元年度 沖縄型テレワーク実装推進調査 ー提案書ー                        (日付)                        (企業名)                        (連絡先等)
CMIP3マルチ気候モデルにおける 夏季東アジアのトレンド
Presentation transcript:

気象予測値を用いた カンシャコバネナガカメムシの 防除適期予測の精度検証 気象庁 地球環境・海洋部 気候情報課 第14回ヤマセ研究会 日時:平成30年2月20日(火) 場所:東北大学青葉山北キャンパス物理系研究棟(H-26) 4階 A412 気象予測値を用いた カンシャコバネナガカメムシの 防除適期予測の精度検証 気象庁 地球環境・海洋部 気候情報課  異常気象情報センター 気候リスク管理技術係長 萱場 亙起 かやば のぶゆき 【共同研究者】  沖縄気象台           田村 弘人  沖縄県 農林水産部      永山 敦士   (元沖縄県病害虫防除技術センター)  沖縄県 農業研究センター  真武 信一   (元沖縄県病害虫防除技術センター)

内容 1.はじめに 2.データ 3.調査と結果  3.1 統計分析(1981~2010年)  3.2 事例分析(2016年) 4.成果

1.はじめに 防除適期の予測モデル D(t-T0)=K 発育零点と有効積算温度 T0=13.0℃ K=480℃ 沖縄県※と協力して、カンシャコバネナガカメムシの防除適期の予測を例として、気温予測値を用いることの有効性を定量評価した。 さとうきびの害虫(葉鞘に侵入し吸汁) ガイダ(沖縄)チンチバッグ(奄美) 1914台湾から侵入(沖縄、鹿児島、宮崎) 日本の侵略的外来種ワースト100(日本生態学会) 指定有害動植物(植物防疫法) 防除適期の数理モデルが確立している 防除適期の予測モデル  D(t-T0)=K 発育零点と有効積算温度   T0=13.0℃ K=480℃ カンシャコバネナガカメムシの防除適期の考え方

有効積算温度に基づく防除適期 約1か月もばらつく、平年から2週間もかけ離れる場合もありうる。 沖縄県では防除適期の約1か月前に防除適期に関する情報提供。 沖縄県病害虫発生予察 予測時期 防除適期 各年の有効積算温度の推移(1981~2017年) 発育零点は13℃とした有効積算温度が480日℃に達した年で最も早い(1998年)または遅い(1986年)年は点線とした。黒線は平年値を用いた推移を示す。

年々の変動 防除適期は、春の高温によって極端に早い年がある。 温暖化によって、今後さらに早い場合もあることも懸念される 気候リスクを認識! 防除適期が極端に早い年 各年のカンシャコバネナガカメムシ防除適期の推定 (那覇:1981~2017年) 沖縄県発生予察で参考にする防除適期の方法を用いた結果を示す。

目的 生育・発生予測の不確実性 予測モデル式自体の不確実性 入力とする気象予測値の不確実性 ここを軽減できないか? ・・・・・・・・・

2.データ 気候リスク管理に関する考え方データ、調査結果を紹介。 過去の気象 データ 気候リスク管理に関する調査の概要・報告書 最近の予測 「気候リスク管理」ポータルサイト(平成25年~) 気象庁HP トップページ 気候リスク管理に関する考え方データ、調査結果を紹介。 過去の気象 データ 農業での活用例 水稲の冷害・高温障害対策 小麦赤かび病対策 気候リスク管理に関する調査の概要・報告書 最近の予測 データ データはCSV 形式でダウンロードできます。 過去の予測 データ http://www.data.jma.go.jp/gmd/risk/

過去(1981年以降)の事例を用いて 予測データの精度検証ができます。 最新の予測値と過去に遡った再予測した値は、 csv形式でダウンロードできます。 過去の1か月予報気温ガイダンスデータ・ダウンロード 平成27年1月15日提供開始 http://www.data.jma.go.jp/gmd/risk/fcstdl/index.php データ形式 過去(1981年以降)の事例を用いて 予測データの精度検証ができます。 ○過去の1か月予報の気温予測データ(ガイダンス)を取得できます。   (現在の技術で過去の気温を予測したもの) ○CSV形式で取得でき、自ら持つデータと比較し、気温予測データの利用価値を確認・実感できる。

シミュレーションの実施 観測値 平年値 予測値 (2w,4w) 平年値を用いた場合 (従来の方法) 予測値を用いた場合 防除適期  起算日(2/1)  予測日(3月下旬頃)    予想日 平年値を用いた場合 (従来の方法) 観測値 平年値 予測値を用いた場合 予測値 (2w,4w) 防除適期 気候リスクを評価する。  起算日(2/1)  予測日(3月下旬頃)    予想日

3.1 統計分析(1981~2010年) 防除適期の見逃しリスクの軽減の 効果が見込まれる 3.1 統計分析(1981~2010年) ・予測値を用いることで、防除適期との差を小さくできる。 ・極端に高温となった1998年では、予測値を用いたことで3日改善した。 ・4月2日では、防除適期の見逃しリスク(正の部分)を+2日以下となる。 ↑(正)見逃しリスク大 4週間気温予測と平年値を用いた場合の防除適期との差 赤四角は平年値を用いた場合、○は4週間予測で、色の違いは予測開始日に対応している。 防除適期の見逃しリスクの軽減の 効果が見込まれる 上の各図のSDを計算した結果。 2週間気温予測結果も含めた。

3.2 事例分析(2016年) 4月の高温を予測できていた。 気温予測値の精度調査結果;気温予測と実況の比較(那覇、2016年) 実況 3.2 事例分析(2016年) 実況 4月の高温を予測できていた。 気温予測値の精度調査結果;気温予測と実況の比較(那覇、2016年) 横軸は予測期間の初日、縦軸は気温を示す。赤は実況値、灰色は平年値を示す。 青(緑)色は予測値で点線はアンサンブル平均値を示し、箱ひげ図は、棒は10~90%、箱は30~70%の範囲を示す。

シミュレーション結果(2016年) 予測値の有効性を 確かめることができた 予測値を活用することで約1か月前から防除適期を予測できている。 平年値による予測は、実況によってばらつきがみられる。 4/25 4/23 4/21 4/19 予測値の有効性を 確かめることができた (土) シミュレーション結果の比較(那覇、2016年) 横軸は予測期間の初日、縦軸はシミュレーション結果と防除適期の差を示す。防除適期は4月21日。灰色点線と赤四角は平年値を用いた場合、黒点線と青丸(4週間気温を用いた)と緑三角(2週間気温を用いた)は予測値を用いたシミュレーション結果を示す。

4.成果 より効果的な防除を促すことができる。 ○沖縄県担当者からのコメント ・予測精度の向上ができる。 高温傾向の場合特に有効。 ・予測精度の向上ができる。   高温傾向の場合特に有効。  極端な高温による防除適期の見逃しリスクを軽減できる ・予測精度もふまえた、より的確な情報発信時期を確認できた。 ○対応  ・情報内容の改善    従来の平年値を用いた方法を気候予測におきかえた(H25以降)。  ・的確な発信時期を考えた情報提供 より効果的な防除を促すことができる。 対応につなげる!

(参考)営農支援情報での気候情報の同様な活用例 県等 HP等情報例 内容 農研 機構 リアルタイムアメダスを用いた麦の発育ステージ予測 小麦の開花日予測に2週先予測値を活用        http://www.naro.affrc.go.jp/org/warc/meteo_fukuyama/WEB/wheat/index_mugi.html 山形県 おきたま米づくり情報 (H26~) 水稲の刈り取り適期予測 2週先、4週間予測値を活用。 論文で紹介※。 香川県 「おいでまい」通信(H28~) 2週先予測値を活用 新潟県 稲作技術情報(H28~) 4週間予測値を活用 山梨県 モモの開花予想と開花日(H29~) モモの開花日予測に2週先予測値を活用 沖縄県 病害虫発生予察技術情報(H26~) カンシャコバネナガカメムシの防除適期予測に2週先、4週間予測値を活用。 ※横山克至 2014: 気象確率予測資料を用いた水稲刈取適期の予測. 東北の農業気象, 58, 1-6.

「気候リスク管理」を行う社会に! ご清聴ありがとうございました。 気象庁では、全国の都道府県農業担当者を対象に、気候情報の利活用促進の取り組みを行っています。 (取り組み例) ①農業普及指導員向けセミナーと意見交換(平成27~) ・農業普及指導員に気候情報に対する理解や利用メリットを感じてもらい、農作物の生育に関する指導に気候情報を積極的に役立てていただく。 ・気温予測データ活用に向けた、革新支援専門員等との対話も実施しています。 ②農業に役立つ気象(気候)情報の利用の手引き(平成30年3月公開予定) 農業技術情報作成担当者や農業普及指導員が気候情報を利用する際の手引きとすることを想定。対話にも活用。 セミナー風景 手引き 埼玉県 H27.5 ご清聴ありがとうございました。