TF-IDF法とLSHアルゴリズムを用いた コードブロック単位のクローン検出法

Slides:



Advertisements
Similar presentations
ゲームプログラミング講習 第2章 関数の使い方
Advertisements

サービス管理責任者等研修テキスト 分野別講義    「アセスメントと        支援提供の基本姿勢」 <児童発達支援管理責任者> 平成27年10月1日.
ヒトの思考プロセスの解明を目的とするワーキングメモリの研究
第27講 オームの法則 電気抵抗の役割について知る オームの法則を使えるようにする 抵抗の温度変化を理解する 教科書P.223~226
コラッツ予想の変形について 東邦大学 理学部 情報科 白柳研究室 山中 陽子.
コンパイラ 第3回 字句解析 ― 決定性有限オートマトンの導出 ―
第5章 家計に関する統計 ー 経済統計 ー.
公共財 公共経済論 II no.3 麻生良文.
VTX alignment D2 浅野秀光 2011年12月15日  放射線研ミーティング.
冷却フランシウム原子を用いた 電子の永久電気双極子能率探索のための ルビジウム磁力計の研究
生命情報学 (8) スケールフリーネットワーク
前半戦 「史上最強」風 札上げクイズ.

認知症を理解し 環境の重要性について考える
フッ化ナトリウムによる洗口 2010・9・13 宮崎市郡東諸県郡薬剤師会 学校薬剤師  日高 華代子.
食品の安全性に関わる社会システム:総括 健康弱者 ハイリスク集団 HACCP (食肉処理場・食品工場) 農場でのQAP 一般的衛生管理
規制改革とは? ○規制改革の目的は、経済の活性化と雇用の創出によって、   活力ある経済社会の実現を図ることにあります。
地域保健対策検討会 に関する私見(保健所のあり方)
公共政策大学院 鈴木一人 第8回 専門化する政治 公共政策大学院 鈴木一人
医薬品ネット販売規制について 2012年5月31日 ケンコーコム株式会社.
平成26年8月27日(水) 大阪府 健康医療部 薬務課 医療機器グループ
平成26年度 呼吸器学会からの提案結果 (オレンジ色の部分が承認された提案) 新規提案 既収載の変更 免疫組織化学染色、免疫細胞化学染色
エナジードリンクの危険性 2015年6月23日 経営学部市場戦略学科MR3195稲沢珠依.
自動吸引は 在宅を変えるか 大分協和病院 院長         山本 真.
毎月レポート ビジネスの情報 (2016年7月号).
医療の歴史と将来 医療と医薬品産業 個人的経験 3. 「これからの医療を考える」 (1)医薬品の研究開発 -タクロリムスの歴史-
社会福祉調査論 第4講 2.社会調査の概要 11月2日.
2015年12月28日-2016年3月28日 掲載分.
2010度 民事訴訟法講義 補論 関西大学法学部教授 栗田 隆.
腫瘍学概論 埼玉医科大学国際医療センター 包括的がんセンター 緩和医療科/緩和ケアチーム 奈良林 至
“企業リスクへの考え方に変化を求められています。 トータルなリスクマネジメント・サービスをプロデュースします。“
情報漏えい 経済情報学科 E  西村 諭 E  釣 洋平.
金融班(ミクロ).
第11回 2009年12月16日 今日の資料=A4・4枚+解答用紙 期末試験:2月3日(水)N2教室
【ABL用語集】(あいうえお順) No 用語 解説 12 公正市場価格 13 債権 14 指名債権 15 事業収益資産 16 集合動産 17
基礎理論(3) 情報の非対称性と逆選択 公共政策論II No.3 麻生良文.
浜中 健児 昭和42年3月27日生まれ 東京都在住 株式会社ピー・アール・エフ 代表取締役 (学歴) 高 校:千葉県立東葛飾高校 卒業
COPYRIGHT(C) 2011 KYUSHU UNIVERSITY. ALL RIGHTS RESERVED
Blosxom による CMS 構築と SEO テクニック
記入例 JAWS DAYS 2015 – JOB BOARD 会社名 採用職種 営業職/技術職/その他( ) 仕事内容 待遇 募集数
ネットビジネスの 企業と特性 MR1127 まさ.
Future Technology活用による業務改革
ネットビジネス論(杉浦) 第8回 ネットビジネスと情報技術.
g741001 長谷川 嵩 g740796 迫村 光秋 g741000 西田 健太郎 g741147 小井出 真聡
自然独占 公共経済論 II no.5 麻生良文.
Autonomic Resource Provisioning for Cloud-Based Software
Webショップにおける webデザイン 12/6 08A1022 甲斐 広大.
物理的な位置情報を活用した仮想クラウドの構築
ハイブリッドクラウドを実現させるポイントと SCSKのOSSへの取組み
寺尾 敦 青山学院大学社会情報学部 第12回 情報デザイン(4) 情報の構造化と表現 寺尾 敦 青山学院大学社会情報学部
【1−1.開発計画 – 設計・開発計画】 システム開発計画にはシステム開発を効率的、効果的に実行する根拠(人員と経験、開発手順、開発・導入するシステム・アプリケーション・サービス等)を記述すること。 システム開発の開始から終了までの全体スケジュールを記載すること。 アプリケーション機能配置、ソフトウェア、インフラ構成、ネットワーク構成について概要を示すこと。
6 日本のコーポレート・ガバナンス 2008年度「企業論」 川端 望.
急成長する中国ソフトウェア産業 中国ソフトウェアと情報サービス産業の規模 総売上高は5年間で約5.3倍の成長
米国ユタ州LDS病院胸部心臓外科フェローの経験
公益社団法人日本青年会議所 関東地区埼玉ブロック協議会 JCの情熱(おもい)育成委員会 2011年度第1回全体委員会
次世代大学教育研究会のこれまでの活動 2005年度次世代大学教育研究大会 明治大学駿河台校舎リバティタワー9階1096教室
子どもの本の情報 大阪府内の協力書店の情報 こちらをクリック 大阪府内の公立図書館・図書室の情報
第2回産業調査 小島浩道.
〈起点〉を示す格助詞「を」と「から」の選択について
広東省民弁本科高校日語専業骨幹教師研修会 ①日本語の格助詞の使い分け ②動詞の自他受身の選択について   -日本語教育と中日カルチャーショックの観点から- 名古屋大学 杉村 泰.
■5Ahバッテリー使用報告 事例紹介/東【その1】 ■iphon4S(晴れの昼間/AM8-PM3) ◆約1時間で68%⇒100%
『ワタシが!!』『地域の仲間で!!』 市民が始める自然エネルギー!!
ポイントカードの未来形を形にした「MUJI Passport」
SAP NetWeaver を支える Microsoft テクノロジーの全貌 (Appendix)
ガイダンス(内業) 測量学実習 第1回.
Python超入門 久保 幹雄 東京海洋大学.
熱力学の基礎 丸山 茂夫 東京大学大学院 工学系研究科 機械工学専攻
京都民医連中央病院 CHDF学習推進委員会
資料2-④ ④下水道.
Accessによる SQLの操作 ~実際にテーブルを操作してみよう!~.
Presentation transcript:

TF-IDF法とLSHアルゴリズムを用いた コードブロック単位のクローン検出法 井上研究室 横井 一輝

コードクローン ソースコードの同一あるいは類似した部分を持つコード片 ソフトウェアの保守を困難にする大きな要因 クローンペア コードクローン

関数クローン検出法[1] 関数単位でコードクローンを検出する 検出時間が短い 類似した処理を行う関数をクローンとして検出 コード片単位より集約が行いやすい 検出時間が短い LSH アルゴリズム[2]を用いてクラスタリングを行い, コードクローンを高速に検出できる [1]山中裕樹, 崔恩瀞, 吉田則裕, 井上克郎. 情報検索技術に基づく高速な関数クローン検出.情報処理学会論文誌, Vol. 55, No. 10, pp. 2245–2255, 2014. [2] P. Indyk, R. Motwani. Approximate nearest neighbors: towards removing the curse of dimensionality. In Proc. of STOC ’98, pp. 604-613, 1998.

関数クローン検出法のアルゴリズム STEP1: 各関数からワードの抽出 STEP2: ワードに対して重みを計算し特徴ベクトルの計算 関数A ワード 個数 xxx 3 yyy 2 … 関数A 類似度 関数対 クローン 0.95 関数 A ✔ 関数 B 0.70 関数 C 関数 D 関数 E 0.90 ✔  … 関数A 関数B 関数B 関数C 関数D 関数E ワード 個数 xxx 3 yyy 2 … 関数B ソースコード 特徴ベクトル クラスタ クローン検出 ワードリスト

検出粒度を小さく,コードブロック単位で検出することで従来の関数クローンに加えて,検出漏れを削減したい 研究動機 関数クローン検出法の問題点 関数の一部が一致する場合,検出漏れがある 例 function A { …中略… if ( ) { yyy; } function B { if ( ) { yyy; } …中略… 検出粒度を小さく,コードブロック単位で検出することで従来の関数クローンに加えて,検出漏れを削減したい

研究概要 コードブロック単位でのクローン検出を 行う手法を提案 LSH アルゴリズムを変更 評価実験 Multi-Probe LSH[3] : メモリ使用量を削減した LSH 評価実験 検出精度,検出時間の比較 [3] L. Qin, J. William, W. Zhe, C. Moses, L. Kai. Multi-probe LSH: efficient indexing for high-dimensional similarity search. Proceedings of the 33rd international conference on Very large data bases, pp. 950-961, 2007.

コードブロックの定義 以下のいずれかをコードブロックと定義する 入れ子構造の 内側もブロックとする 関数 中括弧で囲まれた部分 if while for do-while switch 入れ子構造の 内側もブロックとする function A { if ( ) { yyy; while ( ) { xxx; } Block A Block B Block C

ワードの定義 以下の要素をワードとする ワードの分割 ワードの置換 識別子名 予約語 ワードの分割 区切り文字による分割 (例:snake_case ⇒ snake + case) 大文字による分割 (例:CamelCase ⇒ camel + case) ワードの置換 2文字以下の識別子は同一のメタワードとして置換 i,j や i1,i2 等の識別子は意味情報が込められていない

ブロッククローンペアの定義 ブロッククローンペア(α, β) 右図のコードブロック A, B コードブロック α, β 間の類似度が閾値以上 コードブロック α, β 間に共通部分がない 右図のコードブロック A, B 共通部分がある ⇒ ブロッククローンペアでない function A { if ( ) { while ( ) { a=0; } b=1; Block A Block B

極大ブロッククローンペアの定義 極大ブロッククローンペア(α, β) 極大ブロッククローンペア(α, β)を以降 ブロッククローンペアと呼ぶ α, β それぞれを真に包含するいかなるコードブロックも ブロッククローンペアでない 右図のブロック A, C が 極大ブロッククローンペア function A { if ( ) { while ( ) { a=0; } b=1; Block A Block B function B { if ( ) { while ( ) { a=0; } b=1; Block C Block D 極大ブロッククローンペア(α, β)を以降 ブロッククローンペアと呼ぶ

提案手法のアルゴリズム STEP1: 構文解析を行い抽象構文木を生成 STEP2: 抽象構文木からコードブロックとワードを抽出 ブロック A 類似度 ブロック対 クローン 0.95 ブロックA ✓ ブロックB 0.70 ブロックC ブロックD 0.90 ブロックE … ブロック A ブロックA ブロックB ブロックB ブロックC ブロックD ブロックE ブロックB ソースコード 抽象構文木 クローンペアリスト ワードリスト 特徴ベクトル クラスタ

特徴ベクトルの計算 × TF-IDF 法[4] を利用 文書中の単語に関する重み付けの手法 TF値とIDF値の積で表される コードブロック中の ワードの出現頻度 ソースコード全体の ワードの希少さ × TF 値 IDF 値 各ワードの重みを特徴量として 各コードブロックを特徴ベクトルに変換 [4] B. Ricardo, R. Berthier. Modern information retrieval: The concepts and technology behind search. Addison-Wesley, 2011.

特徴ベクトルのクラスタリング LSH (Locality-Sensitive Hashing) [2] を利用 近似最近傍探索アルゴリズムの1つ ハッシュ関数を用いて高速にクラスタリング可能 クローンペアとなりうる候補を絞ることが目的 コードブロック名 特徴ベクトル Block A (5,4,2,1,…) Block B (0,0,2,2,…) Block C Block D (3,4,2,1,…) Block E (5,4,2,3,…) … Block A Block D Block F Block B Block C Block E クラスタリング 各コードブロックの特徴ベクトル コードブロックのクラスタ [2] P. Indyk, R. Motwani. Approximate nearest neighbors: towards removing the curse of dimensionality. In Proc. of STOC ’98, pp. 604-613, 1998.

LSH (Locality-Sensitive Hashing) 2 点が 近い ⇒ 同じハッシュ値を取る確率が 高い 2 点が 遠い ⇒ 同じハッシュ値を取る確率が 低い Point A Point A’ Point B Hash Table 同じハッシュ値を取る ⇒ 同じクラスタ

特徴ベクトル間の類似度計算 各クラスタ内で特徴ベクトル間の類似度を計算 閾値(0.9)以上であれば ブロッククローンペアとして検出 コサイン類似度を利用 特徴ベクトル 間の類似度の計算方法 閾値(0.9)以上であれば ブロッククローンペアとして検出

評価実験 比較手法 検出対象 関数クローン検出法 CCFinder[5] 3 つの C 言語プロジェクト プロジェクト 言語 サイズ バージョン Apache HTTPD C 343 KLOC 2.2.14 Python 435 KLOC 2.5.1 PostgreSQL 937 KLOC 8.5.1 [5] T. Kamiya, S. Kusumoto, K. Inoue. CCFinder: a multilinguistic token-based code clone detection system for large scale source code. IEEE Trans. Softw. Eng., Vol. 28, No. 7, pp. 654–670, 2002.

評価手順 提案手法と比較手法の検出結果から ランダムサンプリングした 270 個のクローンペアに対しアンケート 調査事項:集約,または同時修正の対象となりうるクローンペアか? 調査対象:コードクローンの研究者 1 名,大学院生 2 名 合計 3 名 2 名以上が保守対象のクローンペアと回答した クローンペアを正解集合としてベンチマークを作成 ベンチマークをもとに適合率・再現率の評価

適合率・再現率の定義 適合率 precision = | 𝐶𝑃 𝑏𝑒𝑛𝑐ℎ ∩ 𝐶𝑃 𝑠𝑎𝑚𝑝𝑙𝑒 | | 𝐶𝑃 𝑠𝑎𝑚𝑝𝑙𝑒 | 再現率 recall = | 𝐶𝑃 𝑟𝑒𝑠𝑢𝑙𝑡 ∩ 𝐶𝑃 𝑏𝑒𝑛𝑐ℎ | | 𝐶𝑃 𝑏𝑒𝑛𝑐ℎ | 𝐶𝑃 𝑏𝑒𝑛𝑐ℎ : ベンチマークの正解クローンペア集合 𝐶𝑃 𝑠𝑎𝑚𝑝𝑙𝑒 : サンプリングしたクローンペア集合 𝐶𝑃 𝑟𝑒𝑠𝑢𝑙𝑡 : 検出したクローンペア集合

※ Apache HTTPD, Python, PostgreSQL に対しての平均値を掲載 評価結果 (1/2) 検出手法 適合率 再現率 検出時間 提案手法 0.68 0.70 1分 47秒 関数クローン検出法 0.67 0.47 5分 29秒 ※ Apache HTTPD, Python, PostgreSQL に対しての平均値を掲載 関数クローン検出法と比較し 同程度の適合率で,高い再現率が得られた

※ Apache HTTPD, Python, PostgreSQL に対しての平均値を掲載 評価結果 (2/2) 検出手法 適合率 再現率 検出時間 提案手法 0.68 0.70 1分 47秒 CCFinder 0.57 0.52 3分 33秒 ※ Apache HTTPD, Python, PostgreSQL に対しての平均値を掲載 CCFinder と比較し 適合率,再現率ともに高い値が得られた

ブロッククローンの実例 類似した処理を行うブロッククローン ファイル出力 を行う処理 334: APR_DECLARE(apr_status_t) apr_file_flush( 略 ) 335: { 336: apr_status_t rv = APR_SUCCESS; 337: 338: if (thefile->buffered) { 339: file_lock(thefile); 340: rv = apr_file_flush_locked(thefile); 341: file_unlock(thefile); 342: } 343: /* 344: * comment 345: */ 346: return rv; 347: } 349: APR_DECLARE(apr_status_t) apr_file_sync( 略 ) 350: { ... 中 略 ... 355: if (thefile->buffered) { 356: rv = apr_file_flush_locked(thefile); 357: 358: if (rv != APR_SUCCESS) { 359: file_unlock(thefile); 360: return rv; 361: } 362: } 371: } ファイル出力 を行う処理 類似した処理を行うブロッククローン

まとめと今後の課題 まとめ 今後の課題 コードブロック単位のクローン検出手法の提案 既存手法と比較して高い検出精度と速度で実現 関数クローン検出法の検出漏れを削減 今後の課題 LSI(Latent Semantic Indexing)などの利用の検討 様々なプログラミング言語に対応 他のコードクローン検出ツールとの比較