かなた望遠鏡を用いたブレーザーの 可視偏光変動の研究 笹田 真人 (広島大学)
ブレーザーの観測的特徴 光度の変動 広帯域放射 高い偏光と変動 早く激しい光度変動を示す→変動タイムスケール:数分~年 電波からガンマ線に至る放射 放射機構:シンクロトロン放射、逆コンプトン散乱放射 高い偏光と変動 電波から可視にかけて高い偏光とその変動 Villforth+ 2010 16 OJ 287 12 R (mJy) 8 4 30 PD (%) 20 10 Dec 2005 Dec 2006 Dec 2007 Dec 2008
多数のブレーザーを長期で連続的に偏光観測し、 目的 シンクロトロン放射の偏光方向は磁場方向に垂直 → ブレーザーを偏光観測することによりジェットの 磁場構造の情報を直接得ることができる 可視偏光観測装置は希少 → ブレーザーの連続的な偏光観測例は少ない 多数のブレーザーを長期で連続的に偏光観測し、 変動機構と磁場構造の関係を明らかにする
観測機器 かなた望遠鏡 TRISPEC 大学付設により占有可能 → 連続的なモニター観測 が可能 可視光、近赤外観測 偏光撮像観測モード → 連続的なモニター観測 が可能 TRISPEC 可視光、近赤外観測 偏光撮像観測モード TRISPEC
偏光ベクトルの回転
2009年の3C 454.3 2009年以外にも偏光ベクトルの回転を検出 アウトバーストが存在 アウトバーストのピーク時に偏光度が2%とアウトバースト中でもっとも低い → その後上昇し22%へ到達 アウトバースト中に偏光ベクトルが約360度回転 活動的な時期には逆方向に回転を検出(約270度) 8 6 光度 ×10^-11 (erg/s/cm^2) 4 2 25 20 15 偏光度 (%) 10 5 -100 -300 偏光方位角 (deg) -500 -700 -900 5000 5100 5200 JD - 2450000 2009年以外にも偏光ベクトルの回転を検出
複数の回転の検出;3C 454.3 2005〜2009年において5回の回転を検出 回転達において時計、反時計回りの両方が存在 2005 outburst 2005〜2009年において5回の回転を検出 回転達において時計、反時計回りの両方が存在 偏光ベクトルの回転率はそれぞれ 8.7, 22, -5, -26 , 9.2 (deg/day) (2005, 2007, 2008, 2009) 2007 outburst Sasada+ 2010 Jorstad + 2010 First rotation Second rotation 2008 outburst
偏光の回転の解釈 問題点 螺旋磁場:両方の回転方向で回転が観測 Bent jet:400度以上一定の回転率 偏光ベクトルの回転から螺旋磁場が示唆される (Marscher+ 08) 両方向の回転を説明するためにBent jet modelが提唱 (Abdo+ 10) 問題点 螺旋磁場:両方の回転方向で回転が観測 Bent jet:400度以上一定の回転率
フレアと偏光
観測天体と期間 ブレーザー44天体のモニター観測 観測期間:2008年5月~2010年12月 過去に例のない多天体モニターを計画、実施 1ES 0323+022 4C 14.23 ON 325 PKS 1749+096 1ES 0647+250 4C 49.22 OQ 530 PKS 2155-304 1ES 0806+524 AO 0235+164 PG 1424+240 QSO 0324+341 1ES 1959+650 BL Lacertae PG 1553+113 QSO 0454-234 1ES 2344+514 H 1722+119 PKS 0048-097 QSO 0954+550 1H 0323+342 Mis V1436 PKS 0215+015 QSO 1239+044 3C 273 Mrk 421 PKS 0422+004 RX J1542.8+6129 3C 279 Mrk 501 PKS 0754+100 S2 0109+224 3C 371 OJ 287 PKS 1222+216 S4 0954+65 3C 454.3 OJ 49 PKS 1502+106 S5 0716+714 3C 66A ON 231 PKS 1510-089 S5 1803+784
Case study; PKS 1510-089 2009年から観測を開始 光度が10倍増光する20日以内の大フレアを検出 Sasada+ 2011 2009年から観測を開始 光度が10倍増光する20日以内の大フレアを検出 フレアに相関して偏光度が上昇 光度 偏光度 (%) 仮説 方位角 (deg) 短期間のフレアにおいて 光度と偏光は普遍的に 相関して変化する
フレアの定義 Flux PD もしピーク範囲において検出したピークがもっとも高い場合、フレアのピークとして定義 Time Time もしピーク範囲において検出したピークがもっとも高い場合、フレアのピークとして定義 検出したピークの前後10日をピーク範囲として定義 範囲内のデータが5点以下の場合棄却 光度曲線のピークの検出
検出したフレア 観測天体数 44天体 総フレア数 166個 フレア検出天体 29天体 光度が二倍以上変化した大フレア 28個 観測天体数 44天体 総フレア数 166個 フレア検出天体 29天体 光度が二倍以上変化した大フレア 28個 大フレアを検出した天体 12天体 大フレアの光度と偏光度の相関(相関係数で判断) (正, 負, 有意な相関なし)= (13, 5, 10) 正、負の相関のフレアで原点の位置が異なる → 長期的な成分によって相関が変化する
フレアの振幅 Flux PD Time Time 光度と偏光度の最大と最小の比と差を振幅とする 長期的に変動する成分を差し引く
光度と偏光度振幅の相関 偏光度振幅 (Pmax – Pmin) 正の相関が存在 r=0.62±0.05 光度比 (Fmax / Fmin)
フレア放射領域の磁場 各フレアが固有の偏光ベクトルを持つ フレアの光度と偏光度の振幅には正の相関 → フレアによって偏光が変化 → フレアによって偏光が変化 各フレアが固有の偏光ベクトルを持つ → フレアの放射領域の磁場は揃っている 発生した衝撃波によって 圧縮された磁場が揃う 磁場の揃った局所からの放射 Laing 1980 圧縮される前 圧縮された後
まとめ → フレアは固有の偏光ベクトルを持つ ブレーザー44天体の多色偏光モニター観測を実施 光度が20倍に達するような大振幅のフレアを検出 44天体で166個のフレアを検出 フレアの光度と偏光度の振幅には正の相関 → フレアは固有の偏光ベクトルを持つ