ダイナミック四次元座標管理システム 2008年 株式会社 日豊

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ダイナミック四次元座標管理システム 2008年 株式会社 日豊 今回発表するテーマはダイナミック四次元座標管理システムについてです。ここでいう四次元とは、GPSの観測結果から得られる3次元の空間座標、それに加え地殻変動などから生じる座標の時間変動をあわせたものです。今回電子基準点の解析を中心にダイナミック4次元座標管理システムの紹介をします。 2008年 株式会社 日豊

GRID-JAPAN(位置情報基盤)構想に基づいた はじめに GRID-JAPAN(位置情報基盤)構想に基づいた 地理空間測位情報の有効活用 明確で・分かりやすく・利用しやすい・ 高精度な四次元座標 ダイナミックな基準系による四次元 (位置+変動速度)座標管理 まずはじめにダイナミック四次元座標管理のコンセプトについて説明します。1.カーナビや携帯など地理空間情報は測量に限らず様々な場面で使われています。2.その情報を最大限に利用するためにはその基盤となる座標が分かりやすく、確かであることが必要がです。3.さらに日本では地殻変動が激しく座標は時間とともに変化してゆくため、時間変動を加えた四次元で管理する必要があります。4.そこで日豊では日本全体をダイナミック四次元座標管理でカバーするため、国土地理院の電子基準点のGPSデータを使用し、高精度に位置を求めます。今回はダイナミック四次元座標管理の軸となるその電子基準点の解析についてご報告します。 最新のITRFによるIGS点に準拠した 約1300の電子基準点の高精度位置座標の決定

ダイナミック四次元座標管理 過去(1997年値)への変換も 近未来への変換も可能になる 最新のITRF基準系に基づくIGS点に準拠した高精度位置座標とその変動速度による四次元座標管理。約1300点の電子基準点の高精度位置情報をその基盤とする。 過去 次にダイナミック四次元座標管理についておおまかな説明をします。最新のITRF座標系に基づくIGS点を座標基準点として座標をもとめ速度を考慮した4次元で座標を管理します。まず日本全体をカバーする電子基準点の座標を高精度にもとめ、座標管理の基盤とします。絵で簡単に説明をします。こちらの絵は標石をイメージしたものでこちらがGPSと考えてください。4次元座標の利点はダイナミックに座標と速度を求めることにより、近い将来の座標を予測することができるところです。地殻変動の激しい日本で座標を高精度に求めるためには変動量が必要不可欠と考えられます。また過去への変換も可能になることで公共測量にも対応できます。ダイナミック4次元座標管理では、過去や未来への変換が容易になります。 近未来 過去(1997年値)への変換も 近未来への変換も可能になる

電子基準点約1300点の解析 解析点 国土地理院 電子基準点約1300点 期間 2007年4月2日~8日 2008年4月2日~8日  国土地理院  電子基準点約1300点 期間  2007年4月2日~8日  2008年4月2日~8日 解析ソフトウェア  GAMIT ver10.32 日本全体を高精度にダイナミックな4次元座標で管理するため、日本全国に配置されている電子基準点約1300点を解析しました。使用したデータの期間は2007年の4月の1週間とその1年後の2008年の1週間です。座標を高精度にもとめるため、マサチューセッツ工科大学とスクリプス海洋研究所により共同で開発された学術ソフトウェアのGAMITを使用します。このソフトウェアでは基線だけではなく衛星の軌道や気象のパラメータなども推定することができ、高い精度で座標を決めることができます。

解析条件 座標基準点 日本周辺のIGS6点 (ITRF2005) データ間隔 30秒 衛星最小仰角 15度 衛星軌道情報 IGS精密暦 YSSK(ユジノハリンスク) 座標基準点  日本周辺のIGS6点  (ITRF2005) データ間隔  30秒 衛星最小仰角  15度 衛星軌道情報  IGS精密暦 DAEJ(テジュン) USUD(臼田) TSKB(筑波) WUHN(武漢) 次に解析の内容について説明します。最新のITRFに準拠したIGS6点を固定点として、ダイナミックに座標を求めます。IGS点とは国際GPS事業という国際機関で管理されている点で、全国に300点ほど分布しており、それらIGS点の座標値はわずか数mmの誤差内で報告されています。用いる点は日本周辺のロシア、中国、韓国、グァム、そして日本の筑波と臼田の計6点です。IGS点を使用することにより、任意の点での絶対座標を決めることができます。また衛星軌道の情報としてIGS精密暦を用いています。 GUAM(グァム)

解析方法 解析機関 日豊 静岡大学 解析セッション 39セッション 網平均 2007年4月2~8日 2008年4月2~8日 変動速度  日豊  静岡大学 解析セッション  39セッション 網平均  2007年4月2~8日  2008年4月2~8日 変動速度  2008年値-2007年値 解析するデータの量が膨大なため、今回の解析には静岡大学に協力していただきました。右の図をご覧下さい。この図は全国を39のエリアにわけ、カラーで区分けしたものです。観測点の数が増えるとそれに伴い基線の数も指数関数的に増え、一度に1300点全部を解析すると、膨大な時間がかかってしまします。そのため1つのブロックを約40点として、機械的に39のブロックに分け、それぞれのブロックを順次解析してゆきました。core4のパソコンを使用し、4ブロックを平行して解析を行い、その得られた結果を網平均し、2007年の座標値と、2008年の座標をそれぞれ計算します。そして2008年から2007年値を引いて2007年から2008年の変動量を算出しました。 全国を39ブロックに分割 1台のPC (core4)で 4ブロック毎もしくは 4日毎を並行して解析

1セッションあたり約1時間(4セッション並行解析) 解析時間   1セッションあたり約1時間(4セッション並行解析) 1日あたりの約1300点の解析時間  約10時間 (PC1台につき) 2007年川崎周辺 番号 X(m) Y(m) Z(m) σX σY σZ  : : 93026 -3960012.11149 3361502.11041 3688920.22765 0.0013 0.0010 0.0011 93027 -3999253.93134 3318094.96230 3685920.99827 0.0014 0.0012 続いて結果です。まず解析にかかった時間についてご説明します。CPU約2GHzのcore4のパソコン1台で1セッションあたり約1時間かかりました。4セッション並行に解析すると約1300点の1日のデータを解析するのに要する時間は約10時間です。下の表は求めた座標とその標準偏差です。点数が多いためここでは例として2007年の川崎周辺の結果だけお見せします。地心直交座標系のXYZとその標準偏差です。こちらの数値は一週間のデータから求めた値となります。これらの標準偏差を単純に平均すると約1.2mmとなりました。 標準偏差 約1.2mm

静岡大学の東海地域研究結果との比較 比較対象 電子基準点1300点の東海地域の解析値(2007年)  電子基準点1300点の東海地域の解析値(2007年)  静岡大学による東海地域の研究の解析値(2006年) 浜松の例 93054 X Y Z 日豊 -3884796.22632 3532757.33410 3608545.89542 静大 -3884796.23178 3532757.33474 3608545.89338 日豊-静大 0.00546 -0.00064 0.00204 次に静岡大学の東海地域における研究の結果と比較しました。静岡大学では東海地域におけるGPSを利用した地殻変動の研究が行われています。今回解析した結果とその研究の成果にある座標のうち、同じ箇所の電子基準点約35点を比較した結果、その差は約1cmとなりました。今後変動速度を精度良く決めることでこの差が縮められると考えられます。 日豊解析値 - 静岡大学研究結果  = 約1cm

変動速度1 2007年~2008年 変動速度 (水平成分) こちらの図は電子基準点約1300点の水平成分の変動をあらわしたベクトル図です。2008年の値から2007年の値を引いたもので、矢印の方向が2007年から2008年の変動方向を示し、矢印の長さがその変動量を示します。

変動速度2 2007年~2008年 変動速度 (水平成分) 全ての点を表示すると見づらいので、中部のエリアを拡大します。矢印のスケールは右下の5cmです。新潟や太平洋側で大きな値がみられますが全体としてはプレート運動による地殻変動の様子がよく見られます。

変動速度4 2007年~2008年 変動速度 (上下成分) ↑ 上 ↓ 下 こちらの図は上下成分です。赤が上方向、青が下方向です。北海道では隆起、その他の地域では沈下の傾向が見られました。 ↑ 上 ↓ 下

まとめ 約1300の電子基準点の座標が約10時間で解析できた(PC1台につき)。 最新のITRF基準系による座標の標準偏差は約1.2mm(1mmGeodesyに近づいた)。 まとめに入ります。今回約1300点の電子基準点を約10時間で解析できることが分かりました。そして求めた座標の標準偏差は約1.2mmとなりました。1mmに近い精度で求められた理由として、衛星軌道情報の飛躍的な精度の向上が考えられます。

今後の方針 GAMITとBerneseソフトウェアの解析結果の比較 過去5年以上の電子基準点の解析による高精度な変動速度の決定 ICタグや携帯電話など様々な分野への活用 今後の方針は、GAMITとBerneseも使用した解析結果の検証。また過去5年以上の電子基準点を解析することで高精度な変動速度を決定して座標管理の整備をしてゆきます。そしてICタグや携帯電話など、分野を問わずさまざまなものへの活用を進めていきます。最後に、今回の解析には国土地理院の電子基準点のデータを使用させていただきました。日ごろのご指導とあわせ、深く感謝したいと思います。 謝意  今回の解析には国土地理院の電子基準点のデータを使用させていただきました。日ごろのご助言、ご指導とあわせ深く感謝の意を表します。

岩手・宮城内陸地震変動量 最後におまけとしてですが、6月14日に発生した岩手・宮城の内陸地震についても変動量を解析しました。国土地理院でもすでに発表がなされていますが、日豊でも解析を行ってみました。地震のマグニチュードは7.2と非常に大きなため電子基準点の変動量にも大きくあらわれています。スケールは右下の10cmです。秋田県湯沢市周辺の電子基準点では約30cmの水平変動がみられました。

岩手・宮城内陸地震変動量 矢印では少し見づらいので、変動量を大まかに色で分けたしたものがこちらになります。緑のところが5cm、オレンジが10cm、赤が20cm以上となります。